日本一暑い街・埼玉県熊谷市にある『花音の森』には、エアコンがありません。光や風など自然をうまく活用することに加え、家の周りに木を植え日差しをコントロールし、一年中快適な住まい方にチャレンジしているところです。もうすぐ二度目の夏がやってきますが、木々の葉が順調に茂ってきているので、今年は去年より過ごしやすくなるのでは? と期待しています。そんな『花音の森』から、今回は、薪棚を草屋根にする施工の様子をお届けします。

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薪棚が草屋根になった経緯

日本一暑い街でエアコンに頼らないで暮らすことを考えると、窓・壁・屋根を直射日光から守ることが重要になります。そこで屋根は草屋根にしたい! と思い、『花音の森』の建築時に調べてみました。屋根を草で覆うことにより、屋根からの熱気や冷気をほとんど受けず、適度な湿気を保ってくれる作用が期待できるのです。

残念ながら費用の面で泣く泣く、家の草屋根計画は断念したのですが、その経緯を見ていた花音の森の造園施工チームが「薪棚の上、草屋根にできるよ」と言ってくれたのです。エアコンがないため、冬の暖房は薪ストーブ。その薪を貯蔵しておく棚があるのですが、ここの屋根を草屋根にしたら? という提案でした。

このような経緯があり、思っていたのと場所は大分違いますが、念願の草屋根を作ることになりました(笑)。

野に自然に生えたかのようになるかな?鳥さんの落とし物から小さな木が生えてこないかな?と妄想して、ラフスケッチを描いたりしました
野に自然に生えたかのようになるかな? 鳥さんの落とし物から小さな木が生えてこないかな? と妄想して、ラフスケッチを描いたりしました。

薪棚を草屋根にする施工の手順

それでは、草屋根の作り方をご紹介していきましょう。ポイントは、土の軽さと通気層です。経験がある方も多いかもしれませんが、水を含んだ土って、とても重くなりますよね。土がないと植物は根が張れませんが、屋根の面積と重さを考えると、総重量を軽めにしたいのです。あわせて、わざと土の中には枝葉や石などさまざまな素材を組み合わせ、通気の層を作っています。

通気の層

草屋根の排水ってどうなっているのか、気になりますよね。この波板部分が通気口でもあり、排水経路にもなっています。泥水が上から流れてくるのかしら? と心配される方もいるかもしれませんが、前述のように土の中は枝葉や石などいろいろな素材が層になっているため、それらによって、ろ過されたきれいな水が出てきます。

このほかにも、さまざまな素材によって生まれる土の中の通気層により、根が張りやすくなったり、じめじめを防ぐと同時に、適度な保水も可能になるなど、植物にとって好環境が整います。実際、想定していたより土の乾きが遅く、水やりに追われることはありません。

薪棚の草屋根施工① 土づくり

1. 石や炭をうっすら敷き詰めます。

石や炭をうっすら敷き詰めます。

2. その上に落ち葉を敷き詰めます。

その上に落ち葉を敷き詰めます

3. 最後に土をふんわり盛ります。

最後に土をふんわり盛ります。

平らに整地せず、わざとこんもり山を作るように表情を出しています。また、ふちに枝を置き、土が流れ出ないようにしています。山の中の土壌を再現しているようなイメージですね。ちなみに、手入れの際は屋根の上に乗って作業もしていますし、水やりは三脚を使用しています。はじめは怖かったのですが、大分慣れてきました(笑)。

薪棚の草屋根施工② 草花の種を播く

続いて、草屋根にどのように植物を植え込んだか、ご紹介します。

いろいろな種が1袋にミックスされた草花の種(ワイルドフラワーミックス)を用意しました。西洋のこぎり草、ディモルフォセカ、花菱草、ガザニア、アリッサム、シレネ、クローバーなど、乾燥に強くグラウンドカバー向きの草丈の低い一年草と多年草が混ざっているものです。

ケト土と培養土を混ぜて泥団子を作る

ケト土と培養土を混ぜて泥団子を作り、そこに草花ミックスの花の種をつけて準備します。

種をつけた団子を植え込みます

おおよそ30cmほど間隔をあけて、種をつけた団子を植え込みます。上からうっすら土をかけ、水をまいて完成。

種まきをしたのが、3月下旬。せっせと水やりを続けたのに、全然出てくる様子がなく、失敗したかも!? と焦りましたが、5月上旬になったら一斉に芽が出て、ぐんぐん大きくなってきました。

ブルーの「ファセリア」が咲きました

種まきから2カ月後、最初の花、ブルーの「ファセリア」が咲きました。なんだかとても嬉しい!

薪棚の草屋根施工③ 花苗を植え込む

薪棚の草屋根施工③花苗を植え込む

種から育てるものだけではなく、草花の苗も一緒に植え付けました。何しろ、屋根の上は過酷な環境で、暑さ寒さや風雨にさらされるので、どうなるかは未知の世界。実験も兼ねていろいろな植物を植えてみました。

タイムやいちごなどは順調

タイムやいちごなど、背丈が10cmほどで大きくなりすぎないタイプはとても順調でした。

一方、デルフィニウムなど背丈が30cmを超えるものは、枯れはしませんでしたが、庭植えと比較すると寿命が短めでした。屋根の上は土の厚みが15cmほどしかありませんから、根が張るために必要な土の量が足りません。通常、植物の根は上体部に対して1:1といわれます。つまり、土から上の植物の大きさが1だとすると、根も同じだけ伸びるスペースが必要ということです。

また、種から育てたものか苗か、一年草か多年草か、植え込みをする季節や気象条件によっても異なると思いますので、実験を続けていきます。皆さん、草屋根の続報をお楽しみに!

Credit

写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)

花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。

生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/

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