オーニソガラムは、星のような形をした小さな花を、茎の先にたくさんつけます。庭にぎっしりと並んで咲いている姿がかわいらしいだけでなく、切り花にしたときの花もちがとてもよいので、アレンジのアクセントとしても使い勝手のいい花材です。オーニソガラムがきれいな花を咲かせるためには、土台となる土が重要です。オーニソガラムの土作りについて、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにコツをお聞きしました。
目次
オーニソガラムを育てる前に知っておきたいこと
オーニソガラムは、6弁の星形の花をいくつもつける球根植物で、多くは清楚な純白です。ヨーロッパやアジア原産の耐寒性種と、アフリカ南部原産の半耐寒性種があり、やや育て方に違いがあります。鉢植え、地植え、どちらにも向いていますが、耐寒性種はどこでも地植えができるのに対し、半耐寒性種は、寒冷地では日当たりのいい南向きの場所に植えるか、鉢植えにするほうがいいでしょう。
オーニソガラムの基本データ
学名:Ornithogalum
科名:ユリ科
属名:オーニソガラム属
原産地:ヨーロッパ、南西アジア、南アフリカ
和名:大甘菜(オオアマナ)
英名:Star of Bethlehem, Wonder flower
開花期:春咲き種4~5月、夏咲き種7~8月
花色:ピンク、黄、オレンジ、白、複色
生育適温:10~20℃
切り花の出回り時期:オールシーズン
花もち:10日前後
オーニソガラムを育てるのはそれほど難しくはありません。植えつけは、4月~5月に咲く春咲き種は9月中旬~11月下旬、7~8月に咲く夏咲き種は4月中旬~5月下旬が適期です。
よい土は、水はけ、水もちに優れています
オーニソガラムをはじめとした植物の栽培には、「よい土」が必要です。よい土とは、水はけ(排水性)、水もち(保水性)、通気性、保肥性(肥料分を保つ力)の4条件を満たした土のことです。こうした条件を備えた土のなかでこそ、根は気持ちよく伸びていき、勢いのある植物を育てることができるのです。
「よい土」をひと言で表現すると、園芸用語でいう「団粒構造をもつ土」ということになります。団粒構造とは、小さな土の粒子が集まり、固まって、団子のような構造になったものを指します。団粒構造の土は、粒子と粒子の間にほどよい隙間ができ、そこに空気を保持することができるため、植物の根が呼吸しやすくなるのです。また、隙間があると水を十分溜めることができ、余分な水は停留することなく下に抜けていきます。さらに、肥料などの養分をしっかり蓄えることができます。このようなよい土は、フカフカとしていて、よい匂いがします。
ホームセンターや園芸店には、たくさんの土が販売されています。あらかじめメーカーでブレンドされ、袋詰めされた培養土のほかに、「赤玉土」とか「黒土」などの単用土もあります。園芸ビギナーのかたは、次の項で紹介する用土の特性を参考に、育てる環境や選んだ植物に合わせて、混ぜる用土を見極め、「よい土」に仕立ててください。
補足として、赤玉土7~6:腐葉土3~4のブレンドは、ベースとして、ほとんどの植物に使えます。覚えておくとよいでしょう。
種類を知ることが、適した土作りへの近道
土の種類について知ることは、植物栽培に必要な「よい土」作りに役立ちます。ここでは、主な土の種類とその特徴を見てみましょう。
【基本用土】
園芸用土のベースとなる土です。ブレンドする際には配合する割合が多くなります。植物をしっかり支える適度な重さが必要です。
黒土
畑土などにみられる、黒い土。有機物を多く含む柔らかい土で、水もちには優れているものの通気性、水はけに劣るので、腐葉土などを3~4割混ぜて使用します。
赤玉土
関東ローム層の赤土をふるって粒子を揃えたもので、水はけ、水もち、保肥性がよいので、基本的な用土として、もっともよく使われます。粒の大きさは、大・中・小があります。鉢やプランターには、中~小粒のものを選びましょう。
鹿沼土
栃木県鹿沼地方で産出される粒状の軽い土。通気性、水はけ、水もちがよく、性質は赤玉土に似ています。有機物をほとんど含まない酸性土なので、ツツジやサツキ、山野草などの栽培向きです。
砂
水はけや通気性をよくするために用いられます。川砂が一般的。ほかに、 群馬県桐生地方で産出される「桐生砂」や、富士山周辺から産出される「富士砂」といった火山砂礫があります。これらは、主に山野草の栽培などに使われます。
【改良用土】
基本用土に混合して、通気性、水はけ、保肥性などを改良する用土です。土を肥沃にする働きがある有機物と、物理的に基本用土を改良する無機物に大別されます。ここではバーミキュライトとパーライトのふたつが無機物です。
腐葉土
広葉樹の落ち葉を腐熟させた、代表的な改良用土です。水はけ、水もち、通気性、保肥性、すべてに優れています。土中の微生物を増やして土を活性化する働きがあります。品質にばらつきがあるので、しっかり完熟したものを使いましょう。
堆肥
わら、落葉、野菜くずなどを腐熟させたもので、土中の微生物を増やし、水はけや通気性をよくする働きがあります。わずかながら肥料分を含みますが、植物の生育に足りるほどではありません。腐葉土同様に、しっかり完熟したものを使います。
もみ殻くん炭
もみ殻を燻して炭化させたもの。水もち、通気性に優れ、保温効果や根腐れ防止の効果があります。アルカリ性なので、いちどにたくさんは使わないようにしてください。酸性土の中和に使われることもあります。
ピートモス
水ゴケ、シダなどが堆積し泥炭化したもの。軽くて水もちがよく、ほぼ無菌なので、室内栽培にも向いています。 酸性が強いので、一般的な草花には「酸度調整済み」のもの、酸性の土を好む植物やアルカリ性の土地のpH調整には「酸度未調整」のもの、と使い分けてください。
バーミキュライト
蛭石(ひるいし)を高熱処理して膨張させた人工用土で、非常に軽いのが特徴。水はけ、水もち、通気性、保肥力に優れ、無菌でほぼ均質です。
パーライト
真珠岩を高熱処理して膨張させた、白い粒状の軽い人工用土。均質で無菌。 水はけ、通気性がよいので、鉢土を軽量化できます。水もちや保肥性はあまりよくありません。
【そのほかの用土】
室内園芸用や特殊な植え込み材料などに使われるものです。
水ゴケ
湿原のコケ類を乾燥させたもの。軽くて通気性がよく、保水性に優れています。ランなどの植え込み材料として広く使われます。
バークチップ
針葉樹などの樹皮を細かくしたもの。通気性が非常によいので、軽石などを混ぜて、洋ランの植え込み材料として使われます。
たとえば、いつも水やりしすぎて植物を枯らしてしまう場合は、ベースの土に砂やパーライトを加えることで、水はけをよくすることができます。用土の種類と特性を知っていれば、このように、自身で調整し、より「よい土」を作ることができるのです。
※市販の「○○用」などと銘打った培養土は、これら用土の特性を生かして、配合割合を各社で研究してブレンドしたものになります。
元気に育てるための、オーニソガラムの土作り
ガーデニングのスタートは土作りです。園芸では「用土」という言葉を使います。
オーニソガラムは、通気性に富み、水はけのよい土を好みます。基本的には市販の「草花用培養土」を用いれば大丈夫です。「球根用」と書いてある培養土を選ぶのもよいでしょう。
自分で用土をブレンドして作る場合には、赤玉土5、腐葉土3、パーライト2の割合で混ぜます。用土の詳しい説明は「3.種類を知ることが、適した土作りへの近道」を参照ください。
地植えの場合には、植えつけ場所として、日当たりと水はけのよい場所を選びます。隙間が多く、水はけ、水もちともによい土を作るために、植えつけの2週間以上前に堆肥や腐葉土などの有機物をすき込んで耕しておくといいでしょう。特に水はけが悪いときは、川砂やパーライトなどを加えます。
雨の多い日本は酸性の土壌が多いので、中和するため、球根を植える2週間前に苦土石灰をまき、よくすき込んでおきます。
植えつけの際は、新しい培養土を使います。古い土は団粒構造が崩れているので、水はけが悪くなりがちです。病原菌や害虫の卵などが潜んでいることがあるので、注意してください。
オーニソガラムの植えつけの時期
オーニソガラムは、4~5月に咲く春咲き種の植えつけの適期は9月中旬~11月下旬。ただし、7~8月に咲く夏咲き種は、4月中旬~5月下旬に植えつけをします。
土のほか、植えつけ時に準備したいもの
用土について理解を深めたら、実際の植えつけについて、説明しましょう。オーニソガラムの球根を植えつけるときは、以下のものを準備します。
準備するもの(鉢植え、地植え共通)
・適した土(前述のとおり)
・オーニソガラムの球根
・土入れ、またはスコップ
・ジョウロ
・ラベル
*鉢植えの場合は、下記のものも用意
・鉢
・鉢底ネット
・鉢底石
オーニソガラムは日なたで花開く性質があります。鉢の置き場所や植え場所を考慮しておきましょう。
オーニソガラムの植えつけ方法が知りたい
オーニソガラムの、実際の植えつけ方法は以下の通りです。
鉢植えの場合の手順
①鉢に鉢底ネットを敷いて、水はけをよくするために鉢底石を入れます。その上に、鉢の高さの2/3くらいまで(球根の高さ+ウォータースペース分)培養土を入れます。
②球根を上向きにして、培養土に挿し込みます。
③球根の先端が5㎝ほど土に覆われるように、培養土を入れます。
一般的には5号鉢に3球、小輪種は3号鉢に3球植えが目安です。大きな鉢やプランターにはもっとたくさんの球根を植えてもよいですが、適度に間隔をあけてください。
地植えの場合の手順
①苦土石灰や堆肥を入れて土作りを行います。深さは30㎝程度まで掘り上げましょう。土作りから2週間ほど経過してから、球根の植え込みを行います。
②球根を植える穴を掘ります。10㎝程度で構いません。
③球根が8㎝ほど土に覆われるように、培養土を入れます。植えつけ間隔は、球根3個分くらいが目安です。
地植えの場合には、上部の葉がなくなったときに、誤って掘り起こして球根を傷つけないように、また、どこに植えたのかわかるように、ラベルを立てるとよいでしょう。
植えたあとは、鉢植えの場合は鉢底から水が流れ出るくらい、地植えの場合はたっぷりと水やりを行います。その後は10日くらい水を与えないようにしてください。10日の間、徐々に水分を吸収し、新しい芽と根が少しずつ伸びていくからです。その後も水やりは控えめにしましょう。
植えつけをするときの注意点はこちらです
植えつけるときに注意したいのは、オーニソガラムは過湿に弱く、水はけが悪いと球根が腐りやすいということです。必ず通気性と水はけのよい用土を使いましょう。ヌタンスやサンデルシーは、特に水はけのよい場所を好むので、用土の配分を工夫したり、斜面に植えてみたりするのもいいでしょう。
前述したとおり、オーニソガラムの花は太陽の光があたると開き、日の当たらない場所や曇天時には閉じてしまう性質があります。地植えの場合は、必ず日の当たるところに植えてください。
Credit
監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・高梨奈々
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