庭の草抜きが大変だから、もうコンクリートで埋めちゃおう。そんなことを思っている方は、ちょっとお待ちください! 雑草抜きがいかに面倒で労力がかかることか、そのあくなき戦いに疲れ果ててしまった気持ちもよく分かりますが、庭にはもっと有意義な活用法があります。暑い夏の日、緑に覆われた地面とそうでない地面の温度差は、なんと10℃にも! 造園家の阿部容子さんにお話を伺いながら、庭の価値を探ります。 

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庭が雑草だらけになるワケ

雑草
Pixbull/Shutterstock.com

「雑草が生えていることに罪悪感やストレスを感じる方は多いんです」と話すのは造園家の阿部容子さん。「でも、そもそも庭に雑草が生えてしまうのは当然。というのも、住宅地の造成には、雑草のタネが大量に含まれている山土や野ざらしの土を使用しているので、何もしなければ、あらゆる雑草が生えてきます。そして、『雑草』とひとくくりにして邪険にしていますが、植物学的に見たら、特殊な生態を獲得したユニーク植物たちで、まともに草取りしていてもかなう相手ではないんですよ」。

雑草
コンクリートのわずかな隙間から芽を出した雑草。kreativfabrika/Shutterstock.com

雑草は生態学的には「撹乱依存型」と呼ばれ、踏まれたり、抜かれたり、環境がかき乱される状態にめっぽう強い性質があります。アスファルトの隙間から雑草が生えているのを見たことはありませんか? これはどんな植物にもできる技ではなく、雑草といわれる植物たちだけがもつ特殊な能力なのです。例えば、野菜やバラなどは、適期に肥料をやったり剪定をしないと花や実をつけなかったり、逆に肥料を与えすぎても「肥料焼け」という症状を起こし、健全に生育できないことがあります。しかし、雑草は悪条件下でも種子を残し、好条件下ならより種子を多く生産するという性質があります。つまり、どんな環境下でもベストを尽くして必ず花を咲かせ、種子を残すというわけです。さらに、最初は草丈の低い一年性の雑草が発芽し、次に草丈の高い多年性の雑草が発芽してくる、というように、発芽のタイミングが異なる種類がたくさん土の中に仕込まれた状態にあるため、取っても取っても生えてくる、という草取りループから抜け出せないのです。

庭をコンクリートで覆うと灼熱地獄に

住宅街の庭
海外の住宅街の庭。小さくても快適。Hannamariah/Shutterstock.com

雑草で覆われた庭は雑然とした雰囲気ですし、ヤブ蚊も発生してしまいます。雑草だらけの庭をどうにかしたいと思っている方は非常に多く、その手段の一つとして、コンクリートで表面を覆ってしまうケースもあります。しかし、その前に、別の案を探ってみることを強くおすすめします。

というのも、コンクリートで覆われた庭は、夏の暮らしの快適度を著しく低下させるからです。コンクリートで覆われた地面は、真夏の日射で表面温度が60℃近くまで上がることも珍しくありません。これは、もし犬を飼っている場合、愛犬が肉球に簡単に火傷を負ってしまう温度です。もちろん靴を履いている人間にも過酷です。日射を受けた地面からは赤外放射という熱が発せられ、頭上からの日射に、足元からの赤外放射が加わり、外気温が30℃でも体感温度は40℃にも上がってしまうのです。近年は35℃を超える猛暑日といわれる日が続くことも珍しくありませんが、地面からの赤外放射がある場合、気温プラス10℃が体感温度だとすると、猛暑日の体感温度は45℃以上。もはや熱湯風呂です。

さらに、コンクリートで覆われた面積が広ければ広いほど、この赤外放射の熱量は増します。環境省が発表している「まちなかの暑さ対策ガイドライン」によると、真夏の正午(気温約33℃)に、幅の広い道路で歩行者が受ける受熱量を計算したところ、6畳の部屋で1,000Wの電気ストーブを10台使用した場合と同程度の熱量になったという報告があります。まさに灼熱地獄。こんな環境に長く身を置いたら、冗談ではなく死にそうです。

自動車が走る道路はアスファルトで覆う必要がありますが、自宅の敷地内にこんな過酷な環境を自ら作り出すのは、まったく名案とはいえません。もちろん、室内ではエアコンを利用するでしょうが、前述したように、外は電気ストーブを並べて家をガンガン温めているような状態なのですから、冷房効率はとても悪く、CO2排出量も無駄に上がってしまいます。草取りから解放されるというメリットを得る代わりに、灼熱地獄に毎夏、耐えなければならないなんて、あまりにも代償が大きく、無謀なチャレンジ。

しかし、もちろん選択肢は、この2つだけではありません。

緑で覆われた地面は10℃も低い!

グラウンドカバー
グラウンドカバープランツのグレコマ(左)とリシマキア・ヌムラリア‘オーレア’(右)。

おすすめの選択肢は、小さくても庭をつくることです。地面には雑草の代わりにグラウンドカバープランツと呼ばれる地被植物を植えます。地被植物は草丈が低く、地面を這うように育つため、緑の絨毯のように茂って、雑草が生えにくくなります。芝生もその一つですが、他にも花が咲くものや香りのよいものなど、いろいろな種類があるので、以下の記事を参考にしてみてください。

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地面をグラウンドカバープランツで覆った部分は、日向のアスファルトより10℃以上低いことが確認されています。そのメカニズムは、植物の蒸散作用にあります。植物は葉っぱの裏から水蒸気を出して水分量の調節をしており、気温が高ければ高いほど多くの水蒸気を放出します。この蒸散作用のおかげで、グラウンドカバープランツで覆った地面は日射を受けても表面温度が上がりにくく、夕刻以降は気温よりも低くなります。同様の理由で、家の周りに植物の垣根を巡らせたり、フェンスにつる植物を這わせたりすることも効果的です。ただし、蒸散作用は植物の生命活動の一環ですから、人工芝やフェイクグリーンなどでは、その効果を得ることはできません。

緑の木陰は同じ気温でも体感温度が7℃も低い!

また、樹木が作る木陰は、頭上からの日射と赤外放射を軽減し、同じ気温でも体感温度が7℃程度低くなるという結果が出ています。個人邸の庭では、あまり高くなりすぎないニシキギやマンサクなどの中低木を植えたり、藤棚などのようなパーゴラを設置するのも手です。また、ゴーヤなどで作るグリーンカーテンにも夏の強い日差しをカットし、蒸散作用によって気温を下げる効果があります。植物は日光を浴びて光合成し、新鮮な酸素をたっぷり排出してくれるので、緑の庭から入ってくる空気も美味しく感じられることでしょう。

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庭をつくり始める前に除草処理をしておこう

雑草対策
rigsbyphoto/Shutterstock.com

さて、植物を植える前に、大事な作業が除草処理です。前述したように、庭の土にはあらかじめ雑草の種子がたっぷり含まれているため、そのまま庭づくりをスタートすると、雑草が生えてきます。草取りの労力を減らすために、阿部さんは造園の前準備として、除草剤を使って一度地面をリセットしてから土壌改良を行い、植栽をしています。「除草剤にはさまざまなタイプがあります。発芽前の種子に効くものや、すでに生えている草に効くもの、また持続期間も2〜3週間で切れるものから半年以上続くものまであるので、適したものを選んで使います」。

草取りで心が折れそうな人へ。除草剤の効果的な使い方

植物を植えるエリアと人の通り道、居場所を明確に

庭

除草したあと、地面の表面温度が下がるからといって、一面に植物を植えてもよい結果にはなりません。植物の手入れをしたり、家との出入りをしたり、庭の中には人が通る動線があります。いつも踏まれているところは、芝生も傷み、張り替え作業が必要になります。ですから、人の動きを予測し、歩く場所にはあらかじめレンガやタイルで小道をつくっておきます。

しばしば、屋外空間が車庫スペースとして大幅に取られる場合がありますが、その場合にはグラウンドカバープランツで地面を覆い、車のタイヤが通る部分だけをタイル敷きにするという方法で緑化面積をつくることができます。

庭
かたくり工房の庭にあるバラのパーゴラ。

また、阿部さんは庭に人の居場所をつくると、より暮らしが楽しくなると話します。「デッキを設けたり、ガーデンファニチャーを置く場所をあらかじめ決めて庭をデザインするといいですよ。室内から眺めるだけでなく、庭を生活空間の一つとすることで、今のようなStay Homeの難局も苦にならずに過ごせると思います。実際、そのように思われる方が多いようで、造園の依頼は増えていますね。緑は温度を下げるというだけでなく、さまざまな季節の楽しみをもたらし、植物の手入れをすることでリラックス効果が得られることも科学的に分かっています」。

緑の効果
テーブル一体型のデッキフェンスは、かたくり工房オリジナル。

他にもキッチンガーデンや果樹、ハーブなど、さまざまなアイデアで庭のある楽しい暮らしを提案してくれた阿部さん。次回は、阿部さんがつくった小さな庭の実例をご紹介します。

会員募集

Credit

アドバイス/阿部容子
ガーデンデザイナー・造園家。岐阜県可児郡「かたくり工房」に所属。公共、企業、個人の庭を全国各地でデザイン、施工。ぎふ国際バラコンクール審査員として岐阜県「花フェスタ記念公園」でも活動。アメリカ園芸療法協会会員として米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を活かし、病院のガーデンも施工しています。
「かたくり工房」岐阜県可児郡御嵩町伏見747  http://www.katakuri.co.jp/

文/3and garden

参考文献/
『雑草はなぜそこに生えているのか』稲垣栄洋著(ちくまプリマー新書)
「まちなかの暑さ対策ガイドライン」(環境省)

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