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ラナンキュラスを元気に育てるには、適した土作りと植え替え(定植)が必要です

ラナンキュラスを元気に育てるには、適した土作りと植え替え(定植)が必要です

明るい花色といく重にも重なる花びらが華やかなラナンキュラス。名前はラテン語の「Ranunculus」で、同じくラテン語の「rana(カエル)」に由来しています。ラナンキュラスが属するキンポウゲ科キンポウゲ属の大半の種が、カエルの生息地である湿地に自生すること、そしてラナンキュラスの葉の形がカエルの足に似ていることから、この名がつきました。ラナンキュラスを健康的に育てて美しい花を咲かせるには、土がとても大切。ラナンキュラス栽培に適した土について、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。

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ラナンキュラスを育てる前に知っておきたいこと

ラナンキュラスは多年草で、きちんと管理して育てれば、数年にわたり花を咲かせてくれる植物です。まずは、ラナンキュラスと仲よくなるための基本情報を知っておきましょう。

ラナンキュラスの基本データ
学名:Ranunculus asiaticus
科名:キンポウゲ科
属名:キンポウゲ属
原産地:東ヨーロッパ、南ヨーロッパ、西アジア
和名:花金鳳花(ハナキンポウゲ)
英名:Persian buttercup
開花期:3~5月
花色: 赤、ピンク、黄、オレンジ、白、紫、緑、複色
発芽適温:15℃前後
生育適温:5~20℃
切り花の出回り時期:11~5月
花もち:6~8日

ラナンキュラスは秋植えの球根植物で、耐暑性が弱く、夏の間は休眠します。耐寒性は普通ですが、地植えなら霜が当たらない場所で育てて防寒対策をとりましょう。ラナンキュラスを育てるには、気づかうべき点がいくつかあります。ここでは、植物の栽培で基本となる土について、次の項以降で詳しく説明します。

よい土は、水はけ、水もちに優れています

植物を育てるために使う土を「用土」といいます。用土にはさまざまな種類(後述参照)があり、それらを何種類かブレンドしたものが「培養土」です。

植物は根の働きが弱ってくるとだんだん元気がなくなり、放置しておくとやがて枯れてしまいます。つまり、根がしっかりしていれば、植物は健やかに成長するのです。その根を育てる土台であり、住処となるのが”土”です。

植物にとって「よい土」とは、栄養分に富み、水はけ(排水性)、水もち(保水性)、通気性、保肥性に優れた状態のものです。土には、成長に必要な栄養素がバランスよく、豊富に含まれていないといけません。また、乾きやすく通気性があると、土中に新鮮な水と酸素が保たれ、根腐れしにくくなります。土中の酸素は、土に保温効果や断熱効果をもたらし、寒さや暑さなど急激な気温の変化から根を守ります。ただし、乾きやすさは度が過ぎると水不足を招くため、適度な保水性が必要なのです。

このようなよい状態の土は、“団粒構造”になっています。団粒構造とは、砂や粘土など、さまざまな土の粒子(単粒)がくっつき合って、小さな固まり(団粒)を形成して重なっている状態。団粒の中には小さな隙間が、団粒と団粒の間には大きな隙間があります。これらの隙間が排水、通気、保水、保肥に役立ち、植物が根を張りやすい環境を作っています。団粒構造の土は、フカフカと柔らかいのが特徴です。

一方、水はけの悪い粘土質の土や、水もちしない砂土を“単粒構造”といい、一般的な植物の栽培には向いていません。

園芸店やホームセンターには、あらかじめブレンドされた培養土のほか、赤玉土や黒土、腐葉土など、さまざまな用土が販売されています。園芸初心者のかたは、どの用土を買えばよいのか迷うでしょう。次の項で紹介する用土の特性を参考に、育てる植物や環境に合わせて、よい土を作ってください。

種類を知ることが、適した土作りへの近道

土の種類やその特徴を知ることは、植物栽培に必要な「よい土」作りに役立ちます。ここでは、園芸店やホームセンターでよく見かける用土について紹介しましょう。

【基本用土】

基本用土は鉢土のベースとなるもので、ブレンドの配合割合が大きい土。代表的なものは以下のとおりです。

黒土
一般的に畑用の土として知られている黒い土。柔らかく、保水性と保肥性に富みますが、排水性と通気性はやや劣るため、単体で使うことはあまりありません。

赤玉土
関東ローム層の赤土を玉状に乾燥させたもので、粒の大きさは大・中・小があります。通気性、保水性、保肥性に優れており、ガーデニング用の基本の土としてよく利用されています。

鹿沼土
栃木県鹿沼地方でとれる火山性の玉土。通気性、保水性、保肥性に優れています。酸性なので、山野草やブルーベリー、サツキ、ツツジなどと相性がよいとされています。

真砂土
花崗岩が風化した粒子の細かい用土で、粘土質。排水性が悪いため、通気性に優れた改良用土(後述参照)と一緒に使います。

【改良用土】

基本用土をよりよい性質にするために加える土です。

腐葉土
広葉樹の落ち葉を腐熟させたもの。有機質に富んでいるので、土中の微生物の働きを高め、土を肥えさせてくれます。また、排水性、保水性、保肥性も高く、土質改良に有効です。

ピートモス
水ゴケ、シダなどが泥炭化したもので、腐葉土とよく似た性質。軽くて、排水性、保水性、保肥性がよく、室内園芸に適しています。酸度が強いので、酸性の土を好む植物には「酸度未調整」のものを、一般的な草花には「酸度調整済み」のものを使い分けましょう。

堆肥
わらや落ち葉、枯れ草などを腐熟させたもので、通気性と排水性をよくする働きがあります。腐葉土よりも有機質の肥料分が含まれていて、花壇や畑の用土に最適です。

【調整用土】

バーミキュライト
蛭石(ひるいし)を焼いて発泡させたもので、軽いのが特徴。通気性と保肥性に優れ、保水性もよい土です。

パーライト
真珠岩(しんじゅがん)を高温高圧で焼成したもので、軽くて無菌。通気性と排水性に富むため、水はけの悪い用土に混ぜて使います。


排水性や通気性を高めるために使います。桐生砂(きりゅうすな)、矢作砂(やはぎすな)、富士川砂など種類はさまざまで、川砂が一般的。

【特殊用土】

水ゴケ
湿地に自生する水ゴケを乾燥させたもので、保水性と通気性に優れています。水をたっぷり含ませてから使います。

※「○○用」として市販されている培養土は、これらの用土の特性を生かして、配合割合を各社で研究して対象植物用にブレンドしたものです。

元気に育てるための、ラナンキュラスの土作り

ラナンキュラスの栽培は、水はけのよい弱酸性~弱アルカリ性の土壌が適しています。鉢植えで育てる場合は、市販の草花用培養土で大丈夫です。

鉢植えで使う草花用培養土のなかには、元肥入りの商品があります。これらは自分で元肥を与える必要がないので便利です。培養土は、できるだけ清潔で新しいものを使ってください。過去に別の草花を育てたときの土を使い回すと、病原菌が潜んでいることがあるからです。これはラナンキュラスの栽培に限らず、どの植物においても同じことがいえます。

鉢植えで使う土は、前述のとおり市販の草花用培養土を使います。土をブレンドする場合は、赤玉土(小)、腐葉土、酸度調整済みピートモス(ココピート)を5:3:2の割合で配合した土が適しています。この培養土に、リン酸分を多めに含んだ緩効性化成肥料(1ℓあたり約5g)を混ぜて使います。有機石灰を使用する場合は、定植まで2週間以上待ってからにしましょう。追肥は、緩効性化成肥料を75~90日に1回施し、3月終わり頃に止めたほうが、球根を腐りにくくします。

地植えの場合、日本は酸性土壌が多いので、使う土にアルカリ性を強める苦土石灰(くどせっかい)を混ぜて中和させてください。 ただし、苦土石灰は量が多いと土質が悪化して、植物の生育を妨げることがあるため、土と混ぜて見えなくなるぐらいの少量にしておきます。目安は、1㎡あたり約100g。苗などの定植は、苦土石灰を混ぜて2~3週間なじませてから、植えつけるとよいでしょう。

地植えでは、元肥として緩効性化成肥料を適量施します。鉢植えと同様に定期的に追肥を与えてください。

ラナンキュラスの、植え替えの時期と頻度

鉢や市販の苗用ポットで、ラナンキュラスをしばらく育てると、土中が根でいっぱいになる”根詰まり現象”を起こして、成長が妨げられます。葉が早く黄ばむようになったら、根詰まりを起こしているかもしれません。また、用土の劣化も生育悪化の一因になります。ポットや鉢から葉が溢れたり、一番花の小さな蕾が見えてきたりしたら、植え替えのタイミングです。適期は、暖地では11月中旬~12月中旬、寒冷地では10月上旬から11月中旬になります。

植え替えをするときは、抜いた株の周りについている土を落としてから、ひと回り大きな鉢に移して植えます。このとき、太い根はなるべく傷めないように注意しましょう。植える際は深さに気をつけて、地際にある芽が土に埋まらないように行ってください。

最初から地植えで育てている場合は、株分け以外で植え替える必要はありません。

土のほか、植え替え時に準備したいもの

ここでは、ラナンキュラスを植え替えるときに必要なものをまとめました。事前に以下のものを用意しておきましょう。

準備するもの(鉢植え、地植え共通)
・適した土(前述のとおり)
・植え替えするラナンキュラスの苗や球根
・肥料
・土入れ、またはスコップ
・ラベル
・ジョウロ
※地植えの場合は、有機石灰または苦土石灰も用意

*鉢植えの場合は、下記のものも用意
・5号の鉢、または横長プランター
・鉢底ネット
・鉢底石

横長プランターに複数並べて植える場合は、苗と苗の間を15~20cm程度の間隔であけるのがポイント。また、ラナンキュラスは日なたを好むので、鉢の置き場所や植え替え先は日当たりのよいところを選んでください。

ラナンキュラスの植え替え方法が知りたい

必要なものを準備したら、実際に植え替えしてみましょう。手順は以下のとおりです。

鉢植えの場合の手順

①鉢(またはプランター)に鉢底ネットを入れ、鉢底石を敷きます。あらかじめ湿らせておいた土を、鉢の高さ1/3ほどまで入れます。土を自分でブレンドするなら、元肥として緩効性化成肥料を混ぜておきましょう。
②鉢(またはプランター)からラナンキュラスを、なるべく根を傷つけないように引き抜きます。
③植え替え先の鉢の中心に苗を置き、その周りを埋めるように、隙間なく土を入れます。地表から2cmの深さの部分に球根がくるように、土を埋めていくのがポイント。地中に大きな隙間があると根が伸びないため、気をつけましょう。プランターに植える場合は、15~20cm程度の間隔で複数株を植えてください。
④ラベルに品種名や定植日を記入して挿します。鉢底から出るまでたっぷりと水を与えて、日当たりのよい場所に設置しましょう。

地植えの場合の手順

①土に堆肥または緩効性化成肥料と、酸性土を中和させる有機石灰か苦土石灰を混ぜておきます。苗の定植は2週間以上経ってから行います。プランターの場合と同様、15~20cm 程度の間隔で、ラナンキュラスの苗を植える穴を掘ります。穴は、地表から2~3cmの深さの部分に球根がくるように掘りましょう。
②各穴に、ラナンキュラスの苗をひと株ずつ植えます。水はけをよくするために、苗が少し盛り上がっている状態で植えてください。
③たっぷりと水やりをして、品種名や植えつけ日を書いたラベルを土に挿しておきます。

植え替えのコツは、根を傷つけないことです。鉢やポットからラナンキュラスを引き抜くときは、ポットの土(根鉢)を触らずそのまま植えましょう。

植え替えをするときの注意点はこちらです

ラナンキュラスの植え替えで、特に注意したいことは2点あります。

ひとつは、根を傷つけないこと。前述のとおり、根鉢には触らず、そのまま植えてください。ただし、黒ずんで腐っている根があれば、切ってしまって構いません。

もうひとつは、植え替え先の土をよい状態にしておくこと。鉢植えの場合、培養土はできるだけ清潔で新しいものを使います。また、鉢植えも地植えも、肥料を施した栄養たっぷりの用土を用意しましょう。

よい土で育て、適切な植え替えを行えば、ラナンキュラスはきっと美しい花を咲かせてくれます。

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Credit

記事協力

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。

構成と文・白神雅子

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