植物を育ててみたい! だけどなんとなく大変そう…。そんな理由からなかなか挑戦できない人には、土を使わないハイドロカルチャーという手法がおすすめです! この記事では、ハイドロカルチャーの方法やメリットについて詳しくご紹介します。
目次
ハイドロカルチャーとは

ハイドロカルチャーとは、水を意味する「ハイドロ」と、栽培を意味する「カルチャー」を組み合わせた言葉で、「水耕栽培」という意味。ハイドロボールなどの人工の土と、栄養分を含んだ水を使って植物を育てる方法です。
ハイドロボールとは、粘土を高温で焼くことで作られるボール状の石で、細かい穴がたくさんあいています。その穴に含まれる空気によって、豊富な酸素を供給しながら植物を育てることができます。
また、植物はハイドロボールの間に根を伸ばして、体を支えることができます。
ちなみに、ハイドロカルチャーと混同されやすい「水栽培」は、水だけを使って植物を育てる方法で、その水に肥料を混ぜたものは「水耕栽培」と呼ばれます。
ハイドロカルチャーで用意するもの

手軽にハイドロカルチャーを始めるには、まずは以下の5つを用意しましょう。
- 根が生えた観葉植物
水挿しなどで発根させ、あらかじめ根を増やしたものを使いましょう。 - 底穴のあいていない容器
ガラスの器・陶器の皿・マグカップ・空き瓶など、素材は何でもOK! - ハイドロボール
植物の体を支える役割があります。粒の大きさは大中小とありますが、大きい植物には大粒のものを、小さい植物には小粒のものを選びましょう。 - 水耕栽培用の液体肥料またはイオン交換樹脂栄養剤
ハイドロボールには栄養が含まれていないため、肥料成分を混ぜる必要があります。 - 根腐れ防止剤
老廃物を吸着し、根が腐らないようにする役割があります。水を循環させない手軽なハイドロカルチャーでは、根腐れ対策をしておいたほうが無難です。
ハイドロカルチャーのメリット

ハイドロカルチャーにはどんな利点があるのでしょうか? ここからはハイドロカルチャーのメリットについてご紹介します。
管理がしやすい

植物を育てる際、意外と難しいのが水やりの加減です。与えすぎは根腐れの原因になりますし、足りなければ水分不足で枯れてしまいます。その点ハイドロカルチャーは、容器の素材を選ばないため、透明な容器を使えば水の残量を確認しながら育てることができます。底穴から水が流れ出ることがないため、長期の旅行などでも水不足の心配がありません。また、ハイドロボールには水を溜め込む性質があるため、水やりの頻度も少なくて済みます。
清潔感がある

清潔な環境で栽培ができるのもハイドロカルチャーの利点です。
普通の土とは違い、人工の土であるハイドロボールは何度でも洗って繰り返し使えるため、清潔な状態を保つことができます。そのため、植物の病気や害虫、においなどが発生しにくく、室内で植物を育てるのに向いています。また、ハイドロボールのほかにも砂状・石状・ゼリー状などさまざまな人工土があり、見た目のよい容器を使えば、インテリアとして楽しむことができます。
ハイドロカルチャーのデメリット

ハイドロカルチャーは手軽で便利な栽培方法ですが、いくつかデメリットも存在します。
ここからは、ハイドロカルチャーのデメリットについて解説します。
大きく育たない

水を循環させないハイドロカルチャーは、植物の成長が緩やかになるという特徴があり、あまり大きく育ちません。そのため、インテリアとして植物を栽培するのには適していますが、植物を大きく育てたい場合には向いていません。
根腐れを起こしやすい

ハイドロカルチャーには、根腐れが起こりやすいというデメリットもあります。
これは単純に水の与えすぎで起こることもありますが、その他にも、根から排出される老廃物が容器内に溜まることで起こる場合もあります。土耕栽培(地植えや鉢植えで育てる通常の栽培方法)であれば、排出された老廃物は土中の微生物が分解してくれたり、水やりで流されていきますが、ハイドロカルチャーでは老廃物が蓄積されやすくなります。
ハイドロカルチャーを始める手順

ここからは、ハイドロカルチャーを始める手順について解説します。
- 容器の底に根腐れ防止剤を入れる。
- 水洗いしたハイドロボールを容器の1/3程度まで入れる。購入したばかりのハイドロボールは、使用前に一度水洗いして汚れや微塵を落とし、乾燥させておく。
- イオン交換樹脂栄養剤をハイドロカルチャーに適量ふりかける。
- 容器の中心に植物を入れ、ハイドロボールの高さを調節する。植える際には、容器の側面に根が直接当たらないよう配置する。
- 周りにハイドロボールを敷き詰め、植物がぐらつかないようにする。
- 容器の1/5~1/4まで水を注ぐ。ハイドロボールがカラカラに乾いた状態の場合は、一度容器の1/3程度まで水を注ぎ、ハイドロボールに水を吸わせる。
ハイドロカルチャーに適した植物

ここまでの説明で分かるように、ハイドロカルチャーは容器にハイドロボールなどの人工土と水を入れ、植物を育てる栽培方法です。そのため日光に当てすぎると、苔や藻が発生して見た目が悪くなったり、水温が上昇して根が傷みやすくなったりします。これらの理由から、ハイドロカルチャーでは光量を最小限に抑える必要があるため、育てる植物は日光が少なくても生育できる耐陰性の高いものを選ぶことが大切です。ポトス、デコラゴム、テーブルヤシ、ガジュマル、モンステラなどの観葉植物は、少量の日光でもすくすくと育つため、ハイドロカルチャーに向いています。
水やりや肥料の与え方

ハイドロカルチャーの水やりは、容器の底に水がなくなってから2~3日後のタイミングで行い、ハイドロボールの1/5程度の高さまで水を入れるとよいでしょう。この時、15〜18℃くらいの常温の水を与えると、植物への負担を軽減することができるのでおすすめです。水がなくなる前に注ぎ足しながら育てると、根腐れの原因となるので注意しましょう。特に冬は植物の成長が穏やかになるため、水やりの回数は夏よりも少なくしましょう。
肥料は植物を植えてから2~3週間程度経過し、根がある程度定着してから与え始めましょう。5~10月の時期に、水耕栽培用の液体肥料を週1回のペースで与えますが、肥料が濃すぎると根を腐らせてしまうため、必ず規定の倍率に薄めるようにしましょう。
注意すべき病気はある?

ハイドロカルチャーで植物を育てていると、ハイドロボールに白っぽいものが付着することがあります。カビと勘違いして心配する人が多いのですが、これは水道水のミネラルが結晶化したものや、肥料に含まれる塩分である場合が多いので心配は無用です。ただし、白くフワフワしたものが植物の葉やハイドロボールの表面に付着している場合はカビである可能性が高いです。カビが生えてしまった際には、容器から植物を取り出し、ハイドロボールを水洗いして乾燥させましょう。風通しのよい場所で管理することが、カビ発生の予防に繋がるので意識しましょう。
根腐れを防止するポイント

ハイドロカルチャーで植物を枯らしてしまう原因のほとんどは「根腐れ」です。これは水の与えすぎによる酸素不足か、根が排出する老廃物の蓄積によって起こります。ハイドロカルチャーの場合、植物の根は水が無くなったタイミングでハイドロボールの間にある酸素を吸収します。そのため、切れ目なく水を与えていると根は水を吸収し続け、呼吸ができなくなって根腐れを起こすのです。これを防ぐためには、容器に水が無くなっても2~3日はそのままの状態にしておくことがポイントです。また、土耕栽培の場合、排出された老廃物は土中の微生物によって分解されますが、ハイドロボールには微生物がいないため、老廃物が蓄積され続けます。根腐れ防止剤の投入を忘れないよう注意しましょう。
手軽に植物を楽しもう!

ここではハイドロカルチャーのメリットや栽培方法について詳しくお伝えしました。ハイドロカルチャーは家の中でも手軽に植物を育てて楽しむことができるガーデニングの一つです。皆さんもぜひ、ハイドロカルチャーで植物の栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
Photo/ 1) Natalia Ruedisueli 2) Firn 3) Shadow Inspiration 4) Cookie Studio 5) Robert Kneschke 6) Didecs 7) Halfbottle 8) PhenomenalPhoto 9) Ngukiaw 10) Harshit Srivastava S3 11) rattiya lamrod 12) DG FotoStock 13) Switlana Sonyashna 14) Firn 15) Yuganov Konstantin/Shutterstock.com
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