「情熱」という花言葉をもつブーゲンビリアは、鉢植えのほか庭木としても人気の高い植物です。夏空の下に映える鮮やかなピンクや赤の花(苞葉)は見事なものですが、株を元気に育て、花を繰り返し楽しむためには、剪定作業が欠かせません。そこで、ブーゲンビリアの正しい剪定方法や押さえておきたいポイントなどを、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。
目次
ブーゲンビリアを育てる前に知っておきたいこと
半蔓性のブーゲンビリアは特に日光を好む植物で、剪定を含めて日頃から注意深く管理する必要があります。ブーゲンビリアについて、育てる前に知っておきたいことを見ていきましょう。
ブーゲンビリアの基本データ
学名:Bougainvillea
科名:オシロイバナ科
属名:ブーゲンビリア属
原産地:中央アメリカ、南アメリカ
和名: 筏葛(イカダカズラ)
英名:Bougainvillea
開花期:4~5月、10~11月(育て方により異なる)
花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、紫、複色
発芽適温:20℃
生育適温:5℃以上
熱帯性のため寒さにはやや弱いため、鉢植えの場合、真冬は室内で管理することになります。霜が降りない地域では地植えができますが、冬場は葉を落とすことがあります。
日中の気温が20℃以上で花芽をつけるので、年に2回ほど開花が見込めますが、水や肥料が多すぎると枝葉ばかりが茂り、花芽ができずにトゲが目立つようになります。
ブーゲンビリアに剪定は必要なの?
植物を長く育てていると、成長にしたがって枝のバランスが悪くなったり、他の枝の成長を妨げる小枝が出てきたりします。また、葉が密集すると日の当たらない部分ができたり、風通しが悪くなったりするので、病害虫も発生しやすくなります。
そうならないために、剪定が重要なのです。ブーゲンビリアに必要な剪定は、「間引き剪定」と「切り戻し剪定」の2種類です。
間引き剪定
透かし剪定とも言い、不要な枝を根元から切り、残した枝の成長を促す目的で行います。
切り戻し剪定
強剪定とも言い、枝の先端を切り詰め、新芽や花芽がでるのを促す目的で行います。実際の剪定方法などは、次の項で説明していきます。
知りたい! 剪定する目的とメリット
ここではブーゲンビリアにとって必要な剪定について、具体的に詳しく紹介します。
ブーゲンビリアは、花が咲き終わると蔓が伸び、伸び止まるとその先端に花を咲かせることを繰り返します。前述した2種類の剪定を間違えて行うと、せっかくついた花芽を切ってしまうこともあるので、十分に注意しましょう。
間引き剪定の目的とメリット
間引き剪定を行う目的は、ブーゲンビリアの葉や幹を充実させることにあります。不要な枝を間引くことで日当たりが良くなった株からは、新しい枝が出やすくなります。また、残した枝の成長を早めるメリットもあり、鉢植えを行灯仕立てにしたり、地植えの枝をアーチにしたりなど、好みの樹形を楽しむこともできます。
切り戻し剪定の目的とメリット
切り戻し剪定は、ブーゲンビリアの花を繰り返し咲かせることを目的に行います。
枝の先端に花芽を付けるのが特徴のブーゲンビリアは、少し強く切り戻しをすると花芽を出そうとする性質があるため、次の花を咲かせやすいメリットがあります。
剪定に適した時期を、見極めましょう
ブーゲンビリアの剪定は、その目的によって、適した時期が異なります。言い換えれば、適期ではない時期に、剪定をしてはいけません。間違った剪定は、花付きを悪くする原因になってしまうからです。間引き剪定と切り戻し剪定のそれぞれを行うのに適した時期や、基本的な剪定方法は、次の項で詳しく解説します。
間引き剪定の適期
ブーゲンビリアは、順調に育てば春と秋に花を咲かせます。間引き剪定の作業は、10月~11月の花が咲き終わるタイミングで行いましょう。秋に間引きをして、新たな芽を出してから冬を迎えた方が、翌年の花や芽が多くなります。
開花が見込めない小さな株や、枝葉を伸ばすことに専念している地植えの株の場合には、生育期の枝が混みあってきたと感じた時に、不要な枝を間引いてあげると良いでしょう。
基本的な方法
剪定に入る前に、花がらが残っている場合には全て落とします。次に、残したい枝(育てたい枝)を決めましょう。残す枝を決めたら、その枝の横から出ている小枝を間引くように切り、成長の遅い細い枝は根元から切り落とします。
ブーゲンビリアは、切った所のすぐ後ろから新芽が出てくるので、株自体にボリュームを出したい場合は、枝の先端を落とすようにします。
また、剪定の時には、トゲを落とすことも忘れないようにしましょう。トゲがあると、剪定中に自身がケガをするだけでなく、新芽や花芽を傷つける恐れがあります。トゲを切り落としても生育に問題はありません。
切り戻し剪定の適期
切り戻し剪定の作業を行うのは、春の花が終わった後です。通常、ブーゲンビリアは4月~5月にその年の最初の花が咲くので、咲き終わったら次の花芽が出る前に切り戻し剪定を終わらせましょう。この時期(6~8月)に少し強めの剪定をすることで、次の花芽が出やすくなります。
基本的な方法
間引き剪定と同じく、まず残っている花がらを切り落とします。ブーゲンビリアの花は、枝の先端にしか咲かず、一度花が咲いたところは、残しておいても新芽や花芽が出ることはありません。
切り戻しでは、次の花を咲かせるために、花後は葉のすぐ上の所で枝を切るようにします。この時、細く垂れさがっているような枝は、次の花を咲かせる力がないため、短めに剪定してしまいましょう。中がすっきりとすることで、幹にもよく日があたるようになります。
枝の先端を強めに切り詰めることで次の花芽ができやすくなるので、間引き剪定では残すような枝も、形を整える程度に切り詰めていきましょう。切ったところのすぐ後ろから、新しい花芽や葉が出てきてくれます。
また、切り戻し剪定の場合も忘れずに、トゲを切り落としましょう。
剪定のポイントは、枝や茎の選び方です
剪定の基本は、混みあった枝や開花などに必要のない枝を整理することと、樹形を乱す枝を切ることにあります。剪定する枝の選び方を覚えておきましょう。
弱く力のない枝を切り落とすのは前述の通りですが、その他に不要な枝として切り落とした方がよいものに、「徒長枝(とちょうし)」と「ひこばえ」と呼ばれる枝があります。
徒長枝とは、木の幹や太い枝から上に向かって勢いよく伸び出るまっすぐな枝のことで、シュートとも言われます。徒長枝をそのままにしておくと、栄養分がそこに集中してしまい、他の枝葉の成長が遅くなることがあります。
また、徒長枝には花芽も付きにくいため、樹形を乱さないためにも、根元から切ってしまいましょう。
もうひとつのひこばえは、木の根元から生えてくる若芽のことで、やご芽とも言います。より多くの葉をつけるためのものですが、放っておくと根元がブッシュ状になり、日当たりも風通しも悪くなります。
根からの栄養もひこばえに取られてしまうので、芽が小さいうちに掻き取りましょう。
ブーゲンビリアの剪定には、コツがあります
ブーゲンビリアは日光が大好きなので、剪定を行う際にはどう日を当てたら良いのかを考えながら切っていくのがコツです。大幅な剪定を行うと、春に徒長枝やひこばえが出やすくなります。特に、花を咲かせるための切り戻し剪定を行う時には十分に気を付けてください。
株を大きく育てたい場合には、1年間は花を諦めるつもりで剪定を行いましょう。幹から出た枝が15㎝ほど伸びたところで先端を落とし、脇芽が出たら同じように伸ばして形を整えながら切ることを、成長が止まる冬まで繰り返します。
脇芽が多い分、翌年の春にはたくさんの花を咲かせてくれることでしょう。
剪定するときの注意点はこちらです
ブーゲンビリアのトゲは細長く、触れるとケガをする場合があるので、必ず園芸用の手袋などをはめて作業しましょう。慣れている人なら、剪定をしながらトゲを切っても良いですが、不慣れな人の場合には、トゲを先に切ってしまった方がケガの心配がありません。
初めて剪定をする場合にはあまり切りすぎず、枝を整えることから始めましょう。慣れてくれば、ブーゲンビリアの状態をみながら剪定作業ができるようになります。
Credit
監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
文・ランサーズ
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