自宅で庭づくりをしている人にとって、「住み替え」は、庭の移転という大仕事も同時進行になります。このたび転居を機に、新しい庭づくりを一から着手することになった神奈川県在住で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんによる庭づくり奮闘記をご紹介。これまでガーデニングを満喫していた馴染みの庭から、新しい庭へと植物を移動させるまでの10の手順を解説していただきます。
目次
新しい庭づくりの計画がスタート

これまで何年にも渡って育ててきた我が家の庭では、多種のバラやその他の植物たちが旺盛に茂っています。ですがこの度、地域の区画整理のために、いったん引っ越しをしなくてはいけなくなりました。それに伴い、新しい庭づくりに向けて移転準備に着手し始めたところです。

現在、バラの苗だけでも約200種類以上はありますが、これら全ての移植は難しく、根掘りが可能な株のみの移植となります。また、バラだけでなく、樹木や牡丹、ハーブや宿根草など、庭にあるあらゆる植物も移植させなければなりませんので、庭全体の植栽プランを立てながら、新しい庭づくりを進めて行く予定です。
初回である今回は、「実際に移植作業を行う前までにすべきこと」をご紹介したいと思います。
庭づくりをするために1「新しい庭の特性を知る」

庭の特性を知るには、方位、面積、日照時間、風向き、敷地内の日陰と日当たり部分、雰囲気など、移植する植物たちにとっての適材適所を見つけやすくするために知っておくことが必要です。
確認した結果、移転先の土地は南に面しており、冬は暖かいのですが、夏の気温は相当高くなると予想しました。ですので、暑さ対策として、落葉樹を南側や西側に配し、バラもなるべく暑さに強い品種を植栽したいと考えています。

そこで、まず植えたのは、落葉樹の枝垂れ桜です。春~秋は葉が直射日光を遮り、冬は落葉して暖かな日差しが入ります。

庭づくりをするために2「土の状態を知る」

新しい庭をつくる予定の土地が、これまでどのように使用されていたのかまでは解りませんし、以前も宅地だったのか、それとも野山や畑だったかによって、土の状態は全く異なります。
ですので可能でしたら、現状の土の状態を調べて、移植する植物にとってなるべく適切なものとなるよう、土作りや施肥を行いましょう。
今度の庭は、以前も宅地だったためか、土の中にはコンクリート片が多く混ざっていました。念のため、専門家に土壌分析を依頼することにしました。
土壌分析結果と対処について

【専門家による土壌分析の結果】
項目 | 計測値 | コメント |
EC(電気伝導度) | 0.016mS/cm | |
pH | 6.86 | ややアルカリ |
アンモニア態窒素 | 0.4 | |
可溶性りん酸 | 2.9mg/100g | 少なすぎ |
加里(交換性カリウム) | 17.2mg/100g | 少ない |
石灰(交換性カルシウム) | 909mg/100g | 異常に高い |
苦土(交換性マグネシウム) | 77mg/100g | |
CEC(塩基置換容量) | 20.4me/100g | |
腐植率 | 2.87% | 少なめ |
【診断コメント】
- 腐植率が低めなのでバラの堆肥は、15~20%程度必要。
- 可溶性りん酸が異常に少ないので堆肥と同時にリンカリ肥料を施すとよい。
- 石灰909mg/100gはかなり過剰だが、pHが6.86なので可溶性の石灰ではないと思われる。石灰が多いのは新築時の石膏ボード、基礎のモルタルなどの影響なのではないか。
【対策】
- バラを1株植え付ける際、直径40×深さ40cmの植え穴に対し、有機バラの堆肥5ℓ+腐葉土(または完熟バーク堆肥)5ℓを掘り上げた土にしっかり混ぜ合わせ、バラの肥料350~500g+リンカリ肥料100gをプラスするとよい。
- コンクリート片は、なるべく取り除いておくことも必要。
とのアドバイスをいただきました。

庭づくりをするために3「各植物の移植に適した時期を把握する」

植物は、移植に適した時期を守らないと枯れてしまうことがよくあります。
各植物の移植適期を確認してから植え替え作業を行いましょう。例えば、バラであれば春が来る前に終わらせる必要があります。
庭づくりをするために4「各植物の特性を把握する」

常緑樹や落葉樹、樹形や樹勢、高さや幅などの寸法、開花時期、花色、葉色、茎の色、つぼみの色。そして、バラの系統から手入れ方法など。その他、各植物の特性をできるだけ把握しておくことが大切です。育てている植物のデータをノートなどに記録しておきましょう。
庭づくりをするために5「植栽プランニング図を作成する」

これまでに育ててきた植物や、これから育てたいと思っている植物の写真を揃えて、植栽プランニング図を作成します。
実際に花が咲いていない時期には、それぞれの花色や形、特性を正確に思い出すことができない場合もありますので、画像を整理しておくと、植栽プランを立て、図を作成する際にとても便利です。
庭づくりをするために6「庭の配色を考える」

庭づくりにおいて、配色を決めることは案外難しい作業です。迷った時は、色相環を利用するのも方法です。
色相環上の対角にある向かい合う位置の色を「補色」といい、補色同士の組み合わせは、お互いを引き立て合い、はっきりした印象になります。
色相環上で隣り合う色の組み合わせは、淡いグラデーションを作り、落ち着いた優しい雰囲気になります。
庭づくりをするために7「フォーカルポイントを考える」

庭の中で目にとまるアクセントなど、フォーカルポイントとなる場所や植物、構造物を考えておきましょう。
庭づくりでは、一度植栽してしまうと、なかなか簡単にはやり直しができません。ですから、実際に植物を植え付ける前に、さまざまな角度から庭を見渡し、プランを練っておくことが大切です。その際、フォーカルポイントをどこにするか、何にするかを決めておくと、植栽プランが立てやすくなります。

庭づくりをするために8「庭の楽しみ方や理想を考える」

庭の楽しみ方は人それぞれですので、あらかじめ、自分や家族にとっての庭の楽しみ方や理想、目的を考えて共有しておくことも大切です。
我が家の場合は、「今まで通り、四季を通して季節の植物を楽しむこと。特にバラは、花を愛でるだけでなく、飲食やポプリなど、暮らしの中に利用するためにも、無農薬や低農薬で育てて、バラのある暮らしを楽しみたい」と考えています。

レシピなどはこちら
●バラを食す! レシピ「薔薇色のバラのドレッシング」&オードブル
庭づくりをするために9「植物に名札を付けておく」
植物の移植を行う際、品種名が分からなくなってしまうと、植え付ける場所の選定が難しくなってしまいますので、必ず名札を付けておきましょう。
庭づくりをするために10「庭づくりの時期や工期を決める」

植物の移植などが適した時期に行われるように、それに合わせた事前の土作りや構造物設置などの工期を決めることが大切です。
こうして全体の植栽プランの手順の流れを把握してから、実際の移植や植え付けの作業に取り掛かります。
移植作業は、植物にとっても、また作業を行う人にとっても大変なことです。少しでもスムーズに、負担少なく行うためにも、ご紹介した10の手順を参考に事前の準備をしていただければと思います。
協力
株式会社花ごころ 村田高広
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -

神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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