昔から日本庭園で植物の美しさを際立たせる秋。その色彩豊かで優美な姿は、私たちの心を強く揺さぶります。今回は、日本人と秋の庭の関係性や歴史、そして昔からこの季節に親しまれている草花を紹介します。秋の自然の美しさを参考にしてガーデンデザインをしましょう。
天然色の美しさ「秋」に学ぶガーデンデザイン
日本人にとっての「秋」
私たち日本人は古の時代より、四季の中でも「秋」という季節を特別のものとしてとらえてきたといえます。植物の観点からみても、国花も春の「サクラ」と秋の「キク」、また春の薬膳としての七草にくらべ、秋は景観的、情緒的にとらえた七草になります。
秋の七草は、オミナエシ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、クズ、ハギです。それぞれの名前の頭文字をとって、「オスキナフクハ(お好きな服は?)」で覚えると簡単です。これらの植物は、午後の夕陽で観賞するとより美しく感じます。したがって庭の中でも夕陽のあたる場所に植栽します。

秋の庭~日本独特の美意識が集約
日本の秋庭をデザインするときには、まず、「情緒」と「借景」という言葉をキーワードに考えておくとよいでしょう。辞典をみると、「情緒」とは、事に触れて起こるさまざまの微妙な感情。また、その感情を起こさせる特殊な雰囲気とあります。英語では atmosphere 「雰囲気」、emotion、sentiment「感情」になりますが、とても繊細で精神的な意味合いが含まれているように思います。
次に、「借景」ですが、これは造園技法のひとつで、庭園外の山や樹木などの風景を、庭を形成する背景として取り入れたものとなり、英語では、surrounding landscape「囲まれた環境や景観」です。これも、英語では表現しきれない日本人独特の美意識を感じます。つまり、「情緒のある庭づくり」「借景を活かした庭づくり」ということになります。
春から夏の花と異なり、秋の花は控えめな色彩、形状をしているものが大半です。自然の紅葉に彩られた野山に出掛け、美しい森の中で、美的感覚を体感しながら季節感を育てることもガーデンデザインには必要です。
眺めて楽しむ、秋の七草
秋の七草は、万葉集で山上憶良が詠んだ歌
秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七草の花
萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花また藤袴 朝がほの花
が由来です。尾花はススキ、朝顔はキキョウのことです。







秋を彩る宿根草や花木、樹木

バラ科ワレモコウ属
秋風に揺らぐ花の雰囲気が特徴的。落葉多年草。

キンポウゲ科サラシナショウマ属
シェードガーデンの背景に用いるとよい。落葉多年草。

キク科ツワブキ属
日陰でもよく育ち、日本庭園の下草などに植えられる。
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