小ぶりでかわいらしい花をつけ、春の訪れを告げるクロッカス。耐寒性が強く、育てやすいことから、古くから親しまれ、栽培されてきた球根植物です。クロッカスを丈夫に育てるためには、肥料は欠かせません。ここでは、クロッカスへの、肥料の上手な施し方や注意点を紹介します。NHK『趣味の園芸』の講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。

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クロッカスを育てる前に知っておきたいこと

クロッカスは初心者でも比較的育てやすく、球根は、4~5年なら植えっぱなしにしておくことが可能です。特に、日当たり、水はけのよい場所を好むので、鉢植え、地植えともに植え場所には考慮してください。また、手軽に水耕栽培ができる球根植物としても、人気があります。

クロッカスの基本データ
学名:Crocus
科名:アヤメ科
属名:サフラン属(またはクロッカス属)
原産地:地中海沿岸地方、小アジア
和名:花泪夫藍(ハナサフラン)
英名:Crocus
開花期:春咲き種は2月上旬~4月上旬、秋咲き種は10月中旬~11月中旬
花色:黄、白、紫、複色
発芽適温:10℃
生育適温:−5~15℃

クロッカスには、春咲き種と秋咲き種の2種類があります。香辛料で有名なサフランは、クロッカスの一種で、秋咲き種のクロッカスがサフランと呼ばれているのです。サフランの花は、長くて赤いめしべが特徴です。

クロッカスには栄養を補うための肥料が必要です

クロッカスに限らず、植物は土、水、光、空気、養分を得ることで元気に生長します。植物は土中に根を張り、そこから水分や養分、空気を摂取するため、いちばん大切なのは土ということになります。その土に、植物が元気に育つための養分を補うのが肥料です。

特に、家庭の庭や鉢植えで植物を育てるには、肥料が必要です。自然界では、落ち葉や枯れた植物、昆虫の死骸などが微生物の働きなどによって分解され、養分になります。一方、庭や鉢植えの土では養分が十分でないため、肥料を人工的に補う必要があります。

種類を知ることが、適した肥料選びの近道

肥料には、化学的に合成して作られた「化成肥料」と、自然の動植物素材などを発酵させて作る「有機質肥料」のふたつがあります。化成肥料には即効性があり、有機質肥料はゆっくりじっくり効かせるという特徴があります。

さらに、化成肥料には固形タイプと液体タイプの2種類があります。まずは固形タイプから紹介します。

固形の化成肥料

緩効性化成肥料
緩効性化学肥料は、徐々に溶けるように加工された肥料です。肥料の表面が樹脂などでコーティングされたもの、錠剤型や球状で成分が溶け出す量をコントロールしているものなどがあります。

追肥(種まきや植えつけ後に施す肥料。不足した栄養分を補う)に適した大粒と、元肥として使う小粒の2種類があります。肥料の効果は、数か月から数年と幅広く、必要に応じて使い分けます。

速効性化成肥料
速効性化学肥料は、数種類の単肥を配合し、粒状にしたものです。低濃度から高濃度まであり、文字どおり速効性があります。すぐに溶けるので、肥料障害が起こる可能性があるため、使用量に注意する必要があります。

もうひとつの液体肥料は、固形タイプよりも速効性に優れ、追肥に適しています。液体肥料には水で薄めて使用するもの、そのまま使用するものの2種類があります。

液体の化成肥料

水で薄めるタイプは、生育ステージなどによって濃度を変えられるという利点があります。速効性はあるものの、効果は7~10日ほどでなくなるので、定期的に与える必要があります。また、水やりの際、水に加えて、水と一緒に肥料を与えるという方法もあります。

一方、そのまま使用するタイプは、薄める手間が省けるため手軽で便利ですが、鉢数が多い場合はすぐになくなってしまうのが難点です。

このほか、葉から養分を吸収させるための、葉面散布用のスプレータイプの肥料があります。葉色が悪い、根が弱って肥料を正常に吸収できないなどの場合に使います。鉢やプランターに直接差し込むスティックタイプの肥料もあります。

また、肥料と殺虫剤を混合し、いちどでふたつの効果が得られる薬剤入り肥料があります。アブラムシなどの被害が発生したときには、この種の薬剤入り肥料を使用します。

※覚えておきたい液体肥料の薄め方
水で薄めるタイプの液体肥料は、決められた量を正確に守ることが大切です。まずは、ピペットと計量カップ(購入時に付属していることも)、目盛りつきのバケツを用意しましょう。少量を作る場合は、バケツの代わりによく洗った牛乳パックやペットボトルを代用すると便利です。肥料は一般的に500倍、1000倍、2000倍に薄めます。

目安としては水1ℓに対し、500倍なら肥料は2㏄、1000倍なら1㏄、2000倍なら0.5㏄となります。

注意したいのは、肥料の作り置きは禁物だということ。水で薄めた状態で長期間放置しておくと、肥料の成分が変質したり、菌が繁殖する恐れがあります。面倒でも毎回、必要な分量を作るようにしてください。

植物に必要な、肥料の三大要素

植物を育てるのに必要な栄養素のなかでも、“肥料の三大要素”と呼ばれるのが「窒素(N)」、「リン酸(P)」、「カリウム(K)」の3つで、略して「N-P-K」と呼ばれています。植物を育てている間、この三大要素を欠かさず与える必要があります。それぞれの役割を説明しておきます。

N:窒素(nitrogenous) 一般に「チッ素」と呼ばれています。タンパク質を作り、葉緑素の元になります。「葉肥え」と言われ、葉や茎を大きく育てます。不足すると葉が黄色く変色したり、茎の伸びが悪くなったりします。

P:リン酸(phosphate) 一般に「リン」あるいは「リン酸」と呼ばれています。植物の細胞質の成分になります。「花肥え」「実肥え」と言われ、花つきや実つきをよくする働きがあります。不足すると、植物自体が弱くなってしまいます。

K:カリウム(kalium) 一般に「カリ」と呼ばれています。植物全体の成育を調整し、根の発達を促進する「根肥え」です。葉や茎を丈夫にする働きがあります。不足すると抵抗力が低下し、害虫の被害に遭いやすくなります。

三大要素の次に必要なのが、“中量要素”と呼ばれる「カルシウム(Ca)」、「マグネシウム(Mg)」、「イオウ(S)」です。カルシウムやマグネシウムは土に含まれているため、基本的に不足することはありません。ほかには、人のビタミン類にあたる“微量要素”が「鉄(Fe)」、「銅(Cu)」、「亜鉛(Zn)」など7種類になります。

特定の成分だけを施しても、植物は正常に育ちません。人の食事のバランスと同様に、バランスの取れた肥料が大切です。これらを適した時期にバランスよく与えることで、植物は健全にすくすくと育つことができます。

クロッカスには、こんなタイプの肥料がおすすめ

クロッカスに適した肥料は、カリ(カリウム)成分の多い肥料です。鉢植えの場合、植えつけの際、土に緩効性肥料を均等になるよう混ぜ込みます。

小さなつぼみが見えてきたら、株の周りに緩効性化成肥料を施します。

地植えの場合は、植えつけ前の元肥と、小さなつぼみが見え始めた頃に追肥を行います。

肥料を与えはじめる、時期とタイミング

前述したように、肥料には元肥(もとひ、もとごえ)と、植えつけてから与える追肥(ついひ、おいごえ)の2種類があります。元肥とは、植えつけや植え替えを行う際に、前もって土に混ぜておくもので、土自体に栄養を与える効果があります。追肥は植物の生長期間、足りなくなった養分を肥料で補うというものです。

元肥の適期

クロッカスの球根の植えつけに適した時期は、10月上旬~11月上旬です。球根を地植えにする場合、この時期を目安にあらかじめ元肥を土に混ぜておきます。その後は、小さなつぼみが見え始めた頃に追肥を行います。

追肥の適期

鉢植えの場合、小さなつぼみが見えてきたら、緩効性化成肥料を施します。

クロッカスへの肥料の与え方が知りたい

植物は生育ステージによって、それぞれ必要とする養分が異なります。必要な時に必要な養分を与えることで、植物は健やかに生長することができます。実際にクロッカスを育てる過程での肥料の与え方を見てみましょう。

鉢植えの場合の与え方

鉢植えは、生長期に肥料が少ないと花つきが悪くなります。小さなつぼみが見えてきたら、株元にカリ成分の多い緩効性化成肥料を施します。緩効性化成肥料は、約2か月効果が持続しますので、小さなつぼみが見え始める頃から花後まで効果があります。

花後のお礼肥は、球根を必要以上に肥大させ、休眠時の土中に肥料分を多く残し、球根が腐りやすくなります。

地植えの場合の与え方

地植えの場合は、植えつけの際に、あらかじめ少量の元肥と苦土石灰を用土に混ぜておきます。小さなつぼみが見え始めたら、緩効性化成肥料を株元に施します。

クロッカスに肥料を与えるときの注意点は?

化成肥料をいちどに大量に使うと、かえって土壌が劣化してしまいます。これは土壌中の微生物が食糧としていた有機物が減ってしまうためです。土壌の微生物は有機物が豊富にあることによって増え、微生物が活発に活動することで、柔らかく上質な土壌ができます。

また、化成肥料を多量に施用することによって、有害な硝酸体窒素が蓄積され、土壌微生物が減ってしまうことも。化成肥料は必ず適量を使うようにしましょう。

肥料をあげすぎると、「肥料やけ」が起きます

株元近くに肥料を与えると、株が枯れてしまうことがあります。これは地上部に近いところにある根の細胞が濃度の高い肥料成分によって破壊され、根が養分と水分を吸収できなくなってしまうためです。このことを「肥料やけ」と呼びます。

一方、株元から少し離れたところに肥料を施すことで、深いところにある根に濃度の薄くなった肥料成分がゆっくりと届くため、肥料やけを起こす心配がなくなります。肥料は、株元から少し離れたところに施すよう心がけましょう。

万が一、肥料やけを起こした場合は、対策として土壌の養分を洗い流すように鉢穴から流れ出るくらいたっぷりの水やりをしましょう。その後、しばらくは肥料を施さずに水だけで管理し、根や新芽が伸び始めたのを確認してから、肥料を与えるようにしてください。

肥料の管理と購入の際の選び方

肥料は基本的に劣化しにくく、特に使用期限はありません。水に溶けることで分解、変性するように設計されているので、そのままでは変化しないというのが理由です。化学肥料はもちろん、有機質肥料も同様に劣化しにくいです。

ただし、保存状態が悪いと変質してしまう可能性があります。湿気や水分に触れることで、分解、変性が起こり、有機質肥料の場合はカビが生えてしまうことも。また、日光などの強い光により、劣化や変質が起こる場合もあります。

肥料は直射日光が当たらない冷暗所で保管し、開封後はきちんと密閉しておく必要があります。また、開封後はなるべく早く使い切るのがベストです。購入の際は製品に記された製造年月日をチェックし、あまりにも古い製品は買わないようにしましょう。

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記事協力

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。

構成と文・角山奈保子

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