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アベリアの植えつけ、植え替えに適した土の作り方

アベリアの植えつけ、植え替えに適した土の作り方

白や淡いピンク色で釣鐘状の小さな花を、5月中旬〜10月の長期間咲かせるアベリア。花は甘い香りをもち、庭木としてだけでなく、公園や道路脇などにもよく植栽されています。アベリアは初心者にも育てやすい植物です。アベリアを育てるのに用いる土はどうやってつくるのかをご紹介します。監修・宮内泰之(恵泉女学園大学准教授)

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アベリアを育てる前に知っておきたいこと

アベリアは、初心者にも育てやすい庭木のひとつですが、土作りにちょっとしたポイントがあります。土作りを始める前に、上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。

アベリアの基本データ
学名:Abelia × grandiflora
科名:スイカズラ科
属名:ツクバネウツギ属
原産地:園芸品種
和名:ハナツクバネウツギ(花衝羽根空木)、ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木)
英名:Glossy abelia
開花期:5月中旬〜10月
花色:白、淡ピンク
植え付け時期:4月または9〜10月
耐寒気温:−10℃

アベリアの花には甘い香りがある

アベリアは樹高1〜1.5mの半常緑低木です。暖地では常緑ですが、寒地では落葉します。5月中旬〜10月の長い期間、白や淡いピンク色で釣鐘状の小さな花を枝先に咲かせます。花には、甘い香りもあります。葉は濃い緑色のものや、鑑賞価値の高い白や黄色の斑入りのものもあります。公園や道路の植え込み、庭木、生け垣としてよく使われる花木です。

よい土は、水はけ、水もちに優れています

植物の栽培には、水はけ(排水性)と水もち(保水性)に優れた「よい土」が必要です。「よい土」とは、「団粒構造をもつ土」のことをいいます。団粒構造とは、土壌の粒子(単粒)が集まり、団粒(小さな固まり)をつくって、この団粒がさらに集まっている状態を呼びます。団粒のなかの隙間や、団粒どうしの隙間が、排水・通気・保水・保肥に役立つのです。

団粒構造のよい土を見分ける方法があります。ぜひ、試してみてください。土に少し水を含ませて、ぎゅっと握ります。それを指で軽く押してみてください。よい土であればほろりとくずれます。握ったときに固まらなければ保水性などが悪い土です。また、押してみて崩れなかった土は、通気性や水はけが悪い土といえます。

弱酸性の土に植えつけることがポイント

土の酸度も重要なポイントです。植物の生育にはおおむね、弱酸性(pH5.5〜6.5)の土が適しています。酸性が強すぎると、根が生育障害を起こしやすくなります。また、アルカリ性が強いと、土の中に鉄やホウ素などの微量要素が含まれていたとしても、根から吸収されにくく、欠乏症を起こす可能性があるので気をつけましょう。

土の種類を知ることが、適した土作りへの近道

園芸で使う用土には、大きく分けて基本用土と改良用土があります。基本用土は、園芸用土のベースとなる土のことです。主に赤玉土や黒土、鹿沼土などがそれにあたります。改良用土は、通気性、排水性、保水性、保肥性を良くするために用いられ、基本用土に混ぜて使う土です。ここでは、土の種類とその特徴を解説します。土の種類について知ることは、植物を育てる「よい土」作りに役立ちます。

基本用土

赤玉土
関東ローム層(火山灰土)の赤土を乾燥させ、ふるい分けたものです。基本用土として最もよく使われます。特徴は、通気性、排水性、保水性に優れているところです。しかし、腐植などの有機質はほとんど含まれません。小粒・中粒・大粒と選別されて袋詰めになって市販されています。他の用土とブレンドして使うときは、中~小粒のものを選ぶとよいでしょう。

黒土
関東ローム層(火山灰土)の表層土のことです。「黒ボク」「黒ボコ」とも呼ばれます。軟らかい土で、有機質を多く含み、保水性、保肥性に優れているのが特徴です。通気性や排水性が悪いので、腐葉土などを混ぜて使います。

鹿沼土
栃木県鹿沼地方で採取される軽石質の火山砂礫が風化した土のことです。有機質をほとんど含まない酸性土で、排水性、保水性に優れています。やや酸性寄りの土なので、サツキやツツジ類などの低木や、東洋ランなど山野草に向いています。無菌に近い状態なので、挿し木の用土としても使われます。

荒木田土(あらきだつち)
水田や河川の堆積土のことです。「田土」ともいいます。粘土質で、重く、保水性、保肥性に優れていますが、通気性は悪いのが難点です。


川砂が一般的ですが、「桐生砂」や「富士砂」、「白川砂」など、産地によってさまざまな種類があります。排水性や通気性をよくするために使うとよいでしょう。主に山野草や多肉植物の栽培などに使われます。

赤玉土や鹿沼土などは、粒がくずれて粉状になる「みじん」を取り除いてから使うようにしましょう。みじんは、水はけを悪くする原因となります。みじんを取り除くには、使う前にふるいにかけるか、土が袋に入っている状態で袋の底をトントンと地面に落とすとみじんが袋の下にたまるので、その部分を使わないようにすればよいでしょう。

改良用土

腐葉土
広葉樹の落ち葉を発酵腐熟させた土のことです。有機質に富み、排水性、保水性、通気性に優れています。有用微生物の働きを活性化して、土質を改良してくれます。鉢植え、地植え、どちらの場合にも使え、便利です。

堆肥
牛ふんや樹皮、藁、落葉、野菜くずなどの有機物を発酵させ、腐熟させた肥料のこと。腐葉土と同じような使われ方をしますが、庭土の改良に使うのが一般的です。土中の微生物を増やし、排水性や通気性をよくする働きがあります。未熟堆肥だと、生育に悪影響を与えるので、しっかり完熟したものを使うようにしてください。

ピートモス
ミズゴケ類、ヨシ、スゲ類などの湿地の植物が堆積して泥炭化したものです。軽く、保水性、通気性に優れているのが特徴です。 酸性が強いので、一般的な草花には「酸度調整済み」のもの、酸性の土を好む植物には「酸度未調整」と表記されたもの、と使い分けるようにしましょう。

バーミキュライト
蛭石(ひるいし)を高熱処理して膨張させた人工用土。特徴は、薄い層が積み重なった構造で、軽く、排水性、通気性、保肥力に優れています。種まきや挿し木の用土としても使われます。

パーライト
真珠岩を高熱高圧処理した人工砂礫です。白い粒状で軽く、排水性、通気性をよくする目的で使います。保水性はあまりよくありませんが、細かいものほど保水性がよくなります。粘質土などの改良に適しています。

もみ殻くん炭
もみ殻をいぶして炭化させたものです。水もち、通気性に優れ、保温効果、根腐れ防止、堆肥の消臭効果があります。アルカリ性なので、酸性土の中和にも使われます。

水ゴケ
湿原のコケ類を乾燥させたものです。軽くて通気性がよく、保水性、保肥性に優れています。着生ランやサギソウなどの植え込み材料としてよく使われています。

用土の種類と特性を知れば、植物に合った土を自分自身で調整することができます。

元気に育てるための、アベリアの土作り

鉢植えの用土

アベリアを鉢に植え替えるときに使う用土は、一般的な市販の庭木用培養土で問題ありません。しかし、製品によって排水性や保水性が異なります。各用土の排水性、温度や日当たり、風通しなどの環境によって、土の乾き具合が変わることを確認し、覚えておくとよいでしょう。鉢植えで使用した培養土の保水性が悪いと感じたときは、堆肥や腐葉土を混ぜてみてください。また、排水性が悪いと感じる場合には、赤玉土や鹿沼土を配合することで改善できます。

鉢植えで用土をブレンドする場合

アベリアは、水はけがよく肥沃な土が適しています。ですが、乾燥にも強く、丈夫な木なので、特別土質は選びません。鉢植えの用土を自分でブレンドして作る場合は、赤玉土(細粒):鹿沼土(細粒):腐葉土を、5:2:3の割合で混ぜます。赤玉土は排水性を高め、根腐れを防ぎます。

庭植えに使う改良用土

庭植えの用土は、庭土に堆肥や腐葉土、培養土をよくすき込んでおきましょう。

アベリアの植えつけ、植え替え時期

植えつけの適期

アベリアの苗木の植えつけは4月、または9月下旬〜10月が適期です。真夏(7月〜9月中旬)と真冬(12月〜2月)を除けば、いつでも植えつけできます。植え付け後は、たっぷりと水やりをするようにしましょう。

鉢植えの植え替え時期

鉢植えの場合は、鉢の中が根でいっぱいになるようであれば植え替えを行います。鉢植えの植え替えは、4月、または9月下旬〜10月が適期です。

地植えをしたアベリアを移植する必要が生じた場合には、植え替えと同様の時期に行います。アベリアの移植は比較的容易です。

鉢の植え替え時に準備したいもの

鉢の植え替え時には用土や鉢のほか、剪定ばさみなどが必要になります。剪定ばさみは古い根などを切り取るときに使います。

準備するもの
・アベリアの苗木
・8号以上の大きな鉢 *鉢植えの場合
・鉢底石 *鉢植えの場合
・赤玉土
・腐葉土
・元肥:完熟堆肥など
・剪定バサミ

アベリアの植え替え方法が知りたい

鉢全体に根が回ったり、水はけが悪くなったりしたら植え替えます。ひと回り大きな鉢に植え替えるようにしましょう。

①鉢から苗を取り出す
アベリアの鉢から苗をそっと取り出します。

②根鉢をかるく落とす
根の周りについた土をもみほぐしながらかるく落とします。

③黒い根を切り取る
黒く変色した根があれば剪定バサミで切り取ります。

④植え替え
ひと回り大きな鉢に鉢底ネットを敷き、鉢底石を3cmほどの厚さに入れ、赤玉土(細粒)5に、鹿沼土(細粒)2、腐葉土3、の割合で配合した土を使って植え替えます。この時、元肥も入れます。

⑤用土を調整
最終的に用土の表面が鉢の縁より3cmほど下がるように用土を調整し、苗木の株元が用土の表面とそろうように植えつけます。

⑥水やり
植えつけ後、たっぷりと水やりをします。

植え替えをするときの注意点は?

鉢植えで育てる場合、小さな鉢だとすぐに植え替えが必要になってしまうので、苗木よりもひと回りからふた回り大きな鉢を選ぶようにします。また、庭植えしたアベリアを移植する必要が生じた場合には、植え替え適期と同様の時期に移植を行うようにします。

Credit

記事協力

監修/宮内泰之
1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科准教授。専門は造園学。とくに庭園等の植栽デザイン、緑化樹の維持管理、植生や植物相調査を専門とする。最近は休耕田の再生活動に取り組み、公開講座では自然観察の講師を担当。著書に『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)がある。

構成と文・さいとうりょうこ

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