５株でも見応えあり！ 簡単寄せ植え#３　初秋

寄せ植え作り【５苗の役割】

寄せ植えの作り方は、用途によっても多少異なりますが、植えた草花の成長も楽しむためには、ある程度ゆとりのある容器に植え込むことがポイントです。ここではあちこちに置けて汎用性が高い、内径21cmのコンテナを使いますが、それには９cmポット苗なら５株ほどがちょうどいいボリューム。植物それぞれに、主役、準主役、脇役（引き立て役）といった役まわりを持たせて植え込みます。

主　役：１種類／花が大きくて目立つなど存在感を放つ植物。

準主役：１種類／主役に次ぐ、存在感を放つ植物。

脇　役：３種類／主役、準主役を引き立てつつ、全体を調和させたり、動きを出したりする植物。

※主役が２種類あって、準主役がないこともあります。

◆今回使う５株の花苗

1. キキョウ……主役
2. ユーパトリウム‘ピンクフロスト’……準主役
3. ジュズサンゴ……脇役１
4. アルテルナンテラ‘マーブルクイーン’……脇役２
5. ペニセツム・アロペクロイデス‘リトルバニー’……脇役３

では、今回セレクトした５種の魅力をご紹介しましょう。

【今回使った植物紹介】

キキョウ

キキョウ科多年草
草丈：15～150cm
開花期：６～10月
花色：紫、白、ピンク

古くから親しまれている植物で、まっすぐに伸びる茎に花を咲かせる。風通しと日当たりのよい場所で育てることが大切。花がらはこまめに摘み、次の花の開花を促して。

ユーパトリウム‘ピンクフロスト’

キク科多年草
草丈：80～150cm
開花期：10～11月
花色：ピンク

サワフジバカマの斑入り品種で、ピンクの花を咲かせる。斑はクリーム色で茎と新葉が赤みを帯びるので、開花時期以外はカラーリーフとして楽しめる。丈夫でよく育つのも魅力。

ジュズサンゴ

ヤマゴボウ科多年草（一年草扱い）
草丈：30～100cm
開花期：６～10月
花色：白

白い小花を咲かせた後につく数珠のような赤い実が愛らしく、花、実と長期間にわたり楽しめる。丈夫に育つが寒さに弱いので、霜に当たると枯れる。

アルテルナンテラ‘マーブルクイーン’

ヒユ科多年草
草丈： 約15cm
開花期：７～11月

緑・クリーム、赤紫がマーブル模様になった葉が特徴。ややほふく性なので這うように成長する。日照不足になると、斑の出方が悪くなるので注意して。

ペニセツム・アロペクロイデス‘リトルバニー’

イネ科多年草
草丈：20～40cm
開花期：８～10月

日本の野原に自生するチカラシバのコンパクトな品種。細いラインを描く葉とふわふわした穂が、涼しげな印象。丈夫で、初夏から秋と長期に渡り穂を楽しめる。

◆寄せ植えに使うコンテナと基本の道具

どんな植物ともよくなじむ、色が薄くシンプルなデザインの素焼きのコンテナを使います。床に直置きでも何かの上に置いても、違和感のない大きさなのもポイントです。サイズは、高さ23cm、内径21cm。

1. 土入れ用トレイ／植え付け時の土がこぼれるのをキャッチ。
2. 土入れ／狭い場所に土を注ぎ入れるのにも便利。
3. 鉢底ネット／土の流出や、ナメクジなどの害虫が鉢内に侵入するのを防ぐ。
4. 植え付け棒／植え付け時に、根株の隙間に培養土がきれいに入るようにつつくための棒。
5. 園芸用ハサミ／枯れた花や葉を摘んだり、茂りすぎた枝葉を整理するのに使います。
6. 肥料／鉢内で植物が成長するのに必要な栄養。
7. 鉢底土／水はけをよくするために、鉢底に敷く軽石。
8. 培養土／植物が成長するための土壌。園芸店やホームセンターで販売されている草花用を使用しましょう。

初秋の寄せ植え作り【植え付け手順】

1. 植えこむ前に、苗を並べてイメージのデザインを確認しておく。

2. コンテナの穴に鉢底ネットを置く。

3. 鉢底土をコンテナの２割ほどまで入れる。

4. 培養土に元肥を混ぜ込んでおく（※肥料によって、入れる量は異なります。パッケージに記載された規定量を使いましょう）。

5. 鉢底石が入ったコンテナに、土入れで培養土を入れる。

6. 苗の根鉢が入る程度のスペースを残しておく。

7. 植え付け棒を使って、根鉢をほぐすようにしながら崩していく。

8. 根鉢の肩の部分も削り、写真の程度まで崩す。

9. 後段（奥）から植える（ユーパトリウム→ペニセツム）。

10. 主役のキキョウを中段中央に植える。

11. 数本の枝が挿し木された苗は分割することができるので、植え付け棒で根をほぐした後、手で３つに割る。

12. ３つに割ったジュズサンゴのうち、２つをキキョウの両脇に植える（今回は２つ使う）。

13. 最前列にアルテルナンテラを植える。

14. 全部の苗を植えたら、土をやさしく入れていく。

15. 植え替え棒を使い、根鉢のすき間を軽く突きながら土を入れ込む。

16. 不足しているところに土を足す。ウォータースペース（水やり時に水や土があふれてこないようにとる、土の表面から鉢の上縁までの空間）として、２cm程度あけること。

17. 全部の苗が入ったら、表面の土を指でならす。

18. 葉やつるの重なりなどを直し、見栄えよくする。

19. 完成！！

秋の七草であるキキョウとユーパトリウム（フジバカマ）をメインで寄せて、秋の月に似合う寄せ植えにしました。重量感のある２種には、線の細いペニセツムとジュズサンゴを合わせ、秋の風に揺れる爽やかな風景を表現。前面に赤色がにじむ匍匐性のアルテルナンテラを植えたことで、ほんのり重厚感が加わり、秋ならではの落ち着いた風情を演出しています。

左／鉢の縁からジュズサンゴの細い茎が垂れ下がり、野趣を生んでいる。

右／小さな穂を上げるペニセタムが、ススキが風に揺れる野原を思わせて。

【デザインのポイントまとめ】

• 中央で塊となって主役の存在感を放つキキョウを、グラスなどの動きを出す植物で軽やかに見せる。
  →主役の花を引き立て、軽やかに見せる。
• 斑入りの明るい葉と、暗いトーンの葉で上品な強弱をつける。
  →やさしい色彩なので、ぼんやりとしないようにメリハリをつける。
• 丈がありボリュームがある植物で、視線が抜けるのをストップ。
  →アレンジの背景として役割をもたせつつ、コンテナとの高さのバランスをとる。

置き場所や管理のポイント

和の雰囲気があるアレンジですが、空間のスタイルにこだわらずに飾って楽しみましょう。今回は、黒と赤のアイアンフェンスを重ねたコーナーの前に飾ってみました。アンティークの重量感が草花の爽やかさを引き立てています。やさしい色合いでまとめたアレンジなので、色数が多くないシンプルな場所に飾るのがポイントです。

日当たりと風通しのよい場所に置きましょう。

キキョウの花がらはこまめに摘み、開花期間が長いので、株が弱ったり花数が減らないように、液肥なら１週間に１回、粒状の肥料なら１カ月に１回追肥をします。

アルテルナンテラは、茂りすぎたら適宜剪定して形を整えます。

Credit

制作＆アドバイス／グリーンギャラリーガーデンズ　堀田裕大
グリーンギャラリーガーデンズ店長。切り花の業界で学んだデザインのノウハウを生かした寄せ植えづくりに定評があり、2017年日比谷ガーデニングショーの寄せ植えコンテストで農林水産大臣賞を受賞。園芸誌などでも活躍中。
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SHOP DATA
東京都八王子市松木15-3
TEL：042-676-7155
営業時間；10:00～19:00 （火曜日10:00～17:00）
http://www.gg-gardens.com/

写真＆文／井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック（監修：荻原範雄）』『刺激的ガーデンプランツブック（著：太田敦雄）』『GARDEN SOILの庭づくり＆植物図鑑（著：田口勇・片岡邦子）』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。