フラワーアレンジやドライフラワーで、人気上昇中のセンニチコウ。花のように見える球体のカサカサした部分は、苞(ほう)と呼ばれる葉の集まりです。千日紅という名前の由来は、苞の色が褪せにくいことから。ドライになっても花色が残るため、花のクラフトでもよく利用されています。使い勝手がよく、さまざまなシーンで活躍するセンニチコウを育ててみませんか。育て方のポイント、お手入れのコツなどを、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。
目次
センニチコウを育てる前に知っておきたいこと
センニチコウは、ヒユ科センニチコウ属に分類される植物です。センニチコウ属の植物は、熱帯アメリカを中心とする熱帯各地に、100種以上あるとされています。
センニチコウの基本データ
学名:Gomphrena globosa (キバナセンニチコウ G.haageana)
科名:ヒユ科
属名:センニチコウ属
原産地:熱帯アメリカ、南アジア
和名:千日紅(センニチコウ)
英名: Globe amaranth
開花期:5~11月
花色:赤、ピンク、黄、白、紫
発芽適温:20~25℃
生育適温:15~30℃
切り花の出回り時期:オールシーズン
花もち:10~20日
暑さに強く、苞の色が褪せにくいため、夏~秋にかけての長い期間楽しむことができます。また、丈夫で育てやすいことから、ガーデニング初心者に向いている植物のひとつです。
種類を知ると、選び方がわかります
古くから、ピンクや紫色の花を咲かせる「センニチコウ」と、黄色の花を咲かせる「キバナセンニチコウ」の2種が親しまれてきました。また、近年、濃ピンクの花を咲かせる「ファイヤーワークス」という品種が加わり、注目を集めています。
センニチコウ
ピンクや紫色の花を咲かせます。センニチコウは1年草のため、種をまいてから1~2年以内に開花し、その後は枯れてしまいます。
キバナセンニチコウ
明るいオレンジ色の苞に、黄色の花がつく人気の品種です。草丈が80cmほどと高いことから、背丈を生かして、切り花で楽しむのもいいでしょう。成育に不適な季節や環境になると、地上部が枯れて休眠し、地下の球根に養分を蓄えます。
ファイヤーワークス
濃ピンクの、スパイシーな香りの花を咲かせます。成長するにつれて枝分かれし、横に広がるため、だんだんとダイナミックな花姿に。凍りついてしまわないよう気をつければ、冬を越すこともできます。
バディーシリーズ
草丈が15~30㎝と、低めなことが特徴です。たくさんの枝を出し、赤、ピンク、白の花を次々と咲かせます。こんもりとよくまとまるため、鉢植えにすると美しく仕上がります。花壇の場合、縁取りに植えてもいいでしょう。
センニチコウを育てるときに必要な準備は?
センニチコウは、種もしくは、苗から育てることができます。
準備するもの(鉢植え、地植え共通)
・センニチコウの種、または苗
・土
・肥料
・ラベル
・ジョウロ
※種から育てる場合は、まき床用の器、ピートパンも用意
*鉢植えの場合は、下記のものも用意
・鉢、または横長プランター
・鉢底ネット
・鉢底石
種から育てる場合、4月中旬~6月上旬の間にまきます。発芽適温は20~25℃。市販の種まき用培養土や赤玉土(小):ピートモス=2:1の混合用土などを育苗箱に入れてまきます。覆土は5㎜程度。乾燥しないよう、こまめに水やりすれば、1週間ほどで発芽します。葉が2~3枚ほど出たら、鉢やプランターに植え替えをします。
苗は、初夏を迎える頃にはホームセンター、園芸店、街のフラワーショップなどで出回ります。
センニチコウは、いずれの品種も日当たりと風通しがいい場所を好みます。土も水はけのいいものを選びましょう。
適した土作りが、育てるコツの第一歩
センニチコウはとても丈夫で、暑さや乾燥に強い植物です。土質にも細かにこだわる必要はありませんが、鉢植え、地植えともに、水はけのよさを意識しましょう。赤玉土(小)、腐葉土、酸度調整済みピートモスを5:3:2の割合で混合した土、または赤玉土(小)と腐葉土を6:4で混合した土がおすすめです。
元肥には、リン酸分を多めに含んだ緩効性化成肥料を混ぜるといいでしょう。その後も、2か月に1回ほどのペースで、適量を追肥します。葉色が薄いときや、花の大きさが小さいときは、液体肥料を補助的に施しましょう。
センニチコウの育て方にはポイントがあります
センニチコウの育て方〜苗から始める〜
苗の選び方
センニチコウの苗は、初夏からホームセンター、園芸店、街のフラワーショップなどで出回ります。苗は、株の根元がぐらついておらず、全体的にしっかりしたものを選びましょう。
植えつけ方法
鉢植えの場合の手順
①鉢底に鉢底ネットを敷き、その上に鉢底石を入れます。
②土に肥料を混ぜたものを、鉢の半分量入れます。
③苗をポットから抜き、植えつけます。また、残りの土を苗の周囲にかぶせます。棒で軽く土をつき、土の隙間がなくなるようにします。
④鉢底から水が流れ出るくらい、水をたっぷりと与えます。
地植えの場合の手順
①日当たりと風通しのよい場所を選定します。あらかじめ土作りしておいた場所に、根鉢と同じ程度の植え穴を掘ります。
②苗をポットからそっとはずし、穴の中央に置きます。根鉢の上部と地面の土の表面が同じ高さになるよう、土を戻します。
③周囲の土をならしてから根元をおさえ、安定させます。その後、株元にたっぷりと水を与えます。
センニチコウと仲よくなる、日々のお手入れ
水やりのタイミング
鉢植えにしたセンニチコウは、土の表面が乾いているのを確認したら、たっぷりと水を与えます。土の乾き方は季節や日によって変わりますが、春、秋、冬は、午前中にいちど、夏は朝と夕方の2回、与えるといいでしょう。
地植えのセンニチコウは、日々の水やりはほとんど必要ありません。
肥料の施し方
植えつけ時や植え替え時に、元肥として緩効性化成肥料を施します。その後、2か月にいちどのペースで固形肥料を追肥します。液体肥料の場合は、2週間にいちどのペースで追肥が必要になります。
花が咲いたら…
咲き終わった花を摘み取る、花がら摘みの作業を忘れずに行うようにしましょう。花がらを摘むことで、花つきがよくなるだけでなく、病気を防ぐことができます。花びらの部分だけでなく、花首のつけ根部分から取り除くことがポイントです。
立派に育てるための、植え替え時期と方法
株が大きく成長したら、植え替えを行いましょう。また、水を与えてもすぐに乾燥してしまったり、鉢穴から根がはみ出したりしてしまっているときは、根詰まりを起こしているため、植え替えが必要となります。
また、キバナセンニチコウとファイヤーワークスの場合は、冬越し後の5月に植え替えます。古い土を軽く落として、新しい清潔な土に植え替えましょう。
センニチコウの植え替えは、植えつけと同様の手順で行います。
剪定を行うときは、時期に注意しましょう
開花期間の長いセンニチコウは、茎を短く切り戻すことで、より美しい花や元気な葉をつけ、目を楽しませてくれます。開花中、花が変色してきたら、なるべく早めにわき芽を残した状態で、花茎をカットします。また、7月に茎を短く切り戻すと、秋を迎える頃にはたくさんの花を咲かせてくれます。
知りたい! センニチコウの増やし方
ほとんどのセンニチコウは1年草のため、種で増やします。冬越しできる、ファイヤーワークスは挿し芽で増やすことができます。
種の採取の時期と方法
センニチコウの種は、開花時期の5~11月、花が終わってから収穫できます。
種を採取する場合は、花がらを摘まず、そのままにしておきます。花が枯れたら、かさかさになった苞をはずすと、綿毛に包まれた種があります。採取した種は封筒などに入れ(ビニール袋は蒸れるので避けます)、乾燥させてから冷蔵庫などの冷暗所で、植えつけまで保管してください。
センニチコウは花が枯れたドライフラワーの状態をしばらく楽しみ、その後、種を採取することもできます。
種まきの適期は5月。綿毛がついた状態だと発芽しにくいので、種をまく前に、綿毛がついた種と砂を混ぜながら手でもんで、綿毛をこすって取るようにしましょう。
※種の購入時、袋に「交配種」「○○交配」「F1」と記載されているものは、育てたものと同じような特徴が出にくい傾向があります。ただし、今までにない花を育てられるおもしろさもあります。
挿し芽の時期と方法
前述したとおり、ファイヤーワークスは、挿し芽で増やすことができます。5~6月が最適な時期です。
挿し芽の手順
①茎の部分がしっかりとした、若い枝を10㎝ほど切り取ります。
②①の切り口を斜めに切り、30分ほどコップの水に浸します。
③平らな鉢に市販の挿木用培養土や赤玉土(小):ピートモス=2:1の混合用土を入れます。土に肥料分は入れません。棒で刺し、挿し口を作ってから、挿し穂を1/3ほど挿し込みます。その後、土をかぶせて固定。
④水をたっぷり与えます。その後、乾燥させないよう注意しつつ、半日陰に置きます。
⑤2~3週間で発根します。根を傷つけないよう、やさしく掘り出し、ポットや鉢に植え替えます。
毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです
育てるときに注意したい病気
立枯病
過湿な環境が続いたときや、株元が安定しない状態になると、黒く変色して枯れてしまう、立枯病にかかる場合があります。風通しのよい場所に移動させたり、支柱を立てて株元を安定させたりしましょう。
育てるときに注意したい害虫
ハダニ
肉眼では見えないほどの小さな虫で、夏の高温乾燥時に多く発生する傾向があります。葉の裏側などについて汁液を吸うため、やがて葉が縮れてしまいます。花や葉に白い斑点のようなものができていたら、ハダニが発生している可能性大。専用の殺ダニ剤を使い、早めに駆除しましょう。風通しのよい場所で鉢やプランターを管理し、こまめに葉の裏側に霧吹きで水をかけると、発生を予防できます。
ナメクジ
6~7月、ナメクジが発生しやすくなります。ナメクジはセンニチコウの葉などを食べてしまうため、注意が必要です。日中は鉢の底や縁などに隠れているため、探して捕殺するようにしましょう。
センニチコウと相性のよい寄せ植えの植物
暑さに強く、乾燥ぎみな環境を好むペンタスやポーチュラカ、同じく暑さと乾燥に強く、何年も生き続ける宿根草のバーベナなど、センニチコウと相性のよい植物はたくさんあります。また、カラーリーフと寄せ植えにするのもおすすめ。ポップで、かわいらしい印象の鉢植えに仕上がります。
Credit

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・アマナ/ネイチャー&サイエンス
新着記事
-
ガーデン&ショップ
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園 【1月の様子】
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテストとして注目されている「東京パークガーデンアワード」。第3回コンテストが、都立砧公園(東京都世田谷区)を舞台に、いよいよスタートしました。2024年12月には、…
-
ガーデン&ショップ
「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」 ガーデナー5名の“庭づくり”をレポート!
第3回目となる「東京パークガーデンアワード」が、東京・世田谷区にある都立砧公園でキックオフ! 作庭期間は、2024年12月中旬に5日間設けられ、書類審査で選ばれた5名の入賞者がそれぞれ独自の手法で、植物選びや…
-
宿根草・多年草
豪華に咲く!人気の宿根草「ラナンキュラス・ラックス」2025年おすすめ品種ベスト5選PR
春の訪れを告げる植物の中でも、近年ガーデンに欠かせない花としてファンが急増中の「ラナンキュラス・ラックス」。咲き進むにつれさまざまな表情を見せてくれて、一度育てると誰しもが虜になる魅力的な花ですが、…