夏の強い陽射しが照りつける8月は、一年中で最も花が少ない季節。庭の景色は、ほぼ草木の緑一色になりますが、虫食いや日焼けで傷んだ緑は、新緑の頃の鮮やかさはありません。そんな中でも、神奈川県横浜市で小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんの8月の庭では、ブドウ科の植物が変わらず瑞々しい緑を保っています。パーゴラやガーデンシェッド、落葉樹の枝に伸び伸びと絡まり、庭に活気を与えてくれるブドウ科の植物を教えていただきます。

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個性的な色合いが美しいノブドウ

野山に自生しているノブドウは、葉っぱも実も小さく食用には向きませんが、野生種らしい楚々とした風情が魅力です。

じつは、実家の裏山の至る所に生えていて、子供の頃から見慣れた大好きな植物です。

ノブドウ

庭に植えているノブドウは2種類。

一つは、鉢植えの「斑入りノブドウ」です。別名、「錦ノブドウ」、「五色ノブドウ」ともいわれ、その名の通り5色斑の美しい品種です。ひと葉ごと異なる斑は、季節の移ろいと共に色合いが変化し、一番美しい表情を見せるのが、白い斑が際立つ夏。赤褐色の蔓とのコントラストが華やかで目を奪われます。さらによく見ると、いつの間にか小さな花と、所々に緑色の可愛らしい実も付けています。

ノブドウとトレニアのアレンジ
ノブドウとトレニアをガラスの皿に。

そんな観賞価値の高い斑入りノブドウは、切り花にも最適。ガラスの一輪挿しにひと枝活けるだけでも素敵ですが、朝顔や夏すみれ(トレニア)を添えると、より季節感のある花あしらいになります。

ノブドウと朝顔、クレマチスのアレンジ
朝顔とクレマチスがシックな色を添える。

花が少ない夏は、美しい斑入りの葉を設えるだけで、暑さも少し和らぐような気がします。

斑入りノブドウ

夏椿の枝先に、クルンとヒゲを絡ませて自由奔放に伸びる斑入りノブドウ。その野趣溢れる姿に、故郷の夏の野山の景色が重なります。

黄金ノブドウ

そして、もう一つは、北東の庭に植えている「黄金ノブドウ」です。ここは、午前中2〜3時間しか日が当たらない場所。殺風景な板塀につる性の花を絡ませたくて、半日陰でも育つクレマチスを何度か植えてみましたが、うまく育ちませんでした。仕方なく花を植えるのを諦めてこの黄金ノブドウを植えたところ、これが大正解。予想以上にこの場所に適していたようで、小さな苗だったつるがぐんぐん伸びて、意図した通り板塀に絡んでくれました。

黄金ノブドウ

日陰で見る黄金葉は、花にも劣らない美しさ。まるで陽だまりのように、辺りを照らしています。植えて間もないので、まだ結実したことはありませんが、この美しい葉に宝石のような実がなる様を想像するだけで、ワクワクしてきます。

パーゴラを涼やかに彩るヤマブドウ

一才ヤマブドウ

日当たりのよいパーゴラに伸び伸びと絡んでいる「一才ヤマブドウ」。

秋の黒紫色に熟した実をジュースにして食すのが最大の楽しみですが、瑞々しい黄緑色の実の清涼感を味わえるのは、夏ならでは。翡翠玉のような実とこんもり茂った夏葉が、火照った緑に涼を呼び、庭に活力を与えています。

一才ヤマブドウの葉

また、肉厚でしっかりした夏葉は、食卓の上でも大活躍。例えば、冷茶や冷菓に添えたり、木製トレーに敷いてちょっとした料理を盛り付けたり…。

一才ヤマブドウの葉

ヤマブドウの葉を一枚添えるだけで涼しげな食卓を演出できます。さもないひと手間ですが、目に涼やかな食卓は不思議と食欲も湧いてきますね。

ヤマブドウ

強い夏の陽射しを浴びて、日に日に実が膨らむヤマブドウ。

暑気がほんの少し和らぐ夕暮れに、水遣りをしながらその小さな成長を見守るのも、夏のささやかな楽しみです。

小さな庭と花暮らし「秋の実りに感謝して、一才ヤマブドウの収穫」

造形美が際立つヘンリーヅタ

ヘンリーヅタ

ガーデンシェッドの壁面に絡んでいる「ヘンリーヅタ」もブドウ科の植物。吸盤のような小さな気根がへばりつくように成長します。

その特徴は、何といっても放射状に整然と並んだ5枚葉の造形美。深緑の葉の表は、一枚一枚葉脈に沿ってくっきりした白い模様で、裏は赤褐色。表と裏で表情が全く異なります。ガーデンシェッドの小窓に映るヘンリーヅタは、まるで絵画のよう。見れば見るほどその美しさにうっとりします。

ヘンリーヅタ

そのうえ、生育力も旺盛で、あっという間にガーデンシェッドの壁面を緑に。おかげで、庭の植栽とガーデンシェッドがしっくり馴染み、嬉しいことに、ダイニングの窓からの眺めも緑が心地よく良好になりました。

ギボウシとヘンリーヅタの寄せ植え

そして、庭には、ギボウシとヘンリーヅタの寄せ植えの鉢もあります。高台にある鉢から枝垂れるヘンリーヅタは、とてもしなやかで、壁面では見られない一面を見せてくれます。青灰色の斑入りギボウシ‘ファースト・フロスト’の葉とのコントラストも鮮やかで、この鉢植えを置くと植栽のアクセントになり、場がキリッと締まります。

ただ、やはり生育旺盛なので鉢植えでは収まらず、いつの間にか砂利の地面に根を下ろしグラウンドカバーの役目も。まさかグラウンドカバーにもなるとは、ヘンリーヅタの強健さ、恐るべしです。

アメリカヅタ

そんなヘンリーヅタの性質に魅了されて、じつは一昨年、斑入りの「アメリカヅタ」を庭に迎えました。ガーデンシェッドの足元に植えたこのツタもまた、葉の造形美が素晴らしく植栽効果抜群。ヘンリーヅタの深緑の葉とアメリカヅタの爽やかな緑が調和し、壁面がより涼しげで華やかな印象になりました。

ブドウ科の植物の葉

本格的な夏の暑さは、これからが本番です。

ブドウ科の植物の瑞々しい緑に癒やされ、力をもらいながら、酷暑を乗り切っていきたいと思います。

Credit


写真&文/前田満見
高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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