立春の響きに、春の訪れがいっそう待ち遠しくなる2月。園芸店やホームセンターには、春の芽出し球根が並び始めます。ちょこんと出た新芽が何とも愛らしい芽出し球根を使って、庭の草花が冬の眠りから覚めるまで、鉢植えでひと足早い春を楽しむという神奈川県横浜市の前田満見さんのガーデンアイデアをご紹介します。
目次
小鉢に植え替えて愛らしく
スイセン、チューリップ、ヒヤシンス、ムスカリ、クロッカス、ミニアイリス…、芽出し球根が並ぶ園芸店やホームセンターは、もう春の気配。ほんのり漂う甘い香りに誘われて、お買い物ついでに立ち寄るのが、この時季のちょっとした楽しみです。つい、あれもこれもと手を伸ばしたくなりますが、毎年、花が咲き終わったら地植えするので、あまり根の張らない小さな球根花を選ぶようにしています。

例えば、小輪花のスイセンやムスカリ、クロッカス、ミニアイリス、スノードロップなど。各々1ポットごと小鉢に植え替えて楽しみます。そうすると、植え替えの手間もさほどなく、後の地植えも楽です。愛用している鉢のサイズは4〜5号鉢。ガーデンテーブルに小鉢をたくさん並べても、まとまって見えるように色を統一しています。

また、直径5〜6cmの極小鉢もおすすめです。このサイズだと、ムスカリやクロッカス、スノードロップを1球しか植えることができませんが、人差し指ほどの可憐な花が1輪だけ咲く姿に、胸がキュンとします。あまりに小さい鉢植えなので、こちらはガーデンシェッドの窓際に。水耕栽培のヒヤシンスやムスカリと並べて飾ると可愛らしさが引き立ちます。

そして、芽出し球根と意外と相性がよかったのが、盆栽鉢。白い盆栽鉢に白のムスカリを植えてみたところ、サイズ感もぴったりで、いつもより品よく落ち着いた印象になりました。これなら和風の庭にも違和感なく置けそう。受け皿を敷いて和室に設えても素敵かもしれません。
苔や落ち葉をあしらって、よりナチュラルに

小鉢に芽出し球根を植え替えるだけでも十分見栄えしますが、土の表面に苔や落ち葉をあしらうと、この時季らしい季節感のあるナチュラルな仕上がりになります。
苔は、毎年暮れに、お正月の花材と一緒に母が送ってくれる実家の庭のスナゴケとハイゴケです。近所の園芸店の盆栽コーナーでも手に入りますが、鉢植えをいくつも作ると意外と値が張るので助かります。何より、両親が手入れしている庭の苔は、どこか懐かしい故郷の匂い。瑞々しい緑とふわふわの手触りに心も和みます。

そして、まんべんなく苔を張ったら、仕上げに庭の落ち葉をパラパラと。すると、早春の芽吹きの景色のような風情が生まれ、芽出し球根も生き生きと見えます。冬の寒さに晒されても落ち葉の下で緑を絶やさない苔と、真っ先に春を呼ぶ球根の初々しい新芽。その力強い生命力が、縮こまった心身に不思議と活力を与えてくれます。
小枝のリースで小鉢をアレンジ

冬に剪定したヤマボウシの小枝を束ねている時に、ふと思いついたのが小枝のリース。中にミニアイリスの小鉢を入れてみると、何だか鳥の巣に似ています。ツンと尖った新芽はくちばしのよう。予想外の可愛らしさに、思わず嬉しくなりました。さらに花が咲くと、その様子は一変して華やかに。南国の鳥を思わせる鮮やかな紫色と黄色のコントラストがとても美しく、目を奪われます。鉢植えも、ちょっとしたアレンジ次第で楽しみ方がずいぶん広がりますね。
芽出し球根のワイヤーリース

芽出し球根は、鉢植えのほかに園芸用のワイヤーリースにも。通常、ワイヤーリースは壁掛けにしますが、目先を変えて平置きにすると、案外どんな場所にも飾れます。球根を1球ずつ株分けして植え込むので、鉢植えより少し手間がかかりますが、コツさえ解れば簡単です。

まず、株分けした球根の根を短くカットし、軽く根洗いを。次に、ワイヤーリースの底面に水苔を敷きます。根腐れ防止とミネラル分を補うミリオンを少量施したら、1球ずつ根を水苔で包むように植え込みます。

空いたスペースには、アクセサリーのように小さな素焼きの鉢や木の実を置くと、ほっこりした雰囲気に仕上がります。
また、ワイヤーリースは植え込み幅も狭く浅いので、どちらかといえば小球根がおすすめです。中でも気に入っているのが、スノードロップと白いムスカリの寄せ植え。雫形のスノードロップとブドウ形のムスカリの個性的で愛くるしい花姿、純白の花の組み合わせが醸し出す清楚な佇まいに心が洗われるよう。耳を澄ませば、冬の名残の清んだ空気に小さな春の吐息が聞こえます。

ムスカリの花言葉は「明るい未来」。スノードロップは「希望」。そして、輪の形のリースの意味は「永遠」だそうです。
コロナ禍で迎える新たな春が、この小さな球根花のように「永遠」に続く「明るい未来」に繋がる「希望」となりますように願わずにはいられません。

Credit
写真&文 / 前田満見

まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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