クリスマスフラワーという別名があるポインセチア。花びらのように見える赤い苞(ほう)と緑色の葉が美しく、キリスト教圏ではその赤はキリストの血を、緑は永遠の命を表しているとされています。ポインセチアが日本に入ってきたのは、明治時代。いまや、品種改良によって色数がぐっと増えました。一時のシーズン物で終わらせず、ポインセチアを育ててみませんか。長く楽しむためには、水やりのほかにも大切なお手入れがあります。そのひとつが「剪定」。All Aboutガイドで、ガーデンライフアドバイザーの畠山潤子さんにお聞きしました。
ポインセチアを育てる前に知っておきたいこと
ポインセチアは、常緑低木です。メキシコ原産なので耐寒性はなく、苞が美しく色づく冬の観賞期間は基本的に屋内で楽しみます。花の少ない季節を華やかに彩ってくれるうえに、ポインセチアだけで、赤、白、緑のクリスマスカラーを揃えることができるので、このシーズンに欠かせない観葉植物として親しまれています。
ポインセチアの基本データ
学名:Euphorbia pulcherrima
科名:トウダイグサ科
属名:トウダイグサ属(ユーフォルビア属)
原産地:メキシコ
和名:猩々木(ショウジョウボク)
英名:Poinsettia
観賞期:11~2月
葉(苞)色:赤、ピンク、黄、白、緑、紫、複色
生育適温:20~30℃(最低10℃以上)
切り葉の出回り時期:12月
花もち:5~7日
ポインセチアの苗は、園芸店やホームセンターの園芸コーナーなどで、主に11~12月に出回ります。近年、定番の赤いポインセチアだけでなく、ピンク、白、斑入りなど、たくさんの品種が見られるようになりました。「今年はどれにしようか」と悩むのも、楽しみのひとつですね。
剪定には、いろいろな種類があります
剪定とは、植物の姿形を整えたり、生育や結実の調整をするために茎の一部を切り取ったりする作業のこと。脚立を立てて行なうような大掛かりなものから、草花の切り戻しのような細かい作業までを含みます。剪定というと、庭木の枝切りばかりを想像しがちですが、それだけではありません。
自然のままでも樹形がきれいに整う植物もありますが、多くの植物は日光を求めて片側だけ伸びがよかったり、生育が旺盛で姿が乱れたり、時には繁りすぎることで風通しが悪くなり病気が発生したりすることがあります。
人の手が届かない山の中では致し方ないかもしれませんが、家の庭で伸びるに任せてジャングルになってしまっては困りもの。特に、ポインセチアのように家の中で管理する観葉植物なら、なおさらのことです。家庭で植物がジャングル化しないようにするためにも、また、家の環境下で植物がすくすくと生育し、美しい姿でいられるようにするためにも、剪定という作業が必要になるのです。
剪定は主に植物の姿形を整えること、花つきや結実をよくすること、通風や採光をよくし、生育を助けること、株や枝の若返りを図ることなどを目的として行います。
したがって、剪定には以下のような作業が含まれます。
枝下ろし
樹木の大きい枝の芽を残さずに、枝分かれした元から切り落とすこと。
枝透かし(枝抜き)
通風や採光を妨げているような込みすぎた枝を、枝分かれした元から切り取ること。
刈り込み
全体の形を刈り整える作業のこと。
切り戻し(※)
伸びた茎(枝)を短く切り詰める作業のこと。
摘心(摘芯、ピンチ、芯止め)
枝茎の先端の芽(頂芽)を摘むこと。これにより、脇芽(腋芽、側芽)を出させたり、開花を促したりします。
※「切り戻し」切り花で、花材の水あげをよくするために、茎の根元を新しく切り直すことも「切り戻し」といいます
ポインセチアに剪定って、じつは必要です
観賞期のポインセチアは、じつは休眠期にあります。春になり気温が上昇すると生育期に入り、それからどんどん枝が伸びていきます。環境が合えば旺盛に生育して、背丈が1mを越してしまうことがある一方、日照不足であったり、急激な環境変化によって葉が落ちたり、葉と葉の間が間延びする「徒長」の状態に陥ってしまったりすることがあります。そこで、ポインセチアがすくすくとした株の状態で長く楽しむために、必要に応じて随時、剪定が必要になるのです。
ポインセチアに行なう剪定は、主に「切り戻し」と「摘心」の作業になります。
知りたい! 剪定する目的とメリット
切り戻しの目的とメリット
ポインセチアを切り戻しする目的は、不必要に伸びすぎた枝や間延びした枝を整理して、姿形を整えることにあります。
ポインセチアは、生育適温にあれば旺盛に伸びるので、そのまま放任しておくと、次の観賞期には置き場所に困ってしまうことになります。切り戻しをすることで、株をコンパクトに維持することができます。
また、繁って混み合っているようなところは風通しが悪くなり、カビの一種である「灰色かび病」に罹ってしまうこともあります。枝を透かすように剪定することで、風通しをよくすることができます。
摘心の目的とメリット
ポインセチアを摘芯する目的は、枝数を増やすことにあります。
ポインセチアをはじめ多くの植物は、「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質を持っています。これは、茎の先端にある芽(頂芽)の生長の方が、茎の側面に付く脇芽よりも優先されることを指します。
つまり、摘心をしないでそのまま育てていると、優先された茎だけが伸びて脇芽の生長は抑制されてしまうということです。摘心をしなくても自然に分枝する植物もありますが、ポインセチアは摘心することで枝数が増え、繁りやすくなります。
剪定に適した時期を、見極めましょう
ポインセチアの剪定は、その目的によって適した時期があります。
摘心の適期と方法
摘心の作業は、脇芽を出させ枝数を増やし、株を茂らせることが目的です。挿し木で増やした株を定植し、しっかり根づいたら行います。植え替えたポインセチアに、新しい芽が出て、伸びだしたら根づいたサインです。
摘心の方法は、定植後のポインセチアの枝が伸びてきたら、その頂芽をハサミで切り取ります。
切り戻しの適期と方法
切り戻しは、生育期間中の春~夏が適期です。
シーズンを越した5月頃にいちど、切り戻し剪定をします。その後も枝は伸びますから、8月初めくらいに、もういちど剪定をして株をコンパクトにします。
切り戻しの方法は、傷んだ枝や葉を取り除くとともに、不要な枝を切りたい位置までたどってハサミで切り取ります。さらに仕立てたい樹形を意識して、枝を切り整えます。
剪定のポイントは、枝や茎の選び方です
庭木の場合には、「忌み枝(※)」と呼ばれる枝を剪定し、形を整えていきます。ポインセチアの剪定をする際には、どのような枝を選んで切ればよいのでしょう。
切り戻しの場合は、庭木同様に不要な枝を整理。繁りすぎて混み合っている部分を切ります。
摘心の場合は、すべての枝の頂芽を切ると株はコンパクトに繁ります。全体のバランスを見ながら、長短をつけて頂芽を切り取るとよいでしょう。
また、何らかの原因で下葉がおちてしまい、枝の先端にしか葉がついていないような場合も、思い切って切り戻しをして、枝を更新しましょう。
剪定の際、切り取った枝を挿し穂として、挿し木で予備苗を作ることもできます。
※「忌み枝」美しい木の形を保つときに、不要な枝のこと。枯れ枝、徒長枝、立枝、逆さ枝、懐枝、重なり枝、かんぬき枝、車枝、絡み枝、垂れ枝、胴吹き、ひこばえがあります。
ポインセチアの剪定には、コツがあります
ポインセチアを剪定するときのコツは、ズバリ「切るべき時に、切るべき枝を切る」これに尽きます。
園芸を始めたばかりというビギナーの方には、「ハサミを入れるのが怖い」という方がいるかもしれません。植物の剪定は、人間にたとえると散髪のようなもの…と考えれば、ハサミを持つ手も軽くなるのではないでしょうか。
剪定するときの注意点はこちらです
ポインセチアに限らず、植物を剪定するときの注意点は、「剪定の際には清潔なハサミを使う」ということが挙げられます。
家庭で多種多様な植物を育てている場合、道具を媒介として病気がうつってしまうこともあります。あきらかに「病気にかかった植物を切った」とわかっている場合は、ハサミの消毒が必要です。強い薬品や難しい作業は必要なく、普段は水で洗った後に水分をよく拭き取り、ハサミの刃先にオイルを塗っておくくらいです。消毒したい場合は、薬局で売られている消毒用エタノールの使用が手軽です。
ポインセチアは剪定した際に、切り口から白い汁が出ることがあります。この汁に触れると体質によっては、かぶれることがありますので、素手で触れないように注意しましょう。
美しく見せる、ポインセチアの仕立て方
最後にポインセチアの仕立て方について、簡単に触れておきましょう。
スタンダード仕立て
主幹を伸ばし、その上部に枝葉を茂らせる仕立て方です。バラやコニファーでもよく見られます。
ツリー仕立て
クリスマスツリーのような形に整える仕立て方です。
キャンドル仕立て
主幹を高く伸ばし、柱状に枝葉を茂らせる仕立て方です。
Credit
監修/畠山潤子
ガーデンライフアドバイザー
花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
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