植物の大敵、ハダニをご存じですか?
観葉植物から野菜や樹木まで幅広い植物に発生し、被害を与える害虫ハダニ。ガーデニングでハダニ被害に悩まされたことがある人も多いでしょう。この記事では、ハダニの特徴や被害、手軽な対処法から本格的な駆除方法までご紹介します。
目次
ハダニとは
さまざまな植物に寄生する害虫、ハダニ。ハダニの生態や発生しやすい植物・環境など、その被害と対処法を詳しくご紹介していきます。
ハダニはどんな生き物なの?
ハダニは日本に70種類ほどいるクモの仲間です。成虫は足が8本あり、糸を出し風にのって移動します。いずれも成虫で0.5mm程度と小さいので、見つけにくい害虫です。
ハダニは主に葉の裏に寄生し、植物の体液を吸って弱らせてしまいます。高温・乾燥を好み、活動が活発になるのは梅雨明けから秋にかけて。水には弱いので、雨が降ると数が減りますが、軒下など雨が当たらないところでは増えやすいので注意しましょう。オスとメスがいますが、交尾をしなくても増殖できるため、被害が小さいうちに対処することが大切です。卵で越冬しますが、環境によっては成虫も越冬します。
ハダニが発生しやすい植物
ハダニはほとんどの植物に発生します。草花、野菜、ラン類、花木、庭木など身近なものから、リンゴやミカンなどの果樹、茶葉に至るまで、さまざまな植物に寄生し被害を与えます。植物によって適した対処をしなければなりません。
ハダニが寄生するとどんな被害があるの?
ハダニは葉裏に寄生し、植物の体液を吸います。すると葉の葉緑素が抜け、吸われたところが白い斑点のようにポツポツと跡が残ります。初期は目立ちませんが、ハダニの数が増え、被害が進行すると白くカスリ状に色が抜け、葉色が悪くなります。庭木や果樹などはそのために枯れることはまずありませんが、見た目が悪くなり生育も鈍ります。草花や観葉植物、野菜の場合は、落葉し枯れてしまうことがあります。
ハダニの種類
ハダニは、色が薄いナミハダニのような「黄緑色型」タイプも多くいますが、カンザワハダニのように赤い色をして目立つ「赤ダニ(赤色型)」もいます。今回は特に身近な種類についてご紹介します。
ナミハダニは、リンゴ、ナシ、モモなどの果樹や豆類などの畑作物、キュウリ、ナスなどの野菜に寄生します。カンザワハダニは、ナシ、リンゴ、カンキツ、カキなどの果樹、豆類などの畑作物、イモ類やウリ類などの野菜や草花、観葉植物、ラン類、庭木などに寄生します。ミカンハダニは、カンキツ、ナシ、モモ、カキなどの果樹、イヌツゲなどに寄生します。
ハダニが増殖する環境や時期
ハダニは、乾燥した高温の環境で活発に繁殖します。気温が上がり始める3月頃から発生し、寒くなる10月頃までが活動期です。特に高温になる梅雨明けから9月頃までが繁殖のピークで、1匹のメスが50〜100個ほどの卵を生み、それが10日ほどで成虫になってまた卵を生むため、どんどん数が増えます。
一度駆除しても、新しい苗や衣類、雑草に付着して侵入するので根絶するのは困難です。冬は卵で越冬しますが、暖かく乾燥した部屋の中で植物を育てている場合は、冬でも大発生することがあるので注意が必要です。
ハダニの有効な予防法は?
さまざまな植物に害を及ぼし、根絶することは難しいハダニですが、定期的に防除することで発生を最小限にとどめることができます。今回は予防方法と、初期段階の対処法をご紹介します。
ハダニは水に弱い
高温で乾燥した環境を好むハダニは水に弱く、雨が降ったり葉を濡らしたりすると繁殖が抑えられます。また、発生初期であれば、無農薬で駆除できることもありますが、深刻な状態の場合は殺ダニ剤の使用も検討しましょう。
植物に水をかけよう
ハダニは葉裏に生息し、前述の通り水に弱い性質があります。そこで、日常のお手入れの際には、霧吹きを使って葉裏に重点的に水を吹きかけましょう。霧吹きはミストからジェットまで調整できるものが便利です。ミストで全体を湿らせ、ハダニが密集している部分はジェットでピンポイントで攻撃しましょう。特に夏に雨が少ない時期や、梅雨で雨は多いけれど雨が当たらない場所に置いている植物、室内に置いてある植物は要注意。ただし、水圧が強すぎると植物自体を傷めてしまうので注意が必要です。
鉢植えは水に浸してみよう
水に浸せるサイズの鉢は、思い切って鉢ごと株全体を水に浸してみましょう。この時、葉を優しくなで洗いします。ハダニが苦手とする水を使うのと同時に、物理的に除去することで、ハダニの数を減らすのにとても有効です。
水と他のものを混ぜるのも有効!
定期的に水をかけることでハダニの発生を抑えることができますが、ある程度以上になると、水だけで撲滅するのは困難です。その場合は、「水+α」のものを吹きかけて、より積極的にハダニを駆除してみましょう。
①ハダニ退治には、2~3倍に水で薄めた牛乳をスプレーします。牛乳が乾いてハダニの気門を塞ぎ、窒息させる効果があります。スプレーした牛乳はそのままにしておくとカビや腐敗の原因になるので、翌日しっかり洗い流しましょう。
②飲用より濃いくらいの濃度のコーヒーも有効。カフェイン成分が効くとされ、牛乳より臭みや腐敗の心配が少ないのがメリットです。ただし、駆除効果は牛乳スプレーのほうが高いです。
その他、酢や重曹を使い植物を元気にする方法もありますが、ハダニには効果がありません。いずれの場合も植物が傷まないようスプレー散布しましょう。また、一度で効果は出にくいので、何度も繰り返すことが重要です。
大量発生してしまったら
日常的に葉に水スプレーをして発生を抑え、初期の場合は身近な食品で対処する方法をご紹介しましたが、大量発生してしまった場合は、被害がさらに拡大し手遅れになる前に農薬を使用し駆除しましょう。
やはり農薬が有効
ハダニは発生しやすく繁殖力が強い害虫です。そのため、「粘着くん液剤」「バロックフロアブル」「マラソン乳剤」「ケルセン乳剤」「でんぷんスプレー」など数多くの薬剤があります。薬剤の強度、植物の種類、被害の状況、生育環境などに合わせた農薬を選びましょう。
薬剤散布する
薬剤が付着しやすいよう、風の強い日は避け、散布する前に、余分な葉を除いたり、整枝したり、風通しをよくしておきます。また、薬剤が直接肌に付かないよう、ゴム手袋、長袖・長ズボンを着用し、マスク、ゴーグルで顔を保護します。植物に薬害が出ないよう、涼しい時間に散布するようにしましょう。ハダニは薬剤に対する耐性がつきやすく、同じものを何度も使うと効かなくなってしまうので、数種類の異なる系統の薬をローテーションで使うようにします。使用の際は、注意書きをよく読みましょう。
スプレータイプを活用する
自分で希釈する農薬散布より手軽な方法として、「GFモストップジンRスプレー」「ベニカXネクストスプレー」などスプレータイプの薬剤もあります。ハダニを見つけたらすぐに使用できる手軽さがメリットです。葉裏の隅々までしっかりかかるようにスプレーしましょう。植物によって適した薬剤は異なるので、注意書きをよく読み使用しましょう。
大切な植物をハダニから守ろう!
さまざまな植物に発生し被害を与えるハダニ。日頃からハダニがいないか葉裏をチェックし、葉裏を中心に水をスプレーして発生を抑えましょう。発生してしまったら早めの対処が大切です。洗い流すとともに、身近な食品を利用し駆除を試みましょう。数が多い場合は被害が深刻になる前に農薬の使用も検討を。鉢数が少ない場合はスプレータイプの薬剤のほうが手軽でよいでしょう。広範囲に発生している場合は、希釈タイプの薬剤を使用しましょう。その際は事前準備をしっかり行い、植物や用途に合った薬剤を選びましょう。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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