ハーブ(Herb)の一種、バジル。いまでこそ日本でも広く知られるバジルが普及したきっかけは、「イタリアン」、いわゆる「イタ飯ブーム」です。それまでは、プロの料理人が扱う素材としての認知度でしたが、この頃に一気に市民権を得た感があります。バジル自体は江戸時代に日本に入ってきたとされ、当時は種を水に浸すと出るゼラチン状のもので、目に入ったゴミを取り除いていたことから、「目箒(メボウキ)」と呼ばれていました。ここではこのバジルを例に、植物栽培の基本ともいえる水やりについて、詳しく見てみましょう。All Aboutガイドで、ガーデンライフアドバイザーの畠山潤子さんにお聞きしました。
目次
バジルを育てる前に知っておきたいこと
爽やかな香りが特徴的なバジルは、古代ギリシアでは「王様のハーブ」と呼ばれていたとか。オリーブオイルやトマト、チーズともよく合います。種は発芽しやすく、日本のような高温多湿な気候でも元気に育つことから、一躍人気のハーブとなりました。
バジルの基本データ
学名:Ocimum basilicum
科名:シソ科
属名:メボウキ属
原産地:熱帯アジア、アフリカ
和名:目箒(メボウキ)
英名:Basil
開花期:7~10月
花色:ピンク、白
発芽適温:20℃以上
生育適温:20~25℃前後
バジルを種から育てるなら、春、4~6月頃が適期です。春のガーデニングシーズンには、ポット苗がよく出回っていますので、園芸ビギナーのかたは苗から育て始めるとよいでしょう。ひと鉢あれば、料理の際にさっと摘んで、フレッシュなバジルを楽しむことができます。
水やりの方法と、そのタイミング
バジルの水やりのタイミングは、時間帯でいえば朝のうちがベストです。日が高くなる前の、午前中のうちに水やりを済ませましょう。
バジルは鉢植え、地植えのどちらでも栽培できますが、それぞれ水やりの仕方や頻度は異なります。次の項からは、植えつけ別の水やりを紹介しましょう。
鉢で育てている場合の、バジルの水やり
水やりの頻度
バジルは水はけ、水もちのよい、肥えた土を好む性質があります。特に夏期の乾燥に弱いですが、過湿にも注意をする必要があります。
通常は、鉢土が乾いていることを確認してから水やりをします。天候により土に湿り気が残っている状態であれば、水やりは不要です。従って、必ずしも毎日水やりが必要なわけではありません。
水やりのコツ
「鉢土が乾いたら、鉢底穴から水が流れ出てくるまでたっぷりと水やり」というのが基本です。土の表面だけが濡れた程度の水やりでは、根まで水が届きません。ですから、ジョウロなどで水を与えるときは、底から水が流れ出ているかを、しっかり確認してください。
水やりの確認方法
鉢植えのバジルの水やりのタイミングを確認するには、指で土をさわってみる、あらかじめ鉢土に割り箸などを刺しておいて引き抜いて湿り気があるか見る…といった方法があります。両手で持てる大きさの鉢植えであれば、水やり前と水やり後の鉢の重さを体感しておくというのもひとつの手です。
なお、バジルを枯らしてしまう原因としては、乾かしすぎてしまった場合と、日課として毎日せっせと水やりすることによる過湿の場合が多いので、注意します。「乾と湿のメリハリ」を意識して水やりをしましょう。
地植えの場合の、バジルの水やり
水やりの頻度
地植え栽培の場合には、バジルがしっかり根づいたあとは、自然に降る雨だけで、基本的に水やりは不要です。これは、土の量が鉢植えに比べて、圧倒的に多く、地中に水分が蓄えられているためです。しかし、雨が降らない日が続き、極端に乾燥している場合には、枯らしてしまう前に土中にしっかりと水がしみ渡るように水やりをしましょう。
水やりのコツ
前述したとおり、水やりを行うときは、土の奥、根の先端まで水が届くように、たっぷりと与えます。
水やりの確認方法
極端に雨が降らない日が続いたときなどは、表面だけで判断せず、地中に湿り気があるか土を掘って確認します。
水やりは、季節によっても多少変わります
水やりの具合は、天候のほか、植物の生育状態や季節で多少変わります。そこで、この項では季節ごとの違いを見ていきましょう。
春~初夏(鉢植え、地植え)
この時期は、バジルの種まき適期となります。種まき後は、発芽するまで土を乾かさないようにしておく必要があります。水やりの際に、バジルの種が流れてしまわないよう、静かに水やりをします。
水を張った容器に苗床を入れて、底穴から水を吸い込ませる「底面給水(底面灌水)」というやり方もあります。この方法では、土に十分水分が行き渡ったら、苗床は水から引き上げます。
なお、植え替え後のバジルは、活着(根づいて生長を続けること)するまで1週間程度は、地植えであっても土の表面が白っぽく乾いたら水やりをします。
梅雨時(鉢植え、地植え)
バジルは、日本の高温多湿の気候にも比較的強いハーブです。しかし、勢いよく水やりしたり、雨が激しく降ったりしたときに、泥ハネで株元の下葉が傷むことがあります。株元にマルチングを施すことで、泥ハネが防げます。
夏(鉢植え)
基本どおりの水やりをします。日によっては、朝の水やりだけでは足りないことがあります。その場合には、夕方にもういちど水やりをしましょう。また、この時期のマルチングは、株元の乾燥を防ぐ働きがあります。
秋(鉢植え)
基本どおりの水やりをします。この頃になると次々と花穂が立ち、収穫の終わりが見えてきます。種を採る場合には、種が熟すまで水やりを継続します。
バジルの水やり、注意点が知りたい
鉢植えの場合の注意点
地中海地方原産のハーブなどは乾燥気味を好みますが、バジルはやや湿り気があったほうがよく育ちます。鉢植えでは小さい鉢ほど土の量が少ないため乾きやすく、大鉢とは乾き具合が異なるということを頭に入れておきましょう。
鉢植えのバジルに勢いよく水やりすると、水は鉢の内面を伝ってすぐに流れ落ちてしまい、肝心の根に水が行き渡っていないことがあります。ジョウロで水やりをする際は、ハス口を下向きにする、または水差し状にして株元にやさしく水をあげましょう。
バジルの鉢の下に鉢受け皿を置いている場合は、水やり後に鉢底から流れ出た水はそのままにしておかず、必ず捨てるようにします。鉢受け皿に水が溜まったままでいると、鉢の中がいつまでも乾かず過湿となり、根腐れしてしまうことがあるからです。
逆に、鉢受け皿に水が溜まるのが嫌だから、鉢底から水が流れ出す前に水やり終了!という「水のちょいやり」もNGです。「バジルを元気に育てるには、適した土作りと植え替え(定植)が必要です」
で、土の団粒構造について解説していますが、水やりをすると団粒と団粒の間の空気が押し流され、ここに水分と共に新しい酸素が供給されます。しかし「ちょいやり」では、土は湿っても、この大事な酸素を供給するまでには至りません。水やりの基本である「鉢植えでは鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと」というのには、このような理由があるのです。
上記のほか、夏の水やりでの注意点もあります。鉢土はカラカラに乾いているのに、朝にするべき水やりをうっかり忘れていたようなとき、慌てて水やりをしてはいけません。夏の日照りの下に置いていたジョウロやホース内の水は、熱せられて湯のようになっていることがあるからです。水やりの前に、触って手で水温を確かめるなど注意しましょう。
地植えの場合の注意点
地植えでは、庭などの水やりを一気に済ませようと、散水ホースを使うケースがあります。このとき、水の勢いが強すぎると、土が跳ね返って葉裏につき、そこから病気が発生することがあるので注意が必要です。
散水ホースで水やりをする際は、水圧が柔らかいシャワーノズルに切り替えて、やさしく水を与えます。
バジル栽培のなかで、水やりの役割
バジルに限らず、植物栽培における水やりは、俗に「水やり3年(5年とも)」といわれるくらいに奥深いものです。
なぜなら、水やりは次のような役割を担っているからです。
・植物の根に水を吸収させる
・根が呼吸するのに必要な酸素を供給する
・高温期には株や土の温度を下げる
・葉に付着した埃などを落とす(葉への散水の場合)
つまり、水やりはただ毎日の日課で漫然と植物に水をかけるという行為ではなく、以上のような役割を念頭に、植物の根がしっかりと水分や酸素を吸収できるよう与える必要があるということです。
日々の水やりに際し、土の乾き具合を確認するとともに、花色や葉色はどうか、虫害や病気は出ていないかなど、植物の様子を観察することも日課にしたいですね。
Credit
監修/畠山潤子
ガーデンライフアドバイザー
花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
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