ビオラとチューリップの寄せ植えで春の庭を華やかに
ひと雨ごとに、草木の緑と春の花が彩りを増す3月。神奈川県横浜で、小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんの庭では、昨秋にビオラと寄せ植えしていたチューリップの球根が、いよいよ開花の時を迎えます。ビオラとチューリップは、続々と新品種が増えるので、毎年、組み合わせに迷いますが、それも寄せ植えの楽しいところ。ひと鉢ごとに違った色合いと雰囲気を味わえるのも魅力です。今回は、これまでに作ったビオラとチューリップの寄せ植えをご紹介いただきます。
目次
心躍るフルーティーな寄せ植え
一つ目は、ビオラ‘ピーチブロッサム’とチューリップ‘アプリコットビューティー’の寄せ植えです。
ビオラ‘ピーチブロッサム’を初めて目にした時、やわらかなアプリコットピンクの花色と、イメージにピッタリの愛らしい名前にひと目惚れしました。その時、頭の中にパッと浮かんだのが、チューリップ‘アプリコットビューティー’。‘ピーチブロッサム’と同系色で、何度も地植えしてきた大好きな品種です。「ピーチ」と「アプリコット」、フルーツ繋がりの寄せ植えも面白いなと思いました。
そして、植え付けから約半年。待ちに待ったビオラ‘ピーチブロッサム’とチューリップの‘アプリコットビューティー’の競演は、イメージ通り甘い香りが辺りに漂うようなフルーティーな彩り。ふんわりやさしい色合いが、黄緑色の若葉に染まったヤマボウシの木漏れ日によく似合います。やっぱり春は、こんな色合いの寄せ植えがあると、庭の景色はもちろん、気持ちも明るくなりますね。
この‘ピーチブロッサム’と‘アプリコットビューティー’のように、ビオラとチューリップはフルーツやスイーツにちなんだ名前が多いので、他の組み合わせも試してみたいと思っています。
おしゃれなニュアンスカラーの寄せ植え
ここ数年、大人気のビオラ‘ヌーヴェルヴァーグ’。わたしも大好きなこの品種の魅力は、何といっても一つとして同じ花色がない種類の豊富さと、美しいニュアンスカラーです。聞くところによると、その種類は何と200種類以上だとか。どの花も、見れば見るほど例えようのない魅力的な色をしています。
そして、この‘ヌーヴェルヴァーグ’と似た雰囲気のパンジーが‘ローブ・ドゥ・アントワネット’。こちらもニュアンスカラーが美しい品種で、しかもフリル咲きの大輪花。華やかでエレガントな佇まいにうっとりします。
そんな魅惑的なビオラとパンジーに合わせたチューリップが、‘カフェ・ノアール’と‘ラ・ベルエポック’です。‘カフェ・ノアール’は、名前通りブラックコーヒー色の一重咲き。‘ラ・ベルエポック’は、ミルクティー色の八重咲きです。チューリップといえば、明るいパステル調のイメージですが、これらは、どこか神秘的で憂いのある花色です。
じつは、これまで大輪花の八重咲きチューリップは、存在感がありすぎて寄せ植えには不向きだと思っていました。けれども、この‘ラ・ベルエポック’は他の花ともよく調和し、ニュアンスカラーに華やぎを添えてくれます。
さらに、コロンとした丸いつぼみ、ふくよかな花も整然として、最盛期から散り際まで、どの過程も見惚れる美しさ。切り花にすると、薔薇か芍薬のようです。八重咲きチューリップにこんなに魅了されたのは初めてかもしれません。
そういえば、この寄せ植えにセレクトしたビオラとチューリップは、‘ヌーヴァルヴァーグ’、‘ローブ・ドゥ・アントワネット’、‘カフェ・ノアール’、そして‘ラ・ベルエポック’。偶然にもフランス、パリをイメージする名前でした。誰もが憧れる「花の都パリ」。心を虜にされるのも納得です。
シックなダークカラーの寄せ植え
そして、最後にご紹介するのは、毎年欠かさず作っているダークカラーの寄せ植えです。
ダークカラーのビオラの品種といえば、‘ブラックパール’。園芸店で見かけると、迷わず手にとってしまうほど大好きなビオラです。限りなく黒に近い濃紫の花色は、小花ながら存在感も抜群です。
そして、この‘ブラックパール’に合わせるのが、やや明るめの同系色のビオラと、先にご紹介した‘カフェ・ノアール’や‘クイーン・オブ・ナイト’といったブラックチューリップ。
そして、‘フレミングフラッグ’や‘レムズ・フェイバリット’の筋入りチューリップです。この筋入りチューリップを合わせると、ダークカラーに程よいアクセントが加わり、洒落た雰囲気に。シックで落ち着いた色合いが、春の庭でひと際目を引きます。
また、このダークカラーの寄せ植えには、グレイッシュな鉢を用いるのが、ちょっとしたこだわりです。というのも、以前、テラコッタの鉢に植えたら、花と鉢の色合いがアンバランスでしっくりこなかったから。寄せ植えは、つい、花の組み合わせに気を取られがちですが、鉢の色との調和もとても大事ですね。
庭の其処此処で、うららかな春の陽射しを浴びて咲くビオラとチューリップの寄せ植え。
それはまるで、春の歓びを束ねた花束のようです。
Credit
写真&文 / 前田満見
まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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