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川崎市緑化センター設立40周年記念コンテナガーデンコンテスト報告
鉢の中にいくつかの植物を組み合わせて、季節感や草花のコラボレーションを楽しむガーデニングの一つ、コンテナガーデニング。そのテクニックや仕上がりを競うコンテナガーデンのコンテストが2019年秋に開催されました。その主催者である神奈川県「川崎市緑化センター」で緑化相談員を担当しながら、ガーデニングの講習会を数々実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする遠藤昭さんに、2019年秋に行われたコンテストをレポートしていただきます。
コンテナガーデニング普及のために
コンテストを企画し実施
僕のサラリーマン時代はガーデニングが趣味だった。その趣味を定年退職後は仕事にしてしまった。当初は、自営でオーストラリアの植物を中心としたガーデンデザインや植栽、そしてガーデンレッスンを中心に行っていたが、ご縁があり、川崎市緑化センターという都市緑化植物園の相談員や講習会をするようになった。それからは、花と緑の普及啓蒙の仕事で社会貢献できるという実感が次第に楽しくなっていき、自営の仕事は減ったが、今はこの植物園での仕事が中心になっている。
僕自身がガーデニングのコンテストに最初に応募したのは20年ほど前になる。当時は軽い気持ちで、地元の園芸店のコンテストに応募したところ、なんと優勝したのだ。それをきっかけに、さまざまなガーデニングコンテストに応募するようになって、時には副賞でハワイやニュージーランドへ旅行に行かせてもらえたりして、ますますガーデニングが面白くなりハマッていったのだ。そんな自身の経験から、職場である植物園でもガーデニングのコンテストを主催して、頂点を引っ張るとともに、ガーデニングをする人を増やしたいと常々思っていた。
そんな思いもあって、3年前、川崎市緑化センターが開催した「秋の緑化フェアー」で、庭がなくてもガーデニングが楽しめる「コンテナガーデニングのコンテスト」を企画し、実施した。しかし、予算もなく、人手でもなく、初回は、数名の知り合いと、自分で作った賑やかしの数点の作品を出品。ほぼ独り芝居で終わった。2年目も同じようなものだった。職場には、ただでさえ人手不足だというのに、余計な仕事を増やすことに反発する空気さえあった。
3年目の今年、思いがけず川崎市緑化センターが設立40周年という節目の年となり、その目玉の記念事業として「コンテナガーデンコンテスト」を企画して申請したら、指定管理者母体の本部にその趣旨が認められ、地元の区の地域振興課も応援してくれたことで、今までにない規模で実施することができたのだ。
まだまだ、そのレベルは全国規模のコンテストには遠く及ばないが、僕が担当した寄せ植え講習会に参加してくれた人たちが積極的に出品して実践を経験したり、地元の盆栽協会に声をかけて、和の伝統の盆景で参加していただいたりすることとなった。自分で育てた植物だけを使って参加してくれた方も多く、商業主義の匂いのない、多様性に満ちた、独自性のあるコンテストになったと思う。
出品作品を最優秀賞からご紹介
ここからは、今回の応募作品をご紹介したいと思う。まずは、最優秀賞(多摩区長賞を兼ねる)から。賞品は5,000円の花ギフト券が贈られた。
この作品は、圧倒的に審査員の得点を集めた。
長い歳月をかけなければできない逸品である。育てる園芸を実践した努力の結晶のような作品だと思う。僕が審査員だったとしてもこの作品を選んだだろう。センスと栽培力に脱帽。主催者として、このような作品が出品されたことを誇りに思う。
作者:宮前ガーデニング倶楽部
タイトル:庭のかたすみ、秋の終わりに
説明文:切り株のコンテナは30年以上も前から庭の片隅にあったもの。花材はすべて自宅の庭や、活動している宮前ガーデニング倶楽部の花壇から調達し、秋の終わりを表現した。切り株に植えられた花材は、キンカザンススキ、ホトトギス、フジバカマ、イワシャジン、ダイモンジソウ、マユハケオモト、オウゴンニシキ、アジュガ、ルドベキアタカオ、陶器の花材はツルウメモドキ、マンリョウ、ダイモンジソウ、石の器の花材はシマトネリコ。
そして、優秀賞が古木を生かした作品。
嬉しい作品です。職場の不用品置き場で倒木の古木があり、その時居合わせた盆栽協会の方に古木を使った作品を依頼したら……さすがの仕上がりです。こんな素敵な作品に!
従来の寄せ植えの概念を打ち破る作品だと思いませんか?
タイトル:苔盆栽
説明:古木のフォルムを生かし、苔を中心とした作品に仕上げました。
そしてもう一つの優秀賞。やはり盆栽系が選ばれました。
タイトル:せせらぎの森
説明:湖畔の杉林を再現しました。
審査委員特別賞は2作品です。
1点目の作品が上写真。
タイトル:エンドレスサマー
説明:相次ぐ大型台風の襲来に見舞われた令和元年の秋。季節の進みは半年ほど遅く、北海道や山間部に初雪、北関東から初霜の便りが聞こえたばかり。関東南部の平地ではまだまだ夏の花が咲き続け、クリスマスムードと残暑が同居する。
審査員特別賞のもう一つの作品。こんな寄せ置きガーデニングも令和には台頭する予感を感じさせてくれるもの。
タイトル:「combination garden」(組み合わせる庭)
説明:コンテナガーデンの一番のよさは、動かせることと組み合わせること。いろいろな植物・素材(鉢)を共演させる楽しさ。寒くなってきたら、寒さに弱い植物を屋内に取り込み、寒さに強い植物に移し替える、コンテナガーデンの楽しみを考えてみました。
そして、僕にとってとても嬉しい作品を2つ、ご紹介しよう。
ちょうど1カ月ほど前に、初級者向けの寄せ植え講習会があったので、受講生に参加を呼び掛けた。そうしたら、2名が参加してくれた。
講習会の成果を次のステップに実践してくれ、とても嬉しい。こんな普及活動の流れができることは素晴らしいと思う。この仕事をやっていてよかった! と、とても勇気づけられた作品だ。
タイトル:小さな秋
説明:秋の色で小さくまとめました。
シックなカラーリーフを上手に組み合わせた、初級者とは思えないセンス! 素晴らしい。
もう1点が、
タイトル:そっと春を待つ
説明:チューリップとスイセンの花が春に咲く!
講習会で習った通りに、草花の中に春咲くチューリップとスイセンの球根が埋め込んであるのだ。
あと、入賞を逃したが、僕が個人的に評価したい作品をご紹介させてほしい。
タイトル:緑化センターの夕焼け
説明:大好きな緑化センターからみる夕焼けをイメージして作りました。
素晴らしい植物の使い方とセンス。じつは、元スタッフが出品してくれたもの。
もう一つ、入賞はしなかったが、僕が評価したい作品がコレ。サボテン・多肉を使用した素晴らしいコンセプトと栽培力だ。今後、こんな作品が増えてくれると嬉しい。
タイトル:サボテンの生長を楽しむガーデニング
説明:ガタつき使えなくなった台車をリメイクし、さまざまな種類のサボテン、アガベの小株を植えました。また、植物の形の違いや生長の過程をゆっくり楽しめるように、間隔を広く取り、シンプルな植え付けを心掛けました。
今回、予想を超える25の作品が応募され、それぞれに素敵な作品だった。初めてコンテストに応募したという方も多く、皆さん、入賞はさておき、コンテストに参加することを楽しむ姿が印象的だった。
では、参加作品をご紹介しよう。
タイトル:朝寒を楽しむ
説明:庭先に置いて、秋の寒い朝に明るい気分になれるような、気軽に楽しめる寄せ植えを作りました。
タイトル:家族で見つけた秋の色どり
説明:家族3人で「秋」をイメージして苗を選びました。
タイトル:踊り子たち
説明:こんな組み合わせ、考えたことなーい!(そんな先輩の声が聞こえそうです)。メインのウツボカズラの動きが、楽しそうに踊っている踊り子たちのようです。
タイトル:クリスマス前
説明:クリスマスツリーを作る前に、初冬に楽しめたらと思い作りました。
タイトル:初霜
説明:初々しい少女たちのようにシロタエギクを合わせたら、ふわふわとした白っぽい初霜が降りたようです。ゼラニウムの紅とチェッカーベリーの赤がアクセント。
タイトル:緑爽
説明:緑色の濃淡と揺れる葉っぱの流れを楽しんでいます。
タイトル:春待ち
説明:今年、咲かなかったジギタリスが急に大きくなりました。春になったら立派に花を咲かせようと春を待っています。組み合わせの花を探して、ようやく巡り合えたボリジを組み合わせました。
タイトル:渓谷
説明:古木に生息するアイビーと石付け真柏等の寄せ植えにより渓谷の景色を創出しました。
タイトル:東京2020と三年の想い
説明:五輪の色を組み合わせた作品と、コンテスト参加3年目のコニファーを使用した作品です。
タイトル:秋のテーブル
説明:白い小花とシルバーリーフで秋の風を表現し、ワインカラーの葉(グラス)を添えて全体を引き締めました。乾杯!
タイトル:岬の断崖
説明:船から見た風景
タイトル:実り
説明:秋の収穫をイメージしてススキを中心に植物を選んでみました。色彩を抑えて明るい感じに。
タイトル:秋のハーモニー
説明:今回、初めてトライしました。夏の空から秋の深い空へと思いを込め、紫の花を中心に楽しく植えさせていただきました。紫バジルやイポメアを添えてみました。
タイトル:渓谷
説明:寄せ植えで、青森県奥入瀬渓谷をイメージして作成しました。主な使用材料は、4つ。1.主木のモミジはカエデを、2.川の白は化粧石で、3.岩は石を使用、4.苔は杉苔を使用しました。
タイトル:真冬に紅葉・頌春に花咲く
説明:花材は全て自宅の庭から調達。寒くなると斑入りセリ(フラミンゴ)はピンクに染まり、ウズラバタンポポはヒスイ色に変化。クリスマスローズは自家交配した種から育てた。
ピンク色の八重の花が咲く早春が待ち遠しい。コンテナの中で隠したチューリップが咲くのは桜の頃かな?
タイトル:多摩の源流
説明:多摩川の水の流れを表現。
研修も兼ねて「スタッフ部門」に挑戦
以上、一般公募分をご紹介したが、実は緑化センターのスタッフも研修を兼ねて楽しもうと制作し、「スタッフ部門」として展示。本部から賞品をいただいた。
14点ほど集まったが、その中から数点をご紹介しよう。
タイトル:「実りの秋」
説明:イチジク、姫ザクロ、四季なりイチゴ等の実のなる植物を中心に、豊かな秋を表現しました。
タイトル:日本の伝統美
説明:切り株を土台にして、こけに山野草を植え込みました。古瓦に苔玉も!
タイトル:充実の秋
説明:緑化センターでの仕事も3年になり、秋色とともに仕事の充実ぶりを表現。
若手男性の作品。写真は背景に溶け込んで見えるが、現物はバランス感もバッチリだった。
タイトル:わびさび
説明:四ツ目垣の向こうに見えるわびさびを表現
最後に僕の駄作です。
タイトル:令和のガーデニング
説明:世界のさまざまな文化がガーデニングの世界でも融合し、新しい文化と芸術を創造していく予感を表現してみました。輪の植木鉢に数年前に作った多肉の寄せ植えをリメイク。
伊勢ゴロタを置き、家に転がっていたワニを置いてみた。古木を置き、アガベとチランジアなども使ってみた。
もう一つ、僕の駄作。
タイトル:初級者向け講習会見本
説明:実際に春の講習会で製作する見本を2つ展示しました。展示の仕方として、花台に椅子がおしゃれでしょ!
ということで、今回は沢山の作品をご紹介させていただきました。まだまだ、よちよち歩きのコンテストですが、やがて「プロへの登竜門」になるくらいの、上級者から初心者までがさまざまなジャンルで楽しめるコンテストに育てていけたらと思います。
審査員の依頼とか、審査会、表彰式の司会進行等々、慣れないことが多く大変でしたが、充実した楽しいお仕事でした。また、来年は皆さまの出展をお待ちしております。
Credit
写真&文/遠藤 昭
「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。
ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
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