省スペースでバラやクレマチスを育てよう! オベリスク&トレリス仕立て
豪華な花が美しく、多くの人がその虜になっている花の女王、バラ。自分で育てて咲かせた時の感動は何ものにも代えがたいものです。バラの栽培をスタートするのは涼しくなった、晩秋から冬がベストシーズン。「バラを育ててみたいけど、いつ、何から始めたらいいのか……」と迷っている人も簡単にスタートできるおすすめのグッズと手順をご紹介します。玄関先やベランダなど狭い場所でも栽培可能なオベリスクと自立式トレリスで、コンパクトにバラを咲かせてみませんか。
目次
つるバラをコンパクトに立体的に育てられる
オベリスク&トレリス仕立て
「オベリスク」は円錐や角錐状の支柱のことで、つるバラの枝をぐるぐると巻きつけて仕立てると、360度花咲く姿を楽しむことができます。幅をとらずにコンパクトにバラを育てることができるので、小さな庭はもちろん、ベランダや玄関先などでの栽培にも向いています。
一方「トレリス」は、フェンス状になった支柱のことで、つるバラを平面に仕立てて花が咲くスクリーンを作ることができます。誘引する手がかりとなるフックなどの金具を壁などに打ち付ける必要がなく、手軽につるバラを育てることができます。形は格子状をはじめ、上写真のような優雅なラインを描くものなどデザインのバリエーションがあり、冬に葉が茂っていない時期でも庭のアクセントになるのも利点です。
オベリスク仕立てに向くバラ選び
バラにはさまざまな種類があり、いざ選ぼうとすると迷ってしまいますよね。そこで、これまで数々のバラを育ててきたバラ栽培の専門家である元木はるみさんに、オベリスクで育てやすいつるバラをセレクトしていただき、必要な7つのグッズと冬の仕立て方手順についても教えていただきました。
半つる樹形の‘ギー・サヴォア’
白いオベリスクのフレームに寄り添うように咲いている、赤バラは、フレンチローズの‘ギー・サヴォア’です。緑に映えるひらひらとしたカーディナルレッドの花弁にモーヴピンクの縞模様が入る華やかな花で、大人シックな雰囲気を漂わせます。香りは、ティーにダマスク。
枝が直立気味に伸び、樹高約1.6~2mになるので、トレリスに仕立てて咲かせるのにぴったりの性質です。
直立樹形の‘ブリーズ’
薄い花色が引き立つように、黒のオベリスクに仕立てたのは‘ブリーズ’です。
花色はソフトアプリコットピンク。中輪のカップ咲きで、すっと伸びた茎の先に花咲く姿はとても可憐で、清楚なイメージです。トレリスやオベリスクを利用すると、狭い場所でもすっきりとまとまります。
バラのオベリスク仕立てに必要な7つのグッズ
❶ 長尺苗
晩秋から冬の間ならば、つるが伸びた状態の長尺苗を入手することができます。長尺苗は、つるが伸びるのを待つ必要がなく、春にはオベリスクに多くの花が咲くのでおすすめです。到着したら、すぐに箱を開けて苗を取り出し、水をやりましょう。
❷ オベリスク
鉢の口径に収まり、バラの枝を巻き付けやすく、花が目の高さで楽しめる、ちょうどいいサイズのオベリスクを使いました。
優しい色合いのバラ‘ブリーズ’には、花色が引き立ち、風景に馴染むように、ブラックの「オベリスク」を。サイズは、直径約35.5cm、高さ約191cm。12号以上の鉢にセットできます。
鮮やかな赤バラの‘ギー・サヴォア’には、白いラインが庭のアクセントになる「オベリスクスリム ブランシュ」のホワイトを。サイズは、直径約23cm、高さ約208cm。10号以上の鉢にセットできます。
<使用した「オベリスクスリム ブランシュ」について、詳しくはこちら>
❸ 鉢
オベリスクの脚を差し込む余裕のある深さと、高いオベリスクが倒れないように支えるどっしりと安定感があるファイバー製の鉢「ラウンドポット ローコ」を使いました。シンプルで飽きずに長く使えるデザインも魅力です。‘ギー・サヴォア’には黒、‘プリュム’には白い鉢を合わせます。鉢サイズ:直径約50cm、高さ約44cm、重量約9kg、最大容量約70L
<使用した「ラウンドポット ローコ」について、詳しくはこちら>
❹ バラの土
バラ専用の培養土を使えば、ブレンドに迷うことはありません。今回使用したのは「特選有機バラの土」(花ごころ)。たっぷりの有機原料が配合されているので、花付きがよくなり苗が丈夫に育ちます。鉢の容量は約70Lなので、15L入りの土を5袋用意しました。
❺ バラの肥料
バラの根を丈夫に育てる海藻成分や花付きをよくする成分、ゆっくり長く効き目が持続する有機質などが含まれたペレットタイプの肥料。
❻ 鉢底石
通気性と排水性があり根腐れを防止する鉢底石も、鉢のサイズに合わせて用意します。今回は、あらかじめアミ袋に小分けされている「くり返しくり返し使える鉢底石」(花ごころ)を1鉢につき、3袋使用しました。
❼ 誘引紐
オベリスクの形状に沿って、枝を留め付けるために使います。麻紐やビニールタイなど。
つるバラの植え付け&オベリスクの仕立て方
手順1
鉢底が隠れる程度に、アミ袋に入った鉢底石を敷き詰めます。袋入りの鉢底石は植え替える際に用土と混ざらず、繰り返し使用できて便利。
手順2
鉢に深さ1/3くらいまでバラの土を入れたら、オベリスクをセットします。苗がオベリスクの外側になるように配置して、周囲に土を入れます。長尺苗は、冬でも根鉢をあまり崩さないように入れ、接ぎ木部分が地表に出るように深さを調整しながら用土を加えます。その上に、「バラの肥料」を約300gほどパラパラとまき、最後に鉢底から流れ出るくらい、たっぷりと水を与えます。
手順3
植え付けが終わったら、次は枝の誘引作業です。植え付けた苗の枝に、古い葉が残っている場合は取り除いておきます。写真のように、枝を斜めに傾けながら、オベリスクの外側に誘引紐で1本1本留めていきます。オベリスクの内側に枝を入れないように誘引するのがポイントです。
手順4
隣り合う枝は、同じ方向に均等な間隔で留めていくと、きれいに誘引できます。
植え付けは、年内に。誘引は、遅くとも枝が硬くなる前の1月中には終わらせましょう。そして、2〜3月には「バラの肥料」を約150gほど追肥し、つぼみが色付いたら、施肥はストップ。開花シーズンを楽しみに待ちます。
‘ブリーズ’の春の開花
植え付けから約半年経った5月に見事に咲きました。玄関への通路の脇に置き、その前を通るたびに優しいバラの香りを楽しめました。このオベリスクを置いた場所は庭の東側、半日陰になるのですが、オベリスクに誘引したおかげで、枝を高めにキープすることができ、葉に日が当たって元気に育ちました。オベリスクに仕立てると、こうして日当たりの改善をすることができます。
‘ギー・サヴォア’の春の開花
地植えの庭であっても、樹木がすでに根を張っていて植え穴を掘ることができない場合もあります。そんな時、鉢植えにしてオベリスクを使えば、つる仕立てでバラを育てることができるのでおすすめです。
遠くからでも印象の強い鮮やかな花色の‘ギー・サヴォア’と共に、白いオベリスクが、ガーデンのポイントになりました。
●四季咲き性の品種なら、夏の終わりに剪定&誘引をすれば、秋も再び開花が楽しめます。お手入れのポイントは、こちらでご紹介しています。
トレリス仕立てに向くバラ&クレマチス選び
トレリス仕立てに向くのは、枝が細くしなやかで生育が穏やかなつるバラや、新枝咲きのクレマチスです。新枝咲きのクレマチスなら、翌年活躍するつるを選んで残す必要がなく、シーズンの終わりにすべてのつるを地際でばっさり切るだけでリセットできます。さらによく返り咲く品種を選べば、晩夏に切り戻した後、再びつるが伸びて、秋まで2度目の花を楽しむこともできます。バラも四季咲き性が強いものなら、秋バラを楽しむことができます。
クレマチスのトレリス仕立てに必要な6つのグッズ
❶ デザイントレリス
大きすぎず、バラやクレマチスを1株誘引するのにちょうどいい、高さ約180cm、幅約43cmのトレリスです。英国風のエレメント模様が優雅なスチール製で、つるをバランスよく留め付けるのにも便利。
❷ デザイントレリス専用のスタンド
別売りの専用スタンドを使えば、玄関先やベランダでトレリスを自立させて飾ることができます。
<「デザイントレリス スリム用スタンド」について、詳しくはこちら>
❸ 苗
クレマチスの苗を冬に購入すると、休眠しているため地上部に葉が茂っていない苗が到着しますが、1〜2週間に1度程度水やりをしましょう。
❹ 培養土
クレマチスを育てるのに適した排水性と保水性に優れた専用土「クレマチス専用培養土」(クレマコーポレーション)を使用。あらかじめ肥料も含まれているので、手間なく植え付けができます。プロが生産栽培に使っているのと同じ用土です。
❺ 鉢
トレリスのスタンドに収まる幅30cm以内の鉢を用意。
❻ 誘引紐
麻紐やビニールタイなど。クレマチスのつるをトレリスに留め付けるために必須。
クレマチスの植え付け&トレリスの仕立て方
手順1
クレマチスの苗をポットから抜き出します。簡単に抜き出せない場合は、根が傷つかないように気をつけながら、ポットを切ってもOK。根鉢の底に鉢底石などがある場合は、根が切れないように注意しながら余分な土や鉢底石を取り除きましょう。
手順2
鉢底石を入れ、少し培養土を入れたら苗を置き、隙間ができないように培養土を入れていきます。
手順3
土がまんべんなく入ったら、鉢底から流れ出るまでたっぷりと水をやります。
手順4
スタンドに鉢を乗せ、伸びているつるがあればトレリスに誘引紐で留め付けます。ここまでの作業は、3月までに終わらせます。その後、気温が上がるにつれ、つるが伸びてくるので、S字を描くように留め付けながら育てます。
伸び始めた4月中は、なるべくつるが下方に収まるようにしておくと、上に伸びながら先端に咲く花を目の高さで楽しむことができます。花数が減ってきた7月に全体の1/3程度つるを切る(切り戻す)と、再び新しい芽が伸び出て(下写真)、秋まで花が咲きます。
バラやクレマチスを晩秋〜冬に育て始めれば、春が楽しみに!
晩秋から冬は、来春の花の最盛期を楽しく過ごすための準備の時期です。ご紹介したように、広い庭やスペースがなくても、オベリスクやトレリスに仕立てれば、バラやクレマチスを身近に咲かせることができます。また、自分で育てた花を切って部屋に飾るのも、ガーデナーの楽しみの一つです。将来の自分へのプレゼントとして、バラやクレマチスの栽培をスタートさせてみませんか?
撮影協力
Credit
記事協力 / 青山ガーデン
“庭の暮らしを豊かに、幸せに”をコンセプトに、一人ひとりに合わせて「集う」「眺める」「くつろぐ」「育てる」など様々なライフスタイルの提案を行う、ガーデニング&エクステリア専門のオンラインショップ。
家族や友人、子どもたちの笑顔があふれ、季節の移ろいを感じられる憧れの庭に必要な全てのモノが揃うお店です。
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記事協力 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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