トップへ戻る

実録! バラがメインの庭づくり第6話~梅雨の時期のお手入れ

実録! バラがメインの庭づくり第6話~梅雨の時期のお手入れ

自宅で庭づくりをしている人にとって、「住み替え」は、庭の移転という大仕事も同時進行になります。このたび転居を機に、新しい庭づくりに一から着手することになった神奈川県在住で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんによる庭づくり奮闘記第6話。バラの最盛期が一段落し、二番花、三番花のために株を健全に維持する梅雨時期のお手入れについて、気を付けたいポイントを教えていただきます。

Print Friendly, PDF & Email

梅雨時期の庭の様子

バラ ‘雅’
Rose Farm keiji 作出 ‘雅’。

6~7月は梅雨のただ中ですが、バラの二番花や三番花を楽しみながら、今後のバラに関わる大切なお手入れをする時期でもあるのです。

イングリッシュローズ‘エヴリン’の二番花
一番花よりもだいぶ小さく咲いたイングリッシュローズ‘エヴリン’の二番花。

四季咲き性のバラの場合、5月に待ちに待った一番花が咲き、その花がらを取り除くために、5枚葉(本葉)の上でカットしておくと、その5枚葉の付け根から、新しい芽が伸びてきます。順調に伸びれば、5月下旬~6月に再び開花が見られますが、それらの花のことを「二番花」といいます。その後、春と同じように花がらをカットしていくと、品種によっての違いはありますが、約40~50日毎に花を咲かせてくれます。

同時に、この梅雨時には急に伸長したシュート(新梢)の出現などが見られるので、バラが最も育つ時期であることを実感します。今回は、この時期に、具体的にどのようなお手入れをしたらよいのかをご紹介します。

【お手入れ1】
6~7月に発生しやすい主な病害虫とその防除

雨量の多い梅雨時は、植物の生育が旺盛になりますが、同時に湿度も高く、バラの場合、せっかく新しいシュートが出て、新しい葉が茂っても、病気にかかってしまったり、害虫に食害されたりと、被害が最も多い時期でもあるのです。

では、具体的な病気について解説していきましょう。

黒点病(黒星病)

黒点病
黒点病。

症状

カビ(糸状菌)による斑点性の病気。梅雨や秋雨などの多湿時に発生しやすく、真夏の高温時には、一時少なくなります。放置すると黄茶色になり落葉します。その結果、光合成が抑えられ、根の成長や株の成長に支障をきたし、次期の花にも影響が出てしまいます。雨の多いこの時期は、病斑の胞子が雨の跳ね返りなどで周囲に広がりやすくなります。

ただし、他の果樹類などに発生する黒点病とは病原菌が違うため、相互感染は心配ありません。チッ素肥料の過多でも発生しやすくなります。

対処方法

黒点病にかかった葉は、見つけ次第すぐに取り除きます。

ご自身のバラを育てる目的に合わせた薬剤を使用しましょう。薬剤を使う場合、同じものを使い続けると、その薬剤に対する抵抗力がつき、散布しても効果が出なくなってしまいますので、系統の違う薬剤をローテーションさせて散布します。

また、チッ素肥料を過剰に与えないようにしてください。病気に悩まされないようにするには、近年多く作出されるようになった病気に強い品種を選ぶことも大切です。

うどん粉病

うどん粉病
うどん粉病。

症状

カビ(糸状菌)による伝染性の病気です。初夏や初秋の曇天で冷涼、乾燥した日が続くと発生しやすく、真夏の高温時には一時発生が少なくなります。白い粉をまぶしたように見えるカビが、特に新しい葉や茎、つぼみに発生します。放置すると株全体に広がり、光合成が抑えられるため、根の成長や株の成長に支障をきたし、次期の花にも影響してしまいます。発病した葉の上に胞子ができ、風に乗って周囲に広がるため、密植や不整枝の場合は蔓延する可能性が高くなります。チッ素肥料過多でも発生しやすくなります。 

対処方法

うどん粉病にかかった葉は、見つけ次第すぐに取り除きます。密植を避け、整枝を行い、ふところ枝(株の内側に向かって伸びている枝)や枯れた枝などを整理するとよいでしょう。黒点病と同様に、ご自身のバラを育てる目的に合わせた薬剤を使用し、株の様子を見ながら、系統の違う薬剤をローテーションさせて散布します。

また、チッ素肥料を過剰に与えないようにしてください。病気に悩まされないようにするには、近年多く作出されるようになった病気に強い品種を選ぶことも大切です。

灰色かび病(ボトリチス病)

症状

カビ(糸状菌)による伝染性の病気です。雨天などで湿度の高い日が続く梅雨や秋雨の時期に発生しやすく、密植や、日当たり・風通しが悪くて蒸れやすい場所にある株、肥料や水やり不足による弱った株、また、咲き殻をそのまま放置しておくなどの管理不十分な株に多く見られます。花弁やつぼみに小さな斑点が現れ、症状が進むと灰色のカビで花やつぼみ全体が覆われ、茎や葉にも広がります。胞子が風で飛散し、周囲の株に広がります。チッ素肥料過多でも発生しやすくなります。

対処方法

日頃のバラの管理を適切に行い、密植をせず、日当たりと風通しがよい場所に植えることが大切です。花がらは放置せず、こまめに切り取り、病気にかかってしまった部分は見つけ次第取り除きます。冬の元肥や追肥などは、適量やバランスを守って適期に施し、バラが健康に育つよう心がけましょう。病原菌は、ほかの植物(果樹、庭木、野菜、草花)などにも幅広く相互感染するため、バラ以外の植物にも気を配る必要があります。

薬剤については、黒点病、うどん粉病と同様。

ハダニ

ハダニ
TPhoto/unaturaShutterstock.com

症状

高温で乾燥時に、ハダニが発生しやすくなるので、梅雨明け直後は要注意です。クモの仲間であるハダニが葉などに寄生すると、そこから汁を吸い、バラはうまく光合成が出来なくなって弱ってしまいます。最初は葉に微小な白い斑点が見えますが、放置しているとクモの巣状になり、やがて株全体がクモの巣で覆われたような状態となります。 

対処方法

密植を避け、風通しをよくし、高温・乾燥時の水やりは、株全体にシャワーでかけます。特に葉裏にハダニが付いていないか注意し、ハダニが付いていたら水で洗い落とします。

ゴマダラカミキリムシ

ゴマダラカミキリムシ
ゴマダラカミキリムシ。

6~7月は、ゴマダラカミキリムシが飛来し、晴れた日の朝などに、よくバラの枝先に止まっていることがあります。そして7月になると、バラの幹の地際付近に卵を産み付けるので、見つけ次第捕殺します。ゴマダラカミキリムシの幼虫を「テッポウムシ」と呼びます。テッポウムシは幹の内部を食べ荒らし、地際にオガクズに似た糞を残します。そのまま放置すると株が枯死する場合もあるので、地際の糞の近くにある株元の穴を探して、専用の薬剤のノズルを差し込み、薬剤を注入して退治します。

【お手入れ2】
樹勢回復とシュート発生を促す追肥

バラの肥料
「バラの肥料」(発売/花ごころ)

花が咲き終わり、花がらを取り除いた株元には、「お礼肥(おれいごえ)」と呼ばれる追肥を施します。

この時期の追肥の目的は、それまでの開花でエネルギーを消耗した樹勢の回復と、新しくシュートを発生させ、株を若返らせることです。

追肥用の肥料はいろいろ販売されていますが、私は、バラにとって大切な三大栄養素であるチッ素、リン酸、カリがバランスよく含まれている有機質の固形肥料を選んでいます。

施す際には、まずバラの株元周囲の草を取り除き、枝先を剪定します。不要な枝を取り除いて整枝した後に、株の株元に適量を撒いています。

【お手入れ3】
充実した株に成長させるためのシュートの処理方法

バラのシュート
シュート。

バラの株自体がシュートを出すことは自然の摂理で、3〜4月頃から見られます。

私の新しい庭でも、土や肥料、植え場所の条件がそのバラに合ったのか、2月に移植した株からとても元気のよいシュート(株元からのベーサルシュート)が出て、生きる力強さを見せつけてくれました。

元気のよいシュートには、これからの未来が詰まっています。特に、一季咲きのバラのシュートは、来年の花数や花の状態にまで関わります。つまり、もう来年の春の花の準備に入ったともいえます。

シュートピンチ
シュートピンチの後。

しかしながら、勢いよく伸長したシュートをそのままにしておくと、栄養がシュートに取られ、他の枝が弱ってしまったり、バランスの悪い株になってしまいます。

つるバラ系以外のシュートは、できれば、ほうき状に花が咲いてしまう前にピンチを行い、株の充実を図ります。ピンチや施肥、そして梅雨の雨は、ベーサルシュートなどの発生を促し、株の若返りと共に、枝数や葉を増やし、光合成が十分行えるようにします。十分な光合成ができれば根と株が充実していき、今秋や来春に、よい花が咲くことにつながります。

【お手入れ4】
5月のバラの季節を振り返ること

失敗から学ぶ

今年1月に行った以前の庭からの移植作業を乗り越えて、無事に咲いてくれたバラたちですが、中には咲く時期がだいぶ遅くなってしまった品種がいくつかありました。

それらの株は、移植の際、枝をあまり短くカットせずに長いまま植えてしまったという共通点に気がつきました。

移植で根がだいぶ短くなってしまっているのに、大きな株のままでいて欲しいという願望からか、枝を短くすることに抵抗を感じていたのです。結果、それはバラに負担をかけることになったのか、なかなか新芽が出ずに、とても心配しました。しかし、なんとか新芽を出してくれて、5月遅くに、花を咲かせてくれました。

やはり、根の量に見合った枝の長さにしないといけないと、改めてバラから学びました。

‘コーネリア’
枝をあまり短くせずに植えてしまった‘コーネリア’(HMsK)。コンサバトリーの東側のフェンスで、他のバラにだいぶ遅れて咲きました。
’コーネリア‘
今年1月に誘引したての’コーネリア‘。
‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’(R)
同じく枝を短くせずに植えた‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’(R)。門の石の色に合わせて、西側のフェンスに誘引しました。
’ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド'
誘引したての’ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’。

新しく庭に迎えたバラ

この春、新しく庭に迎えたバラは、現在5品種ほどです。その中から今回は、‘エウリディーチェ’をご紹介します。

 ‘エウリディーチェ’
‘エウリディーチェ’(F)2016年、木村卓功氏作出。

優美で繊細なフリルのように波打つ花弁と、淡い花色、整った花形に、ダマスクとブルーの心地よい爽やかな香りが印象的です。

 ‘エウリディーチェ’

鬱陶しい梅雨の時期ではありますが、庭のバラや植物たちにたくさんの‘ときめき’をもらい、癒やされています。今後も、大切なバラたちが元気でいてくれるように、この時期、バラのお手入れをがんばっていきましょう。

梅雨のガーデン
Print Friendly, PDF & Email

人気の記事

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO