「モルタルデコ」をご存じですか? モルタルに着色を施して、オブジェや壁、鉢、花台などを作るガーデンクラフトです。モルタルというと難しそうに思われるかもしれませんが、中身にはスタイロフォームという発泡材を使っています。軽量なので、女性でも楽に加工ができ持ち運びも簡単! ヨーロッパにある石積みの古い街並みのような雰囲気を、モルタルデコなら自分で庭に再現できますよ。
英国コッツウォルズにあるような蜂蜜色の不揃いの石を積み上げたような壁に、つるバラが枝を伸ばしてたわわに花を咲かせる「Sanae Garden」。ここは長年、造園・植栽の仕事とともにガーデンクラフトを手掛けてきた原嶋早苗さんの庭です。
「レンガの石積みに見えて、じつは実際に石を積んだわけではなく、土台は、発泡スチロールの一種、スタイロフォームなんです。庭のフォーカルポイントになっている花台もモルタルデコです」(原嶋さん)
モルタルデコとは、スタイロフォームという建築用の断熱材を削って形を作り、そこに薄くモルタルを塗り、色づけしてレンガや擬木のように見せるガーデンクラフトです。
「スタイロフォームは、押し出し発泡ポリスチレンの商品名で、通常の発泡スチロールと違って粒子が密なんです。防水性が高くほとんど水を吸収せず、軽くて丈夫な一方、カッターなどで簡単に切ったり削ったりできて加工性もよいので、屋外使用が前提のガーデンクラフトには最適な素材なんです」(原嶋さん)。
モルタルだけを使って作ると、重量がありすぎて取り扱いも飾るのも大変ですが、原嶋さんのモルタル造形はスタイロフォームがベースになっているため、見た目の重厚感とは裏腹に、軽量で女性にも扱いやすいのが特徴です。
「石積みやテラコッタなどの風合いは、モルタルの上から塗る水性アクリル絵の具による着色で出していきます。皆さんがよく目にするテーマパークのお城やレンガの小屋も、モルタルを加工して作られているのをご存じですか? 塗料などを駆使してエイジング加工し、時代感や風合いを演出しているのですが、モルタルデコも同様に、“らしさ”を追求していきます」(原嶋さん)
つまり、着色次第でどんな素材らしさも演出できてしまうのがモルタルデコの楽しさです。また、本物の石積みは費用もかかりますが、モルタルデコなら、スタイロフォームもモルタルも千円ほどで購入でき、保ちは半永久的というコストパフォーマンスの高さも見逃せません。
「それとガーデンのオブジェって、テラコッタやアイアンや石でできているものが多くて、素敵なんですけど、ちょっと位置を移動しようにも重くて、女性1人じゃ難しいものもあるんですよね。だけど、モルタルデコで大鉢や花台を作れば、ガーデンでの取り扱いも楽にできます。モルタルデコのよさは、自分のイメージ通りのものが簡単に作れて、作った後のガーデニングも楽ですし、リメイクにも向いているんです。以前、古いブロック塀をモルタルデコでプロヴァンス風にリメイクしたことがありますが、全く雰囲気が変わって素敵でしたよ」(原嶋さん)
庭の見え方は植物の組み合わせだけでなく、壁などの背景も大事。特につるバラを仕立てるときには、背景や絡ませる構造物次第で見栄えがかなり左右されますが、モルタルデコのテクニックを使えば、自分のイメージ通りの背景を自分で作り出すことができます。例えば「Sanae Garden」の壁はモルタルデコで石積み風に作り、そこにいくつかの扉をつけています。バラの花の下、扉を開けるのを想像するとワクワクしませんか? 実際には隣家との境の目隠しで、その向こうに何かがあるわけではないのですが、大切なのは、この先に何があるのかしらと思わせること。それだけで実際の庭より奥行きを生むことができます。
「モルタルデコによるミニチュアハウスは想像力の賜物です。モルタルデコのクラフト教室では、最初はボードのような簡単なものから作るのですが、皆さんはこのミニチュアハウスが作りたいんですよね。これはガーデン版のドールハウスのようなもので、中にソーラーライトを入れておくんです。これを庭に置いておくと、夕方帰った時に小さな家々に灯りがともっていて、本当に妖精が住んでいるみたいで楽しいんですよ。庭に物語が生まれるワクワク感を、ぜひ皆さんにも体感してほしいですね」
ガーデンストーリークラブでは、オンラインサロンで原嶋さんによる教室も行っていきます。簡単なものからスタートしますので、初心者でも作れます。ぜひ、皆さんのご参加をお待ちしています!
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Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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