バジルの一種・ホーリーバジルは、健康維持に役立つ作用がある「ハーブ」で、様々な用途があります。人気があるハーブですので、自宅で育ててみたいと思っている人も多いのではないでしょうか? この記事では、ホーリーバジルの育て方・育て方のポイントについて、詳しく紹介します。
目次
ホーリーバジルとは?

ホーリーバジル(英名Holy basil)の原産地は、ネパール、インド、オーストラリア。シソ科メボウキ属の植物です。ホーリーバジルの別名・トゥルシーは、サンスクリット語で「比類なきもの」を意味し、5000年以上前から聖なる植物として人々に崇められてきた歴史のある植物。インドの伝統医学・アーユルヴェーダでは「不老不死の霊薬」とされています。バジルといえば、こちらが思い浮かぶ方が多いかもしれませんね。

ピザやパスタなどイタリア料理には欠かせない「スイートバジル」です。バジルは交配しやすい植物で、世界中に150種類以上あるのですが、全種類が食用可能。今回は、その中の1つ、ホーリーバジルを徹底分析していきます!
ホーリーバジルの特徴
ピザやパスタに使われるスイートバジルと比べると、ホーリーバジルは、強い香りとスパイシーな風味が特徴です。食べられる部分は、葉・茎・種子です。基本的には、ホーリーバジルだからといって、○○にしか合わない、ということはなく、スイートバジルを使うのと同様に使っていただいて大丈夫! 特に、炒め物に向いていますよ。

また、お茶として飲むこともできます。

生葉なら両手いっぱいくらいの葉を集めて、200ccほどの熱湯を注げば、スパイシーな香りがいっぱいに広がるハーブティーに。ただ、ホーリーバジルだけでは飲みにくいので、ミントやレモングラス、スギナや緑茶を半分ほど混ぜるといいですよ。わざわざ乾燥させる必要もありませんので、飲む分を庭から収穫して、お召し上がりくださいね。
タイでは、ホーリーバジルは古くから薬として知られていて、葉を毎日食べれば医者いらずということわざも。「死神を寄せ付けない植物」ともいわれ、各家庭に植えてあり、生活に密着した植物のようですね。タイでは気温が下がらないため多年草となりますが、日本では冬の寒さに当たると枯れてしまうため、一年草として扱われます。ホーリーバジルの栽培スケジュールは、4~6月に種まきをしたり苗を植え、夏から晩秋まで葉が繁ってその間ずっと収穫が楽しめます。開花期は7~10月で、11月末には終わりを迎えます(関東の場合)。
ホーリーバジルの効果

ホーリーバジルの持つ強い香りは、脳を刺激し、免疫機能を高める作用や、消化を促進する作用があります。
また、葉の緑色にはβ-カロテンが多く含まれていることから、抗酸化作用も期待できます。酸化とは、身体の中のサビのこと。細胞は活性酸素という悪玉酵素によって酸化し、常にサビが進行しているのですが、鉄がさびるともろく崩れやすくなるように、人の身体も、皮膚のダメージや体内機能低下、生活習慣病や動脈硬化などのリスクが高くなるといわれています。というわけで、いつまでも若々しく美しく、健やかにいるために、酸化にあらがう「抗酸化」を意識して摂取を続けることが大切なのです。
また、ストレスを軽減させる作用、発汗作用などもあるハーブですので、ハーブティーとして、1日1杯を続けて飲むと日々のストレスケアや冷え性予防・風邪予防など、体質改善にもなりますね。
ホーリーバジルの花言葉
ホーリーバジルの花言葉は、神聖・祝福・好意・高貴・幸運です。ホーリーバジルの花は紫色。花も観賞価値が高く、育てていると、花がいっぱい咲くので、束ねてプレゼントしたり、ギフトにちょっと添えてもいいですね。

ホーリーバジルを育てる環境
上手に栽培して、収穫をするためは、育てる植物の好きな環境・苦手な環境を知る事がとても大切! 原産地の環境に近づけてあげるとよいでしょう。
ホーリーバジルは日当たり、風通し、水はけのよい場所を好みます。栽培する際には、日当たりが5~8時間、しっかり当たる場所で管理しましょう。暑さには強く、直射日光や西日が強い場所でもよく育ちます。ですが、冬の寒さに弱く15度以下になると枯れるため、日本では一年草に分類されます。
また、これはホーリーバジルだけに限ったことではありませんが、やはり土の状態がいいと、植物はよく育ちます。地植えにする場合は、土の状態も確認しておきましょう。その際のポイントは、「根が上手く伸びそうか?」。まずは、土を掘り返してみてください。例えば、水分がなさすぎて、カチカチに固まった土では、すくすくと根が延ばせませんよね。この状態のまま穴を掘って植えても、ホーリーバジルはよく育ちません。大きな土の塊はほぐし、有機肥料や腐葉土などを混ぜて土づくりにも留意しましょう。
もし、土づくりが難しい場合は、草花用培養土を使ってプランター栽培もおすすめですよ。特にホーリーバジルはプランターでも問題なく育ちますので、チャレンジしやすい方からスタートしてみてはいかがでしょうか。
ホーリーバジルの育て方
さらに詳しく、ホーリーバジルの育て方・管理方法を見てみましょう。
種まき
ホーリーバジルはタネから育てることができます。おおよそ気温が15~20度になると発芽するため、4~6月頃が適期となりますが、お住まいの地域によってかなり異なりますので、購入されたタネ袋に記載してある気温をしっかり守りましょう。
〇準備するもの
・ホーリーバジルのタネ
・ビニールポットやセルトレイなど、苗床 ※100円ショップにも売っています
・バーミキュライト、ピートモス、赤玉土 ※難しい場合には種まき用の土
〇種まきの方法
1. 植える場所の準備をします
ビニールポットやセルトレイに、バーミキュライトやピートモス、赤玉土をブレンドして、土を作ります。難しい場合には種まき用の土を使用しましょう。
2. 土にしっかり水をかけます
指関節一つ分を残し、たっぷり土をポットに入れます。そのあと、しっかり土に水をかけて濡らした状態を作っておきましょう。
3,タネに水を含ませます
タネを10分ほど水につけておきます。タネを覆うようにうっすらゼリー状の膜ができてきたら、土にそっと置き、土はかけません。バジルの種は好光性種子といって、発芽の際に光が必要です。土をかけてしまうと発芽しませんので、ご注意くださいね。
種まきはこれで終わり。条件が整うと2~7日で発芽しますので、様子を見守りましょう。種まき後は毎日霧吹きかハス口付きのジョウロで水をしっかりあげましょう。15cmくらいのサイズになったら、プランターや植えたい場所へ定植します。
ホーリーバジルの種まきのコツは温度管理。寒さに弱いため、夜間冷えて15度以下になるようなことがあると、枯れてしまいます。夜間の気温にも気を配りましょう。
タネは、園芸店やハーブ専門店、ホームセンター、インターネット通販で入手可能ですが、実は、ホーリーバジルと呼ばれて流通しているものの中には、複数の種類があることをご存じでしたか?
学名を確認してみると…
Ocimum tenuiflorum ‛Krishuna’ クリシュナトゥルシ―
Ocimum tenuiflorum ‛Rama’ ラーマトゥルシ―
Ocimum tenuiflorum ‛Kapoor’ カプーアトゥルシ―
Ocimum tenuiflorum ‛oya’ オオヤトゥルシ―
Ocimum gratissimum ヴァナトゥルシ―
などがあります。種からチャレンジするなら、いろんな品種を作り比べしてみるのも面白いですね!

私が育てているのは、オオヤトゥルシ―。葉っぱの裏が紫のまだら模様になるのが特徴です。

また、タイでホーリーバジルといえば、紫の軸が特徴のガパオ・ディーンを指し、ガパオライスに使われるバジルは、この種類を使うそうです。
植え替え
ホーリーバジルは15度以下になると枯れてしまいます。15度以下になることがない原産地では、枯れませんので多年草ですが、日本で栽培する場合は、一年草扱いが一般的です。そのため、植え替えは必要ありません。もし、温室等で多年草として育てる場合は、初夏にひと回り大きい鉢に植え替えるとよいでしょう。
また、先ほど種まきの話をしましたが、ホーリーバジルは園芸店で大きくなった苗が販売されます。初めて育てる方や初心者さんは、苗を購入するのがおすすめです。
ポイントは2つ。1つめは、夜間の気温が15度以下になる日がなくなる頃に購入すること。2つめは、購入したら、なるべく早い段階で育てる場所に植え替えること。ポットに入ったまま水やりをして、しばらく管理する…ということがないようにしましょう。
剪定
無事に葉がしっかり大きくなってきたら、収穫可能です。ホーリーバジルは葉を収穫するだけでなく、収穫を兼ねた剪定「摘心(てきしん)」をしていくと、長期間に渡り収穫ができますよ。
20~30cmほどになってくると、茎葉の先に花芽を見つけることができます。一瞬、花が咲いた!と嬉しく思うかもしれませんが、実は花が咲くと、栄養が花に送られてしまい、葉が出にくくなってしまったり、葉が固くなりおいしく食べられなくなってしまうのです。葉を活用したい場合は、茎葉の先端を切り取り(摘心)、花が付くのを防ぎましょう。やり方は簡単。花芽を見つけたら、カットするだけ。だんだん慣れてくると「これは花芽になるな…」と分かってくるので、花芽になる前にカットすることもできるようになります。摘心は、脇芽を出させることにも繋がります。
また、ホーリーバジルは花期が長く、植えてから枯れるまで半年以上楽しませてくれます。育っていくと、50~80cmほどの高さになりますが、大きくなりすぎると、台風などでぽきっと根元から折れてしまうことも。大きすぎる場合は、1/3程度に小さくし、伸びすぎた茎を整理します。これを「切り戻し」といいます。目安として、数カ月に1回程度行うといいでしょう。一旦は寂しくなるのですが、そのあと新しい芽が出てきてくれますよ。
「摘芯」「切り戻し」をやるとやらないでは、収穫できる量の差が歴然! はじめは怖いかもしれませんが、ぜひやってみてくださいね。

剪定した花や葉はもちろん食べたり飲んだりと、活用できます。採れたて新鮮なホーリーバジルは香りも格別! これは育てた人の特権ですから、存分に楽しんでくださいね。
日々の手入れのポイント
続いて、日々の手入れのポイントについてまとめていきます。
水やり

植物の日々のお手入れ・管理というと、まずは「水やり」がありますね。この水やり、単にお水をあげればいいかというとそうではなくて、とーっても奥が深い作業です。水やりの加減で、植物は生き生きともしますし、枯れもします。植物が水を欲しているかどうかが分かるようになると、園芸“初心者”は卒業です。
水やりのコツは、1回の水やりの量はたっぷりあげること。プランターであればプランターと同量を目安にします。1日2回もあげなければ水が足りない…という方は、1回にあげる量を増やしてみてください。土全体にしっかり水を含ませることが、大切です。
そして、この量をあげたら、今度は土を乾かす日を設けること! 水をあげない日を作ることを意識します。いつもじめじめしていると、植物は根を張ることができません。いわゆる根腐れという状態ですね。
今回のホーリーバジルは、水を好みます。乾燥に弱いので、土が乾きすぎないうちに、お水をあげるように注意します。
苗を地植えにした場合は、植え付け時にたっぷりと水やりし、苗が落ち着くまで、1週間ほどは様子を見守り、2~3日に1回程度、土が乾ききる前に、水やりをします。苗が根づいたあとは、基本的に水やりの必要はありませんが、夏場のカンカン照りで乾燥が続くような時期には、水やりをします。
ちなみに、水やりに適した時間は朝~午前中。水は光合成に必要な要素になるので、午前中なるべく早い時間に補給してあげましょう。もし、水をあげるのを忘れてしまって、夕方くたっとしおれた状態になっているようなら、至急水をあげますが、他のハーブと比べると、ホーリーバジルは乾燥に弱く、このしおれた状態が続くと、早々に枯れてしまいますので、注意しましょう。
また夏場、日中ホースの中の水はお湯と化し、出し始めの水は高温になっています。ホースを使う際には確認してから、水やりをスタートしてください。
肥料
ホーリーバジルは基本的に肥料を必要としません。ですが、栽培期間が長いため、お持ちの液肥などを使われるとよいでしょう。私はゆっくり効くタイプの緩効性有機肥料を使用しています。葉色が悪い時は油粕を与えましょう。
病害虫
初夏から秋にかけて、アブラムシやナメクジ、ヨトウムシに害されることがあります。日々、葉の裏に虫が隠れていないか、チェックしましょう。見つけたら虫のいる部分はカットして、破棄しましょう。早期発見すれば、問題ありません。
ホーリーバジルのかかりやすい病気ですが、高温多湿が続く梅雨には立枯病に、日当たりが悪いと灰色カビ病になることがあります。日当たりはしっかり確保すること、梅雨入り前には切り戻しをして、風通しをよくして、高温多湿を乗り切るようにしましょう。
さまざまな用途のあるホーリーバジルを育てよう!
日本では、ホーリーバジルは馴染みのない人が多いのではないでしょうか。ですが、さまざまな場面で使用することができます。また、ホーリーバジルは1つの苗から背丈が80cmほどにもなり、庭に植えておいても絵になる植物です。この機会にホーリーバジルを育ててみましょう!
Credit

写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)
花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。
生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/
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