ペットに寄り添った庭づくりを得意とする、CLAFTrenovation.studioの江口礼奈さん。今回は犬の健康に貢献する庭について教えていただきました。
目次
危険植物の知識
犬を飼っている方で、ガーデニング好きの方も多いのではないでしょうか。そんな方に注意していただきたいのが、犬にとっての危険植物です。江口さんは「植物を植える前に、まずは下調べしてからの購入をおすすめします。犬に害を及ぼす植物が意外と多いことに、驚かれるのではないでしょうか」と注意を喚起します。
一例として、アサガオ、キョウチクトウ、ニチニチソウ、スズラン、スイセン、ジギタリス、チューリップ、ビオラ、アジサイ、パンジー、ツツジ、エゴノキ、サツキ、ナンテン、ベゴニア、ウメ、クリスマスローズなど、家庭園芸ではおなじみの草花のなかにも、犬にとって有毒な植物は少なくなく、その数は約700種以上にのぼります。
まずは犬にとって有毒な植物があるということを意識して植物を選び、庭に取り入れる場合には花壇の高さをあげたレイズドベッドにしたり、柵などで仕切って犬が入れないようにするなど工夫をしましょう。また、基本的に犬には土を掘り返すという習性があるので、草花を楽しむエリアと犬の生活エリアは区別してガーデン設計をし、犬を庭で遊ばせる際は目を離さないようにしましょう。
「チワワやブルドックなど鼻の短い犬種は、植物の毒のほかに、草や枝が目に入る危険があるので、要注意です!」と江口さん。
また、好奇心の強い子犬や嗅覚などが衰えてくる老犬も、植物を誤飲・誤食しないように気を付けましょう。植えたい場合は柵などで仕切り、犬が入れないようにするのもいいですね。
特に好奇心の強い子犬や視力や嗅覚が衰えた老犬も植物を誤飲しないように、飼い主が気を付けてあげましょう。
やけどと熱中症に注意
年々、酷暑がひどくなっている日本の夏。犬にとっても厳しい季節です。特にコーギーやダックスフントなど足が短い犬種は地面とお腹の距離が近いため、暑さを直に受けています。江口さんは「夏のお散歩は絶対といっていいほど、早朝か夕方、日が落ちてから行ってあげてください。犬は肉球にしか汗腺がないため、人間のように発汗による体温調節がうまくできません。暑い時期は想像以上の悪影響を受けているのです」と力をこめます。
住宅街では散歩の道がコンクリートの場合が多く、夏場は表面温度が60℃を超える場合があります。庭でも同様にコンクリート敷のところは高温になり、犬が肉球をやけどする危険があるのでコンクリートの上は歩かせないようにし、外飼いの犬の場合は熱中症の危険を考慮し、住環境を見直してあげましょう。
「肉球は地面に接する部分なので、一度やけどをしてしまうと治るまでに時間がかかるんです。そうして、傷ついた肉球から細菌が入って悪化してしまう場合もあるので、散歩の前には、地面を手のひらで触ってみるなど、裸足で歩いている犬の身になって気遣いをしましょう」
庭での熱中症対策も忘れずに
外で飼われている犬は、室内犬よりも外の環境に慣れているため、平然とした顔をしている子もいますが、近年の夏の暑さは危険レベル。夏場は熱中症に配慮して犬の住環境を見直してあげることが必要です。
外飼いの犬のための暑さ対策のポイントは2つ。まずは頭上から降り注ぐ太陽光を遮り、できるだけ日陰をつくりましょう。犬小屋の上をサンシェードで覆ったり、樹木があれば木陰になる場所へ小屋を移動してあげたりしましょう。環境省のデータによると、大きな樹木の木陰では、葉っぱの蒸散作用も手伝い、気温が同じでも体感温度は7℃程度低いという結果があります。
もう一つは地面の温度上昇をできるだけ抑えることです。コンクリートの地面は表面温度が高いだけでなく、赤外放射により周辺の外気温も上げてしまいます。同省のデータでは、気温が30℃でも赤外放射の影響を受けると体感温度は40℃程度になり、熱中症の危険があります。の犬小屋を設置する場所は、コンクリートや砂利敷きの地面ではなく、芝やグラウンドカバーで覆われている場所がよいでしょう。植物の蒸散作用によって地温が下がり、やけどの心配もなく過ごしやすい環境になります。
コロナ禍だからこそ庭で遊ぼう
なかなか落ち着かないコロナ禍の中、人間だけでなく、犬にもストレスを抱えている子は少なくないと思います。いつものドッグランに行けなくなったり、散歩で友達と会えなくなったり…。
コロナとの共存社会となったいま、「いかに我が家の庭を充実させるか」に思考をシフトさせている飼い主も増えてきています。
「つくる庭も犬種によってさまざまですが、例えば、一部でもドッグランに改装するのはおすすめです」と江口さん。室内や狭いケージの中で長時間過ごすことは犬にとってストレスです。開放感のある庭でのびのびと過ごせれば、犬にとっては最高のストレス発散になります。
ドッグランでは床材選びが重要ですが、上記のような夏の熱中症対策を考慮すると、天然芝など植物のグラウンドカバーは有効です。一方、人工芝は夏場、表面温度が高くなるので遊ばせる前に水を撒き、十分冷やすなどしてあげましょう。
「お散歩に連れて行く時間がつくれないときにも、お庭を走ったり歩き回ったりすれば運動不足を解消できます。室内犬でも、外に出て遊びたいものです。狭くてもいいので、家族である愛犬と楽しい時間を過ごせる場所があるといいですね」
愛犬の健康に、庭は深く関わっています。ご自宅の庭を見直してみてはいかがでしょうか。
Information
(一社)犬と住まいる協会 九州エリアマネージャー/㈱クラフト・リノベーションスタジオ
江口礼奈
https://www.instagram.com/claft_renovation.studio/
Credit
執筆/株式会社グリーン情報
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