薄紙のように可憐な花びらがたくさん連なるラナンキュラス。日本へは明治中頃に渡来しました。当時は花径が小さく、花弁数も少ないものでしたが、品種改良により、花は倍以上も大きく、花弁数も多い八重咲きという現在の姿になりました。観賞するだけでなく、育てるのも楽しいラナンキュラス。注意すべきポイントをおさえれば、園芸初心者も美しい花を咲かせられます。そのポイントのひとつが水やり。ここではは、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する園芸研究家の矢澤秀成さんに、上手な水やり法を教えていただきました。
目次
ラナンキュラスを育てる前に知っておきたいこと
ラナンキュラスは多年草で、きちんと管理して育てれば、数年にわたり花を咲かせてくれます。まずは、ラナンキュラスと仲よくなるための基本情報を知っておきましょう。
ラナンキュラスの基本データ
学名:Ranunculus asiaticus
科名:キンポウゲ科
属名:キンポウゲ属
原産地:東ヨーロッパ、南ヨーロッパ、西アジア
和名:花金鳳花(ハナキンポウゲ)
英名:Persian buttercup
開花期:3~5月
花色: 赤、ピンク、黄、オレンジ、白、紫、緑、複色
発芽適温:15℃前後
生育適温:5~20℃
切り花の出回り時期:11~5月
花もち:6~8日
ラナンキュラスは秋植えの球根植物で、耐暑性が弱く、夏の間は休眠します。耐寒性は普通ですが、地植えなら霜が当たらない場所で育てて防寒対策をとりましょう。次の項以降では、水やりについて説明します。
水やりの方法と、そのタイミング
キンポウゲ属の植物は一般的に湿気の多い場所を好みますが、ラナンキュラスは多湿が苦手です。そのため、土が常に湿っている状態だと根腐れしやすくなります。一方で、水切れすると成長が止まります。
ラナンキュラスの水やりは、「基本的には控えめの頻度で、土が乾いたらたっぷりと水を与える」と覚えておきましょう。
水やりの際は、葉を避けて地表の近くから株の根元にそっと水をかけます。花に直接水をかけると傷みやすくなるため、注意してください。
水やりをする時間帯も気遣うべきポイント。基本的には朝に行ないます。夏季は休眠時期なので水やり不要ですが、冬季は5~7日に1回程度で暖かい日の午前中に水を与えます。気温が高い日中に水やりをすると、水温と外気の温度差が植物にストレスを与えるので気をつけましょう。
ラナンキュラスは鉢植え、地植えのどちらでも栽培できますが、それぞれ水やりの頻度は少々異なります。次の項からは、植えつけ別の水やりを紹介します。
鉢で育てている場合の、ラナンキュラスの水やり
水やりの頻度
「2. 水やりの方法と、そのタイミング」で紹介したとおり、ラナンキュラスは多湿が苦手な植物です。水やりの頻度は控えめに、土の表面が白っぽく乾燥してきたら水をたっぷりかけてあげましょう。季節や天気にもよりますが、目安は週に1~2回です。
水やりのコツ
ラナンキュラスの鉢植えに水やりをするときは、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えます。そして、鉢を水はけのよい状態にしておくことが大切。水はけが悪くて常に湿っていると、根腐れを起こすため注意してください。また、鉢受け皿の水は溜めないようにします。
水やりの確認方法
水やりのタイミングは、土を観察するとわかります。土が白っぽくなっていたり、指で触るとカラカラに乾燥していたりしたら、水をあげましょう。ただし、土の表面が乾いていても土中は湿っている場合があり、そのようなときは水やり不要です。土中の水分を確認するには、鉢土にあらかじめ割り箸などを刺しておき、引き抜いて湿り気具合から判断するのがわかりやすくておすすめ。また、鉢が両手で持てる大きさなら、水やり前と水やり後の鉢の重さを体感しておくという手もあります。
地植えの場合の、ラナンキュラスの水やり
水やりの頻度
地植え栽培では、植えつけ後にラナンキュラスがしっかり根づいたら、日常的な水やりは必要ありません。ただし、雨が降らない日が長く続いて乾燥が激しいときは水を与えてください。
水やりのコツ
鉢植えと同様、地中の根に水が届くように、たっぷりと与えます。花にはかけず、株の根元に水をそっとあげましょう。
水やりの確認方法
ラナンキュラスは水切れすると、花びらや葉がしおれてきます。地植えではふだんの水やりは必要ありませんが、植物に元気がなくなってきたら、すぐに水をあげてください。特に、極端に雨が降らない日が続いたときなどは確認しましょう。
水やりは、季節によっても多少変わります
水やりの方法は、天候のほか、植物の生育状態や季節で多少変わります。そこで、この項では、季節ごとの違いを見ていきましょう。
春(鉢植え、地植え)
開花シーズンの春は、鉢植えなら土の表面が乾燥したときに、地植えは土の乾燥が激しいときに水やりをします。その際に注意したいのが、花に直接水をかけないようにしましょう。ラナンキュラスの花弁はとても薄く、水に濡れると傷んでしまうからです。5月下旬に葉が黄色くなってきたら、夏の休眠時期に備えて水やりの頻度を減らし、葉がすべて黄色になったら水やりを止めて土を完全に乾かします。
夏(鉢植え、地植え)
耐暑性が弱く、夏季は休眠状態になるため球根を掘り上げます。そのため、水やりは不要です。
秋(鉢植え、地植え)
秋は、球根と種の植えつけ適期です。鉢植えと地植えのどちらも、植えつけをした直後は水を適度に与えます。発芽後は、鉢植えなら土が乾燥したときに水をあげましょう。地植えは、土の乾燥が激しいときのみ与えてください。基本的には乾燥ぎみの環境が、ラナンキュラスにとって最適です。
冬(鉢植え、地植え)
秋と同じく基本的には、鉢植えは土が乾燥したときに(目安は5~7日に1回程度)、地植えは土の乾燥が激しいときのみに水やりします。暖かい日の午前中に水をあげましょう。
ラナンキュラスの水やり、注意点が知りたい
鉢植えの場合の注意点
ラナンキュラスの水やりで気をつけたいことは、水を与えるタイミングと量です。
鉢植えの場合はつい、水やりをこまめに行いがちです。しかし、土が常に湿った状態は、株を弱らせたり根腐れを招いたりしますので避けましょう。
水を与えるときは、地中の根の先まで水が行き渡るようにたっぷりと与えます。土を水はけのよい状態にして、水切れしないように適度に与えるのが、上手な水やりのコツです。また、鉢受け皿を使っている場合、鉢底から流れ出た水は捨ててください。
地植えの場合の注意点
苗、球根、種の植えつけ時に水を与える以外は、基本的に雨水で育てられます。鉢植えと同じく、過剰な水分は植物を傷めるため、気をつけましょう。
ただし、雨が降らない日が長く続き、土が極端に乾いているときは、水をたっぷりと与えます。土の表面だけを見るのではなく、指で軽く掘って地中も乾燥しているのを確かめてから与えてください。
水やりは、植物に水分を与えるだけではなく、酸素や栄養分を供給し、温度を調節するためにも欠かせない世話のひとつです。栽培方法や季節、天候などの環境を踏まえて、適した方法で水やりを行いましょう。
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Credit
監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・白神雅子
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