ポトスを元気に育てるには、適した土作りと植え替え(定植)が必要です

艶やかなハート形の葉が美しいポトス。丈夫なため、園芸ビギナーでも育てやすい観葉植物です。おしゃれなカフェなどで、インテリアグリーンとして飾られているのを見かけ、人気ぶりが伺えます。このポトスを、よい状態で長く楽しむためには、土が重要になってきます。ここでは、ポトスの植え替えと土作りについて掘り下げてみましょう。All Aboutガイドで、ガーデンライフアドバイザーの畠山潤子さんにお聞きしました。
ポトスを育てる前に知っておきたいこと
ポトスは、常緑の蔓性植物です。熱帯雨林が原産地なので耐寒性はありませんが、屋内であれば1年中楽しめる観葉植物です。
ポトスの基本データ
学名:Epipremnum pinnatum
科名:サトイモ科
属名:ハブカズラ属
原産地:ソロモン諸島
和名:黄金葛(オウゴンカズラ)
英名:Pothos
葉の観賞期:オールシーズン
葉色:緑、複色
生育適温:20~30℃(最低10℃以上)
ポトスの苗は、園芸店やホームセンターの園芸コーナー、ネットショップなどで、1年中出回っています。ごく小さな苗なら、100円ショップの店頭に並んでいることもあります。
初めてポトスを育てる場合は、春から秋の間がおすすめです。吊り鉢にして美しい葉を枝垂れさせたり、ヘゴ支柱を使ってグリーンタワーに仕立てたり。また、蔓を長く伸ばして壁面に添わせ、天然のガーランドにするのも素敵ですね。
ポトスにとっての、土の役割とは…
ポトスは土中に根を張り巡らせることで、自分自身の体を支えています。同時に、土中の根で呼吸を行ったり、水で溶け出した土中の栄養分を根から吸い上げたりしています。つまり、ポトスの根は、人間でいうと体を支えるための足であり、呼吸をするための肺であり、栄養補給をするための口(胃)であるといえるでしょう。
また土は、その大切な根を、夏の強い日差しや高温、乾燥、風といった急激な環境変化から守る役割を担っています。これは人間にたとえると、「住まい」にあたる役割を果たしているといえます。
よい土は、水はけ、水もちに優れています
ポトスをはじめとした植物を土で栽培するには、水はけ(排水性)、水もち(保水性)、通気性、保肥性に優れた「よい土」が必要となります。
「よい土」とは、園芸用語でいう「団粒構造をもつ土」のことです。団粒構造とは、砂や粘土などさまざまな土の粒子(単粒)がくっつきあって、小さな固まり(団粒)を形成して重なっている状態を指します。団粒の中には小さい隙間が、団粒と団粒の間には大きな隙間があり、それらの隙間がそれぞれ排水、通気、保水、保肥に役立ち、植物が根を張りやすい環境を作っています。このようなよい土は、フカフカとしていてよい匂いがします。
ホームセンターや園芸店には、たくさんの土が販売されています。あらかじめメーカーでブレンドされ、袋詰めされた培養土のほか、「赤玉土」や「黒土」などの単用土が販売されているので、特に園芸ビギナーのかたはどれを買ってよいのか迷うかもしれません。次の項で紹介する用土の特性を参考に、育てる環境や選んだ商品に合わせて、混ぜる用土を見極め、「よい土」に仕立ててください。
補足として、赤玉土7~6:腐葉土3~4のブレンドは、ベースとしてほとんどの植物に使えるので覚えておくとよいでしょう。
種類を知ることが、適した土作りへの近道
土の種類について知ることは、植物栽培に必要な「よい土」作りに役立ちます。ここでは、ひととおり、土の種類とその特徴を見てみましょう。
黒土
畑土などにみられる、黒い土。粒子が細かく、多用すると水はけが悪くなるため、コンテナなどの容器栽培には不向きとされています。
赤玉土
関東ローム層の赤土をふるって粒子を揃えたもので、水はけ、水もちがよいのが特徴。小粒・中粒・大粒と選別されて袋詰めになっています。ほかの用土とブレンドして使うときは、中~小粒のものを選びます。
鹿沼土
栃木県鹿沼地方で産出される粒状の軽い土。水はけ、水もちがよく、性質は赤玉土に似ています。酸性なのでツツジやサツキ、山野草などの栽培向き。
腐葉土
広葉樹の落ち葉を腐熟させたもので、水はけ、水もち、通気性に優れています。肥料分はそれほどありませんが、土中の微生物を増やして土を活性化する働きがあります。袋を開けたとき、カビや嫌な匂いのするものは使用を避け、しっかり完熟したものを使いましょう。
堆肥
藁、落葉、野菜くずなどを腐熟させたもので、土中の微生物を増やし、水はけや通気性をよくする働きがあります。腐葉土よりは、有機質の肥料分が含まれます。 腐葉土同様に、しっかり完熟したものを使います。
ピートモス
水ゴケ、シダなどが堆積し泥炭化したもので、軽くて水もち、通気性がよいのが特徴。 酸性が強いので、一般的な草花には「酸度調整済み」のもの、酸性の土を好む植物には「酸度未調整」と表記されたもの、と使い分けてください。
バーミキュライト
蛭石を高熱処理して膨張させた人工用土で、軽いのが特徴。水はけ、通気性、保肥力に優れています。
パーライト
真珠岩を高熱処理して膨張させた、白い粒状の軽い人工用土。 配合することで、水はけ、通気性がよくなります。
砂
水はけや通気性をよくするために用いられます。川砂が一般的。群馬県桐生地方で産出される「桐生砂」や、富士山周辺から産出される「富士砂」は火山砂礫で、主に山野草の栽培などに使われます。
水ゴケ
湿原のコケ類を乾燥させたもの。軽くて通気性がよく、保水性に優れています。
籾殻くん炭
籾殻を燻して炭化させたもの。水もち、通気性に優れ、根腐れ防止の効果があります。アルカリ性なので、酸性土の中和にも使われます。
たとえば、いつも水やりしすぎて過湿で植物を枯らしてしまう場合は、ベースに砂やパーライトを加えることで、水はけをよくすることができます。用土の種類と特性を知っていれば、このように、自身で調整し、より「よい土」を作ることができるのです。
※市販の「○○用」などと銘打った培養土は、これら用土の特性を生かして、配合割合を各社で研究してブレンドしたものになります。
元気に育てるための、ポトスの土作り
ポトスは、一般的な培養土で育てる方法と、ハイドロカルチャーと呼ばれる手法で育てる方法があります。
培養土で育てる場合
ポトスを鉢に植え替える場合には、水はけがよい土を使用します。市販の観葉植物用培養土で問題ありません。
自分で単用土をブレンドして作る場合には、赤玉土と腐葉土、パーライト(砂)を6:3:1の割合で混ぜます。あらかじめ元肥として、緩効性肥料を施しておきます。
なお、土の乾き具合は、各々の水やりのクセであったり、温度や風通しなどの環境によって変わることも覚えておきましょう。
また、植え替えの際は、清潔で新しい培養土を使うようにします。古い土は「団粒構造(後述)」が崩れ、水はけが悪くなりがちです。また、古い土には病原菌や害虫の卵などが潜んでいる場合があるので、注意してください。
ハイドロカルチャーで育てる場合
ハイドロカルチャー(Hydroculture)とは、「ハイドロ(hydro)=水」+「カルチャー(culture)=栽培」を意味します。ヒヤシンスなどの球根を水だけで育てる「水栽培」に対し、ハイドロカルチャーはさまざまな支持資材を土の代わりに用いる「土なし栽培」で、「水耕栽培(※1)」のひとつとされています。通常の鉢植えと違い、底に水抜き穴が必要ないので、家にあるさまざまな器を転用することができます。また、土を使わないので、室内が汚れにくいというメリットがあります。
支持資材としては、以下のようなものを使用して育てることができます。
ハイドロボール
高温で焼成した粘土、発泡煉石。レカトン、ハイドロコーン。
ネオコール
炭と多孔質セラミックで作られた資材。カラーバリエーションがあります。
セラミスグラニュー
ドイツ産の粘土を原料とした多孔質の粒状人工土。
カラーサンド(※2)
ゼオライトを原料としたカラフルな植え込み資材。レインボーサンド。
植物用ポリマー
高吸水性樹脂で作られた資材。カラーバリエーションがあります。
※1「水耕栽培」 土を用いて植物を栽培する「土耕栽培」に対し、水と植物に必要な養分を含んだ培養液で植物を栽培する方法。ハイドロボールをはじめとした支持体を用いる場合も含めます。養液栽培。
※2「カラーサンド」 クラフト用で色つきの砂、石などもこの名前で流通しています。購入の際は、原料を確認すること。
ポトスの、植え替えの時期と頻度
ポトスは、ポット苗や鉢植えを購入して育てる観葉植物です。購入した苗は、通常の鉢植えにするにしても、ハイドロカルチャーで育てるにしても、できるだけ早く、定植をします。
市販のポット苗を買ったときに底穴から根がはみ出しているようなものは、鉢内が根で一杯になっている可能性があります。そのままでは根詰まりを起こしますし(すでに根詰まり状態のときも)、仮にそのような状態でなくても、育苗用の苗ポットは薄く、中の土が外気の影響を受けやすい素材なので、早めに植え替えが必要です。
また、ポトスの生育具合にもよりますが、根詰まりを防ぐためにも、1~2年にいちどは植え替えをします。5~7月頃が、植え替えの適期です。
ハイドロカルチャーの場合は、使用しているハイドロボールなどが汚れてきたら、きれいに洗って植え替えをします。
土のほか、植え替え時に準備したいもの
用土について理解を深めたら、実際の植え替えを紹介しましょう。ポトスを植え替えるときは、以下のものを用意します。
準備するもの
培養土の場合
・適した土(前述のとおり)
・植え替えするポトスの苗
・鉢(4~5号※3)
・鉢底ネット
・鉢底石
・鉢受け皿
・土入れ、または移植ゴテ
・ジョウロ
・ヘゴ支柱(ヘゴ仕立てにする場合)
市販の苗は3~3.5号ポットのものが多いので、植え替え用にはひと回り大きい4~5号の鉢を準備します。初めから大きい鉢に植え替えると、苗に対して土の量が多くなるため、根腐れする恐れがあります。大苗のポトスを購入した場合は、苗の鉢よりひと回り大きい鉢に植え替えします。
ヘゴ仕立てにする場合は、鉢の中央にヘゴ支柱を立てる必要があるので、さらにひと回り大きい鉢を準備してください。
また、日なたから日陰へ置き場所を移動するなど、急激な環境変化は葉が落ちる原因になります。あらかじめ、鉢の置き場所を考慮しておきましょう。
※3「号」 鉢のサイズは「号」で表されます。1号は、直径約3㎝にあたります。
ハイドロカルチャーの場合
苗は、ハイドロカルチャー用に育てられたものが望ましいです。水挿しにして、発根させた苗を使ってもよいでしょう。
・ 底穴のない器(家庭にあるものの転用可)
・ 支持資材(ハイドロボールなど)
・ 根腐れ防止剤(ミリオン、シリカ、ゼオライトなど)
・ 水耕栽培用肥料(イオン交換樹脂栄養剤を使用する場合は、根腐れ防止剤は不要)
・ 水位計(陶器など、不透明な器を使用する場合)
ポトスの植え替え方法が知りたい
培養土で育てる場合の手順
①植え替え用の鉢に、底ネット、鉢底石を敷き、培養土を少し入れておきます。
②植えられていた鉢から、株を抜き取ります。
③根鉢(根と土がひとまとまりになったもの)からこぼれる古い土は落とし、根が回っている場合は、活着しやすいように根の先端をやさしくほぐします。生きていないような古根があれば、切り落とします。根があまり張っていない肩の土(根鉢上辺の周囲)も落とします。
④整理した株を、鉢の中央に据えます。隙間が生じないように培養土を入れ、株を安定させます。
⑤鉢底から流れ出るくらいにたっぷりと水やりをして、植え替え終了です。
ハイドロカルチャーで育てる場合の手順
①器の底に、根腐れ防止剤もしくはイオン交換樹脂栄養剤を入れ、ハイドロカルチャー用資材を敷きます。
②元から植えられていたポットから、苗を抜き取ります。ハイドロカルチャー用でなく、培養土に植えられた小苗を使う場合には、根洗い(水洗いして根についた土を落とす)をします。
③苗を器の中央に据えて、ハイドロカルチャー用資材で埋めます。
④水位計がある場合は、器に挿し込んでおきます。このとき、必ず器の底につくように立てます。
⑤最後に、水を器の1/5~1/4程度入れて完成です。
なお、植え込み資材にハイドロボールやセラミスグラニューを使用する際は、あらかじめ資材を軽く水洗いして、水気を切っておくとよいでしょう。
植え替えをするときの注意点はこちらです
ポトスを植え替える際に根を乱暴に扱って傷つけてしまうと、その後の生育が芳しくありません。根を傷つけないよう、やさしく扱いましょう。
また培養土を使用する場合、苗の周囲に土を寄せる際にギュウギュウと力を入れて押しつけると、土中の空気が抜けてしまうので、苗が安定する程度にやさしく押さえるようにします。
Credit
監修/畠山潤子
ガーデンライフアドバイザー
花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
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