艶やかなハート形の葉が美しいポトス。丈夫なため、園芸ビギナーでも育てやすい観葉植物です。おしゃれなカフェなどで、インテリアグリーンとして飾られているのを見かけ、人気ぶりが伺えます。そんなポトスには、水やりのほかにも大切なお手入れがあります。そのひとつが「剪定」です。All Aboutガイドで、ガーデンライフアドバイザーの畠山潤子さんにお聞きしました。
目次
ポトスを育てる前に知っておきたいこと
ポトスは、常緑の蔓性植物です。熱帯雨林が原産地なので耐寒性はありませんが、屋内であれば1年中楽しめる観葉植物です。
ポトスの基本データ
学名:Epipremnum pinnatum
科名:サトイモ科
属名:ハブカズラ属
原産地:ソロモン諸島
和名:黄金葛(オウゴンカズラ)
英名:Pothos
葉の観賞期:オールシーズン
葉色:緑、複色
生育適温:20~30℃(最低10℃以上)
ポトスの苗は、園芸店やホームセンターの園芸コーナー、ネットショップなどで、1年中出回っています。ごく小さな苗なら、100円ショップの店頭に並んでいることもあります。
初めてポトスを育てる場合は、春から秋の間がおすすめです。吊り鉢にして美しい葉を枝垂れさせたり、ヘゴ支柱を使ってグリーンタワーに仕立てたり。また、蔓を長く伸ばして壁面に添わせ、天然のガーランドにするのも素敵ですね。
剪定には、いろいろな種類があります
剪定とは、植物の姿形を整えたり、生育や結実の調整をするために茎の一部を切り取ったりする作業のこと。脚立を立てて行なうような大掛かりなものから、草花の切り戻しのような細かい作業までを含みます。剪定というと、庭木の枝切りばかりを想像しがちですが、それだけではありません。
自然のままでも樹形がきれいに整う植物もありますが、多くの植物は日光を求めて片側だけ伸びがよかったり、生育が旺盛で姿が乱れたり、時には繁りすぎることで風通しが悪くなり病気が発生することがあります。
人の手が届かない山の中では致し方ないかもしれませんが、家の庭で伸びるに任せてジャングルになってしまっては困りもの。特にポトスのような観葉植物は、基本的に家の中で管理しますので、なおさらです。庭で植物がジャングル化しないようにするためにも、また、家の環境下で植物がすくすくと生育でき、美しい姿でいられるようにするためにも、剪定という作業が必要になるのです。
剪定は主に植物の姿形を整えること、花つきや結実をよくすること、通風や採光をよくし、生育を助けること、株や枝の若返りを図ることなどを目的として行います。
従って、剪定には以下のような作業が含まれます。
枝下ろし
樹木の大きい枝の芽を残さずに、枝分かれした元から切り落とすこと。
枝透かし(枝抜き)
通風や採光を妨げているような込みすぎた枝を、枝分かれした元から切り取ること。
刈り込み
全体の形を刈り整える作業のこと。
切り戻し(※1)
伸びた茎(枝)を短く切り詰める作業のこと。
摘心(摘芯、ピンチ、芯止め)
枝茎の先端の芽(頂芽)を摘むこと。これにより、脇芽(腋芽、側芽)を出させたり、開花を促したりします。
※1「切り戻し」 切り花で、花材の水あげをよくするために、茎の根元を新しく切り直すことも「切り戻し」といいます。
ポトスに剪定って、じつは必要です
ポトスは本来、熱帯雨林に生息する蔓性植物です。生育環境にあれば、どんどん蔓が伸びていきます。環境が合えば旺盛に生育して、うっそうと繁りすぎてしまうことも。一方で、日照不足や急激な環境変化によって、葉と葉の間が間延びする「徒長」の状態に陥ってしまうことがあります。そこで、ポトスがすくすくとした株の状態で長く楽しむためには、必要に応じて随時、剪定が必要になるのです。
ポトスに行なう剪定は、主に「摘心」と「切り戻し」の作業になります。
知りたい! 剪定する目的とメリット
切り戻しの目的とメリット
ポトスを切り戻しする目的は、間延びしたり不必要に伸びすぎたりした蔓を整理して、姿形を整えることにあります。
ポトスは成長するに従い、蔓が伸び、葉が込み合ってくることがあります。そのまま放っておくと株の風通しが悪くなり、カビの一種である「炭そ病」に罹ってしまうこともあります。
不要な蔓を切り戻しで取り除くことにより、すっきりと姿形を整えることができるだけでなく、通風を確保できるので、病気を防ぐこともできるというメリットもあります。
摘心の目的とメリット
ポトスを摘芯する目的は、枝数を増やすことにあります。
ポトスをはじめ多くの植物は、「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質があります。これは、茎の先端にある芽(頂芽)の生長のほうが、茎の側面につく脇芽よりも優先されることを指します。
つまり、摘心をしないでそのまま育てていると、優先された茎だけが伸びて、脇芽の生長は抑制されてしまうということです。摘心をしなくても自然に分枝する植物もありますが、ポトスは摘心することで枝数が増えて繁りやすくなり、株がコンパクトにまとまります。
剪定に適した時期を、見極めましょう
ポトスの剪定は、その目的によって適した時期があります。
切り戻しの適期と方法
切り戻しは、生育期間中の春~秋が適期です。
方法は、不要な蔓を切りたい位置までたどって、ハサミで切り取ります。
傷んだ蔓や葉を取り除くとともに、繁って混み合っている部分を透かすように切って風通しをよくします。このとき、節(※2)と節の中間(節間)で切ってしまうと、残った茎が突き立って見苦しくなります。切ろうとしている茎の次の節の根元(葉の上)で切ると、見た目がスッキリします。
摘心の適期と方法
摘心の作業は、脇芽を出させ枝数を増やし、株をコンパクトに茂らせることが目的です。定植後にしっかり根づいたら、蔓の先端を切り取ります。植え替えたポトスに、新しい葉が出て蔓が伸びだしたら、根づいたサインです。
方法は、定植後のポトスの蔓が伸びてきたら、その頂芽をハサミで切り取ります。
※2「節(せつ、ふし)」 茎の上で、枝もしくは葉の出る付け根部分のこと。
剪定のポイントは、枝や茎の選び方です
庭木の場合には、「忌み枝(※3)」と呼ばれる枝を剪定し、形を整えていきますが、ポトスの剪定をする際には、どのような枝を選んで切ればよいのでしょう。
切り戻しは、不必要に伸び過ぎた蔓や、繁りすぎて混み合っている部分の蔓を選んで切り取ります。
摘心の場合は、すべての蔓の頂芽を切ると株はコンパクトに繁りますが、全体的に蔓が伸びるまでに時間がかかります。蔓を長くしたいのであれば、あまり切り詰めずに、バランスを見ながら、長短をつけて頂芽を切り取るとよいでしょう。
何らかの原因で下葉が落ちてしまい、蔓の先端にしか葉がついていないような場合は、思い切って切り戻しをして、蔓を更新しましょう。同時に、切り取った蔓で挿し木の予備苗を作ることができます。
※3「忌み枝」 美しい木の形を保つときに、不要な枝のこと。枯れ枝、徒長枝、立枝、逆さ枝、懐枝、重なり枝、かんぬき枝、車枝、絡み枝、垂れ枝、胴吹き、ひこばえがあります。
ポトスの剪定には、コツがあります
ポトスを剪定するときのコツは、ズバリ「切るべき時に、切るべき枝を切る」これに尽きます。
園芸を始めたばかりというビギナーのかたは、「ハサミを入れるのが怖い」と思うかもしれません。植物の剪定は、人間にたとえると散髪のようなもの…と考えれば、ハサミを持つ手も軽くなるのではないでしょうか。
剪定するときの注意点はこちらです
ポトスに限らず、植物を剪定するときの注意点は、「剪定の際には清潔なハサミを使う」ということが挙げられます。
家庭で多種多様な植物を育てている場合、道具を媒介として病気が伝染ってしまうことがあります。あきらかに「病気にかかった植物を切った」とわかっている場合には、ハサミの消毒が必要です。といっても強い薬品や難しい作業は必要なく、普段は水で洗った後に水分をよく拭き取り、オイルを塗っておくくらいです。消毒したい場合は、薬局で売られている消毒用エタノールの使用が手軽です。
なお、ポトスを剪定した際に、切り口から白い汁が出ることがありますが、この汁に触れると体質によってはかぶれることがありますので、素手で触れないように注意しましょう。
美しく見せる、ポトスの仕立て方
最後にポトスの仕立て方について簡単に触れておきましょう。
吊り鉢仕立て
文字どおり、ポトスを植えた鉢を吊って、葉を枝垂れさせる仕立て方です。変化形として、伸びた蔓をガーランドのように壁面に這わせる仕立て方もできます。
ヘゴ仕立て
伸びた蔓を「ヘゴ」と呼ばれる支柱に這わせ、縦に育てる仕立て方です。ヘゴがすべてポトスの葉で覆われると、緑の柱状になり、インテリアとしての存在感が増します。
Credit
監修/畠山潤子
ガーデンライフアドバイザー
花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
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