庭は植物を育てて、花を咲かせる場所であり、時として人との繋がりも生まれる場所です。千葉県在住の橋本景子さんが自身の庭づくりの経験を生かして、花を咲かせる場所づくりの手伝いをして欲しいという相談を受けたことから始まった、花壇づくり半年の記録。花がバトンタッチして咲くたびに訪れた花壇の様子と、家人との交流をご紹介します。
目次
庭づくりの相談を受けて
仲のよい友達から「ご近所の庭の植栽をお願いできないかしら?」という依頼があったのが2020年の秋のことでした。
聞くと、おじいちゃんが亡くなったので、庭にあった大きな木を処分し、部屋から見えるように花壇を作って花を植えたいという希望。おばあちゃんの話を聞きに、数日後に庭におじゃましました。
訪ねると、たくさんの木で鬱蒼としていたという庭は、数本の木を残してあらかた処分され、レンガを積んで少し地面を上げ、レイズドベッドのように形作られていました。この日は業者さんが庭に土を入れる作業をしていました。
庭の大きさや日当たりなど、状況を確認。訪れたのは10月末でしたので、翌年の春を見据えて、2週間後に植物を調達し、植え込みのため再び伺いました。
家人と道ゆく人を楽しませる花壇作り
和室の前に縁台が作られ、そこに座ると目の前に花壇が見渡せます。また、公道にも面している場所なので、ご近所さんも花壇の様子を楽しみながら通り過ぎるとのことなので、中央に背丈の高い植物、手前に低い植物を。フェンス沿いは、公道側からよく見えるようにバラとクレマチスを絡ませることにしました。
土作りが終わった花壇に、まずは買ってきた植物の苗をざっと並べて仮置きしてみます。
結構、苗と苗の間が詰まって狭いかなぁとも思いますが、この環境下において、それぞれの育ち具合がどうなるか予測がつかないものもあるため、おおよその感覚での植え込みです。これは、全部の植物が順調に育ってくれるかどうかも未知のため、保険の意味合いもあります。
庭主からは、「植栽に関しては、すべてお任せします」ということでしたので、宿根草をメインにしながら、足りないところに一年草を少し入れるという感じでセレクトしました。色については、私にしては派手めにしたつもりですが、さて、咲いたらどうなるのでしょうか?
今まで、植物のお世話をしていたのはおじいちゃんで、おばあちゃんは、してほしい希望の作業を口で伝える係。
なので「口で花を咲かせていたのよ〜〜」と笑っていましたが、おじいちゃんが亡くなってからは、たくさん花を咲かせて、おじいちゃんに見せてあげたかったのかもしれませんね。
そうして、植え込みが完了しました。この日植えた植物は、約30種類。
【季節の花が咲く宿根草】*一部葉物として
クジャクソウ(白)/パイナップルセージ/シロタエギク/ロフォミルタス/エキナセア‘バタフライ・キッス ’/エキナセア‘チェリー・フラウ’/ヘリオプシス‘ローレン・サンシャイン’/シモバシラ/ペンステモン・スモーリー/ペンステモン‘ブラックバード’/バーバカスカム‘ビオレッタ’/スカビオサ‘スノーメイデン’ /斑入りキンギョソウ‘ダンシング・クィーン’/ジギタリス・メルトンネンシス/アジュガ‘ダーク・マホガニー’/吉野草(クサヤツデ)/サルビア/ユーパトリウム‘チョコラータ’/エロディウム・マネスカウィ/ティアレア‘ウィリー’/カンパニュラ‘テルハム・ビューティー’
【葉物】
セキショウ(斑入り)/ロニセラ‘レモン・ビューティー’/アメリカイワナンテン レインボー/白龍/マホニア・コンフューサー/ロニセラ‘レモンビューティ’
【道沿い】
バラ‘ニューサ’/クレマチス‘ベティ・コーニング’
植えたばかりの花壇の様子
植え付けてから数日後、様子が気になって確認に行きましたら、水やりをきちんとされていて、順調に根付いているようでした。
おばあちゃんが捨てようとしていた古いバードバスに水を張ってお花を浮かべたり、内緒で持参した球根をこっそり花壇に仕込んで、その日の庭訪問は終了。
この日から、しばらくは忙しくて通えませんでしたが、冬に向かう花壇は極端に水切れすることもないだろうし、心配はしていませんでした。
開花のリレーが始まった花壇
【4月初め】
植物を植え付けて5カ月経過し、「球根が咲きました〜」という連絡をいただいたので、再びおじゃましました。
花壇を見ると、球根を仕込んでおいたムスカリ‘オーシャンマジック’が咲き、ティアレア‘ウィリー’もたくさん咲いています。この庭は日当たりがよく、植物には最高の環境のようです。
ポットで育てているパンジーたちも花がいっぱいに咲いていました。
【5月初め】
そろそろバラが咲き始めるとのことで、再び庭の様子をチェックしに行ってきました。
冬に剪定と誘引をしておいた‘バレリーナ’が間もなく満開を迎えそうです。タイミングよく剪定ができて、形よく咲いてくれてよかったです。
花壇の植物たちは、想定していたよりも、ずっと背丈が伸びています。
一重バラの‘ニューサ’も可愛く咲いていて、クレマチス‘ベティ・コーニング’も通路側の柵にもたれかかるように一輪花をつけていました。
花壇の草取りをして、草丈が高くなって倒れそうなものに支柱をして、その日は帰りました。
【5月中旬】
バラが満開を迎えるなか、花壇では、カンパニュラ‘テルハム・ビューティー’も満開でした。
その他、咲いていたのは、バラ‘ニューサ’、エキナセア‘チェリー・フラウ’、ジギタリス・メルトンネンシス、そして「夏用の花に」と、この日追加したペンタス。
【6月下旬】
花壇の中は、いろいろ勢いよく茂って、満員御礼になっていました(笑)。
中でも、エキナセアたちの可愛いこと! 立派に冬越しができたので、夏の様子を見て、夏越しも大丈夫ならば、来年用にもう少し株を追加してもいいかなと思います。
この日、初なりのキュウリをお土産にいただきました。
【8月末】
スカビオサ‘スノーメイデン’(写真右手前)は、かなり大株になりますね。
春からよく咲いてくれました。切り戻しすれば、また秋に咲いてくれそうです。
夏は、やはりペンタスやニチニチソウが元気で、コスパもよく、信頼できる一年草です。
もうすぐユーパトリウム‘チョコラータ’も咲きそうです。
秋から夏のおばあちゃんの花壇づくり
最初の苗の植え込みは私が行いましたが、日々の水やりや草取りは、もちろん庭主であるおばあちゃんの役目です。82歳でもとてもお元気で、私との連絡は携帯のLINEで。
困ったことがあったり、植物の調子がおかしいと感じた時には写真も送ってくれます。
私の実母も90歳近いのですが、現在入院中で、自由に動ける身体ではないこともあり、花好きだった母と一緒にいるつもりで、おばあちゃんの花壇のお世話をさせていただけるこの機会をとても幸せに思います。
おじいちゃんが亡くなった後も、おばあちゃんの家にはいつもお友達が来て、この花壇を楽しみ、ランチをしたりお茶を飲んだりしています。私も時々お仲間に入れていただき、人生の大先輩たちの話をありがたく聞かせていただいています。
これからは、秋の植物を少し追加で植え込んで、来春のために移植なども考えたいと思います。
Credit
写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.6万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
YouTube 「Kay garden」
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto
おばあちゃんの庭は、YouTubeでもご紹介しています。
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