引っ越しとともにバラの苗を新しい敷地へ移植し、初めて迎える冬。これからの季節は来年の春の開花に向けて剪定や誘引、植え替えと、バラのお手入れがたくさんあります。神奈川県在住で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんによる庭づくり奮闘記第12話。今回は、今年最後の花をつけるバラの様子と、今行いたい「誘引」と「仮剪定」について解説していただきます。

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まずは、枝が徒長するバラたちの誘引をスタート

12月中旬のバラ
12月中旬頃の庭に咲くバラ。

今年も12月に入り、だいぶ冬らしい寒さがやってきました。毎年今頃の四季咲き性のバラは、寒さに耐えながらも、まるで今年一年を名残り惜しむかのように長く花を茎に留めています。

しかし、12月頃から、特にクライミングローズやランブラーローズ、シュラブローズ、つる性のオールドローズや原種のバラといった枝が伸長するバラたちは、誘引を始める時期でもあります。

私も、新居で初めて迎える冬のバラ仕事を頑張りつつ、今回は、冬のバラ仕事の第1弾となる「誘引」と「仮剪定」の2つについてご説明します。

冬のバラ栽培お手入れ1
バラの誘引

 ‘コーネリア‘の誘引
‘コーネリア‘(HMsk)を誘引。

バラの誘引とは

バラの枝を整理して、思い描く「バラの花咲く風景」を作るために、紐やワイヤーなどで、構造物や支柱、樹木などに枝を固定していく作業のことです。

誘引作業を行わないと、枝が暴れて、思い描くような風景はできないことが多く、花数や花の大きさなどにも影響します。

頂芽優勢と誘引作業

頂芽優勢
頂芽優勢。

多くの植物は、茎の先端にある頂芽の成長が、側芽の成長よりも優先される「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」の性質を持ち、バラも同様であるため、枝が上に向いていると、その先端ばかりに花が咲いてしまいます。

枝が伸長するつる性のバラは、枝を横や斜めに誘引することで、たくさんの花が咲き、「バラの花咲く風景」を作ることができます。

初夏のツクシイバラ
ツクシイバラ(Sp)の2020年5月の姿。以前の庭から移植して4カ月ほどで、「バラの花咲く風景」を見せてくれました。

誘引作業の時期

これからさらに寒くなり、気温の低い日が続くと枝がしまって硬くなり、枝を曲げると折れやすくなるなど、誘引がしにくくなってきます。また、2月下旬や3月の新芽が動きはじめる時期に誘引を行うと、頂芽優勢の性質から芽の向きがバラバラで、揃うまで時間が掛かってしまうこともあります。逆に、気温が低くならない時期から、早く誘引作業を行ってしまうと、新芽が動いてしまい、その後の冷気によって新芽が駄目になってしまうことがあります。

ですので、誘引作業は各地域によって差はありますが、おおむね12月中旬~1月下旬頃が適期となります。

誘引作業の実例

バラの誘引

私が誘引作業で使用しているものは、直径1.6mmのワイヤー、ペンチ、剪定鋏です。

ワイヤーで誘引

ワイヤーを利用する理由は、フェンスの隙間があまりないことと、枝に軽く巻いて、誘引したい方向に枝を吊るしながら固定し誘引ができるからです。

誘引作業実例1

‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’

隣地との境にあるフェンスに、今年5月に咲いた‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’(R)の様子。

‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’の誘引

その後、12月になると誘引前の枝が暴れてしまっています。

‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’の誘引

今年新しく発生した勢いのよいサイドシュートを残し、その先をカットしているところ。

他に、赤線部分の細く弱々しい小枝や、同じ所から2本枝が発生している場合は充実していない枝のほうをカットします。

‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’の誘引
12月中旬の誘引後の状態。

残っている葉や花を取り除くと枝がよく見えてきて、残す枝と取り除く枝の判断がしやすくなります。また、古い葉に付いた病害虫を、新芽にうつさないようにするためにも葉を取り除きます。

冬のバラ作業

冬に葉を取り去り整枝されたバラは、今まで通りの光合成ができなくなり、休眠期間となります。この冬の休眠期間には土を掘って多少根を切っても大丈夫なので、元肥の施肥や植え替え作業など、冬以外では出来ない作業が可能となります。

誘引作業実例2

‘フランソワ・ジュランビル’の誘引

コンサバトリー前の細めのアーチに誘引した‘フランソワ・ジュランビル’(R)。

誘引作業実例3

‘クリスティアーナ’の誘引

オベリスクに誘引した、まだ小さな株の‘クリスティアーナ’(Cl)。

誘引作業実例4

ツクシイバラの誘引

庭を囲む鋳物のフェンスに誘引したツクシイバラ(Sp)。

誘引と剪定でバラが咲く景色を作ろう

自分自身が思い描く「バラの花咲く風景」に添って、これからも誘引作業を進めていきます。以下は、2020年の春の「バラの花咲く風景」の一コマです。

‘ボルティモア・ベルズ’(R)
‘ボルティモア・ベルズ’(R)。

愛らしさと洗練さを併せ持つ可憐な花が鈴なりに咲いて、新居の庭で初めて迎えた春を優しく飾ってくれました。

 ‘メイ・クイーン’(R)
‘メイ・クイーン’(R)。

しなやかに枝垂れる枝先に房咲きで咲く少しラベンダーがかる優しいピンクの花が、白いフェンスに映えて。

バラの庭
以前の庭で2019年の5月に咲いた‘クレパス・キュール’(N)(手前)とロサ・レヴィガータ(Sp)。

25年以上、毎年冬に誘引し、春になるとたわわに咲いた姿を見せてくれましたが、残念ながら地域の区画整理のために、これが最後の開花でした。

冬のバラ栽培お手入れ2
バラの仮剪定作業

仮剪定とは

ここまでご紹介したつる性のバラ以外のバラたちも、12月になると、特に地植えのバラは、枝が伸長し、樹形が乱れてきている頃かと思います。これから冬の元肥を与え、余分な枝に栄養分が取られないためにも、枝先を軽く剪定します。さらには、枯れた枝や内側に向かって伸びたふところ枝、細く弱々しい枝、古い枝、害虫の被害にあった枝といった不要な枝を取り除く整枝を行っておきます。枝先は、本剪定前の浅めの剪定ですので、「仮剪定」と呼んで区別しています。

*ただし、まだ小さな株、鉢植えにしてコンパクトに育てている株などは、仮剪定は行わず、本剪定のみで大丈夫です。

*くれぐれも枝を短くしすぎないよう、切りすぎに注意します。

本剪定との違い

本剪定とは、2月下旬~3月上旬頃に行う「冬の強剪定」のことで、春の樹形や花の位置、花数に大きく影響する大切な剪定です。一年で最も枝を深くカットし、株を若返らせ、株をリセットできる剪定でもあります。本剪定は、充実した枝や芽の上で切ることがポイントです。その充実した枝や芽の準備のためにも、仮剪定や元肥、水分が大切になります。

仮剪定作業の時期

冬の元肥と本剪定をする前に行いますので、各地域に差はありますが、12月中旬~1月上旬頃が適期となります。私は、毎年、四季咲き性のバラをお正月頃まで楽しみ、花が終わった株から順次、仮剪定して行きます。

仮剪定作業の実例

バラの仮剪定
仮剪定前。

四季咲き性の鉢植えのバラは、花が咲き終わり、玄関先で冬の落葉が始まって枝も乱れています。

バラの仮剪定後。
仮剪定後。

枝先を軽く仮剪定し、枝葉を整えました。

何かと慌ただしい師走の時期ですが、毎日少しずつでも、バラとの時間を楽しんでください。誘引作業や仮剪定作業は、綺麗に決まると、とても気持ちのよいものです。最初は上手くできなくても、実際に自分自身で行う経験がとても大切です。

バラの庭
2020年5月の新居で迎えた初めての春の「バラの花咲く風景」。

来春の「バラの花咲く風景」の準備の時期は、もう始まっています。

来年はどうなるか、今からとても楽しみです。

Credit


写真&文/元木はるみ
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。「日本ローズライフコーディネーター協会」代表。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
http://roseherb.exblog.jp
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