お盆が過ぎ、秋の気配が感じられる頃。バラを育てている人にとって年内最後の楽しみである秋バラの開花のために、作業をスタートするシーズンです。神奈川の自宅の庭で、多数のバラを育てる「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんに、秋に綺麗にバラを咲かせるための鉢植えバラの手入れについて解説していただきます。
庭のバラは今、どんな状態ですか?

今年の夏は、猛暑の日もありましたが、まるで梅雨時のように雨天が続いたり、幾度か台風による大雨があったせいか、我が家のバラは例年より葉が落ちずに、次々と小さなつぼみを上げるものが多いように思います。皆さまが育てているバラはいかがでしたか?
もし現在、バラの葉がほとんど無い状態だとしたら、考えられる大きな理由は4つです。
- 雨天時以外の日の水やりの回数や量が少なかったために水分不足になってしまった。
- 鉢植えの底から根が出て土中に根を張っていたのに気がつかず、鉢の置き換えをして、根を切って傷めてしまった。
- ハダニや黒点病(黒星病)などの病害虫によりダメージを受けた。
- 暑さに弱い品種のため。
●「夏に弱ったバラの回復法」も併せてご覧ください。
8月下旬~9月上旬に行う作業

【剪定】
冬に強剪定や誘引で整えた株も、春を過ぎ、そして夏を越し、現在だいぶ枝が暴れているのではないかと思います。8月下旬~9月上旬に行う剪定は、不要な枝を取り除き、剪定や整枝を行いますが、冬とは違い、光合成を妨げないため葉の量はあまり減らさないようにすることが大切で、冬のような強剪定ではなく、弱剪定とします。ただし、お隣の敷地に入り込んでしまったり、あまりにも枝が伸びて手に負えない場合は、臨機応変に各家庭に合った剪定を行ってください。
【施肥】
鉢植えのバラへの施肥は、市販の固形肥料(根に触れても安心な肥料)が便利です。パッケージに記載されている容量、使用方法などを守ってご使用ください。

コンパクトな樹形の鉢植えバラ
剪定・施肥・盛り土・水やり

見本の品種は、四季咲き性のフロリバンダ、‘アジュール’(2020年 河本バラ園作出)。写真右が夏の終わりの頃の状態です。

まずは、花やつぼみ、枯れ枝や細い枝、内側に向かって伸びている「ふところ枝」などの不要な枝をカットします。

「ふところ枝」が無くなり、通気性がよくなりました。

全ての枝にハサミを入れます。目安として剪定前の枝の約1/3(オレンジ箇所)をカットしたのが写真の状態です。

今回のカットでは、上写真程度の枝葉の量を切りました。

鉢のすぐ内側にシャベルで少し溝を作り、根に触れても安心な固形肥料をすき込みます(パラパラと撒くだけでも)。

鉢植え株は、水やりなどで用土が減っている場合が多いので、バラ専用の用土を盛り土します。

ここで盛り土に使う用土は、一度バラに使ったものは避け、新しい用土を準備してください。写真のような市販のバラ専用用土が便利です。
盛り土をしたら、すぐにたっぷりの水を与えましょう。その後、秋まで水やりに気を配りながら、2週間に1回、活力剤(活性液)を使用して、バラの元気を回復させます。
オベリスクに誘引した鉢植えバラ
剪定・施肥・盛り土・水やり

見本の品種は、返り咲き性の‘ブリーズ’(S)(2009年 仏 デルバール作出)。
すっと上に長く伸びた茎の先に中輪カップ型のコロンとした可憐な花を上向きに咲かせます。このような樹形のバラは、枝を真横に寝かせるのではなく、軽く斜めにする程度に誘引します。オベリスクに誘引することで半日陰や狭い場所でも、すっきりとまとまりのある姿になります。我が家では通路の脇に鉢植えで置いていますが、ベランダや玄関ポーチに置いてもとても似合います。


冬に誘引した枝は、いったんオベリスクから外し、不要な枝を取り除きます。

剪定・誘引後の状態。花茎が伸びて、秋に咲く位置を想定しながら、すべての枝にハサミを入れます。そして、枝を軽く斜めにしながら、同じ方向を向かせてオベリスクに留めつけて誘引します。


前出と同様に、鉢のすぐ内側にシャベルで少し溝を作り、根に触れても安心な固形肥料をすき込みます(パラパラと撒くだけでも)。

鉢植え株は、水やりなどで用土が減っている場合が多いので、バラ専用の用土を盛り土します。
ここで盛り土に使う用土は、一度バラに使ったものは避け、新しい用土を準備してください。市販のバラ専用用土が便利です。
盛り土をしたら、すぐにたっぷりの水を与えましょう。その後、秋まで水やりに気を配りながら、2週間に1回、活力剤(活性液)を使用して、バラの元気を回復させます。
剪定でカットした
小さなつぼみや花たち
剪定でカットしたつぼみや花は、春や秋に比べたらとても小さく、見た目も地味かもしれませんが、暑い中、健気に咲いていてくれたその姿は、とても愛おしく感じます。
捨ててしまうのはもったいないので、ぜひ室内で愛でてください。

剪定と施肥を終えた株は、これから秋に向かって成長します。10月になれば、涼しい気候の中で、また美しい花を咲かせてくれることでしょう。その日を楽しみに、日々、バラの面倒を見ていきましょう。
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -

神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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