花の盛りが終わり「季節の端境期は庭風景が少し寂しくなる」という方におすすめしたいのが、明るい葉色や斑入りなど、彩りを添えるカラーリーフの樹木です。ここでは、オージープランツを100種以上育ててきた経験のあるガーデンプロデューサーの遠藤昭さんに、庭の景色づくりに役立つ、育てやすいカラーリーフの樹木を教えていただきます。
目次
葉を愛でる庭づくり

多くの日本の家庭の庭では、初春の梅やミモザの開花に始まり、春から初夏にかけては、椿、アメリカハナミズキ、ツツジ、バラ、アジサイと、次々とバトンタッチするように花が咲く花木が植えられています。5〜6月の華やかなバラやアジサイの季節が過ぎると開花は一段落。少し庭の様子も寂しくなるなぁと感じている方がいらっしゃるかもしれません。そんな梅雨以降に活躍するのが「カラーリーフ」の樹木たちです。

25年以上前になりますが、ガーデニングに興味を持ち始めてから、海外の園芸雑誌を購読するようになりました。それは、例えば英国王立園芸協会が発行する『The Garden』や、アメリカの『fine Gardening』です。そうした雑誌に紹介される庭は、日本の園芸雑誌に登場する庭と大きく違うことに、ある時気がつきました。日本の雑誌では「花いっぱい」や「バラいっぱい」の庭が情報の中心でしたが、海外の雑誌の庭は緑がいっぱいで、植物の表情が豊かでお洒落に感じたのです。
イギリスの庭を見て感じたこと

雑誌を見比べて思ったことは、実際にイギリスの庭巡りをした時にも感じました。
訪れたのは6月で、バラが終わりかけていた季節でしたが、「ヒドコート・マナー・ガーデン」のボーダーは、花が少ないのに、とてもお洒落で表情豊かだったのです。

もちろん、それは庭の広さの違いが大きな原因の一つなのは明らかではありますが、海外の庭には、カラーリーフの樹木や、カラーリーフの下草、グラス、羊歯など、いわゆる「葉物」がたくさん使われていることに気づきました。日本でも、ガーデニングブームによって、カラーリーフが庭や寄せ植えに多く使われるようになりましたが、ここで改めて、僕が20年余り育ててきた、おすすめのカラーリーフをご紹介したいと思います。
自宅の庭を彩るカラーリーフ

我が家のカラーリーフは、大きく2つのグループに分けることができます。
【グループ1】イングリッシュガーデンなどに見られる、しっとりお洒落なカラーリーフ
【グループ2】ドライでカッコイイ、オージープランツ系
この2つのグループに分けて具体的にご紹介しましょう。
おすすめのカラーリーフの庭木
【グループ1】しっとりお洒落なカラーリーフ編
①ネグンドカエデ‘フラミンゴ’

学名:Acer negundo ‘Flamingo‘
北アメリカ原産で、カエデ科の落葉樹です。
魅力は何といっても、新緑の季節の美しいピンク色の新芽。そして、斑入りの白い部分が多いことから、茂っても明るく、軽やかな印象です。
日本古来の庭木、例えばモッコクや椿、シラカシなどは、成長すると庭を暗くしてしまいます。和風の古い庭をリニューアルして洋風にするなら、この’フラミンゴ’は、おすすめの樹木です。

暑さ寒さに強く、僕の庭歴20年間で病害虫も発生せず、半日陰でも育っています。「庭が暗いなあ~」と感じたら、この明るいネグンドカエデ‘フラミンゴ’を植えてみましょう。
成長が早いので、夏に木陰や隣家との目隠しが欲しいという方にもぴったりです。ただし、成長が早いということは、剪定もきちんとする必要があります。休眠期の12~2月頃に剪定をします。場合によっては、5~6月頃に軽く剪定すると、もう一度ピンクの新芽が楽しめます。地植えの場合、施肥は必要ありません。
②斑入りセンダン‘フラッシュ・ダンサー’

学名:Melia azedarach ‘Flash Dancer’
斑入りのセンダンですが、本品種の育種者が、「“斑入りセンダン”と呼ばないでほしい! 大きな葉が風になびく姿は、まさにダンシング!」とのことで、フラッシュ・ダンサーと呼んでいます。とても明るく素敵な樹木です。フラッシュ・ダンスって、中高年の方は、青春の映画を思い出して、体を動かしたくなりますね。

センダンは落葉高木ですが、斑入りのこの品種は成長が遅く、狭い庭には最適です。街中であまり見かけることもなく、とてもお洒落感のあるカラーリーフの庭木です。
③ナンキンハゼ‘メトロ・キャンドル’

学名:Sapium sebiferum ‘Metoro Candel’
トウダイグサ科ナンキンハゼ属の落葉高木です。
5月の新緑はライムイエローの葉ですが、6~7月には新芽が赤く色づき、まさにキャンドル。驚異的に美しいカラーリーフです。秋には紅葉します。春から秋まで、変化しながら素晴らしい色彩を放つカラーリーフです。

我が家では、6~7月のキャンドル状態が2階のテラスからよく見えるように、3~4mの高さに育てています。
よそではめったに見かけないので、ちょっと自慢できる木です。
④ネムノキ‘サマー・チョコレート’

学名:Albizia julibrissin ‘Summer Chocolate’
えっ? サマー・チョコレートって、夏の冷菓? と思わせるネーミングですが、銅葉のネムノキです。
20年ほど前にブームになった、銅葉植物の代表選手です。当時、インターネットによるガーデニングの世界で話題になった品種で、かなり高価でしたが購入してしまいました。ずっと鉢植えで育てていて、2年前に地植えにしましたが、まだ樹高2m程度です。

「黒い葉=暗い」と思われるかもしれませんが、シルバーリーフとの相性や、他の花を引き立てるには素晴らしい色彩です。
以上が、我が家で20年以上、共に生き、潤いを与えてくれ、また時には癒やしてくれているカラーリーフの庭木です。
おすすめのカラーリーフの庭木
【グループ2】オージープランツ編

さて、我が家にはもう一つ、趣を異にするドライでカッコイイ系のカラーリーフのグループがあります。それは、これまでも多数ご紹介してきたオーストラリア原産の植物「オージープランツ」です。オージープランツは個性的な花が多いですが、葉も個性的でカッコイイのです。

春にオージープランツで寄せ植えを作りましたが、花のみならず、葉にも注目してみてください。特に、エレモフィラ・ニベアや、ピティロディア‘フェアリーピンク’の銀白色の葉は、他にはない魅力的な色合いですね。
我が家の庭から、オージープランツの葉を集めてみました。
比較的小さな葉のオージープランツ

左上から
1.ユーカリ・シデロキシロン・ロゼア
2.ユーカリ・ポポラス
3.ユーカリ・マクロカルパ
4.パールアカシア
5.アカシア・コベニー(ブルーブッシュ)
6.アカシア・ブアマニー
下の段の左から
7.ピティロディア‘フェアリーピンク’
8.ウエストリンギア
9.エレモフィラ・ニベア
10.ピンクの花をつけた斑入り葉のクロウエア
11.表と裏の葉を並べたコースト・バンクシア
12.レモンマートル
13.実を付けたドドナエア
14.黄緑色の葉、メラレウカ‘レボリューション・ゴールド’
15.右隣はメラレウカ‘レッドジェム’
16.斑入りはミントブッシュ
それぞれに、とても明るい色合いですね。

ユーカリのシルバーリーフは人気ですが、ポポラスの葉はハート形で可愛いですね。

ユーカリのマクロカルパは巨大な花も有名ですが、ホワイトシルバーの大きな葉もとても魅力的です。


従来、アカシアといえばミモザのことで、ネムノキを思わせる葉でした。しかし最近は、シルバーリーフのパールアカシアや、ブルーがかったブルーブッシュなど、葉を楽しめる品種が人気上昇中です。庭に植えると、とても明るく映えます。

ピティロディア‘フェアリーピンク’の葉も白く、初めて見た時は驚嘆しましたね。

エレモフィラ・ニベアは20年くらい前から日本に出回り始めました。当時の私は、初めてその姿を見て、あまりの美しさに感動し、数分間放心状態になってしまいました。

ウエストリンギアは、斑入り品種が多く流通していて、最近は庭の低木として人気が高まっています。
個性的な葉が魅力のグレヴィレア

次は、グレヴィレア3種です。先にご紹介したように、オージープランツにはシルバー系が多いので、普通の緑がかえって新鮮ですね。グレヴィレアは葉の色よりも個性的な形に注目です。
17.表裏2枚並べたグレヴィレア‘ムーンライト’。太陽が当たるとシルバーに光ります。
18.ギザギザの葉は、グレヴィレア‘ロビンゴードン’。‘ココナッツアイス’や‘ピーチ&クリーム’も、ほぼ同じ葉です。
19.グレヴィレア・ロブスタ
ご覧の通り、それぞれ花のない時期でも葉が楽しめます。

バラの花にも負けないほど豪華な花の‘ムーンライト’。最近、人気急上昇です。

‘ムーンライト’の葉は、太陽に当たるとシルバーに光り、青空に映えます。

人気絶頂のグレヴィレア‘ロビンゴードン’。オージープランツの中でも一番人気で、花とともに、葉も個性的で注目です。
巨大葉ディクソニア・アンタクティカ

そして、オージープランツらしい写真の巨大葉は、ディクソニア・アンタクティカです。
太古の昔から悠久の時を経て、磨き抜かれた美しさです。我が家の羊歯は、胞子から育てて25年になります。

小さな庭に葉を広げて存在感を発揮するディクソニア・アンタクティカ(中央)。右手前のブルーブッシュ、ニューサイラン、左奥にこんもり茂るメラレウカ‘レボリューション・ゴールド’などと組み合わせると、ワイルドでカッコイイ庭風景に仕上がります。

1枚の葉の長さは、なんと僕の背丈を超す約2m! こんなに巨大ですから、存在感を発揮するのもご納得いただけるかと思います。
コルディリネとニューサイラン

最後にご紹介するのは、最近人気のコルディリネとニューサイランです。厳密にはほとんどがニュージーランドの原産で、葉は非常に似ていますが、性質の違いで2種を見分けることができます。その違いは、幹が育って樹木になるのがコルディリネで、ニューサイランは幹ができない多年草ということということ。
左から4枚がコルディリネで、右から5枚がニューサイランです。
20.コルディリネ‘トーベイダズラー’
21.コルディリネ・オーストラリス
22.コルディリネ‘エレクトリックピンク’
23.コルディリネ‘レッドスター’
24.ニューサイラン‘レインボークィーン’
25.ニューサイラン‘ブラックアダー’
26.ニューサイラン‘ピンクストライプ’
27.ニューサイラン・バリエガータ。葉の長さが2m以上に成長する大型の品種です。
この葉姿を持つコルディリネやニューサイランは、シャープでスタイリッシュな庭を演出してくれます。

我が家のフロントの花壇スペースは60×250cm程です。
コルディリネやニューサイランは、このような狭いスペースでもカッコイイ植栽ができるのが魅力です。
上写真の花壇には、コルディリネ2種とニューサイランを3種4株植えています。他にアガベ4種を植えたドライガーデン風ですが、日本の四季の変化のよさも意識して、季節感を出すために、ジャカランダやグレヴィレア、リューカデンドロン、そしてカンガルーポー、ヘメロカリスなども植えています。
オージープランツは個性的で、葉の形と色合いもさまざま。それらを組み合わせることで、今までのガーデニングとは趣向の異なる楽しみ方もできます。創造性と可能性に満ちた、オージーガーデニングを始めてみませんか?
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -

えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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