バラを育てる人にとって、一年で一番喜びの多い季節が駆け足でやってきました。2021年のバラの最盛期、皆さんはどう過ごされたでしょうか。2020年の冬に多くのバラを移植して、2度目のバラの開花シーズンを迎えた神奈川県在住「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんの庭を彩った大活躍のバラの品種を教えていただきます。
目次
過去最高に早く咲いた2021年のバラたち
今年の春のバラの一番花の時期も、そろそろ終わりを迎える頃となりました。皆さんのお庭の春のバラは、いかがでしたでしょうか?
例年より約3~4週間も早く咲き始めた今年のバラたちでしたが、何処も花付きがよく、今年はバラの当たり年でもあったようです。
さて、今回は、以前の庭から移植し、15カ月目を迎えた今年5月の私の庭のバラたちの様子をご報告いたします。移植当時、「植栽計画図」を作成し、おおむねその通りに植栽したバラたちが、2回目の春を迎え、株も大分充実し、花数を増やしてくれました。
移植したバラを枯らさないように育てるということが第1目標だった昨年の庭に、今年は、新たに購入したバラも加わり、バラがメインの小さな庭は、ますます狭くなってしまいました。
【エリア1】門・エントランス周りのバラたち
門の西側のフェンスに誘引したバラや、エントランス付近のバラは、門柱のタイルの色に合うよう、黄色~アプリコット~白の花色のバラを配置しました。
壁面に誘引した‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’(R/1916年/フランス/Eugène Turbat & Compagnie作出)は、大変花付きがよく、スパイシーな香りに、ミツバチたちも集まっていました。
アプリコット色の‘アブラハムダービー’(S/1985年/イギリス/David Austin作出)と、その後ろはクリーム色の‘クロッカスローズ’(S/2000年/イギリス/David Austin作出)。
玄関前には、黄色の‘ゴールデン・ボーダー’(F/1993年/オランダ/Verschuren社作出)と白の‘スノーグース’(S/1996年/イギリス/David Austin作出)の組み合わせ。
【エリア2】中庭のバラたち
エントランスから、右側(東側)にあるバラの中庭へのアプローチ。芝の緑と、ジギタリスやオルレアの草花がバラの彩りを引き立ててくれました。
エントランスから中庭へ進むと、ピンクや赤の強い花色が庭の印象を変えてくれています。右手にはアーチのあるディスプレイコーナー。左奥は、サンルームがあります。
バラの花壇の‘マサコ(エグランタイン)’(S/1994年/イギリス/David Austin作出)は、白い小花のオルレアとハーブのヤロウなどが咲き競って、優しい景色にうっとり。
バラの花壇の後方に植栽した‘バレリーナ’(HMsk/1937年/イギリス/Bentall作出)。
【エリア3】サンルームを囲むバラたち
窓を開け放てば、バラの香りを全身で浴びることができます。身近に楽しめるようにと、サンルームを取り囲むようにバラを植栽しました。
サンルームの正面に備えた南側アーチには、‘フランソワ・ジュランヴィル’(R/1906年/フランス/Barbier Fr res & Compagnie作出)を「しめ縄仕立て」に誘引しました。
サンルームの前は、地植えしているバラの前に鉢植えのバラを置き、いつでもサンルームから花咲く姿が見られるように、鉢植えを置き換えながら楽しみました。
【エリア4】公道側の花壇のバラたち
樹木に絡ませた‘ポールズ・ヒマラヤンムスク’(R/1916年/イギリス/George Paul作出)と、その手前下には「バラ摘みコーナー」として植栽した‘マイカイ’(Ch)と食香バラ‘豊華’(Ch)。白と赤のメリハリのあるカラーリングです。
‘マイカイ’と‘豊華’は、どちらも中国原産のバラで、古くから薬用や食用に栽培されてきました。中央が‘マイカイ’で、左右に‘豊華’を1株ずつ植栽。
朝のバラ摘みは、この季節の楽しい日課となりました。
公道に面した南西の一部のコーナーは、常緑樹の後ろ側になるため、あまり日光が当たらない場所です。そのため、白いテーブルやイス、アーチを置き、移動できる鉢植えのバラのコーナーとしました。赤紫のバラは、‘ミステリューズ’(F/2013年/フランス/ドリュ作出)。
【エリア5】公道に面したフェンスを彩るバラたち
南側の公道に面した白いフェンスには、花がたくさん咲き、うつむいて枝垂れるようなつるバラやランブラーローズを選びました。
手前は、花もちがよく、中輪の花が房咲きになる‘ジャスミーナ’(Cl/2005年/ドイツ/コルデス作出)、奥の白い中輪房咲きのバラは、‘ボルティモア・ベル’(R/1843年/アメリカ /Samuel Feast作出)。
エントランスそばのフェンスの角地には、‘メイ・クイーン’(R/1898年/アメリカ/Dr. Walter Van Fleet作出)が、たくさんのつぼみをつけて、以前の庭にあった頃と変わりない姿で咲き誇りました。
春、我が家で最後に咲き始めるのは、ロサ・ムルティフローラ・アデノカエタ(別名:ツクシイバラ)(Sp)。暖地を好むバラなので、西日が当たる明るく暖かい場所に植栽しました。
バラ開花後の最初の作業「花がら摘みと剪定」
1枝に何輪か咲いたバラも、花がらを徐々に取り除き、最後の1輪もそろそろ取り除く時期となりました。
5枚葉の上で枝を剪定しておけば、四季咲き性のバラは、そこから芽を伸ばし、二番花を咲かせてくれます。
2021年の春を振り返って
今年は、とにかく冬~春にかけて高温の日が多く、バラは、今までで一番早い開花となりました。その現実に、なかなかこちらの頭や体が付いていけず、困惑の中、バラのシーズンを迎えたように思います。
しかしながら、昨年に続き、新型コロナウイルスの影響で、自由に行動ができない中であっても、バラは花を咲かせ、今年も確実に元気や勇気、癒やしを与えてくれました。
どんな時代、どんな環境でも、気高く咲いて、優しく微笑みかけてくれる存在。改めて、バラという植物の偉大さを見つめ直した今年の春だったかと思います。ちなみに、今年の春の私の庭のバラたちの満開日は、5月12~14日であったように思います。さて来年は、どうなることか、引き続き、バラと共にある暮らしを続けて参ります。
バラの最盛期に開催したバーチャルオープンガーデン
5月12日(水)15時より、神奈川県にある元木はるみさんのバラ咲く庭から中継でオンラインオープンガーデンを開催しました。無農薬~低農薬栽培でバラを育てて、花びらやローズヒップを暮らしに活用している元木さん。仕立て方のテクニックやお気に入りの品種などをご紹介いただきました。また、当日はサンルームにバラのプチパーティーのテーブルセッティングも登場! バラのおもてなしのこだわりも教えていただきました。ぜひ、ご覧ください。
YouTubeライブ配信URLはこちら
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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