ロックガーデンでステキに演出Vol.2 雑木風ガーデンの住まいをご紹介!

雑木風ロックガーデンのイメージイラスト
ロックガーデンとは、大きめの岩や石、荒い砂利などをレイアウトし、その隙間に植物を配する庭の一つのスタイル。岩と植物の組み合わせ次第でワイルドでかっこいい雰囲気にもなり、メンテナンスも楽に済ませることができます。前回大好評の「ロックガーデンでステキに演出Vol.1」に続き、Vol.2では、実際のロックガーデン事例や一風変わったデザインのご紹介をします。
ロックガーデンを隣家との境界線に活かした分譲住宅
雑木風のスタイルとロックガーデンを組み合わせた庭の実例です。
この庭は分譲住宅の事例で、隣家との間に庭がつくられており、お隣同士で緑の景色を共有するイメージです。通常、境界線はフェンスなどで区切られますが、木々の緑で視線をやんわり遮りつつ、ご近所同士が共に緑の恩恵にあずかることのできる新しい住宅の形です。
アウトドアリビングと雑木風のロックガーデン


庭は南北に住宅を配置したその間にあります。庭を望む窓は2軒の家で真向かいにならないようずらして配置され、互いのプライバシーへの配慮がされています。さらに、フェンスの代わりに、より自然な目隠しとなるよう、木々が配置されています。地面から複数の主幹が出る株立ちの木や枝葉が広がる樹種が選ばれており、緑のカーテンのような役目を果たしてくれます。
庭はアウトドアリビングとしても活躍してくれます。アウトドアリビングとは、室内外を一体にし、戸外生活も楽しむことができるセカンドリビングです。
過剰な設備をつくらず自然な環境づくりで

火山岩の気化熱で涼風がつくられ樹木によって2階の窓へ送られる。


このロックガーデンの石は多孔質といって、細かい穴がたくさん空いている火山岩を使っています。穴の中には多くの空気が含まれ、気加熱によって蓄冷された空気は涼風となり、植栽の間を通って緑の香りと共に室内へ流れていきます。特に夏場は、北側のロックガーデンで蓄冷された空気が涼風となり上昇し、2階の窓から室内へ送り込まれます。つまり、自然の冷風機として機能します。リビングから眺める風景も、夏場は涼を感じさせてくれる大事な要素です。
お隣さんとのコミュニケーションが生まれる快適空間

4棟ごとに構成されている、石組の築山にアオダモやモミジ類などが植栽されたロックガーデンは、朝の挨拶や井戸端会議の場所も提供してくれます。完全に遮られたフェンスや塀などではこうしたコミュニケーションは生まれにくいですが、雑木越しなら4棟仲よくコミュニケーションが取れ、治安維持にも繋がります。
ファサードガーデンも雑木風ロックガーデンに

参考までに、玄関まわりのファサードガーデンもご覧ください。株立ちの高木と火山岩の景石と程よい下草の配植で、やわらかでナチュラルなイメージに仕上がっています。分譲地全体が同じデザインで統一されており、町の風景としても素敵です。
※分譲地デザイン:株式会社HIRAMEKI 代表 重松剛氏
一般的な住宅の作りでは南側が庭、北側がキッチンや家事などのサービスヤードであることが多いですが、このように北側が庭であってもステキな空間にする方法もあるんですね。「日陰の庭でもステキに演出Vol.2」では北側の庭の解説もしています。興味のある方はぜひ、ご覧ください。
北国でもできる南国風ロックガーデン
北国でもできる南国ガーデンのご紹介をします。
私が30年余りのお付き合いになる、エクステリア設計の先生のお話で、ある北国でエクステリアセミナーの講師をしたときの出来事です。受講していた設計施工者の方から、ハワイが大好きなお客様が「自分の庭に南国ガーデンをつくって欲しい」との話があり、北国でも南国風ガーデンをつくる方法はあるのでしょうか? との相談を受けたそうです。
最近は地球温暖化のこともあり、北国でも夏は30℃以上の地方もあります。そこで、夏場はヤシやバナナで南国風のトロピカルロックガーデン、冬場はモミやトウヒでコニファーロックガーデンの庭をつくる提案です。
とはいえ、ヤシやバナナの樹木は北国では越冬できません。そこで提案したのがコンテナガーデンの手法。コンテナガーデンとは鉢植えの植物をレイアウトして庭の景色を作るガーデニングの一つですが、ここにロックガーデンの手法を加えるとさらにナチュラルな風景を作ることができます。
やり方を簡単に説明すると、鉢植えのヤシやバナナの木を地面に埋め込み、石を積んで鉢が隠れるようにします。冬季は、温室やリビングに鉢を移動し養生します。
季節を楽しむロックガーデンのポイント

鉢植えの植栽は、ひとまわり大きな鉢を地面に埋め込み、その中に鉢ごと置くようにすると植え替えの手間がなく、室内外の移動がしやすくなります。また、石は琉球石灰岩(コーラル)、伊豆新島産の抗火石などの軽石を組み、鉢を隠しながら高低差をつけると庭の景色に変化がつきます。
冬場はヤシやバナナの木から、コニファーやトウヒに鉢植えをチェンジし、イルミネーションを飾ってクリスマスの演出を楽しむこともできます。

南国、北国の両方を象徴する樹木を鉢植えのまま庭で入れ替えることで、季節に応じてガラッと庭の印象を変え、新鮮な風景が楽しめる方法です。鉢が見えるとやや興醒めなので、ロックガーデンの手法でナチュラルさを演出しましょう。
季節でガラッとイメージチェンジ!
●夏のトロピカルガーデン

●冬のコニファーガーデン

コニファー類やトウヒ、モミの鉢植えを設置して、足元は石積みで鉢を隠します。ポケットには、ほふく性のあるハイビャクシンやコグマザサなどの小鉢を置くのも、ステキです。
※デザイン:株式会社草樹舎 代表 須長一繁氏/イラスト:松下高弘
このように地方の気候風土に合わせて夏、冬で「着せ替えをする庭」を提案したわけです。
実にユニークで面白い方法ですね。鉢を石で上手に隠す工夫と、季節はずれの時期に鉢植えを移動保管する、吹き抜けリビングや温室などの場所さえあれば、庭づくりが年2回できる楽しみもあります。

今回はロックガーデンにかかわる2つの話題をご紹介しました。
アイデアと工夫しだいで、楽しく快適な庭生活が送れるロックガーデン。皆さんも研究してみてはいかがですか?
Credit

文&イラスト/松下高弘(まつしたたかひろ)
長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、手描きパース・イラスト・CG・模型等のプレゼンテーションや大手ハウスメーカー社員研修、エクステリア業の研修講師およびセミナープロデュースを行う。
著書には、『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』、『住宅エクステリアのパース・スケッチ・プレゼンが上達する本(彰国社)』など。新刊『気持ちをつかむ住宅インテリアパース(彰国社)』、好評につき絶賛発売中!!
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