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アリウムの水やり方法。適切なタイミングと頻度で、根腐れを防ぎます

アリウムの水やり方法。適切なタイミングと頻度で、根腐れを防ぎます

アリウムは春に花を咲かせる球根植物です。球根を植え付け、花後に翌年の球根を太らせる(種類によってはその後に採取する)までを一つのサイクルとする栽培は、種から育て、花後、結実させないようにする手法の栽培とは、水やりの期間や注意点が異なります。アリウムに適した水やりの方法を、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。

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アリウムを育てる前に知っておきたいこと

アリウムというのは植物分類上の属名です。「匂い」の意味のラテン語alere(またはhalium)を語源とする「ニンニク」のラテン語の古名にちなむといわれています(諸説あります)。

アリウム属の植物は、一般的に「アリウム・○○○○○」という学名がつけられています。大きなボール状の花をつけるアリウム・ギガンチウムがよく知られていますが、実はニンニクやネギもアリウムの一種で、学名はアリウム・サティヴァム、アリウム・フィステュロウサムとなっています。

アリウムの基本データ
学名:Allium
科名:ユリ科(※ネギ科で分類される場合もあります)
属名:アリウム属(ネギ属)
原産地:北米、ユーラシア大陸、北アフリカ
和名:花葱(はなねぎ)
英名:Allium、Giant onion、Flower onion
開花期:4~6月
花色:赤、ピンク、黄、白、緑、青、紫、茶、複色
発芽適温:10〜15℃
生育適温:10〜20℃
切り花の出回り時期:4~6月
花もち:7~10日

アリウムは北半球に400種近く分布している球根植物です。タマネギ、ニラなど食用として栽培されている種類と、観賞用として栽培されている種類があります。

アリウムの花色や花の大きさ、草丈はいろいろですが、多くは、複数の小花が集まって球状や傘形にまとまったもの=花序(かじょ)が花茎の頂部につきます。他の草花にはない独特の姿や雰囲気が人気で、観賞用品種は市場では長い間、切り花で流通していました。

近年になって園芸愛好家の間で観賞用品種の栽培が増えています。草丈が高く、花序が大きい品種をボーダーガーデン(塀や小道に沿いつつ、手前から奥に行くほど丈が高くなるよう植物を配置した庭)に採り入れたり、草丈の低い品種を荒々しい雰囲気のロックガーデン(岩石園)に植え込むなど、演出のバリエーションも増えているようです。

アリウムは一般的に球根から育てます。球根は園芸店やオンラインショップで手に入れることができます。秋に植え付けて、じきに芽を伸ばすものと、冬を越して春になってから地表に芽を出すものがあります。芽を出した後は、育てるのは比較的簡単です。

育てるアリウムの種類によって、コツや注意点は多少異なりますが、どの品種も共通して極端な乾燥と25℃以上の高温には弱いということを覚えておいてください。

水やりの方法と、そのタイミング

植物の生育には水が不可欠ですが、土の中が常に湿っていると酸素不足になり、根は呼吸困難を起こしてしまいます。健康のためには一定の周期で乾いた環境に置かれる必要があり、理想的な範囲で土の乾湿をコントロールするのも「水やり」の大切な役割です。

一般的な植物では、水やりの基本は「乾いたらたっぷり」。土の表面を触ってみて乾いていたら、鉢の底から水が流れ出るまで与えます。葉や花にかけないように注意して、土の表面全体を覆うようにそそぐことで、土の中の古い水やガスが押し出されます。病害虫予防のために、受け皿に溜まった水は捨てましょう。

水やりに関しては他にも「地植えの場合は不要」「朝のうちにやる」などがいわれますが、植物の種類や生育段階、季節や天候によっては当てはまりません。簡単なようで、「水やり3年」という言葉があるくらい、奥の深い作業なのです。

アリウムは、球根を植え付け、生育期間の後半にできた新しい球根を肥大化させるまでが栽培の一つのサイクルで、種まきから始めて花までを楽しむ一年草の栽培に比べて、開花後の処理が重要になります。また、アリウムの球根は他の植物の球根に比べて根が多く、水分を多く吸収するので、土の乾きがやや早いということを心に留めておきましょう。

鉢植えも地植えも、水やりは、「乾いたらたっぷり」の基本を踏まえつつ、乾かしすぎないよう、こまめに行うという点は共通です。ただ、乾かしすぎないためのコツは植え方によってそれぞれなので、次の項から紹介します。

鉢で育てている場合のアリウムの水やり

水やりの頻度とコツ

鉢植えのアリウムは、土の表面が乾いたら水やりします。通常は朝に、水が鉢底から流れ出るまでたっぷり与えます。

水は、勢いよく注ぎ入れるのではなく、土全体に沁みわたらせるような気持ちで、場所を変えながらゆっくり注ぎましょう。できれば数分ほど間を置いて、2、3回に分けて与えるとよいです。特に植え付け直後は球根がまだ根付いておらず、地植えに比べて球根を覆っている土の量も少ないので、じょうろのハス口を上に向けてやさしく浴びせましょう。

植え付けから芽が出るまでの期間を長く要する種類のアリウムは、見た目に変化が現れない期間も長いため、水やりを忘れがちです。しかし、発芽するまでの間は特に水切れを避けたいので、忘れず怠らず水を与えましょう。

栽培過程ごとの注意点は「5.水やりの方法は、季節によっても多少変わります」で説明します。

水やりのタイミングの確認方法

土の表面が白っぽくなっていたり、小さい鉢なら持ち上げてみて軽いと感じたら水やりのタイミングです。

鉢植えの用土は、鉢のサイズが小さいほど、また土(赤玉土)の粒が大きいほど乾きやすいです。一定の条件下で決まった量の水やりを何度か行えば、土が乾く頃合いがわかるようになるので、それから水やりの周期を決めるとよいでしょう。

地植えの場合のアリウムの水やり

水やりの頻度とコツ

地植えのアリウムも水やりをしながら育てます。鉢植えと同じように、「土の表面が乾いたら」たっぷり与えます。通常は朝に、花壇全体に沁みわたらせるような気持ちで優しく注ぎましょう。

球根が芽を伸ばしてくるまで土の表面には変化がないため、植え付けから発芽までの期間が長いものほど水やりを忘れがちです。しかしこの期間は特に水切れが禁物なので、別の草花の苗も混植すると、水やりのよい目安になりますよ。

栽培過程ごとの注意点は「5.水やりの方法は、季節によっても多少変わります」で説明します。

水やりのタイミングの確認方法

水やりが必要かどうかの判断方法は鉢植えと同じです。土の表面が白っぽくなっていたら水を与えます。

水やりの方法は、季節によっても多少変わります

水やりの方法は、時期と植物の生育状態でも多少変わります。この項では、季節ごとのコツと注意点を紹介します。

秋・冬

球根を植え付けてからの数週間は、土の表面に変化がなくても土の中では根を伸ばしている大切な時期です。土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをしましょう。冬場も、球根から伸びた根を乾燥させないようにするために、鉢植えも地植えも水やりが欠かせません。一度乾いてしまった根は水を吸収する力が弱まり、花を咲かせられなくなるので気をつけましょう。

アリウムは防寒対策の必要がありません。鉢植えは軒下などに置かず、雨水や雪の当たる場所に置いておけば、水やりの負担を減らすことができます。

鉢植えも地植えも、土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをします。

3〜5月ごろは葉や花茎、花柄[かへい:花の一つひとつを支える茎。花梗(かこう)ともいう]が勢いよく生長するので、アリウムはこの時期も多くの水分を必要とします。花柄が伸びる時期に水分が不足すると、花柄が萎れて曲がり、本来はボール状や半球状になる花序[かじょ:小花が集まった花全体]の形も崩れてしまいます。

また、アリウム・ギガンチウム、アリウム・グローブマスターなどの大きな球根は、根も太くて長く、水を吸収する力が強いです。そのぶん、特に鉢植えでは土の乾きが早くなるので、小球性種よりもこまめに土の状態をチェックするようにしてください。

初夏は、鉢植えも地植えも「乾いたらたっぷり」。葉が枯れたら水やりを停止します。

花が終わった後も、葉は球根に送る養分を作るために光合成を行っているので、葉がより長く緑色を保てるように水やりを続けましょう。6〜7月になって地上部の3分の2ほどが枯れたら休眠期に入るサインです。球根を掘り上げる場合はその時期に、植えっぱなしにする場合は地上部が完全に乾いたら水やりを停止します。

大きさがテニスボールほどになる大球性種の球根は、高温多湿に弱いので掘り上げ、丈夫で強い小球性種の球根は植えっぱなしにすることが多いです。

植えっぱなしの場合、水を断つべきである休眠期も雨水は避けられませんが、特に雨よけをする必要はないでしょう。アリウムはもともと夏に雨が降らない地域に自生するものが多いので、梅雨どきなどに球根が腐ることもありますが、健康に育った球根は生き続けます。夏が終わり、涼しさを感じるようになるころにアリウムは次の生育サイクルに入るので、徐々に水やりを再開しましょう。

アリウムの水やりの注意点が知りたい

ガーデニング初心者に多いのが、ていねいに世話するあまりつい水をやりすぎてしまうことです。水のやりすぎは根腐れを引き起こし、進行すると株元から腐って枯れてしまいます。

根腐れを起こさないようにするためには、土が湿っているときに水やりをしないことに尽きます。葉の色が悪いなどの異変を感じたら根腐れを疑い、水やりを控えて様子を見ましょう。

根腐れが起きたら、発根部から球根そのものに腐敗が広がっている可能性があり、そうなると残念ながら救済方法はありません。次のシーズンに新しい球根を購入して再チャレンジしましょう。

Credit

記事協力

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。

構成と文・橋 真奈美

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