グリーンネックレスを増やしたい! 最適な時期と方法、注意点を知っておきましょう

緑色の小さな玉が連なって育つグリーンネックレスは、「緑の鈴」とも呼ばれる蔓性の植物です。インテリアグリーンとして人気があり、うまく管理すればベランダなどの屋外でも育てられます。寄せ植えにも便利に使えるグリーンネックレスの増やし方を、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。
目次
グリーンネックレスを育てる前に知っておきたいこと
観葉植物として扱われることが多いグリーンネックレスは、セネキオ属という多肉植物のひとつです。ころころとした緑色の球は多肉化した葉です。秋から冬には、この葉のつけ根から花茎を伸ばし、先端に花をつけます。花は、白い筒状の小花(筒状花)が密集してひとつの花を形成。それぞれの小花の中心から飛び出るしべには、甘い香りが漂います。
グリーンネックレスの基本データ
学名:Senecio rowleyanus
科名:キク科
属名:セネキオ属
原産地:アフリカ南西部
和名:緑の鈴(ミドリノスズ)
英名 String-of-beads senecio
開花期:9〜12月
花色:白
葉色:緑
生育適温:15~25℃
グリーンネックレスは、季節を問わず、比較的に手に入りやすい植物ですが、生育期は気候が穏やかになる春と秋です。育てるときは、ホームセンターや街のフラワーショップで、ポット苗を購入するのがよいでしょう。インテリアショップや雑貨店などには鉢とセットで販売されているものがあり、そのまますぐに飾って楽しむことができます。小さい苗は100円ショップなどで見かけることも。
グリーンネックレスの原産地はアフリカの砂漠地帯。乾燥した環境で自生している植物です。上手に育てるためには、風通しがよく、日の当たる環境を整えておきましょう。ただし、強すぎる日差しには弱いので、日差しの柔らかい秋〜春は日当たりのよい場所で、夏は直射日光の当たる場所を避けて明るい日陰で管理します。室内ならレースのカーテン越しで日を当てるのがベストです。
ハンギングで吊るしたり、鉢を高い位置に置いたりすると、ビーズのような葉が流れ落ちる美しい姿を観賞できます。この垂れる姿は、よい“気”を運んでくれる風水の要素のひとつ。グリーンネックレスの特徴である緑色、玉も風水では縁起のよいものとされ、運気を上げるインテリアグリーンとしても人気があります。
植物を増やすには、いくつかの方法があります
グリーンネックレスの増やし方を見る前に、植物を増やすための方法について知っておきましょう。
種まき
植物の種を土にまいて苗を作る方法です。最近は市販のポット苗から楽しむ人が多いですが、自分が育てた植物から種を採取すれば安価に増やすことができます。ただし、種の採取が簡単にできる植物と、そうでない植物があります。
「交配種」「○○交配」「F1」と種の袋に記載されているものの種を採取した場合は、育てたものと同じような特徴が出にくいです。変わった花が咲くことがあるので、また別の楽しみ方ができます。
挿し木
茎や枝の一部を切り取って土に挿す方法で、草花の挿し木は、挿し芽と呼ばれることがあります。切り取った茎や枝は、挿し穂といい、挿し穂を挿す土は挿し床といいます。土ではなく水に挿す、水挿しも挿し木のひとつです。挿し木で増やせる植物はとても多く、成功率が高いので、もっとも手軽で簡単な増やし方といえます。
また、茎ではなく葉を使った、葉挿しもあります。葉に水分を蓄えた多肉植物などは、葉挿しで簡単に増やせるものがたくさんあります。
株分け
大きく成長した株を、小さく分けて増やす方法です。大きく成長した元の株を親株、小さく分けたものは子株といいます。植物は大きくなりすぎると、栄養分が全体に行き渡らなかったり、繁りすぎて十分に光合成ができなくなったりして、生育が衰えてきます。そこで、株分けをして植え替えを行うと、植物を増やしながら、株がリフレッシュできるというメリットがあります。
グリーンネックレスを増やす最適な方法と時期
グリーンネックレスは、「挿し木」や「株分け」で増やします。それぞれの作業を行うのに、最適な時期を確認しましょう。
挿し木の適期
生育期である寒さがひと段落する3月中下旬~6月中旬と、暑さがひと段落する9月中下旬~11月中旬頃が、グリーンネックレスの挿し木の適期です。水挿しでもよく増えます。
株分けの適期
株分けも挿し木同様、生育期である寒さがひと段落する3月中下旬~6月中旬と、暑さがひと段落する9月中下旬~11月中旬頃が適期です。植え替えのタイミングで、株分けするのもよいでしょう。株分けする株の大きさにもよりますが、鉢は元の鉢と同じ大きさか、ひと回り小さいものを用意します。
知りたい! グリーンネックレスの増やし方「挿し木」
グリーンネックレスは葉が土に触れているだけで、どんどん増えていくほど丈夫な植物です。挿し木の方法も、通常の挿し木より葉挿しに近いかもしれません。挿し木を行うときには、次のようなものを準備しましょう。
準備するもの
・増やしたいグリーンネックレスの株
・園芸用のハサミ
・水を入れた霧吹き
・ラベル
*土挿しの場合は、以下のものも用意
・土(多肉植物用の培養土など)
・鉢
・鉢底ネット
・鉢底石
*水挿しの場合は以下のものも用意
・底穴のない容器(グラスなど)
グリーンネックレスの株は、葉に張りがあり元気に育っているものを用意すると、挿し木の成功率が高くなります。土は多肉植物用の培養土を使うと手軽です。あるいは、サボテンや観葉植物の培養土でも大丈夫です。自分でブレンドする場合は、赤玉土5、パーライト(または軽石小粒)3、腐葉土2の割合など、水はけのよい状態のものを用意しましょう。
挿し木の手順
①葉がついている元気な茎を10〜15㎝の長さに切り、挿し穂にします。
②小さい鉢に鉢底ネット、鉢底石、新しい土を入れ、その上に挿し穂を寝かせて置きます。
③明るい日陰に置き、4〜5日後から霧吹きで土が湿る程度に水を与えます。
④土が乾いたら霧吹きで水やりをし、1か月ほどで完全に根づいてきたら通常の管理にします
水挿しの場合は、挿し穂を清潔な水に挿します。葉は水に浸からないようにします。毎日、水を変え、発根したら土に植えつけましょう。植えつけは、土の挿し木と同じように土の上に寝かせるよう置いて構いません。根が土に触れるように置き、上から土をかけて、根を土内に隠してください。植えつけ後は明るい日陰に置き、4〜5日してから通常の管理にします。
コツと注意点
ハサミはよく切れる清潔なものを用意しましょう。挿し穂を土の上に寝かせるときは、葉同士が重ならないようにします。葉が土に触れることで発根します。水は、与えすぎよりは控えめに。土がびっしょり濡れるほど水やりをしてしまうと、葉が腐りやすくなります。
知りたい! グリーンネックレスの増やし方「株分け」
グリーンネックレスは、成長し葉がたくさんついて株が大きくなってくると、蒸れやすくなります。蒸れで弱ってしまう前に、株分けを行なって、株をリフレッシュさせてあげましょう。鉢とのバランスが悪くなってきたり、根が鉢底から飛び出ていたりしたら、植え替えと同時に、株分けのタイミングでもあります。
準備するもの
・増やしたいグリーンネックレスの株
・土(多肉植物用の培養土など)
・鉢
・鉢底ネット
・鉢底石
・土入れ、またはスコップ
・割り箸などの細い棒
・園芸用のハサミ
・ジョウロ
・ラベル
挿し木と同じように、土は多肉植物用の培養土を用意します。または、サボテンや観葉植物の培養土でもいいでしょう。自分で土をブレンドする場合は、赤玉土5、パーライト(または軽石小粒)3、腐葉土2の割合など、水はけのよい状態にします。肥料分の含まれていない培養土や自分でブレンドした用土の場合は、元肥として緩効性の固形肥料を規定濃度の半分程度用意して、土に混ぜておきます。多肉植物はそれほど肥料を必要としないので、規定の量よりやや少なめで構いません。
株分けの手順
①鉢からグリーンネックレスの株を抜き、土を半分ほど落とします。
②手を使って、根から株を2〜3個に分けます。手で分けにくいときは、ハサミでカットします。
③植えつける鉢の鉢穴をふさぐように鉢底ネットを入れ、鉢底石を敷きます。
④鉢に水はけのよい新しい土を、1/3ほど入れます。
⑤土を入れた鉢に、株分けしたグリーンネックレスを置きます。
⑥鉢に土を加え、鉢と根の隙間にも土が入るように棒などでつついて、土を入れ込みます。この時、つついた棒で根を傷めないように注意しましょう。
⑦明るい日陰に置き、4〜5日後から水やりを始めます。
コツと注意点
土は清潔で乾いたものを使いましょう。グリーンネックレスはあまり肥料を必要としない植物なので、肥料を与えすぎないようにパッケージなどに記載されている規定量を確認し、それよりも少なめがポイントです。株分け後は、直射日光に当たらないように管理します。
グリーンネックレスは、挿し木も株分けも比較的失敗が少なく、増やせる植物です。たくさん増やして、ハンギングや寄せ植えなどでたくさん楽しみましょう。
Credit

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・ブライズヘッド