小さな球根から、早春にかわいらしい花を咲かせるクロッカス。耐寒性が強く、育てやすいことから、古くからヨーロッパなどで親しまれ、栽培されてきた球根植物です。そんなクロッカスを上手に増やしてみませんか。増やし方と適した時期、コツや注意点を、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。

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クロッカスを育てる前に知っておきたいこと

クロッカスは初心者でも比較的育てやすく、球根は、4~5年なら植えっぱなしにしておくことが可能です。特に、日当たり、水はけのよい場所を好むので、鉢植え、地植えともに植え場所には考慮してください。また、手軽に水耕栽培ができる球根植物としても、人気があります。

クロッカスの基本データ
学名:Crocus
科名:アヤメ科
属名:サフラン属(またはクロッカス属)
原産地:地中海沿岸地方、小アジア
和名:花泪夫藍(ハナサフラン)
英名:Crocus
開花期:春咲き種は2月上旬~4月上旬、秋咲き種は10月中旬~11月中旬
花色:黄、白、紫、複色
発芽適温:10℃
生育適温:−5~15℃

クロッカスには、春咲き種と秋咲き種の2種類があります。香辛料で有名なサフランは、クロッカスの一種で、秋咲き種のクロッカスがサフランと呼ばれているのです。サフランの花は、長くて赤いめしべが特徴です。

クロッカスの原種は、地中海沿岸から小アジアにかけて、約80種が分布しています。このうち園芸種として栽培されている主な原種は、黄色を基調とした「クリサントゥス」と、白や紫系の「ヴェルヌス」の2種類です。この2種類をもとに、さまざまな園芸品種が誕生しています。

植物を増やすには、いくつかの方法があります

クロッカスの具体的な増やし方を説明する前に、植物はどのようにして増やすことができるのか、その方法について知っておきましょう。

挿し木
挿し木(または挿し芽)とは、株の一部を切り取り、土や水に挿して発根させる方法です。ハーブや観葉植物、多肉植物、種からでは増やしにくい草花などに用います。植物の増やし方のなかでは、いちばん簡単な方法で、たくさん苗を増やしたい場合に向いています。

また、挿し木には、親と同じ苗ができるという特徴があります。親木のクローンを作るようなものなので、花や葉の色や形が親と同じになるのです。

取り木
取り木とは、幹や枝に手を加えて発根させたあと、切り取って新たに苗を作る方法です。若干手間がかかり、たくさん増やしたい場合には向きません。一般的に挿し木では発根しない植物に行います。メリットとして、新しい苗を親木につけたまま育てるので、失敗が少ないとされています。自分で好きな枝を選んで取り木するので、形のよい苗を作ったり、好みの枝ぶりにしたりできます。

接ぎ木
接ぎ木とは、根のついた「台木」に芽のついた「穂木」をつなぎ合わせ、「穂木」の生長を促す方法です。台木と穂木の組み合わせによって、病気に強くなったり、若々しくなったりします。ただし、基本的には果樹や花木に用いるもので、草花にはあまり向きません。

株分け
大きく育った植物の根を分け、増やす方法です。株が大きすぎると、葉の茂りすぎで光合成ができにくくなるなどの弊害が生まれます。このため、株分けを行います。株分けには、植物をリフレッシュさせる効果もあります。植え替えのときに株をチェックし、必要に応じて行いましょう。

分球
球根植物を増やす方法として、一般的に分球を行います。親球の横に新しくついた、子球を切り放し、増やしていきます。球根は芽の数が多くなった状態で放っておくと、生育が悪くなることも。

分球にはいくつかの方法がありますが、こちらでは代表的なものを3つ紹介します。ひとつめは、親球の横に勝手に子球ができていく「自然分球」です。チューリップやスイセンは自然分球で増えていきます。ふたつめは、人為的に切り分ける「切断分球」です。茎の根元から子球ができるので、これを切って分球します。3つめが、「鱗片(りんぺん)挿し」。球根自体が、ウロコ状になっている球根の鱗片を1枚1枚剥がして植えつけます。ヤマユリやアマリリスが対象になります。

クロッカスを増やす、最適な方法と時期

クロッカスを増やすには、前述の方法のうち、球根を分けて増やす「分球」の方法を用います。

分球は毎年行うのではなく、4~5年にいちどくらいが目安になります。分球をせずに5年以上放っておくと、球根が増えすぎて窮屈になり、生育や花つきに悪影響を及ぼします。4~5年経ったら球根を掘り上げて、古い球根から新しい球根を取り分けましょう。

球根は6月上中旬頃に土中から掘り上げ、10月上旬~11月上旬に植えつけを行います。その間に分球作業を行います。

知りたい! クロッカスの増やし方「分球」

前述したように、クロッカスは分球によって増やすことができます。ここでは分球の詳しい方法を紹介します。

準備するもの

・クロッカスの球根(分球するもの)
・土入れ、またはスコップ
・球根を乾燥保存するためのかごやネット
・消毒した清潔なナイフやカッター

球根を切り分けるときに使う刃物は、ナイフやカッター、カミソリを用いましょう。これらの刃物を使えば、切り口が潰れにくいためです。刃物は使用前に、ウイルスが発生するのを防ぐためにライターなどで加熱消毒します。方法は、刃の部分の両面を、3秒ほどずつあぶればOK。

球根掘り上げの手順

分球を行う前に、まずは球根を掘り上げておきます。球根掘り上げの目安は、6月上中旬頃です。

①葉が枯れたら、球根を掘り上げます。
②球根の土を落とし、枯れた葉や根を取り除いておきます。
③2~3日ほど陰干しします。

分球の手順

掘り上げた球根を分けましょう。分球の手順は、以下の通りです。

①古い球根の上にできた新しい球根を、丁寧に取りはずします。手で取りはずしにくい場合は、カッターなどを使って切り分けます。
②球根は植えつけた球根と同じくらいの大きさのものを残し、小さすぎるものは取り除いて捨てます。
③風通しのよい日陰で切り口部分を乾燥させます。
④通気性のよいかごやネットなどに入れて涼しい場所で保管します。

クロッカスは極度に、高温湿度を嫌います。球根は植えつけの時期まで、風通しのよい場所で保管しましょう。

分球した球根の植え方

分球を終えたら、10月上旬~11月上旬に球根を植えつけます。

鉢植えの場合、4号鉢に赤玉土7:腐葉土3の用土を入れ、準備しておきます。植えつける球根の数の目安は、4号鉢ひと鉢に対し4~5球です。球根と球根の間隔は、3~5㎝程度空け、深さ約3㎝のところに植えつけていきます。花の間隔を密にしたいときは、若干狭く植えることもできます。ただし、クロッカスは高温多湿を嫌う性質があり、球根が大きく育たないと、次の年まで持たなくなるので注意しましょう。植えつけ後は水をたっぷりと与え、日当たりのよい場所で管理します。

地植えの場合も、日当たりがよい場所を選びます。植えつける前に、土壌の水はけをよくするため、あらかじめ20~30㎝ほど掘り起こした土に、緩効性肥料や腐葉土を混ぜておきます。土の準備ができたら、深さ5㎝のところに3~5㎝ほど間隔を空けて植えつけていきます。

寒冷地では、鉢植えも地植も霜柱などで球根が持ち上げられ、地上に出ることがあります。このため、寒冷地では深さ8㎝前後のところに植えます。

クロッカスの球根は、水栽培(水耕栽培)をすることができます。水栽培用の容器に水を入れ、クロッカスの球根を置きます。球根が水に浸かりすぎてしまうと、カビが発生する場合があるので注意しましょう。その後、根が出るまでは日陰などの暗い場所で管理し、約1か月後に根が出てきたら、窓際などの明るい場所へ移動します。

コツと注意点

水栽培は室内で栽培するため、十分な寒さに当てることができません。クロッカスは十分な寒さに当てないと花芽をつけない性質があります。水栽培を行う場合は、しばらく室外で栽培し、寒さに十分に当たってから室内に入れる方法や、球根購入後、封筒や紙袋に入れ、冷蔵庫に2か月以上入れてから栽培する方法があります。

球根は深植えすること

クロッカスの球根を深植えするには、以下の理由があります。

クロッカスは、古い球根の上部に新しい球根ができるため、浅く植えると新しい球根の一部が地面の上に出てしまうことがあります。球根は土の中で育つものなので、地上に出てきてしまうと十分に育たなくなってしまいます。地植えの場合は、霜柱などで球根が持ち上げられ、地上に出ることがあります。このため、深さ5~8㎝のところに植えつける必要があります。

Credit

記事協力

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。

構成と文・角山奈保子

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