蔓性植物のクレマチスは、バラと相性がいい植物として知られています。アーチやフェンス仕立てにすれば、小さなスペースでも楽しめることも特徴です。種類が豊富で、花色や花形も変化に富んだ、魅力たっぷりのクレマチス。ここでは、クレマチスへの水やりの方法や注意点、適切なタイミングなどを紹介しましょう。NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。
目次
クレマチスを育てる前に知っておきたいこと
クレマチスは、キンポウゲ科クレマチス属に分類される蔓性の植物で、クリスマスローズやアネモネなどと同じ仲間に分類されます。原種は300種類ほどあるといわれ、北半球の各国を中心に、世界中に分布しています。日本では、カザグルマやハンショウヅル、仙人草などがクレマチスの原種にあたります。
クレマチスの基本データ
学名:Clematis
科名:キンポウゲ科
属名:クレマチス属
原産地:ヨーロッパ、日本、中国、北アメリカ
和名:風車(カザグルマ)、鉄線(テッセン)
英名:Clematis
開花期:3月下旬~10月 ※春咲き、夏~秋咲き、冬咲きなどがあります。
花色:赤、ピンク、黄、白、紫、青、複色
発芽適温:15℃前後
生育適温:20℃前後
切り花の出回り時期:2~12月
花もち:7~10日
長年にわたり、日本のカザグルマ、中国のテッセン、欧米のインテグリフォリアといった原種を掛け合わせながら、品種改良が進められてきました。現在は、数え切れないほどの園芸品種が存在します。
水やりの方法とそのタイミング
クレマチスは、つぼみをつける頃から開花する時期にかけては、多くの水を必要とします。水切れを起こさないよう、こまめに、そしてたっぷりと水を与えます。適切な時間帯は、午前中です。
鉢植えの場合、開花後も、鉢土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。水量の目安は、鉢底から水が流れ出るくらい。ただし、鉢受け皿に水が溜まった状態が続くと根腐れを起こす場合があるため、必ず水を捨てるようにしましょう。
地植えの場合、根が張ったあとは基本的に水やりをする必要はありません。しかし、晴天が続いたり、クレマチスの葉がしおれたりしたときは、たっぷりと水を与えます。
クレマチスは鉢植え、地植えのどちらでも栽培できますが、それぞれ水やりの頻度は異なります。次の項からは、植えつけ別の水やりを紹介します。
鉢で育てている場合の、クレマチスの水やり
水やりの頻度
週に3〜4回のペースで、水やりをします。土の表面が乾いていたら、水やりのタイミングと考えてよいでしょう。
夏場や生育期は、1日1〜2回、水やりが必要になります。特に夏場は、午前中に水やりをしても、すぐに土が乾いてしまうことも。土の乾き具合を見ながら、その際は夕方に再度水やりをします。
水やりのコツ
鉢底から水が流れ出るくらい、たっぷりと水やりをします。鉢受け皿に水が溜まってしまったら放置せず、水を捨てます。
土が乾きすぎていて、通常の水やりでは不十分なときは、バケツなどの深い容器に水を張り、鉢ごと小一時間つけるのもよいでしょう。
水やりの確認方法
鉢土の表面が白っぽく乾いたとき、クレマチスの葉がぐったりとして元気がないときに水やりをします。指で土の表面を触り、湿り具合を確認するクセをつけましょう。また、水やり直後に比べ、鉢が軽くなっていたら、土が乾いていると考えられます。
地植えの場合の、クレマチスの水やり
水やりの頻度
クレマチスを地植えにした場合、水やりはほとんど必要ありません。雨が降らない日が長く続いたときや土質が乾きやすいものである場合、土の乾燥具合を見ながら水やりをします。梅雨時や雨が続いたときは、クレマチスの周囲に溝を掘るなどして、排水を促します。
水やりのコツ
土が流れてしまわないよう、注意しながらたっぷりと水やりをします。また、花に水がかからないよう、気をつけてください。
水やりの確認方法
土が白っぽく乾いたとき、クレマチスの葉がぐったりとして元気がないときは、水分が不足していると考えられます。
水やりは季節によっても多少変わります
水やりの具合は、天候のほか、植物の生育状態や季節で多少変わります。そこで、この項目では季節ごとの違いを見ていきましょう。
春(鉢植え、地植え)
株の葉が増えるなど、植物の活動が盛んになる季節です。鉢植えのクレマチスには、1日に1回、もしくは2〜3日に1回のペースで、水やりをします。鉢底から水が流れ出るくらい、たっぷりと与えましょう。地植えの場合、ほとんど水やりは必要ありませんが、土が乾燥しているのを確認したら水やりをします。
夏(鉢植え、地植え)
夏場は土が乾燥しやすいため、1日1〜2回、水やりをします。適切な時間帯は、朝と夕方です。ただし、梅雨時は注意が必要。特に地植えの場合は加湿状態になりやすいため、クレマチスの周囲に溝を掘るなどの工夫をします。
秋(鉢植え、地植え)
鉢土が乾いていたら、適量の水を与えます。ペースの目安は、1〜2日に1回ほど。地植えのクレマチスであれば、水やりはほとんど必要ありません。また、秋は雨が続きやすい季節です。加湿が心配される場合、排水を促します。
冬(鉢植え、地植え)
休眠期のため、地上に出ている枝や葉は、枯死しているように見えます。ただし、水やりを怠るのは厳禁。鉢植えのクレマチスには月3〜4回、暖かい日の午前中にたっぷりと水を与えます。
地植えの場合、基本的に水やりは必要ありません。土が乾燥していたら、暖かい日の午前中に適量の水を与えます。
クレマチスの水やりの、注意点が知りたい
鉢植えの場合の注意点
土が湿っているにも関わらずたっぷりと水やりをしたり、日に何度も水やりをしたりすると、土の中は加湿状態になります。これが、灰色かび病や赤さび病といった病気を発症したり、根腐れを起こしたりすることに。土の乾き具合や回数には、くれぐれも留意してください。梅雨時や雨が多い秋季は、より気をつけるようにしましょう。
地植えの場合の注意点
地植えのクレマチスは、基本的に水やりを必要としません。晴天が続き、土が乾燥しているときやクレマチスの葉に元気がないときのみ水やりをします。加湿状態が続くと、根腐れを起こしてしまうことがあるため、適宜排水を行うようにします。
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Credit
監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・アマナ/ネイチャー&サイエンス
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