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知っておきたいアベリアの肥料の施し方と注意点

知っておきたいアベリアの肥料の施し方と注意点

道路や公園、庭木の生け垣でよく見かけるアベリア。アベリアは、長期間花を楽しめる庭木です。花は釣鐘状でかわいらしく、甘い香りをもっています。昨今では、カラーリーフとしても人気の植物です。ここでは肥料の施し方と注意点をお教えします。監修・宮内泰之(恵泉女学園大学准教授)

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アベリアを育てる前に知っておきたいこと

植物を育てるうえで施肥は大きなポイントとなります。アベリアも例外ではありません。肥料について学ぶ前に、まずアベリアを育てるための基本情報を知っておきましょう。

アベリアの基本データ
学名:Abelia × grandiflora
科名:スイカズラ科
属名:ツクバネウツギ属
原産地:園芸品種
和名:ハナツクバネウツギ(花衝羽根空木)、ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木)
英名:Glossy abelia
開花期:5月中旬〜10月
花色:白、淡ピンク
植え付け時期:4月または9〜10月
耐寒気温:−10℃

光沢のある葉の緑に、クリーム色から白の覆輪の入る園芸品種‘ホプリーズ’

アベリアは樹高1〜1.5mの半常緑低木です。暖地では常緑ですが、寒地では落葉します。5月中旬〜10月の長い期間、白や淡いピンク色で釣鐘状の小さな花を枝先に咲かせます。花には、甘い香りもあります。葉は濃い緑色のものや、鑑賞価値の高い白や黄色の斑入りのものもあります。公園や道路の植え込み、庭木、生け垣としてよく使われる花木です。

アベリアには栄養を補うための肥料が必要です

養分は循環する

植物は、根を使って土のなかからさまざまな養分(元素)を吸収しています。その養分を元に、成長に必要な成分を作り出しているのです。アベリアももちろん例外ではありません。自然界では数多くの動物や昆虫などのふんや死骸、落ち葉や枯れ枝などが微生物などの働きで分解されています。それらがさまざまな植物の養分となり、その養分が植物の栄養となり、その植物が動物や昆虫に食べられ、その動物や昆虫もほかの動物の栄養となります。また、動物のふんや枯れた植物などは、土に戻ります。このようにして自然のなかでは多くの元素が植物や動物の養分となり循環しています。

栽培するために必要な肥料

草花や野菜、樹木を育てる場所では、それらの植物に吸収された養分(元素)は収穫という形などによって土から持ち出されます。そのため、土の養分の量は減ってしまうのです。その減った分の養分を補う必要があります。それが肥料です。養分が不足すると植物の成長は阻害され、生育不良になったり病気や害虫の被害を受けやすくなったりします。アベリアも例外ではなく、丈夫に育ち、花を咲かせるためには、肥料が必要です。

植物の成長に必要な「肥料の三大要素」

植物が成長するために必要な元素を必須元素といい、17種類が知られています。なかでも、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K、カリウムはカリと略される)は、「肥料の三大要素」と呼ばれています。これらは植物のからだをつくり、成長するためにとくに重要で、多くの量を必要とする元素です。市販される肥料には、「N-P-K=10-8-7」というように、三大要素がそれぞれどれくらい含まれているか表記されています。この数値は窒素、リン酸、カリが、100g中に10g、8g、7gずつ配合*されていることを表しています。

*重量比で窒素(N)が10%、リン酸(P)が8%、カリ(K)が7%

N:窒素

一般に「窒素」と呼ばれる元素です。枝や葉を茂らせる働きがあり、「葉肥え」ともいわれています。窒素が欠乏すると、葉の色が淡黄緑色になり、育ちが悪くなります。窒素分を多く含む肥料に、油かす、魚粉などがあります。

P:リン酸

一般に「リン」あるいは「リン酸」と呼ばれます。花や実のつきをよくする働きがあり、「花肥え」または「実肥え」とも呼ばれています。不足すると葉が小さくなったり、花や実の数が少なくなったりします。リン酸を多く含む肥料に、骨粉、米ぬかなどがあります。

K:カリ

一般に「カリ」と呼ばれている元素です。光合成を盛んにしてくれる働きや、茎や根を丈夫にします。「根肥え」とも呼ばれます。また、病害虫への抵抗を高める作用もあります。カリを多く含む肥料に、草木灰などがあります。

肥料の種類を知ることが、適した肥料選びの近道

肥料は、有機質肥料と化学肥料に大きく分けられます。有機質肥料は堆肥や魚かすなどの、植物や動物由来の肥料のことです。化学肥料は無機質の原料に化学的操作を施すことで作られる肥料のことをいいます。ここでは、肥料の種類とその特徴を解説します。

有機質肥料

動物や植物を由来とする有機物を原料に作られる肥料のことです。有機質肥料はさらに動物質肥料と植物質肥料に分けられます。動物質肥料は魚かすや骨粉などで、窒素やリン酸が主成分です。植物質肥料は、植物の種子(ダイズやナタネなど)から油を搾り取った残りのかすなどがあります。一般的に有機質肥料は、ゆるやかに効果が現れます。

化学肥料

無機質の原料に化学的操作を施すことで作られる肥料のことです。一般に無機化合物ですが、尿素(にょうそ)のように有機化合物の化学肥料もあります。化学肥料は、窒素・リン酸・カリのうち、含有する主成分が1種類である単肥と、2種類以上含む複合肥料に分けられます。化学肥料は、一般的に効果が早く現れます。無臭で扱いも楽なことから、昨今では家庭用園芸肥料の主流です。

形状や効き目で異なる肥料

肥料は、その形状や効き目によって分類することもできます。

固形肥料

ペレット状や粒状、粉末の形状をした肥料です。粒状、粉末のものは元肥として、固形のものは追肥用の置き肥として使います。固形肥料は粒が大きなもののほうが、効果がゆっくりと現れ、持続するのが特徴です。

液体肥料(液肥)

液体状の肥料で、種類によってはそのまま、あるいは水で希釈して施すタイプです。液肥は、追肥として用いられます。効果がすぐに現れますが、持続性はあまりありません。葉から養分を吸収させるハンドスプレータイプのものや、鉢やプランターに差し込んで使うスティックタイプのものなどもあります。用途に合わせて使い分けるとよいでしょう。

緩効性肥料と速効性肥料

ゆっくりと効果が現れる肥料を「緩効性肥料」、すぐに効果が現れる肥料を「速効性肥料」といいます。緩効性肥料は休眠期に与える肥料で、一年で必要な肥料を施す場合などに使われます。多くは肥料分を含む堆肥や油かすなどの有機質肥料を用います。緩効性の化成肥料もあります。速効性肥料は開花や結実後、生育中に不足した場合などに用いる肥料です。液肥や粒の小さな化成肥料、発酵させた有機質肥料などを施します。

肥料を与える時期とタイミング

アベリアへの肥料は、一年に必要な量の肥料を与える元肥・寒肥、不足した肥料を補う追肥などに分けることができます。

植え付け時に施す「元肥」

元肥は苗木の植え付けや植え替えのとき(4月または9月)に、事前に施しておく肥料です。最初に与える肥料は、すぐに効果を発揮させる必要はありません。したがって、緩効性や遅効性タイプのゆっくりと長く効果を発揮する肥料を用います。また、水はけや通気性など土壌の改良などを兼ね、有機質肥料をメインにした肥料を施すようにします。

休眠期に与える「寒肥」

寒肥は休眠期である冬の時期に施す肥料です。休眠が終わる頃に効果を発揮します。庭植えのアベリアは、2〜3月に寒肥として有機質肥料を施します。鉢植えでは、2〜3月に化成肥料を与えます。また、開花中盤の9月中旬に、緩効性の化成肥料を追肥として土の上にまいて施すとよいでしょう。

不足した肥料を補う「追肥」「芽出し肥」「お礼肥」

追肥
植物の成長に伴って不足する肥料分を補うために追加する肥料です。すぐに効果が現れてほしいため、速効性のある肥料を用いるようにしましょう。

芽だし肥
芽が動き始める春先に施す肥料です。「春肥」とも呼ばれ、充実した芽を育てるために与えます。

お礼肥
開花や結実後、あるいは収穫後に施す肥料です。花や果実をつけるために使った養分を補給する役割があります。

庭植えは基本的に元肥のみでもかまいません。生育が悪いと感じたら、鉢植えと同様に適宜追肥するようにしましょう。

アベリアへの肥料の与え方が知りたい

鉢植え、庭植えともに肥料は寒さがゆるむ時期に与えます。鉢植えの場合は、3月に緩効性の固形肥料を株元に施します。庭植えの場合は、2〜3月に寒肥として有機質肥料を中心に株元の周辺に埋めるとよいでしょう。寒い時期はほとんどの植物が休眠期で成長しませんが、肥料は土の中で植物が吸収されやすいように変わり、春に効果を表します。また、生育に合わせて追肥するなら、速効性のある液肥や発酵油かすなどを与えるとよいでしょう。

元肥の与え方

鉢植えの場合は、植え付けの前に用土に緩効性の有機質肥料を混ぜておきます。庭植えの場合は、植え穴に緩効性の有機質肥料を入れて土とよく混ぜてから植え付けましょう。

寒肥の与え方

鉢植えの場合は、鉢土の全体に均一に与えます。根の広がる全体に均一に施すことがポイントです。庭植えの場合は、一般的に葉が広がる範囲の土の部分全体に肥料を施します。この範囲に肥料を施すのは、根の広がる範囲と葉の広がる範囲は同様の傾向があるためです。

追肥の与え方

鉢植えでは鉢の縁に固形肥料を置くか、液体肥料を水やり代わりに施します。庭植えではアベリアの様子を見て、必要なら寒肥と同じ場所に少量ずつ与えます。

肥料を与えるときの注意点

肥料を与えるときは、量や与え方に注意が必要です。

様子を見ながら少量ずつ与える

寒肥は、毎年決まった時期にしっかりと与えます。追肥は、株の様子を見て少量ずつ与えるようにしましょう。与えた肥料がどのくらい効くかを知るために、少量ずつ施し様子を見て、足りないようなら追加で与えてください。このとき株をよく観察して、量を記録しておくとよいでしょう。与えた肥料は減らすことができません。また、比較的大きく育ったアベリアは追肥をせず、元肥だけでよく育ちます。

根が広がる範囲全体に施す

肥料は、根が広がっている範囲に施します。一般的に、根の広がる範囲は葉の広がる範囲と同様の傾向があります。ですので、庭植えの場合は葉が広がる範囲の土の部分全体に肥料を施します。鉢植えの場合は、鉢土の全体に均一に施します。以前は、根の広がる先端部の土にのみ肥料を施すことを推奨されたこともありましたが、昨今では根の広がる全体に均一に施すことが一般的です。

肥料を与えすぎるとどうなるの?

肥料焼けに注意

肥料は施せば施すほど、多ければ多いほど、効果があるわけではありません。多量の肥料を一気に施すと、土のなかの肥料濃度が高くなり、根の機能に支障をきたします。また、水を吸い上げることもできなくなってしまうので注意が必要です。ひどい場合には枯れてしまうこともあります。こういった現象を肥焼け、あるいは肥料焼けといいます。肥料は、適切な時期に適切な量を施すようにしましょう。

また肥焼けを起こすほどでなくても、必要以上に肥料を施すと株が弱ってしまうことがあります。そうすると、病害虫の被害も多くなることもあります。とくにプランターで育てる場合は土の量が限られているため、肥焼けを起こしやすくなるので気をつけてください。

Credit

記事協力

監修/宮内泰之
1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科准教授。専門は造園学。とくに庭園等の植栽デザイン、緑化樹の維持管理、植生や植物相調査を専門とする。最近は休耕田の再生活動に取り組み、公開講座では自然観察の講師を担当。著書に『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)がある。

構成と文・さいとうりょうこ

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