アベリアは、春から秋にかけて次々と花を咲かせる半常緑性の低木です。葉には、クリーム色や黄色の斑入りの品種もあり、カラーリーフとしても親しまれています。生育旺盛なアベリアは、放っておくとどんどん大きくなってしまいます。株をコンパクトに維持し、また病害虫の発生を抑え、花をつけさせるためには剪定が必要です。ここでは、アベリアを剪定する適切な時期や適切な方法を紹介します。監修・宮内泰之(恵泉女学園大学准教授)
目次
アベリアを育てる前に知っておきたいこと
アベリアは初心者にも育てやすい庭木のひとつですが、剪定を始める前に、上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。
アベリアの基本データ
学名:Abelia × grandiflora
科名:スイカズラ科
属名:ツクバネウツギ属
原産地:園芸品種
和名:ハナツクバネウツギ(花衝羽根空木)、ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木)
英名:Glossy abelia
開花期:5月中旬〜10月
花色:白、淡ピンク
植え付け時期:4月または9〜10月
耐寒気温:−10℃
アベリアは樹高1〜1.5mの半常緑低木です。暖地では常緑ですが、寒地では落葉します。5月中旬〜10月の長い期間、白や淡いピンク色で釣鐘状の小さな花を枝先に咲かせます。花には、甘い香りもあります。葉は濃い緑色のものや、鑑賞価値の高い白や黄色の斑入りのものもあります。公園や道路の植え込み、庭木、生け垣としてよく使われる花木です。
アベリアに剪定は必要なの?
アベリアは環境がよければ枝をぐんぐん伸ばし、次々と花芽をつくる生育旺盛な植物です。成長が早く、萌芽力も強く、強い刈り込みにも耐えます。剪定の最適期は2月から3月ですが、樹形が乱れたと感じたら、比較的いつでも剪定できます。不要枝と樹冠から出た徒長枝を間引いて、木全体のバランスを見ながら風通しと日当たりを改善し、コンパクトにしましょう。多少強く刈り込んでも生育には問題ありませんが、開花中に強剪定すると、その年の花数は少なくなるので注意してください。
アベリアを剪定する目的・メリットは?
木の枝を切り、樹形を整えることを「剪定」といいます。その目的やメリットは主に6つあります。
①木が大きくなりすぎるのを防ぐため、枝の広がりを抑え、コンパクトにする。
②枯れた枝や病害虫の被害を受けた枝を取り除く。
③病気や害虫の発生を予防し、木を健全に育てるため、樹冠内部の日当たりと風通しをよくする。
④樹形を美しく整える。
⑤花や実のつきをよくする。
⑥古い枝を新しい枝に更新する。
剪定は、欠かせないお手入れのひとつです。適切に剪定を行えば、樹木を健全かつ美しく育てることができます。
アベリアの剪定に適した時期はいつ?
樹木の種類による剪定の適期
樹木の種類によって剪定の適期が異なります。常緑針葉樹は、厳冬期を除いた冬から早春に行います。常緑広葉樹は、春から梅雨期の前半、そして秋に。落葉広葉樹は、冬から早春が適期です。花木は花後のなるべく早い時期が適しています(樹木によっては例外もあります)。
2〜3月がアベリアの剪定の最適期
常緑広葉樹であるアベリアも例外ではなく、剪定の最適期は2月から3月です。春の剪定が基本ですが、真夏と厳冬期を除けばいつでも剪定できます。
刈り込みと間引き剪定
アベリアは成長が早く、萌芽力も強い植物です。徒長枝がよく伸びるので、放っておくと樹高が高くなってしまいます。刈り込み物の場合は、年に1、2回は刈り込みましょう。刈り込まずに仕立てる場合は、年に1回、3〜4月に樹冠から出た枝を根元から間引き、木全体をコンパクトにします。萌芽力が強く、枝数が増えやすいので、強く切り詰めても問題ありません。
また、不要な枝を間引き剪定します。間引き剪定とは、生育期に混み合ってきた枝や枯れ込んできた枝を根元から取り除くことです。これは、2〜8月の間に行いましょう。
アベリアの剪定方法が知りたい
アベリアを剪定するための具体的な方法を紹介します。
剪定方法
①高さを抑える
徒長枝が出やすいため、見つけたら付け根から間引きます。また、全体の大きさを抑える場合には、ボリュームのある部分の枝を枝分かれしているところ(枝の付け根)まで切り戻します。
②不要な枝を間引く
枝葉が茂り株の内側が混み合ってくると、日あたりや風通しが悪くなり、木が弱ったり、病害虫の発生が増える原因になります。そこで、枯れ枝や混み合った枝、交差する枝などをつけ根から切り取りって間引きます。
③幹の数を減らす
全体が混みすぎていたら、古い枝を株元から切って枝の数を減らし、新しい枝に更新しましょう。
刈り込みの方法
①不要な枝を切る
まずは、樹形を乱すような長く飛び出た枝を剪定バサミで樹冠内部の付け根から切りましょう。
②刈り込む
次に、天端(樹木の上面部)から側面上部、側面下部の順に刈り込みます。側面が伸びすぎている場合は側面上部から刈り込むと、天端が刈り込みやすくなります。前年に刈り込んだ部分を目安に、刈り込みバサミで刈り込みましょう。このとき刈り込みバサミは利き手側の刃のみ動かし、反対の手は脇をしめて刃先がぶれないようにしてください。
③仕上げる
ある程度刈り込んだら少し離れて見て、樹形を確認します。形が悪い部分があれば整えていきましょう。形が決まったら、枝についた、引っかかった枝葉を払い、きれいにします。
アベリアの剪定する枝を知りたい
剪定で大切なのは、切るべき枝を知ることです。ここでは、切ってもよい枝の特徴を紹介します。
じゃまな枝
高く伸びた枝、横に広がる枝、混み合っている枝などです。枝が伸びて葉が茂ると、樹冠内部の日当たりや風通しを悪くします。また、通行などの支障になり、樹形を乱します。枝の付け根から切り取るようにしましょう。
不要な枝(不要枝、忌み枝)
枯れた枝、折れた枝、病害虫の被害を受けた枝などの不要な枝について以下に説明します。これらの不要枝は樹形を乱し、見栄えを悪くします。また、枝葉が混み合って風通しが悪くなり、病気の原因にもなってしまいます。このような不要な枝は、付け根から間引くように切り取りましょう。
からみ枝、交差枝:ほかの枝と交差して伸びる枝
ふところ枝(内向枝):内向きに伸びる枝
立枝:真っすぐ立ち上がって伸びる枝
平行枝:隣接して同じ方向に伸びる枝
下り枝:下向きに伸びる枝
車枝:一カ所から放射状にたくさん出ている枝
胴吹き枝:幹の途中から生える細かい枝
ひこばえ:根元から出てくる細かい枝。「ヤゴ」とも呼ばれる
その他、細く貧弱な枝などがあります。
古くなった主枝
その木の骨格をつくる枝を主枝といいます。5年以上たって古くなった主枝はもとの部分から切り取って新しい主枝に更新しましょう。その際、切り取った部分に将来的に主枝になりうる程度の太さの枝が残るようにしてください。
徒長枝
節間が間延びして樹冠からはみ出すほど勢いよく伸びる枝のことです。切ってもよい場合がほとんどですが、必要ならば途中まで切り戻して一部残します。後に不要になったら元から切ることもあります。アベリアでは、樹冠から出ている枝を付け根から間引くか、切り詰めるようにしましょう。徒長枝を剪定することで樹冠を整え、見栄えがよくなります。
下枝
樹木の下部に生えた枝です。下枝を残しておくと茂り過ぎてしまい、風通しが悪くなる原因となります。付け根から間引くようにしましょう。ただし、下枝を残した樹形にしたい場合はそのままでも問題ありません。
アベリアを剪定するときのコツ・注意点は?
剪定時期を選ばず、強剪定にも耐える
アベリアは樹形が乱れたら比較的いつでも剪定ができます。いつ、どこの枝を切っても再び枝が伸びて花を楽しむことができるので、強く剪定しても問題ありません。
成長が早く、萌芽力も強い
アベリアは成長が早く、萌芽力も強いため、枝数が増えやすいという特徴があります。また、徒長枝がよく伸び、放任すると樹高が高くなるので、全体を強く刈り込んで高さを抑えるようにしましょう。
花芽のつきをよくするには
古い枝は地際から30〜50cmほどで切り戻して若い枝に更新しましょう。花芽のつきがよくなります。
剪定というと難しく感じるかもしれません。ですが、アベリアは強い刈り込みにも耐えるので、樹形の乱れなどを感じたら剪定してみてください。何度か剪定を行ううちに、コツやポイントがつかめてきます。剪定を行って、健全できれいな樹形を保ちましょう。
Credit
監修/宮内泰之
1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科准教授。専門は造園学。とくに庭園等の植栽デザイン、緑化樹の維持管理、植生や植物相調査を専門とする。最近は休耕田の再生活動に取り組み、公開講座では自然観察の講師を担当。著書に『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)がある。
構成と文・さいとうりょうこ
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