贈ると喜ばれ、もらうと幸せな気持ちになれる花、ラナンキュラス。明るい花色とゴージャスな花弁が特徴で、華やかな印象から、多くの人に親しまれています。切り花を飾って楽しむのも素敵ですが、自分で育てればより魅力を堪能できます。しかも、上手に栽培すれば、増やせることも! ここでは、ラナンキュラスを増やすための方法や時期、タイミング、注意点をわかりやすく紹介します。NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました
ラナンキュラスを育てる前に知っておきたいこと
ラナンキュラスは、咲き方や花色のバリエーションが豊富で、同じ品種でも個体により、色合いに差があることも。そのため、「どんな花が咲くか」と期待をしながら育てられます。まずは、ラナンキュラスと仲よくなるための基本情報を知っておきましょう。
ラナンキュラスの基本データ
学名:Ranunculus asiaticus
科名:キンポウゲ科
属名:キンポウゲ属
原産地:東ヨーロッパ、南ヨーロッパ、西アジア
和名:花金鳳花(ハナキンポウゲ)
英名:Persian buttercup
開花期:3~5月
花色: 赤、ピンク、黄、オレンジ、白、紫、緑、複色
発芽適温:15℃前後
生育適温:5~20℃
切り花の出回り時期:11~5月
花もち:6~8日
ラナンキュラスは秋植えの球根植物で、耐暑性が弱く、夏の間は休眠します。耐寒性は普通ですが、地植えなら霜が当たらない場所で育てて防寒対策をとりましょう。ほかにも、育てるうえで気遣う点がいくつかあります。ここでは、ラナンキュラスの増やし方について、詳しく説明します。
植物を増やすには、いくつかの方法があります
ラナンキュラスの増やし方を説明する前に、まずは植物全体に共通する増やす方法について知っておきましょう。
一般的な植物の増やし方は、「種子繁殖」と「栄養繁殖」の2種類に大きく分けられます。「種子繁殖」とは、その名のとおり種による繁殖方法です。一方の「栄養繁殖」には、以下のような方法があります。
挿し木
葉や茎、根など植物体の一部を切り取って、用土や水に挿して発根させ、新たな個体を得る手法。
取り木
親となる植物の一部に傷をつけて、茎などの途中から発根させたあと、親株から切り離して新たな個体を得る方法。挿し木でうまくいかない植物でも増やすことができ、観葉植物や樹木などで多く用いられます。
接ぎ木
植物体の一部を、台木となる別の植物に接合して生育させる方法。病害に強い丈夫な個体を得るために、バラをはじめトマト、キュウリ、ナスなどの果菜類にもよく用いられます。
株分け
親となる植物を根とともに分けて、複数の株を得ること。いちどに得られる株数は少ないですが、大株になったものや老化した株の更新にも用いられる手法です。
分球
スイセンやチューリップなどの球根植物に用いられ、球根を分けて個体を増やす方法。球根類は成長すると、親球から小さな子球(しきゅう)ができます。その子球を切り離して、数を増やしていきます。子球が増え過ぎると、親球がやせたり花が咲きにくくなったりするので、何年かにいちどの割合でこの作業が必要な植物もあります。
このほかに、ムカゴや木子(きご)といった形で増える植物も存在します。また、家庭栽培ではほとんど行いませんが、「組織培養」と呼ばれる人為的な増やし方もあります。
ラナンキュラスを増やす、最適な方法と時期
ラナンキュラスは、「分球」または「種子繁殖(種まき)」の方法で増やします。ただし、種子繁殖は親株と同じような花が咲くとは限らないため、分球が一般的です。増やし方の最適な時期は方法ごとに異なるので、下記を参照ください。
分球の適期
分球に適しているのは、5月中旬~6月中旬です。夏の休眠に向けて葉が茶色くなってきたら、株を抜いて球根を掘り上げてください。その際に球根を分ける=分球します。
種まきの適期
ラナンキュラスの種は、開花時期の3~5月から1~2か月ほどで収穫できます。 発芽適温は15℃前後ですので、たとえば関東地方なら、ヒガンバナが咲く頃(9月中旬から10月中旬)が種まきに適しています。
※市販の種で袋に「交配種」「○○交配」「F1」と記載されているものは、育てたものから種を採ってまいても、親株と同じような花を咲かせないことがあります。しかし、今までにない花を育てられるおもしろさもあるといえるでしょう。もし、同じ花を求めているなら、種子繁殖以外の方法で増やすのが望ましいです。
知りたい! ラナンキュラスの増やし方「分球」
球根の掘り上げ手順(鉢植え、地植え共通)
①夏の休眠前に葉が茶色くなったら、株を抜いて球根を掘り上げます。
②茎を球根の付け根部分から手で折ります。絡まり合った塊根が折れないように球根を手で分けます。細かく分けないようにするのがコツ。
③掘った球根は水洗いで土をきれいに落とし、風通しのよい日陰で新聞紙の上などに置き、3日程度天日干しします。
④しっかり乾燥したら、ネット袋などに入れて風通しのよい涼しい日陰に吊るし、次に植える秋まで保管しておきましょう。
準備するもの
鉢植え、地植え共通
・分球するラナンキュラスの球根
・肥料(肥料が含まれていない土を使う場合に必要)
・ナイフ(なくても大丈夫ですが、あると便利)
・土入れ、またはスコップ
・ラベル
・ジョウロ
*鉢植えで増やす場合は、下記のものも用意
・5号以上の鉢、または横長プランター
・土
・鉢底ネット
・鉢底石
土は、苦土石灰を混ぜた培養土、または赤玉土(小)・腐葉土・酸度調整済みピートモスを5:3:2の割合で混ぜて、有機石灰(1ℓあたり約3g)と、リン酸分を多めに含んだ緩効性化成肥料(1ℓあたり約5g)を足したものを使います。
※詳しくは、「ラナンキュラスを元気に育てるには、適した土作りと植え替えが必要です」を参照。
植えつけの手順
①鉢植えで増やす場合は、鉢(またはプランター)に鉢底ネットを入れ、鉢底石を敷き、あらかじめ湿らせておいた土を入れます。土を自分でブレンドする場合は、元肥として緩効性化成肥料を混ぜておきましょう。
地植えで増やす場合は、植えつける2~3週間前に、土に堆肥や緩効性化成肥料と、酸性土を中和させる有機石灰か苦土石灰を混ぜて、なじませておきます。
球根を複数植えるなら、15~20cm程度の間隔で植えつける穴を掘ります。穴は、鉢植えなら地表から深さ2cmくらいのところに、地植えなら地表から深さ2~3cmくらいのところに、球根が埋まるように掘ってください。
②休眠直前に掘り上げて吸水処理をしておいた球根の中から、大きなものを選びます。
③白く短い根の部分をつけた状態のまま、手または清潔なナイフで切り分けてください。
④穴に球根を植えてから、土をかぶせましょう。地中に大きな隙間があると根が伸びないため、気をつけてください。プランターに植える場合は、15~20cm程度の間隔で複数株を植えます。
⑤土が乾燥しない適度に水やりをします。品種名や植えつけ日を書いたラベルを土に挿しておくと、わかりやすくて便利です。
コツと注意点
分球して植えつけた直後の植物は、とても弱っている状態です。直射日光は刺激が強いため、すぐに日なたへ置くのは避けましょう。
知りたい! ラナンキュラスの増やし方「種まき」
準備するもの
鉢植え、地植え共通
・保存用紙袋(封筒など)
・密閉保存容器
・乾燥剤(あるとベスト)
種を採る手順
①種は開花後1~2か月でできます。これを採取し、天日で干してサヤからはずしておきましょう。
②乾いた状態の種を保存用紙袋(ビニール袋は避ける)に入れ、それをさらに密閉保存容器に入れて乾燥させます。容器に乾燥剤を入れておくのがおすすめ。
③カビが生えないように、種入りの密閉保存容器を冷蔵庫などの冷暗所で、植えつけまで保管してください。
発芽のコツ
種はまく前に吸水させておくと、発芽しやすくなります。水を含ませたティッシュやキッチンペパーなどに種を挟み、冷蔵庫の野菜室などに1日程度入れておいたものをまいてください。
種をまく手順
種はまず、素焼き鉢か育苗箱にまくのがよいでしょう。本葉が4~5枚程度になったら、鉢や花壇などに植え替えてください。
準備するもの(鉢植え、地植え共通)
・吸水処理をした種
・肥料(肥料が含まれていない土を使う場合に必要)
・土入れ、またはスコップ
・ラベル
・ジョウロ
*鉢植えで増やす場合は、下記のものも用意
・ポットまたは育苗箱
・土(分球するときと同じもの)
・鉢底ネット
・鉢底石
①鉢植えの場合はポットなどに鉢底ネットを入れて鉢底石を敷き、土を入れます。土を自分でブレンドする場合は、元肥として緩効性化成肥料を混ぜておきましょう。
地植えの場合は、花壇の土に堆肥や緩効性化成肥料と酸性土を中和させる有機石灰か苦土石灰を、植えつける2週間以上前に混ぜておきます。
②10粒程度の種を、土の上に重ならないようにまきます。
③種の上に薄く土(5㎜程度)をかぶせ、風に飛ばされないようにしてください。
④日陰に置き、土が乾燥しない程度に水やりをします。
⑤通常は2週間ほどで発芽しますが、全体が発芽するのはさらに10日ほどかかります。発芽後は少しずつ日に当てていきましょう。本葉が4~5枚ほど出たら、鉢や花壇などに植え替えてください。
コツと注意点
種の採取は晴れた日に行いましょう。雨降りの日や雨上がりなどで湿気を含んでいるときに採取すると、種が腐ってしまう可能性があります。
きれいなラナンキュラスを増やすことができれば、育てる喜びも倍に! ぜひ、分球や種子繁殖にチャレンジして増やし、友人たちにおすそ分けしてみてはいかがですか。
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Credit

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・白神雅子
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