かつて「ガーデニングブーム」と呼ばれた頃、海外から導入された針葉樹の園芸品種は「コニファー」と呼ばれ、日本全国に広まりました。その代表格が、ゴールドクレストです。黄金色の葉が美しいゴールドクレストは、これまでの常緑針葉樹のイメージと異なり、洋風の庭にマッチすることから人気となりました。幼木を寄せ植えに用いたり、室内で観葉植物として楽しんだりすることもできます。ここでは、ゴールドクレストを増やしたいときの準備や手順を見てみましょう。All Aboutガイドで、ガーデンライフアドバイザーの畠山潤子さんにお聞きしました。
目次
ゴールドクレストを育てる前に知っておきたいこと
モントレーサイプレスの園芸品種であるゴールドクレストは、日本でもっともポピュラーなコニファーといえるでしょう。その名に恥じない鮮やかな黄緑色の葉と、スッとした円錐状の樹形の美しさが特徴です。また、葉には、シトラス(柑橘)系の芳香があります。
ゴールドクレストは、本来は樹高20mに達するような高木です。生育が早く、日本でも庭植えにした場合、5mを軽く超えるほどに育ちます。
ひと頃は庭木や生け垣として植えられることもありましたが、数年で枯れが生じることが多く、いまは主に、寄せ植え花材や観葉植物として楽しまれています。
ゴールドクレストの基本データ
学名:Cupressus macrocarpa‘Goldcrest’
科名:ヒノキ科
属名:イトスギ属
原産地:カリフォルニア、メキシコ
和名:モントレーサイプレス、モントレーイトスギ
英名:Monterey cypress
葉の観賞期:オールシーズン
葉色:緑
生育適温:15~25℃(最低0℃以上)
ゴールドクレストは、園芸店やホームセンターの園芸コーナー、ネット通販などで、1年中入手することができます。特に、11~12月には、クリスマスツリーの代わりとして、多く出回ります。
植物を増やすには、いくつかの方法があります
ゴールドクレストの増やし方を説明する前に、植物はどのようにして増やすことができるのか、その方法について知っておきましょう。
一般的な植物の増やし方は、「種子繁殖」と「栄養繁殖」とに大別できます。
「種子繁殖」とは、その名のとおり、種による繁殖方法です。一方の「栄養繁殖」には、以下のような方法があります。
挿し木
葉、茎、根など植物体の一部を切り取って用土や水に挿して発根させ、新たな個体を得る手法。
株分け
親となる植物を根とともに分けて、複数の株を得ること。いちどに得られる株数は少ないですが、大株になったものや老化した株の更新にも用いられる手法です。
接ぎ木
植物の一部を、台木となる別の植物に接合して生育させる方法。病害に強い丈夫な個体を得るために、バラのほか、トマトやキュウリ、ナスなどの果菜類にもよく用いられます。
取り木
親となる植物の一部に傷をつけて、発根させたあとに、親株から切り離して新たな個体を得ること。挿し木でうまくいかない植物でも増やすことができます。観葉植物や樹木などで多く用いられる手法です。
球根
葉や茎、根が変化した部分に養分を蓄えたもの。変化した器官により、鱗茎、球茎、塊茎、根茎、塊根と分類されます。
このほかに、ムカゴや木子(きご)といった形で増える植物があります。また家庭の園芸で行なうことはまずありませんが、「組織培養」という手法で人為的に増やす方法もあります。
なお、挿し木や茎伏せで得られた苗は、親株と同じDNAを受け継ぐ、いわばクローンになります。一方、種子繁殖の場合は挿し木と違い、親と子の間柄となり、結実した種は必ずしも親株の性質を100パーセント受け継ぐわけではありません。
種の場合「子孫を残す繁殖」という意味では増やすことができますが、Aという個体を複数に増やしたいのであれば挿し木などの方法を取ります。
ゴールドクレストを増やす、最適な方法と時期
前項で述べたように、植物はさまざまな方法で増やすことができます。ゴールドクレストの場合は、「挿し木」で増やします。適期は、4~6月頃です。
知りたい! ゴールドクレストの増やし方「挿し木」
準備するもの
・ゴールドクレストの挿し穂
・鉢(浅めで広口の駄温鉢など)
・挿し木用土(赤玉土やバーミキュライトなど肥料分のない新しい土)
・ハサミ(茎の導管を潰してしまわないよう、よく切れる物)
・細い棒(挿し穂を挿す際の穴あけ用)
・発根促進剤(なくても可。小さい容器で市販されている製品、ルートンやメネデールが入手しやすい)
挿し木の手順
ゴールドクレストを挿し木にする場合は、以下の手順で行ないましょう。
①挿し穂として、若い元気な枝を10㎝ほど切り取ります。剪定した枝を挿し穂にしてもよいでしょう。
②挿し穂を土に挿したときに埋もれてしまう部分の葉は、取り除いておきます。
③水を入れた容器に挿し穂を入れ、1~2時間ほど水あげさせます。
④挿し木の用土は、あらかじめ十分湿らせておきます。
⑤挿し穂を挿し込みやすくするため、用土に細い棒で穴を開けておきます。
⑥発根促進剤がある場合には、用土に挿す前に挿し穂の切り口に薬剤をつけてください。メネデールの場合は、100倍くらいに薄めた液に5分ほど浸けてから挿します。
⑦挿し穂を傷めないよう用土に挿し、隙間が生じないように、そっと土を寄せます。
⑧挿し穂を挿した鉢を、直射日光が当たらない明るい日陰に置き、発根するまで乾燥させないように管理します。
活着はあまりよくないので、多めに挿し穂を準備して挑戦しましょう。1か月ほどで発根します。そのあとは、根を傷めないよう、鉢に植え替えて育てます。
コツと注意点
ゴールドクレストを挿し木で増やすなら、「清潔に」を心がけるのが成功のコツです。
挿し床に使う用土は、新しい清潔なものを用意します。間違っても、古い鉢土を使ったり、掘ってきた庭土を使ったりしてはいけません。
挿し穂を準備する際の、刃物にも注意してください。ゴールドクレストの挿し穂を切り取る際に、導管(水の通り道)を潰してしまうと、うまく水あげができません。挿し穂の準備には、切れ味のよいハサミやナイフを使いましょう。なお、この刃物を媒介として病気がうつる場合もあるので、この点も注意したいですね。
増やし方を知って、株の更新を図りましょう
ゴールドクレストはコニファーのなかでもっともメジャーですが、その一方で、原産地と日本の気候の違いによるものか、枯れてしまう例が少なくありません。
もともとコニファーのなかでは成長が早いほうで、環境が合えばグングンと伸び、大きくなりすぎて困ったという声が聞かれるほどです。そんな大株に育ったものでも、ある日、本当に突然に枯れ上がってしまうことがあります。
それは、ゴールドクレストに限ったことではありません。昨日まで元気だった植物が、いきなり枯れてしまうことは多々あることです。原因は根腐れだったり、根詰まりだったり、強光による葉やけであったりとケースバイケースです。不死の人間がいないように、植物もいつかは枯れるのです。
かわいがっていた植物が枯れてしまうのはショックですが、これも命あるものの定めで避けられないことです。人が老いるように、植物もまた老いるのです。
園芸用語では「株の老化」といいますが、これを少しでも遅らせたり、株をリフレッシュさせるために切り戻し剪定をしたり、株分けや挿し木、取り木といった手法を使って株の更新を行なったりします。ゴールドクレストの増やし方を知っておくことで、予備苗を作り株の更新に備えることもできるのです。
Credit
監修/畠山潤子
ガーデンライフアドバイザー
花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
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