ハオルチアは、ぷっくりとした肉厚な葉をもち、ユニークな姿形をした多肉植物です。ハオルシアとも呼ばれています。近年の多肉植物ブームをきっかけに、その存在を知った人も多いでしょう。特別なお手入れを必要としないハオルチアは、初心者の方でも育てやすい植物のひとつ。ここでは、ハオルチアの日々のお手入れ方法や育て方のコツ、寄せ植えの楽しみ方などを紹介します。NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。
目次
ハオルチアを育てる前に知っておきたいこと
ハオルチアは、アロエに似た小型多肉植物で、南アフリカが原産地です。ハオルチア属の植物は500種以上あるといわれ、品種によってその姿形はさまざま。なかには、葉の先端部が半透明になっており、まるで宝石のように輝く品種もあります。
多くの品種は傾斜地や岩の間などに隠れ、葉の先端にある「窓」と呼ばれる半透明な部分だけを地表に出し、光合成を行います。
ハオルチアの基本データ
学名:Haworthia
科名:ツルボラン科
属名:ハオルチア属
原産地:南アフリカ
和名:-
英名: Haworthia
開花期:2~6月 (種類による)
花色:ピンク、白
生育適温:15~20℃
種類を知ると、選び方がわかります
ハオルチアは、葉が硬く、株のフォルムがシャープなことが特徴の「硬葉系」と、葉が柔らかく、品種によっては葉が透明になっている「軟葉系」に分けることができます。いずれも葉が放射線状に等しく育つため、ユニークで幾何学的な形を楽しむことができます。以下に、「硬葉系」と「軟葉系」の品種をいくつか紹介しましょう。
硬葉系
十二の巻
硬葉系ハオルチアの代表的な品種です。白い線が縞状に入った、シャープな葉が放射状に伸びます。その葉先の尖った部分は、「ノギ」と呼ばれます。
ハオルチア・レツーサ
大型のものから小型のものまで、バラエティ豊かに存在します。葉先が尖っていて、窓(葉の先端にある半透明な部分)があることが特徴です。
軟葉系
万象
表面を平らに切ったかのような、ユニークな形状の葉が独特。窓(葉の先端にある半透明な部分)には模様があります。
ハオルチア・オブツーサ
ブドウを思わせる、丸く透きとおった葉がぷくぷくした品種で、ハオルチアのなかでも、特に人気があります。葉先で光を取り込むため、キラキラした印象も。
玉扇(ギョクセン)
多肉質の平たい葉を扇状に広げることから、この名前に。前述の万象同様、窓があり、ここで光合成を行っています。生育は遅め。
ハオルチアを育てるときに必要な準備は?
ハオルチアは地植えに向かないため、通常、鉢植えにします。ホームセンター、園芸店、街のフラワーショップ、雑貨屋などで、以下のものを用意しましょう。
準備するもの
・ハオルチアの苗
・鉢または横長プランター
・土
・緩効性化成肥料、もしくは液体肥料
・鉢底ネット
・鉢底石
鉢やプランターが小さすぎると、根が絡んだり根腐れしたりするため、大きめのものを選びましょう。
適した土作りが、育てるコツの第一歩
ハオルチアを育てる土は、空気を適度に含んだ、水はけがいいものを選びます。市販の土を使う場合は、多肉植物用、または観葉植物用の培養土を購入しましょう。
自分で土をブレンドする場合は、園芸用の土に、鹿沼土(かぬまつち)や赤玉土、川砂などを加えます。鹿沼土小粒2、赤玉土小粒2、ピートモス2、川砂2、くん炭2の割合がおすすめです。
ハオルチアの育て方にはポイントがあります
ハオルチアは、春秋生育型の多肉植物で、4〜6月と9月中旬〜11月上旬が生育期になります。大きく育っても15cm程度と手ごろなサイズで楽しめる品種が多く、また、室内の明るい場所で育てることができます。
栽培には風通しがよく、日光が当たる場所が適しています。ただし、葉焼けしてしまうため、直射日光の当たる場所は避けましょう。
苗の選び方
購入時は、硬葉系と軟葉系で、チェックするところが異なります。硬葉系のハオルチアを購入する場合は、葉に厚みがあり、しっかりとした株を選びましょう。軟葉系の場合は、葉に艶と張りがある株を見極めてください。どちらも、葉が放射線状に、等しく伸びているものが理想的です。
植えつけ時期と方法
ハオルチアの苗を購入した場合は、できるだけ早く新しい鉢に植え替えましょう。
植えつけの手順
①鉢に鉢底ネットを入れ、鉢底石を薄く敷きつめます。培養土を鉢の半分量入れます。
②ハオルチアの苗をポットから引き抜きます。太くてしっかりとした根は残しますが、茶色くなった古い根や下葉は取り除きます。
③鉢に、苗を植えつけ、残りの土を苗の周囲に被せます。棒などで軽く土をつき、土の隙間がなくなるようにします。
④鉢底の穴から水が出るまで、たっぷりと水やりをします。
ハオルチアと仲よくなる日々のお手入れ
水やりのタイミング
生育期にあたる春と秋の間は、週に1回、午前中にたっぷりと水やりをします。休眠期間にあたる夏と冬の間はあまり水を必要としません。土が湿りすぎていると根腐れを起こすことがあるので、月に1〜2回、水を少なめに与えます。
しかし、1年中温度が一定の室内(冷暖房が効く場所)で管理をしている場合は、春と秋と同じ水やりをしましょう。
肥料の施し方
春と秋の生育期に、緩効性化成肥料や液体肥料を少量、施します。
花が咲いたら…
花をたくさん咲かせると、スタミナ切れを起こし、株全体が弱くなってしまう可能性があります。そのため、花が1〜2輪咲いた時点で、3㎝ほど茎を残した状態で切り取るようにしましょう。残った茎はしばらくすると、茶色く乾燥し、簡単に引き抜ける状態になります。
立派に育てるための、植え替え時期と方法
生長期にあたる春と秋は、ハオルチアの根つきがよくなるため、植え替えに適した時期になります。
植え替えの手順
①鉢から株をそっと取り出します。鉢の胴部分を叩くと、株をスムーズに取り出すことができます。
②根を傷つけないように注意しながら、根についた土を落とします。茶色く枯れた根や枯れた下葉を取り除きます。
③植え替え前の鉢よりひと回り大きな鉢を用意。鉢に鉢底ネットを入れ、鉢底石を薄く敷きつめます。培養土を鉢の半分量入れます。
④株を鉢に置き、残りの土を苗の周囲に被せます。植えつけ時と同様、棒などで軽く土をつき、土の隙間がなくなるようにします。
⑤鉢底の穴から水が出るまで、たっぷりと水やりをします。
ハオルチアは、植え替え後3年ほどは、同じ鉢で生育することができます。
知りたい! ハオルチアの増やし方
ハオルチアは、株分け、葉挿しで増やすことができます。
株分けの時期と方法
根がついた状態で行う方法のため、高い確率で増やすことができます。子株(こかぶ)と呼ばれる、親株の根元にできる小さな苗を切り離し、別の鉢に植えて育てます。適期は、生育期である3月中旬~5月の春、もしくは9月中旬~10月の秋です。
子株には既に、根が生えて生長する準備ができているので、植え替えたあと枯れる心配がほとんどありません。
①株を鉢からそっと抜き、根についた土を落とします。
②細かい根を取り除き、太い根だけを残した子株を、親株から切り離します。このとき、根が長い場合は、植えやすい長さに切っても構いません。
③新しい鉢に、鉢底ネットを入れ、鉢底石を薄く敷きます。培養土を、鉢の半分量入れます。
④根の切り口が乾いたら、鉢の中心に子株を置き、残りの土を苗の周囲に被せます。植えつけ時と同様、棒などで軽く土をつき、土の隙間がなくなるようにします。
子株を植えたら、水やりをせずに管理します。すぐに水をあげると、子株の根が腐ってしまうからです。植えつけ後3〜4日経ってから、水を与えてください。
葉挿しの時期と方法
ハオルチアの葉を土に挿すだけという、もっとも簡単な方法です。生育期である春(3~5月)、もしくは秋(9~10月)に行います。
コツは、土の生えぎわに近く、よく育った葉を使うこと。葉に蓄えられた養分が少ないと、新しい苗に育ちません。
①ハオルチアから、根元近くの葉を何枚か取ります。
②培養土を入れた容器を用意。土の表面をならします。
③葉の切り口を乾かしたら、葉を仰向けにし、切り口を土に軽く埋めます。
葉挿し後は水やりをせずに、管理します。数日〜1か月弱で、芽や根が出てきます。出てきた根は土をかけ、埋めます。芽や根が育ってきたら、新しい鉢に植え替えてください。水やりは、株分け同様、新しい鉢に植えつけ後3〜4日経ってから与えます。
毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです
ハオルチアが病気にかかることはほとんどありませんが、害虫が発生し、根や茎が食害にあう可能性はあります。
育てるときに注意したい害虫
カイガラムシ
花が咲くと、カイガラムシによる食害にあうことがあります。カイガラムシは、貝殻のような殻をかぶった黒い虫。そのままにしておくと、ハオルチアが弱ってしまうため、見つけしだい駆除してください。幼虫を見つけたら殺虫剤を、成虫を見つけた場合は歯ブラシなどでこすり落とします。
アブラムシ
2〜4㎜程度の、黒や緑色の虫です。4〜6月、9〜10月に発生しやすくなります。茎やつぼみから養分を奪い生育を妨げるため、寄生しているのを見つけたら、すぐに殺虫剤で駆除します。
キノコバエ
多湿な環境が続くと、土にキノコバエの幼虫が発生し、根や茎を食害します。土を水はけのいい状態に保つことで、予防できます。
ハオルチアと相性のよい寄せ植えの植物
多肉植物はそれぞれの種類で、適した生育環境が異なります。そのため、異なる多肉植物を寄せ植えにできない場合があります。
ハオルチアは種類が多く、姿形や色のバラエティに富んでいます。異なる品種のハオルチアを寄せ植えすれば、多彩なひと鉢に仕立てることができます。軟葉系と硬葉系のハオルチアを組み合わせてメリハリをつけたり、同系色のハオルチアでまとめて統一感を出したりと、さまざまな楽しみ方があります。大きさや高さが異なるハオルチアを寄せ植えにして、バランスよくまとめてみましょう。
Credit
監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・アマナ/ネイチャー&サイエンス
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