初夏から秋ごろまでピンクや白の花を咲かせ、南国の花として知られるブーゲンビリア。トロピカルな雰囲気には、青い空と太陽の光が良く似合います。ブーゲンビリアの美しい花を咲かせるには、気温と日光が大切ですが、それと同じように肥料も欠かせません。そこで、ブーゲンビリアに必要な肥料や正しい与え方などについて、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。

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ブーゲンビリアを育てる前に知っておきたいこと

「情熱」という花言葉を持つブーゲンビリアは、鉢植えのほか庭木としても人気の高い植物です。まずは、ブーゲンビリアがどのような花なのか、育てる前に知っておきたいことをみていきましょう。

ブーゲンビリアの基本データ
学名:Bougainvillea
科名:オシロイバナ科
属名:ブーゲンビリア属
原産地:中央アメリカ、南アメリカ
和名:筏葛(イカダカズラ)
英名:Bougainvillea
開花期:4~5月、10~11月(育て方により異なる)
花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、紫、複色
発芽適温:20℃前後
生育適温:5℃以上

管理の仕方次第で、年に2~3回花を咲かせてくれます。寒さにはやや弱いところがあり、10℃以下になると葉が黄色くなり落葉しやすくなります。また、5℃以下になると枯死することがあります。

ブーゲンビリアには栄養を補うための肥料が必要です

私たちが日々の生活の中で食事をするように、植物が生きていくためには光や水、そして栄養となる肥料が必要です。野山に生えている植物なら、落ち葉や枯れ枝・動物の糞などが肥料となりますが、家庭の庭や植木鉢で育てる場合にはそうはいきません。

限られた環境の中でブーゲンビリアを育てるには、肥料を施して人工的に栄養を補う必要があるのです。適切な施肥は、株を充実させ、葉や花を色鮮やかにするのに役立ちます。

種類を知ることが、適した肥料選びの近道

一口に肥料と言っても、いくつかの種類があります。正しい施肥のために、各肥料について解説していきます。

原料による分類

植物の肥料は、大きく分けて有機質肥料と無機質肥料に分けられます。

有機質肥料
主に草木や油かす、鶏や牛のふん、魚の骨粉などを発酵させて作られます。植物の育成に重要な三大要素(チッソ・リン酸・カリ)が含まれていますが、原料によって含有量に差があります。良い土づくりができる反面、害虫が発生しやすく、値段はやや高めです。

無機質肥料
さまざまな鉱物を原料に科学的に合成して作られ、化学肥料とも呼ばれます。三大要素に加えてマグネシウムや鉄分・カルシウムなども適度に含まれているのが特徴です。

水に溶けやすく即効性がある反面、定期的な追肥を必要とします。また、有機物がほとんど含まれていないため、土壌障害を起こすこともあります。

効き方による分類

即効性肥料
与えてすぐに効果があらわれる肥料です。効果の持続期間は1週間程度なため、頻繁に与える必要があります。吸収が早いので、肥培管理がしやすく、主に追肥として用いられます。

緩効性肥料
与えてからある程度の期間、効果が続きます。ただし、三大要素の効果が平均して続くものと、特定の成分のみの効果が続くものがあるので、選ぶ際に注意が必要です。元肥・追肥、いずれにも用いられます。

遅効性肥料
与えても、すぐには効果が出るわけではありません。吸収のために微生物による分解が必要な有機質肥料や、成分が水に溶けにくい不溶性の肥料などが該当します。主に植え込みの際の元肥として用います。

形状による分類

固形肥料
固形・粒状・粉状の肥料を指します。骨粉や油かすなどを固めた有機質のものと、チッソ・リン酸・カリなどを化学合成した無機質のものがあります。液体肥料に比べてゆっくりと効果があらわれ、持続性があるのが特徴です。

液体肥料
文字通り液状の肥料で、小さな容器でそのまま土に指して使うタイプと、水で希釈して使うタイプがあります。吸収が早いので、違う目的の液肥を短期間に与えられるメリットがあります。また、水で希釈するタイプのものは、葉面散布に使うこともできます。

植物に必要な、肥料の三大要素

肥料に含まれるチッソ(N)・リン酸(P)・カリ(K)は、植物の生育に欠かせない三大要素です。それぞれどのような働きがあるのか見ていきましょう。

チッソ(N)
別名葉肥(はごえ)と呼ばれ、葉や茎を大きく色濃く成長させるのに必要な成分です。植物が光合成をする際に必要な葉緑素は、チッソを元に作られます。また植物のタンパク質を作るのにも必要不可欠です。

リン酸(P)
リン灰石を元に作られるもので、肥料以外にも医薬品や洗剤などの原料などに広く用いられています。肥料としてのリン酸は実肥(みごえ)とも呼ばれ、植物の枝葉や花などの生育に欠かせない要素です。リン酸の不足は、開花や結実に影響を及ぼします。

カリ(K)
カリとは、カリウムの略です。根肥(ねごえ)とも言われるカリは、植物の根や球根を丈夫にし、充実させる効果があります。カリが不足すると、葉のフチから少しずつ色が抜けるような、特徴的な枯れ方をします。また、マグネシウムとの拮抗作用(きっこうさよう ※1)があるため、与えすぎるとマグネシウム欠乏を引き起こすことがあります。

※1:2つの要因が、お互いに効果を打ち消しあって働く作用のこと。

N-P-K以外に必要な要素は?

先の項で挙げたチッソ(N)・リン酸(P)・カリ(K)は必須三大要素ですが、それだけで植物が元気に育つわけではありません。

この他に必要な代表的なものに、カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・イオウ(S)の3つがあります。三大要素ほど多量ではないものの、植物には大切な要素になります。緩効性化成肥料にはカルシウム等を含むものがあります。

カルシウム
植物内の細胞同士を強固に結び付ける役割があり、根の発育には欠かせない成分です。また酸性の土を中和する時にも用います。

マグネシウム
チッソと同じく、葉緑素を構成する重要な成分です。

イオウ
植物内の酸化・還元や成長の調整に関わりがあり、不足すると十分に育つことができません。チッソと同じく、植物のタンパク質の主成分です。

こんなタイプの肥料が、ブーゲンビリアにおすすめ

園芸店に行くと数多くの肥料が並んでいて、どれを選べばよいのか迷いがちです。

ブーゲンビリアにおすすめなのは、緩効性の肥料(特に粒状が良い)や、油かすや骨粉を固形にしたものなど、ゆっくりと長期間栄養を与えられる肥料です。中でもリン酸が多いものが良く、チッソやカリが多い肥料では花が付きづらくなります。

肥料を与えはじめる、時期とタイミング

肥料を与える時期やタイミングも、正常な生育には大切です。肥料には、栽培前や株の定植時に土に混ぜ込んで与える元肥と、成長に合わせて必要な栄養を与える追肥の2種類があります。

ブーゲンビリアへの施肥に適した時期は、鉢植えでは4~10月、地植えの場合は5月過ぎ~9月の終わりまでです。休眠期に当たる冬場は肥料はほとんど必要はありません。また、追肥の間隔は基本的に1~2カ月おき程度ですが、使用する肥料により多少の差があります。

「元肥」の適期

ブーゲンビリアに元肥を与える最適なタイミングは、4~6月に行う植え替えや植え付けの時です。緩効性の化成肥料を、土に混ぜ込んで与えましょう。これは地植え・鉢植え共に同じです。

ただし、鉢植えやプランターで市販の培養土を使用する場合には、元肥は必要ありません。

「追肥」の適期

元肥を与えた株に追肥を与える最適なタイミングは、植え付けや植え替えから2カ月ほど後です。追肥には、固形の置き肥や粒状の緩効性肥料を根元から離して与え、水やりの際に少しずつ土に吸収されるようにします。

その後は1~2か月おき(※肥料により期間に差があり)に追肥していきますが、株の成長度合いをよく観察し、枝葉が伸びすぎるようであれば控えめにします。

ブーゲンビリアへの肥料の与え方が知りたい

それでは実際に、ブーゲンビリアを育てる過程での肥料の与え方を見てみましょう。

まず、株の植え替えや定植をする際に、元肥として緩効性肥料を土に混ぜ混んで与えます。植え付け時に根が直接肥料に接するのを防ぐため、ある程度根が成長してから肥料にたどりつくよう、土の下の方に入れると良いでしょう。

その後は、元肥の効果が切れてくる2~3か月後(※期間は肥料により異なるので、説明を読んで使用してください)を目安に、根元から少し離した場所へ追肥を与えていきます。

園芸店などで鉢植えを購入した場合には、咲いている花が終わって次の花が出てきたタイミングで、緩効性の肥料や油かすなどを与えましょう。鉢の大きさや肥料によって量は違うので、注意書きに従って与えてください。

すでに定植した鉢植えを持っている場合には、春に新芽が出て開花してきたタイミングで、同じように緩効性肥料などを与えます。その後は株の状態を確認し、枝葉が育ちすぎないように調整しましょう。

肥料を与えるのは鉢植えでは4~10月、追肥の間隔は2か月おき程度です。地植えの場合は追肥はほぼ不要と考えて良いでしょう。また、鉢植え・地植え共に休眠期に入る冬は、基本的に施肥は必要ありません。

ただし、室内など10℃以上で管理している鉢植えで葉や花が付いている場合には、緩効性肥料を少量与えても良いでしょう。

ブーゲンビリアに肥料を与えるときの注意点は?

肥料を与える時の注意点は、とにかく与えすぎないということです。ブーゲンビリアは肥料が多すぎると、花付きが悪くなります。花よりも株を大きく育てたいなら問題はありませんが、花を咲かせたい場合には、控えめに与える方が良いでしょう。

施肥が少なすぎて肥料切れを起こしている場合には、葉の色が黄色っぽくなります。追肥の目安にしてください。

肥料をあげすぎると「肥料やけ」が起きます

植物に肥料をあげすぎると、土と根の濃度を一定にしようとする働きが起こります。土壌の肥料の濃さを薄めるために根の中の水分が土壌に流れ出て、しなびた根はやがて枯れてしまうのです。

これが、俗にいう「肥料やけ」です。特にブーゲンビリアは肥料やけをしやすいと言われているので、鉢植えへの施肥の際には十分に注意しましょう。

肥料やけをしているかどうかの見分け方としては、「株全体に元気がなく花が全く咲かない」「葉に全く艶がない」「葉の色が異常に濃い」などがあります。

肥料やけを確認したら、すぐに鉢からブーゲンビリアを取り出し、傷んだ根は落とします。水でしっかりと根を洗い、新しい用土で植え替えましょう。その際、元肥を入れたり肥料入りの培養土を使用したりするのは厳禁です。

植え替え後は全ての葉を落とし、新芽が出てくるのを待ちましょう。新しく芽吹いたのを確認したら、緩効性の化成肥料を少量与えるようにします。

近年、夏期の気温が上がり、夏の得意なブーゲンビリアにとっても厳しい環境となることが多くなりました。酷暑期間の施肥は根を傷めますので注意しましょう。

Credit

記事協力

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。

文・ランサーズ

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