フランス語で「好きなものを寄せ集めて、新しいものを作る」を意味する「ブリコラージュ」の寄せ植えは、いくつかの苗をブーケのように束ねて植え付けるという独特の方法で、花々の「可愛い」をバスケットやリースのなかに表現します。写真家でエッセイストの松本路子さんが、「アトリエ華もみじ」の小森妙華さんが作るブリコラージュフラワーの魅力と作り方などをレポートします。
目次
寄せ植えリースとの出会い
昨年末に、花苗を寄せ植えしたクリスマス・リースを見かけた。バラの花のような葉牡丹を中心に、紫色のビオラや白色のアリッサムを配したパステルカラーのリースは、楚々として、また華やかなものだった。
リースの作り手は、福岡県で鉢花の販売や寄せ植え教室を主宰している「アトリエ華もみじ」の小森妙華さん。東京の多摩地区、東久留米市にある「秋田緑花農園」でも寄せ植えのワークショップを開いていると聞き、さっそくお話を伺いに農園を訪れた。
小森さんは鉢物の植物の根と土をほぐし、いくつかの苗をブーケのように束ねて植え付ける独特の方法を用い、それをブリコラージュフラワーと名付けている。ブリコラージュとは、フランス語で「好きなものを寄せ集めて、新しいものを作る」という意味だという。
ブリコラージュフラワーの作り方
- まずは自分がアレンジしたい全体のイメージを描き、花苗を選ぶ。
- 同時に、陶器鉢、リース、バスケットなど、どんな器に植え込むかを考える。
リースは市販のリース台を、またバスケットは水に強いアラログラタン製がおすすめ。 - 器(ここではリースとバスケット)の底に、ヤシの実チップの植え込み材「ベラボン」を敷き詰める。
- ポットから苗を抜き出し、土と根をほぐす。根の周りに直径3〜4cmほどの土を残した苗のいくつかを、手に持てる大きさに束ねる。その時、花や枝の向きや色彩のバランスなどを整える。
- 手の中で苗をブーケのように束ねたら、根株の周りが崩れないように長めの水苔をギュッと巻き付ける。
- 直径35cmのリース台には小さめのブーケを9個、バスケットには大きさに合わせて、ブーケを作りながら植え付けていく。
- 全体を植え付け終わったら、軽く土を押さえて器に馴染ませる。余分な茎や葉を取り除き、姿を整える。
- 最後に、たっぷりと水を与える。
ブリコラージュフラワーの育て方
リースやバスケットに植えた植物は日々成長し、表情を変えてゆく。冬に植え付けた苗は、春の訪れとともに大きく伸びをするように花茎や葉を広げ、4月頃まで楽しむことができる。
【育て方ポイント①】
水やりは2、3日に1回を目安に行う。リースはバケツに水を入れ、底の部分を5分ほど浸すとよい。気候や置き場所などの条件にもよるので、乾燥や水のやりすぎに注意する。
【育て方ポイント②】
ゆっくりと成長させたいので、肥料はあまり与えない。ビオラやペチュニアなど生育が旺盛な植物のために、月に1回、液体肥料を与える。
【育て方ポイント③】
寄せ植えを長く楽しむために、咲き終わった花がらを摘み取り、傷んだ葉などは取り除く。
「可愛い!」を連発
今回、作り方を見せていただいたバスケットの寄せ植えは、大きめのブーケを2個使っている。苗は黄色のプリムラ・ジュリアン、ニオイスミレ、ムスカリ、イベリス、ビオラ、スカビオサ、ジャスミンの葉。
想像以上に大胆に株を分け、土を落とすが、根の先端を残すことがポイントだろう。作業は慣れないと案外難しいかもしれない。小森さんは手際よく花苗のアレンジを作りながら、「ああ可愛い、可愛い」と草花に声をかけている。花を励ましているようにも、また自分の気持ちを花に向かって集中させているようにも思える。
「自分が愛しいと思った花を集め、弾む気持ちで作った作品でないと、人の心に響くものはできない」と語る。まずは「好き」という気持ちを大切にして、自分の心に素直に向き合うことが第一歩。そうすることで、選んだ花の色や形のアレンジが、折々の自分を表現することにつながっていくのだろう。
小森さんの寄せ植えからは、柔らかな春の日差しや、野原を吹き渡る風が感じられる。植物の声を聴き、絵を描くようにブーケを束ねる。それが新たな世界を作り出しているのだ。こんな寄せ植えリースやバスケットを部屋の窓辺に置くことができたら、風景が変わって見えるかもしれない。
Information
アトリエ華もみじ
福岡県大野城市下大利3-2-22
電話:092-558-6288
Email:support@hana-momiji.net
HP:https://www.hana-momiji.net
福岡、大阪、東京でのワークショップのお問い合わせ
Email :lesson@hana-momiji.net
写真協力
アトリエ華もみじ(*)
Credit
写真&文 / 松本路子 - 写真家/エッセイスト -
まつもと・みちこ/世界各地のアーティストの肖像を中心とする写真集『Portraits 女性アーティストの肖像』などのほか、『晴れたらバラ日和』『ヨーロッパ バラの名前をめぐる旅』『日本のバラ』『東京 桜100花』などのフォト&エッセイ集を出版。バルコニーでの庭仕事のほか、各地の庭巡りを楽しんでいる。2024年、造形作家ニキ・ド・サンファルのアートフィルム『Viva Niki タロット・ガーデンへの道』を監督・制作し、9月下旬より東京「シネスイッチ銀座」他で上映中。『秘密のバルコニーガーデン 12カ月の愉しみ方・育て方』(KADOKAWA刊)好評発売中。
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