土づくりにひと手間かけることで、野菜の収穫の成果は大きく向上します。よりたくさん実ったり、よりいっそう甘くなったり…。なかなかうまく育てることができないといった悩みを持っていたり、もっと上手に育てたいなと思っている方は、ぜひ土づくりにチャレンジしてみてください。ここでは、土づくりの基本的な考え方から、専門的な部分まで、土づくりのポイントをご紹介します。

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基礎的な知識が役立つ!

野菜づくりで最も大切なのが、土づくり。いくらよい環境で健全な苗を育てても、土がよくなければ野菜は育ちません。土が大切なのは、野菜に限らず、すべての植物に共通することですが、野菜の場合は連作障害を防ぐために1作ごとに植え替えをするので、土づくりの大切さをしっかりと理解しておく必要があります。ここでは、土壌に関する基本的な知識を整理し、わかりやすく紹介します。

健全な生育のための環境

 

土づくり

野菜にとって大切な土の役割

植物は、根からは水を、空気中からは二酸化炭素を吸収します。太陽光のエネルギーを使い、吸収した水と二酸化炭素から、炭水化物と酸素をつくりだします(光合成)。この光合成と、蒸散、呼吸作用によって新陳代謝を行い、生育していくのです。つまり、土は植物の生育のためには欠かせないものなのです。

野菜栽培の培養土と用土

「土」は、園芸の世界では大きく分けて「用土(ようど)」と「培養土(ばいようど)」の2種類があります。

「培養土」はさまざまな用土を混ぜた状態で販売されているものを指します。配合のバランスがよく、そのまま使えて手軽なのが特徴です。

一方、混ぜずに単体で販売されているものを「用土」といいます。市販されているものは、以下の4つのグループに分けられます。

1.基本となる良質の粘土質

用土をミックスしていく際の基本のもので、代表的なものは赤玉土、鹿沼土、黒土、荒木田土、真砂土などです。

2.有効な微生物を含む有機物

植物の養分の吸収を助ける微生物が含まれているもので、腐葉土、ピートモス(無菌)堆肥などです。

3.地力を高めるもの

基本となる用土に加えることで保水性や保肥性を高めるもので、パーライト、バーミキュライト、くんたん、焼成珪藻土などです。

4.その他

水はけをよくしたりマルチングなどに使うもので、日向土や敷きわらなどです。

1粘土質、2有機物、3地力を高めるものから、それぞれ2種類以上の用土を選んで均等に混ぜ合わせれば、基本的な土壌になります。

用土
用土

土壌のpH値とは?

野菜の生育に大きな影響を与えるのが、pHの数値によって表される土の酸度です。多くの野菜が弱酸性(pH6~6.5)を好みますが、なかには弱アルカリ性(pH7.5~8.0)を好むものもあります(下写真参照)。

簡単にpH値を測定できる酸度測定液のキットがホームセンターなどで市販されているので、生育が思わしくない場合には、pHを調べてみましょう。

pH測定
土を水に溶かして測定液を入れ、色づき方によって土の酸度がわかる。左が弱酸性、右が弱アルカリ性。

しかし、一般の家庭では、常に土壌のpHを測り続けることは難しいもの。数の少ない弱アルカリ性を好む野菜を覚えておくと、何を育てるとよいかを考えるときの参考になるでしょう。

また、土の酸度を改善したい場合は、次のような方法があります。

●酸性土壌のpH値を上げる場合

畑で作物を育てると、徐々に土壌が酸性化していきます。これは植物が生育しながら根から「根酸(こんさん)」という酸を出すためです。このため、次の作物を育てる前に、苦土石灰やくんたんを土にすきこんで中和する必要があります。

畑などの広い面積の場合は、消石灰または苦土石灰を1㎡あたり100g~200g、すきこみます。消石灰を使用する場合は、混入後すぐに植栽するのは避け、2週間ほど間隔をあけましょう。早く植栽したい場合は、苦土石灰を使うとよいでしょう。苦土は、マグネシウム(Mg)のことで、徐々に溶解していきます。石灰のほか、くんたんでもよいでしょう。

●アルカリ性化した土を弱酸性に戻す場合

硫酸アンモニウムや硫酸カリウムを用いる方法もありますが、一般には酸性のピートモスを土中にすきこむのが安全です。

ピートモス

ピートモス

苦土石灰

苦土石灰

くんたん

くんたん

●土の酸度と野菜

土の酸度と野菜

団粒構造の土にするには?

植物の根は呼吸をし、水分や栄養素を吸収する役割があるので、土が固まると弱ってしまいます。

よい土壌とは、保水性、保肥性、排水性、通気性に優れた土のこと。これらの条件を満たすのが団粒構造の土です。

団粒構造とは、さまざまな大きさの粒子が混ざり合い、有機物がしっかり含まれている状態のことで、微生物の働きにより、フカフカの固まりにくい土になるのです。

団粒構造

上の図のように、団粒構造の土には空気や水が保たれるため、そこに有用な微生物が繁殖します。しかし、無機質で細かな粒からなる単粒構造では、土は固まっていってしまいます。

団粒構造の土にするためには、持続的に堆肥などの有機物をすきこみ、よく耕すことです。

マルチングの効果

マルチングとは、植栽した株元を中心に、稲わらや腐葉土、バークなどを敷くこと。ビニールマルチを使用することもあります。

マルチングは、野菜を健全に育てるうえでとても大きな効果があります。

1.雑草予防
植えつけた作物以外の雑草が生えないようにします。
2.乾燥予防
夏期に表土が乾燥し、地上部分に近いところの根が傷むのを防ぎます。
3.霜予防
冬期に霜から根を守り、寒冷地では霜柱が立つのを防ぎます。
4.泥はね防止
水やりの際に、水圧で飛び散った泥が葉に付着するのを防ぎます。
5.塩類集積の除去
施しすぎた肥料分の塩類を吸着し、土壌内部の過剰な肥料分を除去します。乾燥した状態で白い粉状のものが浮いてきたら、マルチ材をどけます。

よい土壌をつくったら、ぜひマルチングをして、よりよい生育環境を整えましょう。

敷きわらによるマルチング

マルチング

土をチェックしよう

土の状態をチェックする簡単な方法があります。菜園の土を手でギュッと握って、そっと手をひらいてみてください。軽く固まるくらいが、植栽には適しています。一方、手をひらいたときに固まらなければ、植え付けの際に土が根から水分を吸収してしまい、苗を傷めてしまいます。植え付けの際には必ず事前に土に水を含ませておきましょう。

土の状態チェック
ぎゅっと握って…

土の状態
固まれば〇

固まらなければ×
固まらなければ×

ワンランク上の土づくりにトライしよう

いかがでしたでしょうか? 専門的な内容まで掘り下げて、土づくりのポイントを解説いたしました。より一層おいしい野菜を収穫するには、土づくりが肝心です。ぜひ土づくりにトライしてみてくださいね。

Credit

監修/矢澤秀成

園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。

参照元/『菜園生活 パーフェクトブック』(監修・著:藤岡成介 発行元:株式会社日本インテグレート)
協力者/藤岡成介

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