季節によって彩どり豊かに生育する日本の植物たちは、昔から海外からのプラントハンターたちを魅了していました。日本の植物に魅了された彼らは、母国に植物を持ち帰ると共に、日本の園芸文化も合わせて広めてくれました。今回はそんな海外のプラントハンターと日本の植物のお話をご紹介します。
- プラントハンターと日本の園芸文化
「プラントハンター(Plant hunter)」は、その名のとおり植物をハンティングする人という意味になります。
プラントハンターの起源は、北西ヨーロッパといわれ、17世紀から18世紀にかけて貴族たちが、当時手に入りにくかった地中海沿岸のオレンジやレモンをイタリアやスペインからアルプスを越えて運ばせたことに始まります。その後、英国人がヨーロッパ大陸からサクランボ、オレンジ、アネモネ、チューリップなどを輸入、19世紀に入ると、舞台はヨーロッパからアジアやアフリカ、中南米へと広がっていきます。このころから「プラントハンター」と呼ばれるようになり、貴重な種類の植物を求めることから、徐々に植物学者が採集を担うようになっていきました。
日本を訪れた英国のプラントハンターにロバート・フォーチュンという人がいます。ロバート・フォーチュンは、1860年、帆船マーモラ号に乗って長崎から神奈川にやってきました。日本の植物はすでにツンベリー博士やシーボルト博士によってヨーロッパに標本などで紹介されていましたが、植物大国の日本にはさらに多くの園芸品種もあることにロバート・フォーチュンは直面しました。『江戸と北京』という著作にも紹介されている日本原産のノギクの仲間が、彼の目に留まったといわれ、「日本を象徴する花」とまで紹介しています。
150年以上も経過した現在、彼が紹介した野生のノギクの仲間が少なくなってきています。このような日本らしさ、情緒のある植物たちが季節ごとに見られなくなるのは、日本の文化もともに消えていくことにもなります。
秋の季節、山やハイキングに出かけ自然の中で可愛い日本のノギクたちに出合ったなら、ゆっくり観察してみてください。かつて遠くヨーロッパから訪れたプラントハンターたちが、ノギクに出合い感動したことを想像するとロマンを感じることでしょう。ただ、絶滅が危惧されている植物たちなので、その場所から採取して根こそぎ持ち帰るようなことは避けましょう。英国では、山取りされた植物の販売は禁止されています。現在、ノギクは増殖された生産品として普及しています。
プラントハンターたちの果たしてた役割は、単に植物の収集だけではありません。その国の文化も一緒に、つまり人と植物のかかわりも一緒に伝えてきたことが評価されているのです。

シーボルトが持ち帰った植物
シーボルトはオランダに帰国後、日本において収集した植物標本や日本人絵師が描いた下絵をもとに『日本植物誌Flora Japonica』を作成し、30分冊として刊行しました。そのなかで、アジサイは日本の妻・お滝にちなんだ「ハイドランジア・オタクサ」と名付け、紹介しています。



日本に自生しているノギクの仲間

Kalimeris yomena
キク科 ヨメナ属
名称に「菜」の字がつくキク科のものは食用になる。

Aster ageratoides ssp. Ovatus
キク科 シオン属
多花性で、暑さ寒さに強く非常に繁殖力が強い。

Chrysanthemum pacificum
キク科 キク属
磯に自生することから名付けられた。花は筒状花のみ。
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