艶やかなハート形の葉が美しいポトス。丈夫なため、園芸ビギナーでも育てやすい観葉植物です。おしゃれなカフェなどで、インテリアグリーンとして飾られているのを見かけ、人気ぶりが伺えます。そんなポトスの育て方を知り、暮らしに取り入れてみませんか。ここでは、ポトスの育て方のコツを見てみましょう。All Aboutガイドで、ガーデンライフアドバイザーの畠山潤子さんにお聞きしました。
目次
ポトスを育てる前に知っておきたいこと
ポトスは、常緑の蔓性植物です。熱帯雨林が原産地なので耐寒性はありませんが、屋内であれば1年中楽しめる観葉植物です。
ポトスの基本データ
学名:Epipremnum pinnatum
科名:サトイモ科
属名:ハブカズラ属
原産地:ソロモン諸島
和名:黄金葛(オウゴンカズラ)
英名:Pothos
葉の観賞期:オールシーズン
葉色:緑、複色
生育適温:20~30℃(最低10℃以上)
ポトスの苗は、園芸店やホームセンターの園芸コーナーなどで、1年中出回っています。初めてポトスを育てる場合は、比較的、春から秋の間がおすすめです。
種類を知ると、選び方がわかります
ポトスは、品種改良によって、少しずつ種類が増えています。よく知られているものとしては、以下のような品種があります。
オーレア(E.‘aureum’)
緑色の葉に黄色の斑が入ります。一般的にポトスといえば、このオーレアを指します。
ライム(E.‘Lime’)
その名のとおり、葉全体がライム色のポトスです。
マーブル・クイーン(E.‘Marble Queen’)
白い葉に、緑色の斑が入るのが特徴です。
エンジョイ(E.‘N’joy’)
葉に大きく白の斑が入ります。
フラッシュ(E.‘Flash’)
緑色の葉に、刷毛ではいたような斑が入ります。
ステータス(E.‘Status’)
丸みを帯びた緑色の葉に、白の不定斑が入ります。
テルノシャングリラ(E.‘Terno Shangri La’)
葉は濃い緑色で、巻き絞ったような形が特徴です。
それぞれ斑の入り方などが異なるので、好みのものを選びましょう。ポトスのコレクションを楽しんでみても、おもしろいですね。
ポトスを育てるときに必要な準備は?
ポトスは、鉢植えで育てます。育てるときは、以下のものを用意しましょう。
準備するもの
・ポトスの苗
・鉢、またはプランター
・培養土
・鉢底ネット
・鉢底石
・鉢受け皿
・土入れ、またはスコップ
・ジョウロ
・根腐れ防止剤(ハイドロカルチャーの場合)
なお、ポトスは観葉植物用の培養土のほか、ハイドロボール(※1)、セラミスグラニュー(※2)などを使って「ハイドロカルチャー(後述)」で育てることができます。その場合は、鉢は底穴のないものを使うことができるので、鉢底ネット、鉢底石、鉢受け皿は不要です。
※1.ハイドロボール(レカトン) 高温で焼成した粘土、発泡煉石のこと
※2.セラミスグラニュー ドイツ産の粘土を原料とした多孔質の粒状人工土
適した土作りが、育てるコツの第一歩
ポトスは水はけのよい土に植えます。市販の観葉植物用培養土で問題ありません。
自分で単用土をブレンドして作る場合には、赤玉土と腐葉土、パーライト(砂)を6:3:1の割合で混ぜます。あらかじめ元肥として、緩効性肥料を施しておきましょう。
ポトスの育て方にはポイントがあります
ポトスの育て方には、一般的な培養土で育てる方法と、ハイドロカルチャーと呼ばれる手法で育てる方法があります。
また、ポトスは日なたを好みますが、夏の直射日光は苦手です。耐陰性がありますので、明るい窓辺から半日陰くらいで管理します。育てる前に、鉢の置き場所を考えておきましょう。
ポトスの育て方~培養土~
苗の選び方
ポトスの苗は、園芸店やホームセンターの園芸コーナー、ネット通販などで入手することができます。苗のラベルを参考にしたり、実際の葉色、斑の入り方などを見て、好みのものを選びましょう。
売り場には同じ品種でもたくさんの苗がトレイに並んでいますが、苗には良し悪しがあります。虫がついている、白いカビのようなものがついている…といった苗はいわずもがなですが、周囲のほかの苗と比べて葉色が悪かったり、萎れていたりする苗は避けましょう。
また、ヒョロヒョロと丈だけ伸びて茎が弱々しいもの、葉と葉の間が間延びしているものは「徒長」といい、日照や栄養状態に問題があったことを示します。こういった苗も、避けたほうが無難です。
よい苗は株元がクラクラすることなくしっかり根が張り、ズングリガッシリしています。なるべく、そういった苗を選ぶようにしましょう。
購入後は、後述の「ポトスと仲よくなる、日々のお手入れ」と同様に管理します。
ポトスの育て方~ハイドロカルチャー~
ハイドロカルチャー(Hydroculture)とは、「ハイドロ(hydro)=水」+「カルチャー(culture)=栽培」を意味します。ヒヤシンスなどの球根を水だけで育てる「水栽培」に対し、ハイドロカルチャーはさまざまな支持資材を土の代わりに用いる「土なし栽培」で、「水耕栽培(※)」のひとつとされています。
通常の鉢植えと違い、底に水抜き穴が必要ないので、家にあるさまざまな器を転用することができます。また、土を使わないので、室内が汚れにくいというメリットがあります。
※「水耕栽培」 土を用いて植物を栽培する「土耕栽培」に対し、水と植物に必要な養分を含んだ培養液で植物を栽培する方法。ハイドロボールをはじめとした、支持資材を用いる場合も含めます。養液栽培とも。
ポトスと仲よくなる、日々のお手入れ
ポトスは日光を好む一方、耐陰性があります。夏の直射日光には弱く、強光のもとでは葉やけを起こす場合がありますから、鉢はレースのカーテン越しに日が当たるような明るい窓辺から半日陰くらいの所に置きます。ただし、冷暖房の風が直接当たると葉が傷んでしまうので、そのような場所は避けましょう。
冬期は、日中は日差しがポカポカと温かい窓辺も、夜間急激に冷え込む場合があります。特に寒冷地では、鉢を窓辺から離したり、ダンボールや発泡スチロールなどで簡易な囲いを作り窓の冷気が当たらないようにしたりなどの対策を図りましょう。
なお、日なたから日陰、逆に日陰から日なたなど、急激な環境変化は葉が落ちる原因になります。置き場所を変えたい場合は、少しずつ慣らしながら移動させてください。
水やりのタイミング
ポトスの鉢植えは、基本的に「鉢土が乾いたら鉢底から流れ出るくらいにたっぷりと」水やりをします。時間帯は、日が高くなる前の朝~午前のうちに済ませます。水やり後、鉢受け皿に溜まった水は、そのままにせずにきちんと捨てます。水が残っていると、根腐れを起こしてしまうことがあります。
また、室内に置いたポトスは、葉にホコリがつきがちです。時々、葉水をかけて、ホコリを洗い流して、拭き取ってあげましょう。
なお、冬の間は水やりを控えめにし、やや乾かしぎみにします。しかし、暖房機器で室内の空気が予想以上に乾燥していることがあります。時々、葉水を与えるなどして、葉の傷みを防ぎます。
肥料の施し方
ポトスは、苗の定植時や植え替え時に、長くゆっくり効くタイプの「緩効性肥料」を施します。
その後の肥料は、与えなくても枯れることはありませんが、美しい葉色を保ちつつ株を育てたい場合は、生育期に追肥を与えます。
追肥をする場合には5~10月の生育期間中、緩効性の化成肥料を2か月に1回程度与えるか、1000倍に薄めた液体肥料を月に2回程度与えます。
なお、冬の間は、施肥を控えます。
肥料は過剰に与えると、根が肥料やけを起こす場合があります。肥料を与える際には、注意書きをよく読み、使用量を守って与えるようにしましよう。
立派に育てるための、植え替え時期と方法
市販のポトスのポット苗を入手した場合は、できるだけ早く鉢に植え替えしましょう。
植え替えは、気温が高い生育期間内であれば可能です。特に5~7月頃は、その後の生育が盛んなのでベストな時期です。鉢植えでは水やりを繰り返すことで、徐々に土の団粒構造が崩れてきます。生育状態にもよりますが、根詰まりを防ぐためにも、2年にいちどは植え替えをしましょう。
剪定を行うときは、時期に注意しましょう
ポトスの剪定には、脇芽を出させる「摘心」と、伸びすぎた茎を整理する「切り戻し」があります。
摘心は、定植後にしっかり根づいて茎が伸び始めたら、先端を切り取ります
切り戻しは生育期間中、気がついたときに、伸びすぎた蔓や、繁って混み合っている部分を透かすように切って風通しをよくします。
ポトスの切り口からは白い汁が出ます。この汁に触れると、体質によってはかぶれることがありますので、素手で触れないように注意しましょう。
知りたい! ポトスの増やし方
ポトスは、「挿し木」や「株分け」で増やすことが可能です。
挿し木(挿し芽)の時期と方法
適期は、5~9月頃です。
土に挿す場合の手順
①挿し穂として、若い元気な茎を、先端から10㎝ほど切り取ります。ポトスは茎の途中についている気根(※)から発根しますので、挿し穂は必ず葉と気根がついた状態にします。挿し穂の葉は1~2枚あればよいので、下の葉は取り除きます。
②挿し穂を水を張った容器に入れ、小1時間ほど水あげをします。
③挿し木の用土は、あらかじめ十分湿らせておきます。
④挿し穂を挿し込みやすくするため、用土に細い棒で穴を開けておきます。
⑤発根促進剤がある場合には、用土に挿す前に挿し穂の切り口に薬剤をつけてください。メネデールの場合は、100倍くらいに薄めた液に5分ほど浸けてから挿します。
⑥挿し穂を傷めないよう用土に挿し、隙間が生じないように、そっと土を寄せます。
⑦挿し穂を挿した鉢を、直射日光が当たらない明るい日陰に置きます。発根するまで、乾燥させないように管理します。
2~3週間ほどで根が出るので、根を傷めないように鉢上げをして、育てていきましょう。
水に挿す場合の手順
ポトスは、水挿しで容易に根が出ます。
①土に挿す場合と同様に、挿し穂を準備します。
②挿し穂を水を入れたグラスなどに挿し、直射日光が当たらない明るい日陰に置きます
③水は適宜入れ替えて、常に清潔な状態を保ちます。
④十分発根したら、鉢上げして、新しい苗として育てていきましょう。
※「気根」 通常は地中にある根が、茎の途中から空気中に伸びているもの。ポトスは、この気根で、ほかの木に着床して這い登っていきます。
株分けの時期と方法
適期は、5~9月頃です。
前述のとおり、ポトスは伸びた茎についた気根から発根します。鉢植えで育てていると、土に接した部分から発根していることがよくあります。
根詰まり防止のために植え替える際、根がついた部分を切り分けることで、容易に株分けをすることができます。
毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです
ポトスは丈夫な性質で、あまり病害は出ませんが、稀に「炭そ病」にかかる場合があります。これはカビの一種で、罹患すると葉に灰褐色~褐色の斑点が現れ、そのままにしておくと枯れてしまう病気です。また、虫害としては「カイガラムシ」や、高温乾燥期に葉裏から栄養を吸汁する「ハダニ」が出ることがあります。
室内に置いて観賞するポトスは、できれば薬品を使わずに対処したいもの。方法としては、「炭そ病」は被害が広がる前に罹患した葉を直ちに切り取ります。葉を整理して、風通しをよくすることが大切です。さらに可能であれば、殺菌剤を用います。カイガラムシは見つけ次第、歯ブラシなどでこそげ落とします。ハダニには、葉裏に霧吹きなどで散水(シリンジ)をします。
病虫による害は、いずれも毎日の観察が被害を広げさせないコツになります。
ポトスと相性のよい寄せ植えの植物
ポトスのような観葉植物も、寄せ植えにして楽しむことができます。寄せ植えにするポイントとしては、似たような環境を好む植物と組み合わせることです。
チャレンジしやすいのは、品種の違うポトスを数種類、ひとつの鉢に寄せ植えにする方法です。このほか、シンゴニウムやプミラ、テーブルヤシといった観葉植物と組み合わせてもよいでしょう。
インテリアグリーンとしての楽しみ方
ポトスは、成長とともに蔓が長く伸びてきます。その性質を生かして、さまざまな仕立て方ができます。
吊り鉢仕立て
文字どおり、ポトスを植えた鉢を吊って、葉を枝垂れさせる仕立て方です。変化形として、伸びた蔓をガーランドのように壁面に這わせる仕立て方もできます。
ヘゴ仕立て
伸びた蔓を「ヘゴ」と呼ばれる支柱に這わせ、縦に育てる仕立て方です。ヘゴがすべてポトスの葉で覆われると、緑色の柱状になり、インテリアとしての存在感が増します。
Credit
監修/畠山潤子
ガーデンライフアドバイザー
花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
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