実録! バラがメインの庭づくり第16話「早咲きのバラと一番花の楽しみ方」
いよいよバラの開花シーズンが到来! 今年は例年以上に開花のスタートが早い地域が多いようですね。いち早く咲き始めた「早咲きのバラ」22種と、その花の楽しみ方について、神奈川県在住で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんに教えていただきます。
目次
これまでで一番早いバラの開花
3月も4月も高温の日が多く、今年のバラの一番花は、今までで最も早い開花となりました。
関東に住む私の周辺でのバラの開花は、例年、4月下旬~5月上旬頃に早咲きが咲き始め、5月中旬頃にほとんどのバラが満開となり、そして、5月中旬以降は遅咲きのバラが咲き始めるというスケジュールでした。
しかしここ数年は、毎年開花が早くなっているようで、特に今年は、4月中旬頃には関東地方では早咲きのバラが満開となるなど、その傾向が顕著となりました。
今回は、特に早い開花となった早咲きのバラにスポットを当てて、どんな品種があるかを、ご紹介します。
バラの季節の始まりを告げる早咲きのバラたち
1.ロサ・バンクシアエ・ルテア
キモッコウバラでお馴染みのこちらの黄色の八重咲き種は、白のモッコウバラより数日早く開花し、あちらこちらで、日本のバラの季節の始まりを告げてくれます。
2.ロサ・バンクシアエ・バンクシアエ
白の八重咲き種のこちらのバラは、1807年に、英国のキュー王立植物園園長ジョセフ・バンクスの下で働くウィリアム・カーが、中国広東省付近で発見し、ヨーロッパに初めて紹介しました。
3.ロサ・バンクシアエ・ルテスケンス
黄色の一重咲き種のこちらのバラは、ロサ・バンクシアエ・ルテアの枝変わり品種といわれています。
4.ロサ・バンクシアエ・ノルマリス
5.ロサ・ラエウィガータ
中国原産で、一説には、難波商人によって日本へ持ち込まれたために「ナニワイバラ」と呼ばれるようになったとのことです。花は大輪の白の一重で、株は大変大きく育ちます。大きな艶のある葉は常緑で、冬には落葉しませんが、春に花が散る同じ頃、古い葉を落とします。
6.ロサ・ラエウィガータ・ロゼア
花は大輪のピンクの一重咲きで、ナニワイバラの変種といわれています。主に、埼玉県鳩ケ谷市で生産販売されたために「ハトヤバラ」と呼ばれます。
7.ロサ・キネンシス・スポンタネア
長い間、「幻のバラ」であったこちらのバラは、日本人植物学者の荻巣樹徳氏によって、1983年、中国四川省で発見され、中国のバラの基本種の一つとして野生種の意味である「スポンタネア」が名前になりました。上写真のような濃い赤橙色のものや、以下の写真のように薄いピンク色のもの、また他にもさまざまな花色があります。
8.ロサ・キネンシス・オールドブラッシュ
18世紀後半から19世紀前半にかけて、中国からヨーロッパに渡った代表的な4品種のうちの一つで、このバラが主に四季咲き性をヨーロッパのバラにもたらしました。英国人のジョン・パーソンズが栽培に成功し、‘パーソンズ・ピンク・チャイナ’と呼ばれ、‘オールド・ブラッシュ’の名で広まりました。
9.‘マイカイ’
香りの素晴らしい‘マイカイ’の花が咲くと、その花弁を利用したローズティーをいつも楽しんでいます。中国では、「マイカイ」という名称はバラの代名詞としても使われ、古くから観賞だけでなく食用や薬用に利用されてきました。
10.‘サフラノ’
剣弁のセミダブルの花は、細い枝によくマッチして、優し気な雰囲気です。明治時代、日本で「西王母」という名で流通していました。
11.リージャン・ロード・クライマー
1993年に、イギリス人によって中国雲南省の麗江路 (リージャン・ロード)で発見されました。大株に成長し、開花時期は圧巻の風景です。
12.‘ソンブレイユ’
中~大輪のアイボリー色のロゼット咲きの花は大変美しく、秋にも返り咲きます。
13.ロサ・ユーゴニス
アメリカの絵本作家で挿絵画家、園芸家でもあったターシャ・テューダーが、3歳の時、電話を発明したベルの庭で見かけ、植物に惹かれるきっかけとなったバラです。レモン~クリームイエローの一重の花を、枝に並ぶように咲かせます。1899年、ヒューゴー神父が中国北中部から、イギリスのキュー王立植物園に種子を送ったといわれています。
14.‘カナリーバード’
謎の起源のバラですが、交配親は、13番に紹介したのロサ・ユーゴニスと、ロサ・クサンティナではないかと推測されています。枝に並ぶように咲く、明るい一重のレモンイエローの花が一際目を引く品種です。
15.ロサ・ムルティフローラ
淡いピンクがかったつぼみから白い小輪の5弁の花を咲かせます。日本各地の山野に自生し、バラの台木として利用されています。
16.ロサ・アシクラリス
花径5cm程の紅紫色の一重咲きで、東アジアの冷涼な場所や高山に自生します。
17.‘スパニッシュ・ビューティー’
大輪の花を俯き加減に咲かせる姿は、まるでドレスのようでエレガントです。
やや早く咲き出すバラたち
18.‘ベルベティ・トワイライト’
光沢のある波状弁のワインレッドの美しい花は、ガーデン&プロダクトデザイナーの吉谷桂子さんへ捧げられ、命名されました。豊かなダマスク香も魅力的。
19.‘ローズ・ポンパドール’
ロココ時代のルイ15世の公妾、ポンパドール夫人に捧げられたバラ。豊かなフルーティーな香りで、ボリュームのある花を咲かせます。我が家では、フェンスを支えにして咲かせています。
20.‘ナディーナ・エクセラリッシ’
花は、アプリコットイエローの中心から外側に向かってアイボリーの花弁が重なり、美しいロゼット咲きに変化します。爽やかなフルーティー香です。
21.‘オリビア・ローズ・オースチン’
愛らしいピンクの花色に、育てやすい樹形、今の庭では花壇の前側を優しく彩ってくれていますが、鉢植えでもよく咲いてくれました。
22.‘ウィンチェスター・キャシードラル’
ピンクがかるつぼみから、アイボリーの緩やかなロゼット咲きの花を咲かせます。1983年に作出された‘メアリーローズ’の枝変わりです。同じく枝変わりの‘ルドゥーテ’とこちらのバラの3品種とも、他のバラに比べてやや早くに咲き出します。
早く咲いた一番花の楽しみ方
早いとはいえ、待ちに待ったバラの季節の始まりを告げてくれる庭の一番花の開花は、本当に嬉しい気持ちにさせてくれます。
そのまま、咲いている姿を眺めたり、写真を撮ったり、絵を描いたりとさまざまな楽しみ方があるかと思いますが、もし部屋に飾る場合は、これから咲くつぼみを株に残して、咲いた花と花茎部分だけを切り取って飾るようにしたいものです。
飾り方1 水を張ったトレイに、置いて並べるだけの簡単アレンジ
庭で咲いている草花をプラスし、2段重ねにしてみました。写真のバラは、‘ウィンチェスター・キャシードラル’、‘レーヌ・デ・ヴィオレッタ’。
飾り方2 ティーカップに浮かべる
カップに持ち手がついているので、バラを顔の近くまで運び、香りや花色を間近で楽しむのにとても便利です。写真のバラは、‘エレン・ウィルモット’。
飾り方3 器に浮かべる
自分の感性に合った器とのマッチングを自由に楽しみましょう。写真は、コデマリとバラ‘レーヌ・デ・ヴィオレッタ’。
飾り方4 リース形のオアシスに挿す
バラの一番花と庭の草花を詰め込んで、植物が与えてくれる幸せな一時を味わいましょう。写真のバラと庭の草花は、飾り方1と同じです。
早く始まった今年のバラの季節、心ゆくまで楽しみたいですね。
5月12日(水)15時〜 オンラインオープンガーデン配信!
5月12日(水)15時より、神奈川県にある元木はるみさんのバラ咲く庭から中継でお届けします。無農薬~低農薬栽培でバラを育てて、花びらやローズヒップを暮らしに活用している元木さん。仕立て方のテクニックやお気に入りの品種などをご紹介いただきます。また、当日はサンルームにバラのプチパーティーのテーブルセッティングも登場! バラのおもてなしのこだわりも教えていただきます。
参加をご希望の方は、下記のクラブ会員サイトよりお申し込みください。
●ガーデンストーリークラブについてのご案内はこちらのページをご覧ください。
また、ガーデンストーリークラブ会員以外の方も、オンラインオープンガーデンの様子をYouTubeの同時ライブ配信でご覧いただけますので、どうぞお楽しみに!
YouTubeライブ配信URLはこちら→https://youtu.be/CNwc1siema0
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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