冬の寒い時期に芽を出し、早春に雪の雫のように白い花を咲かせるスノードロップ。可愛らしい鉢植えや、庭に群生させて楽しめることから、人気の高い球根植物です。初心者でも比較的育てやすいと言われるスノードロップですが、水やりはどのような方法ですればよいのでしょうか。頻度やコツなどについて、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。
目次
スノードロップを育てる前に知っておきたいこと
まずは、育てる前に知っておきたい、スノードロップの基本データをご紹介します。
スノードロップの基本データ
学名:Galanthus
科名:ヒガンバナ科
属名:ガランサス属
原産地:東ヨーロッパ
和名:マツユキソウ(待雪草)
英名:Snowdrop
開花期:2~3月
花色:白に緑の斑点
発芽適温:10℃前後
生育適温:5℃~10℃
スノードロップは秋植えの球根です。ヒガンバナが咲き始める頃から、11月上旬ごろまでに植え付けを行います。芽が出るのは初冬、そして早春を迎えるころに可憐な花を咲かせます。
大型の園芸店や生花店などで購入でき、植え付け時期の前後に球根の状態で、それ以降は発芽した状態のポット苗としても販売されます。開花後の受粉で結実して、種ができることもあります。しかし乾燥に弱いため、種の状態で販売されることはまずありません。
また、スノードロップと間違われることが多い花に、スノーフレークがあります。スノーフレークも同じヒガンバナ科ですが、花の形はスズランに似ており、開花時期も3月~5月とスノードロップが咲き終わった後です。
水やりの方法と、そのタイミング
植物を健康に育てていくために、水やりのベストなタイミングやコツを覚えて置くことは大切です。
スノードロップの水やりは、表土が乾いたらたっぷりと与えるのが基本です。ただし、極端な乾燥を嫌う性質を持っているので、土が完全に乾ききってしまわないように注意しましょう。また、夜間に冷えやすい冬場の水やりは午前中に、逆に高温で蒸れやすい夏場は夕方から夜に水やりをするといった配慮も必要です。
スノードロップは鉢植え、地植えのどちらでも栽培できますが、それぞれ水やりの頻度は異なります。次の項からは、植えつけ別の水やりを紹介しましょう。
鉢で育てている場合の、スノードロップの水やり
水やりの頻度
スノードロップを鉢で育てる場合、秋の植え込み直後から6月前半あたりまで、水やりの頻度は土の表面が乾いてからたっぷりと与えるのが基本です。葉が枯れて休眠期に入る6月後半あたりからは、やや控えめに水やりを行います。
ただし、土をカラカラに乾かしてしまわないように注意してください。単純なことですが、スノードロップの水やりで最も失敗しやすいのが休眠期なので、きちんと抑えておきましょう。
水やりのコツ
スノードロップに水やりをするときには、葉や花にかからないように根元に与えるようにしましょう。またその際、鉢底から流れ出るまでたっぷりと与えるのが基本です。これはスノードロップに限らず、鉢植えの植物全般に共通する水やりのコツです。
根が呼吸することにより、鉢の土には二酸化炭素などの老廃物が排出されています。水やりには、水分を補給する以外に、これらの老廃物を鉢の外へ洗い流し、新鮮な空気を与える役目もあるのです。
水やりの確認方法
スノードロップの水やりでは、適度な湿度を保つことが大切です。表土は乾いているけれど土の内部は湿っている段階で水やりを行いましょう。
水やりのタイミングを確認するには、球根の植え込み時に、水やり前の土が乾いた状態の鉢の重さと、たっぷりと水やりをした後の鉢の重さを覚えておく方法があります。水やり前の乾いた土に比べて若干の重さがあるときに、水やりを行いましょう。
また、常に土が湿った状態では球根が腐ってしまうので、水やりのし過ぎは厳禁です。
地植えの場合の、スノードロップの水やり
水やりの頻度
地植えのスノードロップの場合、水やりの頻度は極めて少ないと言って良いでしょう。植え付けの時にたっぷりと与えれば、その後はほとんど必要ありません。ただし、長く雨が降らず乾燥が続くような場合には、しっかりと水やりをしてください。
水やりのコツ
地植えのスノードロップは、水やりを行う機会が少ないので、コツと言えるほどのものはありません。ただし、前の項で解説した通り、天候に左右されるところがあります。あまりに乾燥が続く場合には、たっぷりと水やりをしてあげましょう。
水やりの確認方法
スノードロップの葉や茎が元気に育ち、順調に花を咲かせているなら、さほど水やりについて心配することはありません。しかし、長く雨が降らない場合などは、乾燥のしすぎに注意しなければいけません。
確認する方法としては、スノードロップを植えてある周りの土や、周囲の他の植物の状態を見ると良いでしょう。周辺の土がカラカラに乾いていたり、他の植物が明らかに水不足を感じているようであれば、スノードロップにも水やりが必要です。なお、土の状態を確認する際には、くれぐれも球根に触れたり誤って掘り起こしたりしないように注意しましょう。
水やりは、季節によっても多少変わります
スノードロップの水やりは表土が乾いたら与えるのが基本ですが、常に同じ方法で良いというわけではありません。水やりの具合は、天候のほか、植物の生育状態や季節で多少変わります。そこで、この項では季節ごとの違いを見ていきましょう。
春(鉢植え、地植え)
春のスノードロップは葉や茎が育ち、花が咲き、水も良く吸い上げる時期です。 鉢植えの場合には、表土が乾いたのを確認したらたっぷりと与えます。地植えのスノードロップの場合は、極端に乾燥が続かない限り水やりは必要ありません。
夏(鉢植え、地植え)
夏のスノードロップは休眠期に入るので、水やりの頻度を減らして若干乾かし気味に管理します。 鉢植えの場合には、土の状態を見ながらカラカラに乾かない程度に水やりをしましょう。日本の夏は特に多湿になりがちなので、水のやりすぎには注意が必要です。
また、気温の高い日中の水やりは、鉢の中を蒸し風呂状態にしてしまうため、夕方から夜にかけて行うようにしましょう。地植えの場合は、乾燥していなければ、春と同じく特に水やりは必要ありません。
秋(鉢植え、地植え)
秋は、スノードロップを植え付けたり植え替えたりする時期です。 鉢植え・地植え共に、植え付け後はたっぷりと水やりをしてください。その後の管理は、鉢植えは基本通り表土が乾いたら、地植えの場合は特に必要ありません。どちらも、過湿と乾燥のしすぎには注意しましょう。
冬(鉢植え、地植え)
冬のスノードロップは、2月ごろからの開花に向けて、ぐんぐんと育つ時期です。鉢植えは、表土が乾いたらたっぷりと水やりをしましょう。地植えでは、基本的に水やりの必要はありません。長く乾燥が続いた場合のみ、与えてください。また、夜間の寒さで与えた水が凍るのを防ぐため、水やりは晴れた日の午前中に行いましょう。
スノードロップの水やり、注意点が知りたい
鉢植えの場合の注意点
スノードロップの鉢植えに水やりをする際の注意点は、完全に乾燥させないことと過湿にしないことの2点です。 球根を乾燥させすぎてしまうと、花がつかないどころか、球根が枯死する事があります。反対に、水をやりすぎて過湿状態が続くと、根腐れを起こしたり灰色カビ病が発生しやすくなったりします。雨が多く多湿になりがちな梅雨~夏や、土の水分が蒸発しにくい冬は特に注意しましょう。
地植えの場合の注意点
地植えのスノードロップの場合、植え付け時にたっぷりと水やりをすれば、その後はあまり与える必要はありません。注意点があるとすれば、乾燥しすぎてしまうことです。特に、水やりを控えめにする夏の休眠期は水やりの頻度がとても難しい時期です。気温が高く水が蒸発しやすくなります。過湿を気にするあまりカラカラにしすぎないよう、土の状態に十分に注意しましょう。
Credit

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
文・ランサーズ
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