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モッコウバラの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します

モッコウバラの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します

やさしい香りの小さな花を大量に咲かせる、中国原産のモッコウバラ。たわわに咲いた白や淡い黄色の花は、庭のアーチやフェンスを華やかに演出してくれます。ほかのバラとは違い、茎にトゲがないため扱いやすく、丈夫で育てやすいバラの一種です。モッコウバラの正しい育て方や剪定方法、ちょっとしたコツなどを、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。

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モッコウバラを育てる前に知っておきたいこと

モッコウバラは、中国原産の常緑性蔓バラです。アーチやフェンスなど、よりかかるものがあると、自然にどんどん生長します。

日当たりと水はけのよい場所を好みますが、半日陰の場所でも生育します。通常のバラに比べると育てやすく、園芸初心者向けのバラです。ただし、通常のバラより寒さに弱いため、寒冷地での栽培は難しいかもしれません。

日本には、江戸時代に黄色の八重咲き品種が渡来したのが最初です。インド原産の多年草から作られる木香(モッコウ)の香りに似ていることから、モッコウバラという名前がつけられました。

モッコウバラの基本データ
学名:Rosa banksiae
科名:バラ科
属名:バラ属
原産地:中国西南部
和名:木香薔薇(モッコウバラ)
英名: Banksia rose
開花期:4~5月
花色:黄、白
発芽温度:15℃前後
生育適温:10~20℃

花色は白、黄の2種類で、それぞれ、ひと重咲き、八重咲きがあります。香りは微香で、白のひと重咲きは、やや香りが強いのが特徴です。一方、八重咲きのモッコウバラには、白、黄ともにほとんど香りがありません。

種類を知ると、選び方がわかります

モッコウバラは、中国原産の常緑性蔓バラです。前述したとおり、モッコウバラには、白と黄の花色があり、それぞれひと重咲きと八重咲きがあります。その4種すべてが原種です。

キモッコウバラ(ロサ・バンクシアエ・ルテア)
一般的に4月中旬くらいに開花する早咲き種で、直径3㎝くらいのロゼット咲きの小花が、短い枝の先に10輪ほど房咲きします。花色は淡い黄色で、香りはほとんどありません。

ロサ・バンクシアエ・ルテスケンス
キモッコウバラの枝替わりでできた、ひと重咲きです。

ロサ・バンクシアエ・ノルマリス
白い花のひと重咲きで、モッコウバラの基本品種です。リンゴやイチゴの花にも似た、原種らしい野趣溢れる花は、香りが強いことでも知られています。古い枝には少しだけ、トゲがあります。開花は4月下旬。

ロサ・バンクシア・アルバ
ノルマリスの八重咲きタイプで、白い艶やかな花をつけます。

モッコウバラを育てるときに必要な準備は?

庭木のイメージが強いモッコウバラは、鉢植えで育てることもできます。ただし、鉢植えである程度生長したら、地植えに植え替える必要があります。育てる前に、以下のものを用意しておきましょう。

準備するもの(鉢植え、地植え共通)
・モッコウバラの苗
・土
・肥料
・支柱(リング支柱がおすすめ)
・土入れ、またはスコップ
・ラベル
・ジョウロ

*鉢植えの場合は、下記のものも用意
・大きめの鉢、または横長プランター
・鉢底ネット
・鉢底石

鉢は、苗よりふた回りほど大きなものを用意します。それぞれ園芸店やホームセンター、インターネットショップなどで購入しておきましょう。

適した土作りが、育てるコツの第一歩

モッコウバラに限らず、植物を育てるうえで、土は非常に重要です。モッコウバラに適した土は、以下の2点がポイントになります。

・しっかりと水が流れる、水はけのよい土
・保水性や保肥性の高い土

鉢植えの土は、市販のバラ専用の培養土を使うか、赤玉土(小)5、腐葉土4.5、もみ殻燻炭0.5の割合で混ぜた土を使います。

地植えの場合は、植えつけの2週間前に直径、深さともに40~50㎝の植え穴を掘ります。掘り起こした土には、元肥として緩効性の粒状肥料、または堆肥を混ぜ込んでおきます。

モッコウバラの育て方にはポイントがあります

モッコウバラは一般的に苗から育てます。苗は秋頃に、ホームセンターや園芸店に出回ります。以下で鉢植え、地植え、ぞれぞれの植えつけ方法を詳しく紹介しましょう。

モッコウバラの育て方~苗から始める~

苗の選び方

葉に艶があり、しっかりと茂っているものを選びます。11月中下旬は落葉している苗が多くなります。その場合は、枝折れのないのものや根張りのよいものを選びます。また、枝先に花芽が確認できるものを選ぶと、翌春に開花を楽しむことができます。

植えつけ時期と方法

植えつけの適期は10~11月です。苗を購入したら、できるだけ早く植えつけを行います。植えつけ場所に関わらず、根についた土はほぐさず、そのまま植えつけてください。鉢土の表面に、苔がついている場合は除去します。手順は以下の通りです。

鉢植えの場合の手順
①ビニールポットより、ふた回り以上大きな鉢、またはプランターを用意します。鉢穴をふさぐための鉢底ネット、鉢底石を入れておきます。
②バラ専用の市販の培養土、または赤玉土(小)5、腐葉土4.5、もみ殻燻炭0.5の割合で混ぜ込んだ新しい土を、鉢、またはプランターの1/3ほど入れます。
③土を崩さないようにビニールポットからそっと苗を抜き、土を入れた鉢に置きます。
④鉢と苗との隙間を埋めるように少しずつ土を加え、苗を安定させます。
⑤蔓の誘引のために、支柱を立てておきます。
⑥鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと水やりします。

鉢植えの場合は、できるだけ大きな鉢を用意してください。鉢の底には石を敷いて、水はけをよくしておきましょう。

地植えの場合の手順
日当たりと風通し、水はけのよい場所を選んで植えつけます。半日蔭でも問題なく育ちますが、日当たりがよい場所で育てると花つきがよくなります。

植え場所が決まったら、植えつけの2週間前に、掘り起した土に発酵鶏糞や発酵油粕等の堆肥を混ぜ込んでおきます。

①苗よりもふた回り大きな穴を掘ります。
②植え穴の1/3ほどの土を、①の穴に入れます。
③苗を置いて、周りに土を加えて安定させます。
④蔓の誘引のために、フェンスまたはアーチを立てておきます。
⑤鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと水やりします。

大きくなると8m以上になるため、フェンスやアーチを苗の後ろに立てておきます。地植えのモッコウバラはとてもよく伸びるので、隣の植物とのスペースを十分に確保しましょう。

モッコウバラと仲よくなる、日々のお手入れ

水やりのタイミング

鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、鉢全体に水が行きわたるように水を与えます。このときは、鉢底の穴から水が流れ出るまで与えるのがポイント。ただし、土が濡れている状態が長く続くと根が腐ってしまうので、与えすぎには注意しましょう。

地植えの場合、基本的に雨だけで十分です。極端に乾燥する時期や、葉に元気がないときだけ水をあげるようにします。

どちらの場合も夏季の水やりは、早朝の涼しいうちに行いましょう。

肥料の施し方

モッコウバラは多肥を嫌う植物なので、肥料のやりすぎに注意しなければなりません。適量の緩効性粒状肥料を、花後と新芽が伸び始める早春に施します。市販のバラ用肥料を使い、多くとも月に1回程度にします。9月以降は、肥料を与えないようにしましょう。

暑さで株がバテ気味の夏や、根の張りをよくしたいとき、株に元気がないときには、液体肥料を少量与えましょう。

花が咲かないときは…

モッコウバラは株がある程度大きくならないと、花を咲かせません。種から育てた場合、開花までは3年以上かかります。そのため苗を購入するときは、枝先に花芽がついているものを選ぶといいでしょう。

花が咲かない、または花つきが悪い原因として、剪定のしずぎや日当たりの悪さ、肥料の与えすぎなどが考えられます。また、鉢植えの場合は、小さすぎる鉢で根詰まりを起こし、生育不良になることも。なるべく大きな鉢に、ゆとりをもって植えつけてください。

立派に育てるための、植え替え時期と方法

根が鉢いっぱいに回ったら、10~11月にふた回り大きな鉢、または地植えに植え替えます。植え替えの手順は、植えつけ時と同じ要領です。根を傷つけず、根鉢を崩さないように注意しましょう。

モッコウバラの仕立て方

蔓バラであるモッコウバラには、仕立てを行います。9月上旬頃に花芽をつけた後、枝の伸びが止まり、成長がゆるやかになってきます。落葉したら仕立ての適期です。

一般的な仕立て方は、伸びたシュート(※)をフェンスやアーチに誘因して育てます。モッコウバラは、花後の初夏から夏にかけて、ぐんぐんとシュートを伸ばして生長します。誘因のポイントは、シュートを直立させるのではなく横向きに、地面に対して水平気味に誘因すること。こうすることで花つきが多い枝に育ちます。

※「シュート」株元から新しく伸びる太い枝

剪定を行うときは、時期に注意しましょう

花つきのいいモッコウバラに仕立てるには、剪定の時期がポイントになります。

モッコウバラと一般的な蔓バラとのいちばんの違いは、剪定時期です。モッコウバラは開花後、遅くとも7月までには、その年に伸びた長いシュートを根元から切り取り、絡んだ枝や不要な枝を取り除きます。なお、ショートを絡ませて大きく育てたい場合はシュートは残します。全体のバランスを見ながら、花の咲き終わった枝を半分くらいまで切り戻します。剪定は、6月~7月上旬が適期です。

知りたい! モッコウバラの増やし方

モッコウバラは、「挿し木」で比較的簡単に増やすことができます。挿し木でもしっかり発根し、その後の生育も良好です。

挿し木の時期と方法

挿し木には、7月上旬までに剪定した枝を利用することができます。手順は以下のとおりです。

①剪定のときに、生長が止まって硬くなった枝を選び、10~15㎝ほど切り落とします。
②①の切り口を斜めに切り、1~2時間水につけておきます。水に浸ける前に、切り口にルートンなどの発根促進剤をつけておくと、発根を促進することができます。
③挿し木用の土や、湿らせた赤玉土とバーミキュライトを入れた鉢、または容器に挿します。
④土が乾かないようにたっぷりと水を与え、明るい日陰で管理します。
⑤30~40日後に発根し、根が十分に育ったことを確認したら、鉢または地面に植え替えます。

モッコウバラは樹勢が強いため、株を増やさなくても十分な大きさに生長します。

毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです

育てるときに注意したい病気

モッコウバラは丈夫で抵抗力が強く、特に注意したい病気はありません。

育てるときに注意したい害虫

前述のとおり、モッコウバラは病気や害虫の被害に遭いにくいバラです。しかし、アブラムシやハダニが発生することがあります。ハダニは湿度が高くなると発生するので、風通しをよくするためにも適度な剪定が必要です。害虫を発見したら、すぐに対処しましょう。

モッコウバラは新芽から蜜を出すため、新芽は少しベタベタしています。これは蜜によってアリを呼び寄せ、アブラムシを駆除するためだといわれています。

アブラムシ
春先に新芽を狙って発生し、非常に繁殖力が強いのが特徴です。アブラムシは葉の裏につくので、葉の裏をこまめにチェックします。見つけたら、専用の殺虫剤などを使って駆除しましょう。また、水で軽く湿らせた綿棒で取り除くという方法もあります。

ハダニ
ハダニは、体長約0.3~0.5㎜のハダニ科の昆虫で、梅雨明けから夏にかけて被害をもたらします。葉の裏に寄生すると、無数の白い斑点やかすり状の傷をつけ、葉や花弁の栄養を吸汁し、植物を弱らせます。放っておくと、葉の色が悪くなるだけでなく、植物を枯らしてしまう恐れがあります。

ただし、ハダニ自体は水に弱く、葉水やスプレー式の薬剤などで簡単に駆除することができます。でんぷんを主成分とした薬剤は自然にやさしく、安全性が高いことからおすすめです。

モッコウバラと相性のよい寄せ植えの植物

モッコウバラはたくさん花をつけ、どんどん蔓を伸ばして生長するので、寄せ植えをせずとも楽しめます。しっかりと育てて、グリーンカーテンやモッコウバラのアーチを作ってみましょう。

鉢植えで寄せ植えにする場合は、生育環境と植えつけ時期が近い植物を選ぶのがポイントです。以下の植物を参考にしてみてください。

・シモツケ
・スターチス
・ポピー

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記事協力

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・角山奈保子

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